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欲望のお楽しみ編_ネコの章

どちらを隠せばいいですか?

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「な、なにすんだよ! か、顔が見えちゃうだろ!?」
「鼻を隠しておけば大丈夫だよ。ほら、画面を見て。他の女の子たちもみんな鼻だけ隠してるでしょ?」

 配信を行っているウェブサイト。その随所に配置されているオススメ配信の女性たちの中には、確かに鼻だけを隠している人もいた。コメントでもリサを肯定する意見が多い。

「で、でも、だからって……!」
「ふふっ、そんなに嫌なら抵抗してくれてもいいんだよ?」

 抵抗なんてできるはずがない。性器が勃起しているせいで、片手すらも股間から離せないのだから。

「あっ……だ、だめ……あぁっ……」

 表情とは目と口で作るものだ。どちらかが隠れていては表情はわからないし、両方が見えていれば言葉よりもわかりやすく心を表してしまう。

『ほら、やっぱり悦んでるじゃん』

「ち、ちがっ……これは違くて……」

 否定しても表情は変わらない。困惑気味の蕩けた瞳と、端がつり上がった三日月型の口。画面に映る少女はにへにへと笑っていた。

『顔トロトロじゃんww』『この状況で笑えちゃうとか、ネコちゃんはいけない子だなー』
『ネコちゃん、マスクでお口隠さなくていいの? 顔見られちゃうの嫌なんでしょ?』

「そ、そうだけど……で、でも……」

 リサの表情を窺うが、にこにこと微笑むばかりで何も言わない。きっと、頼んでもマスクを戻してはくれないだろう。

『そうだよ、マスクで顔隠してればなにしたって大丈夫だよ!』

「そ、そうかな……?」

『顔隠してればネコちゃんがどこの誰かなんてわかんないからな』『ネコちゃんの知り合いでお金払ってこの配信見てる人もいないだろうし』『ちんちんで人の特定はできないけど、顔はできちゃうからな』

「そ、そうかも……。顔、隠さないと……かも」

 あれほど離れなかった右手が股間から離れる。左手も右手の後を追って、両手が翔斗の体を登っていく。

『勃起ちんちん解禁!』『子供ちんちんが頑張って勃起してるの可愛いな』『ガマン汁やっば……もうお漏らしじゃん』

 コメントが急流のような勢いで書き込まれていく。画面のほとんどがコメントで埋まっていて、翔斗が今どう映っているのかよくわからない。コメントが多すぎて、一つ一つの内容もよくわからない。わかるのは、翔斗が両手をマスクに伸ばしているということだけ。

 指先にかさりと乾いた感触がして、ようやくマスクに触れたのだと気づく。あとはこれを指先で挟んで、口元を隠すようにずり下せばいい。そうすれば、手はまた元の位置に戻せる。

 そのはずなのに、マスクを上手く掴めない。マスクが滑るのではなく、リサに邪魔されているということもなく。指先が震え、力が入らず、両手が頬のあたりでたどたどしく動くばかりで、これではいつまで経っても……。

「はっ……はっ……あはっ……♡」
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