重槍士は褐色毒ショタに出会う

papporopueeee

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旅立ち

此処から、僕たちが始まるんですよ

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「これで終わりです。僕がこの国でやり残したことは、何一つありません……一つも、残っていません」

「そうか……。じゃあ、行こう。一応、日が昇る前に出ていく約束だからな。あんまり長居してたら、ボウガンで追い回されかねない」

「ふふっ……でも、ガルなら守ってくれますよね?」

「なんだよ、派手な出発をご所望か? それなら、大声で宣言しながら行くか。レスト国のルカテは俺が攫って行くってな」

「誘拐ですか? 今度はどこに連れていかれてしまうのでしょう……一度目は、素敵なお星さまの元へと運んでいただきましたけれど……」

「それなら、次は安住の地なんてどうだ?」

「…………え?」

「ここから東に数週間歩くとデカい国がある。トラースラって言う平和な国でな。国交も盛んで、人の行き交いも多い。そこなら、その褐色肌もただの個性だ。きっと、ルカテも気に入ると思う」

「そっ、それってっ……っ」

 ルカテが息を呑んだ。顔色はよく見えないけれど、俺の話に興奮してくれているようだ。

「以前に長期滞在したことがあるから伝手もある。孤児院に入るか、もしくは住み込みの仕事を探すか……ルカテなら、どっちでも好きな方が選べるだろうな。どっちを選んでも、それ以外の選択肢でも、ルカテならきっと上手くやっていけるだろう」

「…………」

 まだ日の出ていない薄暗さでもわかった。ルカテは今不満げな顔で、俺のことをじっとりと睨みつけている。そう確信できるほどに、視線が突き刺さってくる。

「あー……不満か?」

「ガルは? ガルはどうするんですか?」

「俺はルカテがトラースラに馴染めてるのを確認できたら、また旅に出るつもりだけど……ルカテも旅の方がいいか?」

「違います……ガルと一緒に居たいんです。というか、あんなこと言わせておいて……さすがに、放り出すのはひどくないですか?」

 懐いてくれているのは嬉しいけれど、その言い方だと俺がルカテを誑かした挙句に捨てようとしているかのようだ。語弊にもほどがある。

「んー……いやでも、やっぱりトラースラに定住した方が……あの町にだっていいやつはたくさん居るし……。というか、ルカテにとってはレスト国が酷すぎただけだしな。ルカテには定住の方が向いていると思うんだが……」

 その肌の色がレスト国に馴染めなかっただけで、ルカテ自身は人を惹きつける才能がある人間だ。

 幼くして回復魔法を修める優しさと聡明さ。淑やかな物腰と気品のある所作。国の中心人物になってもおかしくないポテンシャルだ。俺と共に旅に出るということは、それを無駄にするということでもある。

「……そんなに僕のことを追いやりたいんですか?」

「そういうわけじゃないんだ。ただ、旅はな……今回のグリフォンだって危なかったわけだし。リスクを考えると、俺のわがままでルカテを危険な旅に付き合わせるわけにも……」

「わがまま……ふふっ。違いますよ、ガル。ガルが僕を付き合わせるんじゃなくて……僕がガルについていくんです」

 突然、ルカテにタックルをされた。その細腕が腰に巻き付き、皮防具の上からでもわかるほどにぎゅうっと抱きしめられる。

「独りぼっちの日々でした……。父様が死んで、母様も失踪してしまって……僕には生きる希望なんてありませんでした……。いつ死んでしまっても構わないと、それこそ毎日のように思っていました……」

「ルカテ……」

「そんな僕に、ガルは生きる希望をくれたんです。死にたくないと思わせてくれて、生きたいという願いをくれました。……期待だけ持たせておいて放り出すなんて、許しませんから」

 俺の手を取って、ルカテは歩き出した。登り始めた太陽の方へ向かって。その褐色の肌に、キラキラとした光を受けながら。

「責任……取ってくださいね?」

「……ああ、わかった」

 ここまで言われては仕方あるまい。ルカテがここまで覚悟を決めているのに、俺が覚悟を決めないでどうする。

 守ればいいだけの話だ。どんなに危険であろうとも、ルカテは俺が守ってやればいい。

「さあ、行きましょうガル! 此処から、僕たちが始まるんですよ!」

 今まではずっと抱っこをしていたからだろうか。力強く俺を引っ張るルカテが、なんだかいつもより大きく感じた。

 今日この瞬間から、俺はこの子の盾で在り続けよう。あらゆる害悪から守り通す誓いを胸に、この小さな手を離さないように強く握り返しながら――

「ああ、行こう……ルカテ」

 ――俺はルカテと一緒に、日が昇る方へと歩き出した。
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