両腕のない義弟との性事情

papporopueeee

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初夜

義弟は一人では性欲を処理できない

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「起きろカオル、朝だぞ」
「ん……ケン君、もうちょっと寝かせて」
「ダメだ、もう九時だからな。これ以上寝てると夜眠れなくなるし、勉強の時間もあるだろ。体起こせるか?」
「……起こして」

 カオルの背中に腕を回し、ゆっくりと起き上がらせる。軽すぎる体は、力加減を間違えると吹っ飛んでいきそうだ。

「体調は大丈夫か? 気持ち悪いとか、目眩とかないか?」
「それ、何回目? もう三ヶ月も経つのに、毎日それ訊いてくるよね」

 くすくすと声を漏らすカオルは少し楽しそうだ。

「そうか、もう三ヶ月か……」

 三ヶ月。それは俺の父親とカオルの母親が亡くなってからの時間で、カオルが両腕を失くしてからの時間だ。

「……ケン君はいつ大学を再開するの?」
「休学はまだまだできるからな。もう少し休むつもりだ」
「そっか……」

 ぽてんと、カオルが胸に寄っかかってくる。

「安心しろ。お前を置いていくようなことはしないから」
「……ん」

 俺は父子家庭で育って、カオルは母子家庭で育った。ふたりの親が婚活で出会って、四人は家族になることになった。けれど、実際に家族になれたのは二人だけだった。

 事故で母親と両腕を失くしたカオルは特別支援学校に通うことも拒み、家に塞ぎ込んでいる。外に出たくない、見られたくない、泣きながらそう言われたことをよく憶えている。

「ねえ、今日は何する? 映画? ゲーム?」
「その前に勉強だろ」
「えーやだー」

 カオルは思春期の男子としては珍しく、母親にべったりの甘えん坊だった。母親を失ってからは、こうして俺によく甘えてくる。まだ出会って半年も経っていないのに、まるで本当の兄のように慕ってくれる。

「勉強が早く終わったら、映画でもゲームでも付き合ってやるよ」



「ねえ、その映画が見たい」

 肩に寄りかかるカオルが言った。

「ん、これか? 洋画のラブロマンス……こういうの好きだっけか?」
「ううん、あんまり。でも見てみたい……いい?」

 カオルがすりすりと胸に頬を当ててくる。カオルが甘えるときにする仕草だ。両腕が使えないため、こういうスキンシップを好むのだろう。

「まあ、いいか。飽きたら言えよ」

 インターネットレンタルビデオサイトにでかでかと広告されている恋愛映画。これだけ目立っていれば趣味じゃなくても興味が湧くものだろう。

 途中でカオルが寝てしまったら、夜に寝付けなくなるかもな。そんなことを考えながら再生すると、画面いっぱいに男女のラブシーンが映し出された。

(うぉっ……)
 つい出そうになってしまった声を寸でのところで抑える。全年齢向けのため直接映ってはいないものの、洋画の特徴なのかとても激しい。女性の艶めかしい声と、影で映る女性の豊満なシルエット。

 カオルがこのようなジャンルに慣れているとは思えない。気まずい思いをしていないかと様子を窺うと、その両目は食い入るように画面を見つめていた。横目で見られていることにも気付かずに、ただ一心に。

 普段はそんな様子は見せないカオルだが、やはり内心は性にも興味津々ということだろう。カオルの思春期の男子らしい一面はなんだか新鮮で、少しだけ成長を喜ぶ親の気持ちがわかった気がした。

 ただ、不安なこともある。カオルの股間が少しだけ膨らんでいる。映画に触発され勃起してしまったのだろう。それはいい、とても健全なことだ。けれど、カオルにはそれを発散させる術がない。

 塞ぎこんでいるためガールフレンドなんていないだろう。自分で発散させることも、無い腕では適わないだろう。

 カオルがもぞもぞと体をよじっている。少しだけ荒い呼吸が女優の声に混じって聞こえる。

 ただ悶々とすることしかできないのは辛いだろう。だからと言って俺にできることはない。下手にその話題に触れても傷つけてしまうだけかもしれない。だから、今はただ気づかないふりをしておこう。



「ケン君、映画見ないでほとんど寝てたでしょ」
「お前だって寝てただろ」

 夕飯に作ったチャーハンをカオルと一緒に食べていると、いつの間にか話題が映画の感想へと流れた。

「オレはちゃんと見てたもん」
「でもエンドロールの時に確認したら寝てたぞ」
「だって、最後は退屈だったんだもん……。でも、最後以外は見てたから!」
「じゃあ、どんな映画だったんだ?」
「三角関係の恋愛映画だったよ。男と女と、あと妹」
「姉妹で一人の男を取り合ってたのか」
「ううん。男と女が両思いで、妹が兄に片思い」
「割とエグい映画だったんだな……」
「でも面白かったよ。男が妹じゃなくて女を選んでからは、つまんなかったけど」
「カオル好みの展開じゃなかったか?」
「だって、男と女は他人だけど兄妹はそうじゃないでしょ。二人は家族だったのに……」
「男と女だって家族になるかもしれないだろ」
「でも、男と妹はずっといっしょだったんだよ。つらい時も助け合って、愛してるって言ってたのに、でも最終的には女を選んで……ケン君は、そっちの方がいいの? 男と女の関係の方が大事だと思うの?」
「んー……」

 大事なのはカオルだ。血の繋がりはなくても、まだ数か月ぽっちの付き合いでも、カオルは家族だ。カオルを放って女を作るなんてことはありえない。

 しかし、それをカオルに強要したくはない。家族のことなんて気にせずに好きな女性を作って欲しい。もしもこの先カオルに恋人ができた時、家族よりも自分の幸せを重要視してほしい。

 カオルが一番大事だと言うと重荷になるだろうか。だからと言って女が大事だと言えばカオルは傷つくだろう。迷っていると、カオルがぷいっと顔を背けた。

「……オレに言わないってことは、家族より女の方が大事なんだ」
「ん? いや、そんなことはないんだけど……」
「ほら、歯切れ悪いし、やっぱりそうなんだ!」
「落ち着けって……ほら、あーん」

 興奮するカオルの口にチャーハンをねじ込む。

「んっ、んむっ……。スープも飲みたい」
「はいよ。旨いか?」
「うん。ケン君の作る料理って中華だけは美味しいよね」
「中華は男の料理だからな」
「そういうの、今は男女差別だって怒られるんだよ?」
「お、詳しいな。テレビに出てくるコメンテーターみたいだ」
「だってテレビのコメンテーターが言ってたんだもん。最近は男と女が平等に扱われてて、LGBT? とかもあって性別の境界が曖昧になってきてるんだって」
「へえー、そうなのか。俺からしたら男は男、女は女って感じだけどな」
「ケン君は男らしいもんね。ガタイもいいし、髪も短いし」
「こちとら生粋の体育会系だからな。カオルは少し髪が伸びてきたな。邪魔じゃないか?」
「ん、だいじょぶ」
「そうか? 最近は家に出張で来てくれる美容師もいるから、そうしたら外に出なくても――」
「いいの」

 カオルは不機嫌そうだ。やはり他人に体を見られたくないらしい。

「そっか……でも、切りたかったらいつでも言えよ。なんなら俺が切ってやってもいいしな」
「ええー、ケン君髪切れるの?」
「切るだけなら誰にだってできる。仕上がりは保証しないけどな」
「なにそれ、じゃあオレはこのままでいいよ」

 ふるふると頭を振って髪をなびかせ、カオルは微笑んだ。細い体躯も相俟って、肩にサラサラの髪がかかる姿は女の子に見えないこともなかった。



「そろそろ風呂入るぞ」
「んー、この番組見終わったらー」
「それ録画したやつだろ。ほら、行くぞ」
「あー横暴だー! 離せー!」

 抱えられた状態でカオルはバタバタと足を振る。とても楽しそうに。

「暴れるなって、落としたらどうすんだよ」
「ケン君がオレを落としたりなんてしないでしょ?」
「そりゃ落としたくないし、善処もするけど、万が一があるだろ」
「……そこは、絶対に落とさないって言って欲しかった」

 カオルはむくれ顔で、不満を漏らした。

「どうした、今日はやけに甘えん坊だな。映画に影響されたか?」
「別に、そんなんじゃないし」
「……実は、冷凍庫にアイスがある」
「ほんと⁉」
「風呂から上がったら一緒に食うか」
「やったー! ケン君大好きー!」
「まったく、素直な義弟で助かるよ。服、脱がすぞ」
「うん……ぁ」

 服を脱がしていると、カオルが微かに声を漏らした。

 下着に小さな染みの跡がある。おそらく、映画のラブシーンで勃起した時についたものなのだろう。

 カオルが被介護者である以上、そのプライベートは極端に制限される。食事も、トイレも、入浴も、そして性事情も。カオルの生活の殆どが介護者に筒抜けとなる。

 それは仕方のないことだ。そうしないと、カオルは生活できないのだから。しかしそれはカオルの気持ちを蔑ろにしていいというわけじゃない。カオルは赤面して恥ずかしがっている。

 できるのは、気づかないふりをすること。そして、なんでもないことのように振る舞うことだと思っている。それによってカオルの心の傷を少しでも和らげることができればと願う。

「よし、じゃあ入るぞ」
「うん……」

 カオルとふたり、裸で浴室へと入る。

「しかし、髪が長くなったのなら洗い方も変えないといけないのかもな。生憎と俺にはそんな知識はないんだが、カオルは長い髪の洗い方って知ってるか?」
「んーわかんない」
「髪もそうだが、身長もこれから伸びるだろうからな。今みたいにテキトーに洗ってるだけじゃだめかもな」
「ごめん……」
「なんで謝るんだよ。成長するのはいいことだし、むしろそこはちゃんとキレイにしてくれって怒るところだろ?」
「うん……」

 カオルはまだ脱衣所で汚れた下着を見られたことを引きずっているのかもしれない。何を話しかけても生返事をするばかりだ。

 どことなく気まずい空気を漂わせながらも、カオルの体を洗い進めていく。残りは、性器周りだ。

「……前、洗うぞ」
「ん……」

 普段もそうだが、今日は一段と気を遣わなければならない。ただでさえカオルは心が敏感な時期なのだから。これ以上恥ずかしい思いはさせられない。

 両手に石鹸をまとわせ、カオルの性器を手に取る。手に付いた石鹸のぬめりを性器に移すようにして皮を徐々に向いていき……。

「いたっ……」
「悪い、痛かったか?」
「だいじょぶ……ちょっと驚いただけ」

 焦りすぎた。普段から皮を被っている分カオルの男性器は刺激に敏感だ。手に石鹸のぬめりを注ぎ足し、慎重に皮を剥ききる。向けた皮の内側は弱く握って擦るように洗い、カリから亀頭にかけては石鹸の泡だけが触れるようなソフトタッチで泡をまとわせる。洗いとしては不十分だが、カオルは弱めたシャワーの水流でも痛がるのでこれが限界だ。

「……ねえ、今日はちゃんと洗ってほしい」
「えっ、でもお前痛いって……」
「慣れてきたから、もう大丈夫かも……。それに、いつまでもこの洗い方のままじゃだめなんでしょ?」
「……じゃあ、痛かったら言えよ?」

 念入りに手を石鹸で擦って滑りのよい泡で指を覆う。左手の人差し指で亀頭を裏から持ち上げ、右手の人差し指を性器に這わせる。

「いつっ……」
「やっぱやめとくか?」
「も、もう少し……試してみて……」

 カリに触れている人差し指を左右に滑らせる。洗うのではなく、あくまで刺激に慣れさせるための動きで。

「つっ……うっ……。ん、慣れて、きたかも……」

 カオルの言葉を受けて指の動きを洗う動作へと変えていく。親指の腹をカリに潜り込ませ、爪が当たらないような浅いストロークで指先と腹で擦る。

「あっ、つっ……ん……」

 カオルの様子を見ながら縦と横の動きを交えて擦っていると、柔らかかった性器に芯が通り始めた。

「あっ、んっ……!」

(やっべ……!)
 咄嗟に指の動きを止めても膨張は止まらず、カオルの男性器が反り上がっていく。

「……」

 重い沈黙が風呂場に流れる。昼の映画で興奮したせいもあるのだろう。性器への刺激でカオルは勃起してしまった。

 思春期の男子の性器を他者が洗うのだ。こんなトラブルが起きてしまうことも考えていなかったわけではない。しかし、心の準備ができていたかどうかは別の話だ。

 こんな時はどうすればいいのか。ギャグを言って和ませるべきか。素知らぬふりをするべきか。恥ずかしいことじゃないと慰めるするべきか。

「……ぁっ、あ、洗ってよ……」

 震える声でカオルはそう言った。知らぬふりをして欲しいと、そういうことなのだろう。

「ん、わかった……」

 カオルがそれを望むなら、応えよう。

 面積の広がった性器を改めて手に取る。勃起したことにより性器の洗いやすさは格段に上がった。しわとなっていた皮も伸びており、カリも膨らんで指でしごきやすい。

「あっ……はっ……んぅっ!」

 知らぬふりを装っても、刺激を無視できるわけじゃない。身内に悶える姿を見られるのは羞恥を越えて屈辱だろう。さっさと終わらせてやらないと、カオルがかわいそうだ。

「……よし、シャワーで流すぞ」
「まっ、待って……!」
「あー、ちょっと落ち着いてからの方がいいか。いや、えっと……すぐに流しても汚れが落ちないからな。つけ置き洗いと同じ要領で――」
「だ、だしたい……」

 絞りだすような声でカオルはそう言った。背中からはその表情はわからない。俯いていて鏡越しでも見えない。ただ、長い髪の隙間から見える耳が真っ赤に染まっていた。

「……そうか」

 カオルは自身で性欲の処理ができない。そして、それを手伝える誰かは今のところ義兄である俺だけで、他の誰かがこの先いつ現れるのかもわからない。

 カオルを慰めてやれるのは俺だけだ。そんなことはわかっていた。性欲を溜め続けることの辛さだってわかっていた。それなのに、カオルにそれを口に出させてしまった。きっと今日のことは一生忘れられなくて、思い出す度に後悔するのだろう。

「人のなんてしたことないから、下手でも大目に見てくれな」
「ごめん……こんなこと」
「謝るな。俺は苦じゃないし、嫌でもない。そして遠慮することじゃないし、恥ずかしいことでもない。俺たちにとってはな……だから気にするな」
「……ありがと」

 勃起したカオルの性器を握る。行為は洗浄から手淫に変わったが、カオルの性器が敏感なことには変わりない。乱雑な手つきは依然避けるべきだろう。

 手で亀頭をふんわりと包み込み、泡の滑りに任せて上下に扱く。最初はカリの膨らみに掠る程度で、徐々にカリにひっかかる程度まで隙間を狭めていく。

「あっ、はっ……んぅっ、ふっ、んぅっ!」

 カオルの様子からは苦痛の類は見て取れない。痛みを感じることなく、手コキで気持ちよくなっているようだ。

「あっ、んっむ、あぁっ、っくぅ……!」
「苦しかったら声出しても大丈夫だぞ。あっ、別に出せって言ってるわけじゃないからな。ただ、息苦しそうに見えただけで他意は――」
「あっあっ、け、ケン君、で、でちゃいそう……!」
「ん、わかった。ちょっとペース上げるから、好きな時に出していいからな」

 手で作る輪を狭め、上下に動かす速度を上げる。カオルの嬌声もピッチが上がって、仰け反るようにしてもたれかかってくる。胸にカオルの背中が密着して、伝わってくる鼓動はとても速い。

「あっ、んっ、け、ケンくんっ……だ、抱きしめてっ!」
「えっ⁉ えっと、こ、こうか……?」
「も、もっと強くぅ……! は、跳ねちゃうからぁっ……!」
「こ、これくらいか?」
「あっあぁっ、い、イぃっ……イクっ、ケンくぅっ、イっ‼」

 ビクビクと体を跳ねさせて、カオルは果てた。性器から出てきた精液はさすが数か月分と言うべきか、まるでスライムのようにドロドロとした粘度の濃いものだった。

「はっ、はっ、はっ……」

 体力の落ちたカオルにとっては射精も激しい運動の部類に入るのだろう。俺にもたれかかりながら肩で息をしている。

「そのまま楽にしてていいぞ。今の内に泡を流すからな」

 水流が直接性器に当たらないように、下腹部にシャワーを当てて流水で泡と精液を流していく。射精したばかりで敏感なせいだろう、こびりつく精液を指でこそげ落とす度にカオルは吐息を漏らしていた。

「ね、ねえ……これからも、お願いしてもいい……?」
「……当たり前だろ。遠慮すんな」
「うん……ありがと、ケン君」

 これが正しいことなのかはわからない。けれど必要なことだとは思う。カオルにとって良い事なのかはわからないが、カオルの苦しみを和らげることはできる。

 だから、甘んじて受けよう。男同士であること。義理の弟であること。それらを認めた上で、カオルのために。

「ケン君……」
「どうした?」
「……ううん、何でもない。なんでも……」
「そうか……」

 カオルが胸に頬を当ててすりすりと甘えてくる。背中に温かいシャワーをかけてやると、カオルは嬉しそうに顔をほころばせた。
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