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第三夜
義兄は復習に付き合える
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「勉強終わった」
お昼を少し過ぎた頃。通販で届いた生活必需品と食料を整理しているとカオルに声をかけられた。
「ん、わかった。それじゃあ昼飯食べながら復習するか。何食べたい?」
「……なんでもいい」
カオルは必要最低限の言葉はかけてくれるものの、まだ態度が冷たい。昨日のショックが抜けきっていないのか、それとも心の内に隠しているだけで俺に怒っているのか。
「んー。じゃあオムライスにするか」
俺の得意料理は中華だが、カオルが好きなのは洋食だ。カオルは甘党なためオムライスも甘味をたっぷりにした物を好んでいる。朝食のフレンチトーストと色々被ってしまって栄養管理的には問題だろうが、今日くらいはいいだろう。
「……」
相変わらずカオルはどこか遠くを見るように物思いに耽っていた。一体何を考え、何を思っているのか。その思考に、俺が関与する余地はあるのだろうか。
出来栄えの悪いオムライス。その形を崩してカオルの口に入れ込みながら、俺はカオルの今日の勉強の成果を確認する。
カオルは足の指で文字を書くことにまだ慣れておらず、一日で書ける文字数はあまり多くない。したがって一日でこなせる勉強量もあまり多くなく、そこを復習で補っている。
「カオル、ここの数式ってさ」
「んーと……」
俺は勉強はあまり得意ではないが、内容が中学一年のため問題なくカオルの勉強に付き合えている。カオルが勉強した内容について確認し、カオルに改めて考えなおしてもらう。この方法が復習として適しているのかはわからないが、カオルの地頭の良さも合ってか偶に行うテストの成績はいい。
「ここの英文の和訳ってさ、どんな順序で訳したか説明できるか?」
「えっと、まず主語がここの塊で、動詞がこれでしょ」
事務的な内容で味気ないものの、カオルとこうして会話が行えると俺の気分も安らぐ。楽し気な雰囲気ではなくとも。今のカオルにとっては俺が唯一の会話相手であるように、俺にとってもカオルが唯一だから。
「全部オーケーだな。今日も勉強お疲れ様、カオル」
「……」
いつもならなんの映画を見ようかとはしゃぎ始めるところだが、今日は違うようだ。自分から勉強をやり始めたということは、早く勉強を終わらせてしたいことでもあるのかと思っていたのだが。
「……ねえ、ケン君」
カオルが朝起きてから、初めて名前を呼ばれた。
「ど、どうした?」
せっかくカオルが名前を呼んで会話をしてくれようとしているのに、驚いてしまって返事がぎこちなくなってしまった。なんとも情けない兄だろうか。
「オレ、今日は勉強がんばったからさ……ご褒美がほしい……」
それが、カオルが自発的に勉強をした理由だったのだろう。
「何か欲しい本でもあるのか?」
カオルぐらいの年頃で欲しいものと言うとゲームか、もしくは部活動に関連するものが多いだろうか。カオルの場合は趣味が映画・ドラマの鑑賞と読書であり、映画とドラマはサブスクライブで基本的に見放題だ。となると欲しい本があると考えるのが自然だろう。
「ううん、その……」
カオルが口籠る。どうやら言いにくいものであるらしい。
もしかしたら、これが原因だったのだろうか。カオルは俺におねだりがしたくて、今朝からずっとそのことを考えていたのだろうか。
もしもそうなのだとしたら。昨日の出来事が俺とカオルの間の亀裂となっていないのだとしたら。自然と笑みが零れた。
「遠慮するなって。まあ、高すぎるものは買ってやれないけど、それでも代替案を考えるとかはできるからさ」
「……っ」
カオルが一つ大きく息を吸った。小さな胸が膨らんで、そしてしぼませながら、カオルは俺に言った。
「昨日のDVD……いっしょに見たい」
お昼を少し過ぎた頃。通販で届いた生活必需品と食料を整理しているとカオルに声をかけられた。
「ん、わかった。それじゃあ昼飯食べながら復習するか。何食べたい?」
「……なんでもいい」
カオルは必要最低限の言葉はかけてくれるものの、まだ態度が冷たい。昨日のショックが抜けきっていないのか、それとも心の内に隠しているだけで俺に怒っているのか。
「んー。じゃあオムライスにするか」
俺の得意料理は中華だが、カオルが好きなのは洋食だ。カオルは甘党なためオムライスも甘味をたっぷりにした物を好んでいる。朝食のフレンチトーストと色々被ってしまって栄養管理的には問題だろうが、今日くらいはいいだろう。
「……」
相変わらずカオルはどこか遠くを見るように物思いに耽っていた。一体何を考え、何を思っているのか。その思考に、俺が関与する余地はあるのだろうか。
出来栄えの悪いオムライス。その形を崩してカオルの口に入れ込みながら、俺はカオルの今日の勉強の成果を確認する。
カオルは足の指で文字を書くことにまだ慣れておらず、一日で書ける文字数はあまり多くない。したがって一日でこなせる勉強量もあまり多くなく、そこを復習で補っている。
「カオル、ここの数式ってさ」
「んーと……」
俺は勉強はあまり得意ではないが、内容が中学一年のため問題なくカオルの勉強に付き合えている。カオルが勉強した内容について確認し、カオルに改めて考えなおしてもらう。この方法が復習として適しているのかはわからないが、カオルの地頭の良さも合ってか偶に行うテストの成績はいい。
「ここの英文の和訳ってさ、どんな順序で訳したか説明できるか?」
「えっと、まず主語がここの塊で、動詞がこれでしょ」
事務的な内容で味気ないものの、カオルとこうして会話が行えると俺の気分も安らぐ。楽し気な雰囲気ではなくとも。今のカオルにとっては俺が唯一の会話相手であるように、俺にとってもカオルが唯一だから。
「全部オーケーだな。今日も勉強お疲れ様、カオル」
「……」
いつもならなんの映画を見ようかとはしゃぎ始めるところだが、今日は違うようだ。自分から勉強をやり始めたということは、早く勉強を終わらせてしたいことでもあるのかと思っていたのだが。
「……ねえ、ケン君」
カオルが朝起きてから、初めて名前を呼ばれた。
「ど、どうした?」
せっかくカオルが名前を呼んで会話をしてくれようとしているのに、驚いてしまって返事がぎこちなくなってしまった。なんとも情けない兄だろうか。
「オレ、今日は勉強がんばったからさ……ご褒美がほしい……」
それが、カオルが自発的に勉強をした理由だったのだろう。
「何か欲しい本でもあるのか?」
カオルぐらいの年頃で欲しいものと言うとゲームか、もしくは部活動に関連するものが多いだろうか。カオルの場合は趣味が映画・ドラマの鑑賞と読書であり、映画とドラマはサブスクライブで基本的に見放題だ。となると欲しい本があると考えるのが自然だろう。
「ううん、その……」
カオルが口籠る。どうやら言いにくいものであるらしい。
もしかしたら、これが原因だったのだろうか。カオルは俺におねだりがしたくて、今朝からずっとそのことを考えていたのだろうか。
もしもそうなのだとしたら。昨日の出来事が俺とカオルの間の亀裂となっていないのだとしたら。自然と笑みが零れた。
「遠慮するなって。まあ、高すぎるものは買ってやれないけど、それでも代替案を考えるとかはできるからさ」
「……っ」
カオルが一つ大きく息を吸った。小さな胸が膨らんで、そしてしぼませながら、カオルは俺に言った。
「昨日のDVD……いっしょに見たい」
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