35 / 114
第四夜
義弟は今を想う
しおりを挟む
「それじゃあいってくる」
「……いってらっしゃい」
ケン君が玄関の扉を開けて出ていく。手を振って見送ることも、袖を掴んで引き留めることもできないから。ただ徐々に閉まる扉の隙間を見つめ続けた。
バタンと扉が閉まって、続けざまにカチャリと鍵がかけられる。これでしばらくはケン君とは離れ離れだ。
ペタペタと廊下に響く足の音。こんな音、今まで意識することもなかったのに。四人で住むために引っ越した家は二人でも広すぎるのに、一人だと寂しくて不安になってしまう。
このままケン君が戻ってこないかもだなんて、そんな想像までしてしまうほどに。
「……」
リビングに用意された教科書、筆記用具、タオル。ケン君がいない間に勉強を終わらせて、帰ってきたら内容を見てもらって、それが終わったらふたりで……。
「はぁ……」
教科書を広げても内容が頭に入ってこない。文字を読もうとしても目が滑ってしまって、いつまで経ってもページが進まない。
ケン君が帰ってきた時に勉強を終わらせておくのが一番いい。そしたら、ふたりの時間もたくさん作れる。それはわかっているのに、一向にやる気が出てくれない。
「……ばか」
なんとなく、悪態をついてみた。別にケン君が悪くないのはわかっている。それでも、口に出してみると少しだけ心が軽くなった気がした。
「昨日の今日でひとりにするなんて……」
昨日、それはケン君を初めて気持ちよくしてあげられた日。
昨日、それはケン君が初めて口で気持ちよくしてくれた日。
昨日、それは初めていっしょのベッドで寝た日。
「……えへへっ」
昨日のことを思い返すだけで笑みが漏れてしまう。口角が勝手に持ち上がって、声が抑えられない。
ケン君はオレを拒まないで、口で最後までさせてくれた。
ケン君は少し躊躇してたけど、オレの性器を舐めて精液を口で受け止めてくれた。
ケン君はオレがベッドに潜り込んでも怒らないで、受け入れてくれた。
「ケン君……」
こんな気持ちで勉強なんてできやしない。頭はケン君が帰ってきてからのことばかりを考えてしまって、体はいつの間にかケン君の部屋に向かっていった。
「んっ……」
ばふっと、勢いよくケン君のベッドに倒れ込む。ふたりでいっしょに寝て、いっしょに起きたベッド。キラキラと光りながら舞うホコリも、今はなんだか好ましく思える。
「んーっ……」
枕に顔を押し付ける。ケン君の匂い。いつも甘えさせてくれる時とは少し違う、染みついた匂い。フェロモンとは、こういう匂いのことを言うのかもしれない。
「んっ……んぅっ……」
布団に体を擦りつける。少しでも自分の匂いを移したくて。ケン君が寝る時に、少しでも存在を感じて欲しくて。
「んっ……♡」
浮かれているからだろうか。ただベッドに体を擦っているだけで気持ちがいい。窓から差し込む陽が暖かくて、ケン君の匂いに包まれていて、柔らかな布団が体を受け止めてくれて。
「あっ……♡ はぅっ……♡」
興奮してきた男性器。それをケン君の布団に擦りつけると気持ちがいい。いけないことをしているようで、心の奥がゾクゾクする。
「……枕に匂いが着いちゃったら、ケン君どんな反応するかな♡」
さすがに怒るだろうか。それとも……。
「えへへっ……♡」
枕を股に挟みこんで、顔を布団に埋める。
ただ気持ちよく感じるままに、耽っていく。
「……いってらっしゃい」
ケン君が玄関の扉を開けて出ていく。手を振って見送ることも、袖を掴んで引き留めることもできないから。ただ徐々に閉まる扉の隙間を見つめ続けた。
バタンと扉が閉まって、続けざまにカチャリと鍵がかけられる。これでしばらくはケン君とは離れ離れだ。
ペタペタと廊下に響く足の音。こんな音、今まで意識することもなかったのに。四人で住むために引っ越した家は二人でも広すぎるのに、一人だと寂しくて不安になってしまう。
このままケン君が戻ってこないかもだなんて、そんな想像までしてしまうほどに。
「……」
リビングに用意された教科書、筆記用具、タオル。ケン君がいない間に勉強を終わらせて、帰ってきたら内容を見てもらって、それが終わったらふたりで……。
「はぁ……」
教科書を広げても内容が頭に入ってこない。文字を読もうとしても目が滑ってしまって、いつまで経ってもページが進まない。
ケン君が帰ってきた時に勉強を終わらせておくのが一番いい。そしたら、ふたりの時間もたくさん作れる。それはわかっているのに、一向にやる気が出てくれない。
「……ばか」
なんとなく、悪態をついてみた。別にケン君が悪くないのはわかっている。それでも、口に出してみると少しだけ心が軽くなった気がした。
「昨日の今日でひとりにするなんて……」
昨日、それはケン君を初めて気持ちよくしてあげられた日。
昨日、それはケン君が初めて口で気持ちよくしてくれた日。
昨日、それは初めていっしょのベッドで寝た日。
「……えへへっ」
昨日のことを思い返すだけで笑みが漏れてしまう。口角が勝手に持ち上がって、声が抑えられない。
ケン君はオレを拒まないで、口で最後までさせてくれた。
ケン君は少し躊躇してたけど、オレの性器を舐めて精液を口で受け止めてくれた。
ケン君はオレがベッドに潜り込んでも怒らないで、受け入れてくれた。
「ケン君……」
こんな気持ちで勉強なんてできやしない。頭はケン君が帰ってきてからのことばかりを考えてしまって、体はいつの間にかケン君の部屋に向かっていった。
「んっ……」
ばふっと、勢いよくケン君のベッドに倒れ込む。ふたりでいっしょに寝て、いっしょに起きたベッド。キラキラと光りながら舞うホコリも、今はなんだか好ましく思える。
「んーっ……」
枕に顔を押し付ける。ケン君の匂い。いつも甘えさせてくれる時とは少し違う、染みついた匂い。フェロモンとは、こういう匂いのことを言うのかもしれない。
「んっ……んぅっ……」
布団に体を擦りつける。少しでも自分の匂いを移したくて。ケン君が寝る時に、少しでも存在を感じて欲しくて。
「んっ……♡」
浮かれているからだろうか。ただベッドに体を擦っているだけで気持ちがいい。窓から差し込む陽が暖かくて、ケン君の匂いに包まれていて、柔らかな布団が体を受け止めてくれて。
「あっ……♡ はぅっ……♡」
興奮してきた男性器。それをケン君の布団に擦りつけると気持ちがいい。いけないことをしているようで、心の奥がゾクゾクする。
「……枕に匂いが着いちゃったら、ケン君どんな反応するかな♡」
さすがに怒るだろうか。それとも……。
「えへへっ……♡」
枕を股に挟みこんで、顔を布団に埋める。
ただ気持ちよく感じるままに、耽っていく。
1
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【短編集】こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる