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第六夜
妹は触れる
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「あっ、ち、ちち、ちがくてっ、い、今のは、えとっ……!」
「あ、あははっ、そ、そうですよね。オレも、人に拭いてもらうのはさすがに申し訳ないので、大丈夫です」
「あっ、そ、そうだよね……」
気まずい。恥ずかしくてカオル君の顔を見ることもできない。
変な人だと思われただろうか。せめてお節介な人だと思われていて欲しい。変態だと断定されるような失言ではなかったと思いたい。
『……』
カオル君は何も言わない。私は何も言えない。
ゴシゴシと、タオルと皮膚が擦れる音がけが部屋の中に響く。
視線を上げることもできずにカオル君の足を凝視していると、肌色の足に白い糸の塊が付着していることに気づいた。その色からして、タオルからほつれた物が足に付着してしまったのだろう。
「これくらいでいいかな……それじゃあ勉強を――」
「あっ!」
カオル君は足に付いている糸くずに気付いていないようで、思わず声を上げてしまった。
「どうかしましたか?」
「え、えっと……ここ、まだゴミがついているよ?」
「え?」
カオル君が腰をくねらせながら視点をくるくると回す。しかしちょうど見えづらい位置にあるようで、一向に見つけられていない。
「ど、どこですか?」
「じゃ、じゃあ、取ってあげるね?」
「あっ、まって!」
「へきゅっ!」
足に近づいて糸くずを取ろうとしたところで、硬い物がおデコにぶつかってきた。涙越しの視界から判断するに、カオル君の膝と衝突してしまったらしい。
「だ、大丈夫ですか⁉︎」
「う、うん……ちょっと驚いただけだから……」
意図的に膝蹴りをしようとしたわけではなく、たまたま動きが噛み合ってしまっただけなのだろう。痛みはそれほどではなかった。
「ごめんなさい。その、咄嗟に身をよじっちゃって……」
「う、ううん、気にしないで。私が急に近づいちゃったのも悪いから……。それじゃあ、今からゴミを取るために足に近づくね?」
「だ、大丈夫ですよ……小さいゴミだったら着いたままでも支障はないですから」
「遠慮しないで。すぐ取るだけだから時間はかからないし」
「で、でも……は、恥ずかしいので……」
その仕草は乙女よりも乙女らしい。恋する少女よりもいじらしい。
私の理性を蕩けさせるのに十分すぎるものだった。
「いいから、遠慮しないで?」
「あっ!」
強引にカオル君の近くに潜り込む。一瞬だけピクッと足が動いたが、先ほどの衝突があったせいだろう。ほんの少し揺れただけですぐに停止した。
「それじゃあ、触るね?」
「……は、はい」
小さくて、骨が少し浮き出ている足に指を這わせる。骨で作られた凹凸の隙間に張り付いた糸くずを指でそっと撫でるが、ピクリとも動かない。
湿ってくっついてしまっているようだ。これでは撫でるだけでは取れない。
仕方なく、私はその肌に爪で立てた。
「っ……」
優しく、万が一にもこの綺麗な肌に傷なんて作らないように、サリサリと溝を爪で往復する。私が指を動かす度に、カオル君がピクピクと痙攣している。
ああ、取れない。非常に都合の悪いことに、糸くずが中々取れてくれない。カオル君がくすぐったさで身を震わせて辛そうなのに、一向に糸くずが取れない。
「ごめんね、もうちょっと我慢してね?」
「は、はい……っ」
いくら優しい手つきでも、何度も擦ってるうちに肌は赤みを帯びてきてしまう。申し訳なさを感じるとともに、少しだけ胸が熱くなるのはどうしてなんだろうか。
「取れた! ほら!」
「あ、ありがとうございます……」
カオル君に糸くずを見せびらかす。これは本当に糸くずがくっついていたことの証明だ。カオル君は恥ずかしそうにしているが、嘘つきだと思われないためにもしっかりと見せつけなきゃいけない。
羞恥に染まるカオル君を見ていると増々心が火照っていって、気分が高揚していくのが自分でもわかった。
「……もしかしたら、まだ着いてるかもしれないから……私がもう一回足を拭いてあげるね?」
「えっ、で、でも、もうっ……」
ここで引いたら、こんな機会はもう二度とこないかもしれない。
普段の引っ込み思案な自分なんて心の隅に追いやって、仕舞い込んで。
私はカオル君に自身の膝を差し出した。
「ほら、足をここに乗せて?」
「あ、あははっ、そ、そうですよね。オレも、人に拭いてもらうのはさすがに申し訳ないので、大丈夫です」
「あっ、そ、そうだよね……」
気まずい。恥ずかしくてカオル君の顔を見ることもできない。
変な人だと思われただろうか。せめてお節介な人だと思われていて欲しい。変態だと断定されるような失言ではなかったと思いたい。
『……』
カオル君は何も言わない。私は何も言えない。
ゴシゴシと、タオルと皮膚が擦れる音がけが部屋の中に響く。
視線を上げることもできずにカオル君の足を凝視していると、肌色の足に白い糸の塊が付着していることに気づいた。その色からして、タオルからほつれた物が足に付着してしまったのだろう。
「これくらいでいいかな……それじゃあ勉強を――」
「あっ!」
カオル君は足に付いている糸くずに気付いていないようで、思わず声を上げてしまった。
「どうかしましたか?」
「え、えっと……ここ、まだゴミがついているよ?」
「え?」
カオル君が腰をくねらせながら視点をくるくると回す。しかしちょうど見えづらい位置にあるようで、一向に見つけられていない。
「ど、どこですか?」
「じゃ、じゃあ、取ってあげるね?」
「あっ、まって!」
「へきゅっ!」
足に近づいて糸くずを取ろうとしたところで、硬い物がおデコにぶつかってきた。涙越しの視界から判断するに、カオル君の膝と衝突してしまったらしい。
「だ、大丈夫ですか⁉︎」
「う、うん……ちょっと驚いただけだから……」
意図的に膝蹴りをしようとしたわけではなく、たまたま動きが噛み合ってしまっただけなのだろう。痛みはそれほどではなかった。
「ごめんなさい。その、咄嗟に身をよじっちゃって……」
「う、ううん、気にしないで。私が急に近づいちゃったのも悪いから……。それじゃあ、今からゴミを取るために足に近づくね?」
「だ、大丈夫ですよ……小さいゴミだったら着いたままでも支障はないですから」
「遠慮しないで。すぐ取るだけだから時間はかからないし」
「で、でも……は、恥ずかしいので……」
その仕草は乙女よりも乙女らしい。恋する少女よりもいじらしい。
私の理性を蕩けさせるのに十分すぎるものだった。
「いいから、遠慮しないで?」
「あっ!」
強引にカオル君の近くに潜り込む。一瞬だけピクッと足が動いたが、先ほどの衝突があったせいだろう。ほんの少し揺れただけですぐに停止した。
「それじゃあ、触るね?」
「……は、はい」
小さくて、骨が少し浮き出ている足に指を這わせる。骨で作られた凹凸の隙間に張り付いた糸くずを指でそっと撫でるが、ピクリとも動かない。
湿ってくっついてしまっているようだ。これでは撫でるだけでは取れない。
仕方なく、私はその肌に爪で立てた。
「っ……」
優しく、万が一にもこの綺麗な肌に傷なんて作らないように、サリサリと溝を爪で往復する。私が指を動かす度に、カオル君がピクピクと痙攣している。
ああ、取れない。非常に都合の悪いことに、糸くずが中々取れてくれない。カオル君がくすぐったさで身を震わせて辛そうなのに、一向に糸くずが取れない。
「ごめんね、もうちょっと我慢してね?」
「は、はい……っ」
いくら優しい手つきでも、何度も擦ってるうちに肌は赤みを帯びてきてしまう。申し訳なさを感じるとともに、少しだけ胸が熱くなるのはどうしてなんだろうか。
「取れた! ほら!」
「あ、ありがとうございます……」
カオル君に糸くずを見せびらかす。これは本当に糸くずがくっついていたことの証明だ。カオル君は恥ずかしそうにしているが、嘘つきだと思われないためにもしっかりと見せつけなきゃいけない。
羞恥に染まるカオル君を見ていると増々心が火照っていって、気分が高揚していくのが自分でもわかった。
「……もしかしたら、まだ着いてるかもしれないから……私がもう一回足を拭いてあげるね?」
「えっ、で、でも、もうっ……」
ここで引いたら、こんな機会はもう二度とこないかもしれない。
普段の引っ込み思案な自分なんて心の隅に追いやって、仕舞い込んで。
私はカオル君に自身の膝を差し出した。
「ほら、足をここに乗せて?」
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