したかったのは異世界転生であって転移じゃない2

詩森さよ(さよ吉)

文字の大きさ
1 / 5

第1話 エイモスを誘って

しおりを挟む

やっぱりキラにちゃんと恋愛させてあげたいと思ったので、続き書かせていただきました。

全5話で19時から1時間ごとにアップします。


全然前の話を説明していないので、お読みでない方はまずは1から読んでみてください。
よろしくお願いいたします。

『したかったのは異世界転生であって転移じゃない1』

https://www.alphapolis.co.jp/novel/253929510/377628139

--------------------------------------------------------------------------------------

 それからの私はちょくちょくエイモスと食事を取るようになった。
 彼と付き合うというより、誰かと一緒にいるということに慣れるためだった。

 魔族のエイモスは圧倒的な力を持っているので、特定の仲間を作っていなかった。
 私もどうしても危ないときは聖焔せいえんを使わなくてはならないので、基本的にソロになる。

 そうなると仲間を持っている冒険者を食事に誘いにくいので、必然的に彼を誘うようになってしまったのだ。


 それで面倒なのが、エイモスに好意を持つ女たちだった。
「ちょっとアンタ、抜け駆けするんじゃないよ!
 エイモスはみんなのものなんだから‼」

 ああ、こういう人たち向こうにもいたな。
 クラスのカッコいい子にちょっと話しかけられたら、突っかかってくるヤツ。


「森沢って、ハーフモデルの○○に似てるよな」
「そう? 初めていわれた」
「目がクリっとして大きいところとか、髪とか肌の色とかも似てる」
「ふーん、私もハーフだからかな」
「あっ、やっぱそうなんだ。手足の長さとかちげーもんな」

 この程度の話だ。
 私はそいつが人の事よく見てるなと思っただけだった。


 でも彼のことが好きな女の子のグループは違った。

「ちょっと森沢! アンタ勝手に遠山君と喋んないでよね」

「向こうから話しかけられたから、返事しただけなんだけど。
 彼氏だった?」

「違うけど、そんなの言わなくてもわかるでしょ!」

 そのグループともほとんど喋ったことがなかったし、言われるまで彼女たちが遠山君を好きなことに気が付かなかった。


「無視はできないから話しかけられたら返事するけど、こっちからは喋りかけない」

「無視しなさいよ。できるでしょ」
 そう言って肩を揺さぶられた。

「ちょっとまずいよ。
 森沢、先生たちに目をつけられてるんだから」
 別の子が突っかかってくる子を止めてくれる。


 どうやら私は不良でもないのに目立つ生徒だったらしい。
 問題児ってヤツ?

 明らかに外人顔のハーフで、茶髪にかなりのベリーショート。
 親と一緒に住んでなくて、金持ちでもない。
 異世界転生のために頑張ったから勉強も割とできたし、校則違反もなし。
 制服を着崩すこともないけど友達もなく、いつも図書室に一人でいる。
 お昼だって、ボッチ飯だ。


「とにかく遠山君はみんなのものなんだから。近寄らないで!」

 その論法だと遠山君は私のものでもあるんだが、別に欲しい訳じゃなかったのでその子たちの言う通りにしておいた。

 ちなみにその遠山君は一つ上の先輩と付き合い始めて、彼女たちは全員失恋したのだった。


 でもそんな甘ったるい対応は、平和な向こうの世界だったからだ。
 こちらは弱肉強食。
 その程度の脅しに屈すると思われたら、いろんなやつに目をつけられる。
 ましてや私はソロ冒険者なのだ。

「みんなのものなんだから、私が喋ってもいいでしょ。
 あんたも話しかければいいじゃない」

 そうはいったもののエイモスは美しすぎる魔族で、気軽に喋りかけやすいタイプではない。
 彼女たちではあいさつ程度しかできないだろう。


「何、生意気言ってんだよ! このクソガキが‼」

 相手が私の襟元を先に掴んだので、そいつの手首を身体強化で力を込めて握った。

「あんたたち一応同じ私とCランクだけど、ソロだとDでしょ?
 私はソロでCなんだよね。
 そっちこそ、人を見くびるのもいい加減にして」

 そう突き放すとすごすごと去っていった。


 冒険者は年齢ではない。
 強さが重要だ。
 経験がモノを言うこともあるけど、パーティーでCランクなら大して差がない。
 たぶん私のほうが、魔法を入れなくても実力は上だ。
 生活かかってるからね。


 人数が多いことは大いにメリットがある。 
 パーティーだと安全で実入りのいい仕事がしやすい。

 例えば護衛だ。
 護衛は強いことも重要だけど、たくさんいるってだけで結構威嚇になる。
 だからソロ冒険者には余程の能力がないと依頼がない。

 私は後ろ盾になってくれたカントしかやったことがない。
 しかもホントの護衛は別にいて、Cランク昇格のための依頼だった。

 実際は飯炊きとか、雑用とかやらされた。
「キラ、お前帳簿つけられるから店員できるぞ。
 怪我でもしたら店に来い」

 冒険者を辞めるほどの怪我したくないけどね。
 でも内政のために簿記1級まで勉強してたんだ。
 同時にファイナンシャルプランナーも勉強した。
 試験のお金がなかったから、資格は取ってないけど。


 みんなで住めば広い部屋の家賃だって安い。

 私は1人暮らしだから、狭くて割高だ。
 でも内政のためにフライパンや鍋でも、どんな料理やお菓子でもをいろいろ作れるように頑張った。

 だからこっちでも結構食生活は充実してる。
 天然酵母パンもお手の物だ。
 こうじさえ何とかなれば、味噌もしょうゆも作れる。

 料理の腕のおかげで、たまに攻略の人手が足りない時に呼んでもらえることもあり、仕事の幅を増やしている。


 複数人いたら、役割分担や連携を取って戦うことができる。

 これは……悪いけど聖女チートで乗り超えている。
 ラノベで魔法はイメージ力だって書いてあったけど、本当にそうだった。
 すぐは無理だったけど、時間停止の無限収納も、各種攻撃魔法も、生活魔法もできるようになった。

 ただどんなにイメージしても、治癒魔法と防御魔法はできない。
 でも内政のために応急手当やマッサージ、テーピングなんかも勉強したんだよね。
 高校まで行けたら、奨学金取って医大に行きたかったな。
 祖母が死ななかったら、まだ可能性あったけど。


 防御の方は敵と距離を取ることで、何とかしている。
 武道の本も読んだけど、こればっかりはちゃんと教わらないとダメだった。
 こっちで習って才能なしって言われてる。

 でも物理しか効かないやつのために、短剣と杖の代わりのメイスを持っている。
 ちなみに動かすときは魔法で動かしている。
 その方が早くて強い。
 最悪、聖焔使えば何とかなるからね。


 人が多いとポーションや薬代も節約できる。
 古くなる前に、仲間内で使いまわせるのがいい。

 私は治癒魔法が使えないし、1人だから多めに持ってないといけない。
 異世界転生したら薬師やるんだと思って、化学の実験の時ものすごく真剣にやって器具の扱いに慣れるようにした。

 だからこっちに来てお金がたまったとき、薬師に初級ポーションの作り方習った。
 その後は冒険者ギルドの図書コーナーの本を片っ端から読んで、上級ポーションまで作れるようになった。
 でも最近はあんまり怪我しないから、無限収納の肥やしだ。
 

 魔力ポーションも作れるけど、聖女チートで結構魔力量が多い。
 魔王をたおすための魔力だ。
 この辺の魔獣討伐やダンジョン攻略ぐらいじゃなくならない。
 でも持ってないとおかしいから、これも無限収納の中にずっと入れている。

 だけどせっかくの薬師の技術を使いたいから、時々作ってギルドに卸して小金を稼いでいる。
 

 でもさすがにソロだと攻略が頭打ちになってきた。
 パーティー、いいなぁ。
 あの女たちのこと、優しくしておくべきだったかな?

 それを悩んでいる時に、エイモスが話しかけてきた。


「なんか俺のせいで絡まれたそうだね?」

「あんなの、虫にさされた方がダメージあるよ」

「お詫びに飯でもいく?」


 それでダメ元で言ってみた。

「ご飯は私がご馳走するから、一度攻略に付き合ってくれないかな?
 格上のところに行きたいんだ」

「おっと、思ったより高くつくな。
 でもまぁ1度くらいならいいか」

「やったね!」

「で、どこにいきたいわけ?」

「ガーリン鉱山」

「なるほど、ロックゴーレムか。
 腕力が不可欠だね」

「そう、だから一人じゃ不安でね」

「かしこまりました。聖女様」

「全く聖女って柄じゃないんだけど」


 そんなきわどいセリフ使わないで欲しいな。
 とはいえ、それを真に受けるヤツなんていない。

 隣国に現れた聖女様は、いまや冒険者たちの憧れのお姫様だ。

 エイモスがふざけて言ったように聞こえただろう。

-----------------------------------------------------------------------------------

キラはベリーショートでも、化粧っ気がなくても、色気のない格好でも人目を惹くハンサム美少女です(この話の頃は髪は長くなっています)。

それでおばあちゃんは抑圧しているし、クラスのイケメンは声をかけて来て、女子たちは嫉妬してきます。

本人は男の子みたいだと思って、その自覚はありません。
だからどんな美形が来ても、ちゃんとした女として見られていないと思って緊張しません。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界召喚されたアラサー聖女、王弟の愛人になるそうです

籠の中のうさぎ
恋愛
 日々の生活に疲れたOL如月茉莉は、帰宅ラッシュの時間から大幅にずれた電車の中でつぶやいた。 「はー、何もかも投げだしたぁい……」  直後電車の座席部分が光輝き、気づけば見知らぬ異世界に聖女として召喚されていた。  十六歳の王子と結婚?未成年淫行罪というものがありまして。  王様の側妃?三十年間一夫一妻の国で生きてきたので、それもちょっと……。  聖女の後ろ盾となる大義名分が欲しい王家と、王家の一員になるのは荷が勝ちすぎるので遠慮したい茉莉。  そんな中、王弟陛下が名案と言わんばかりに声をあげた。 「では、私の愛人はいかがでしょう」

聖女の力に目覚めた私の、八年越しのただいま

藤 ゆみ子
恋愛
ある日、聖女の力に目覚めたローズは、勇者パーティーの一員として魔王討伐に行くことが決まる。 婚約者のエリオットからお守りにとペンダントを貰い、待っているからと言われるが、出発の前日に婚約を破棄するという書簡が届く。 エリオットへの想いに蓋をして魔王討伐へ行くが、ペンダントには秘密があった。

私が偽聖女ですって? そもそも聖女なんて名乗ってないわよ!

Mag_Mel
恋愛
「聖女」として国を支えてきたミレイユは、突如現れた"真の聖女"にその座を奪われ、「偽聖女」として王子との婚約破棄を言い渡される。だが当の本人は――「やっとお役御免!」とばかりに、清々しい笑顔を浮かべていた。 なにせ彼女は、異世界からやってきた強大な魔力を持つ『魔女』にすぎないのだから。自ら聖女を名乗った覚えなど、一度たりともない。 そんな彼女に振り回されながらも、ひたむきに寄り添い続けた一人の少年。投獄されたミレイユと共に、ふたりが見届けた国の末路とは――? *小説家になろうにも投稿しています

番(つがい)と言われても愛せない

黒姫
恋愛
竜人族のつがい召喚で異世界に転移させられた2人の少女達の運命は?

聖女じゃなかったので、カフェで働きます

風音悠鈴
恋愛
光魔法が使えず「聖女失格」と追放された大学生・藍里。 聖女じゃないと城を追い出されたけど、実は闇属性+女神の加護持ちのチートだった⁉︎ 望みはカフェでのスローライフだけ。 乙女ゲーム世界の歪みから大切な日常を守ります! 全30話予定

冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています

放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。 希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。 元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。 ──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。 「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」 かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着? 優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャらら森山
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。 お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

処理中です...