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第一章 世界の果てに咲く花
終わりを待つ日々 14
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「名前が、無い?」
イリーズ達が『黒い剣』と言う武器のある洞窟へ案内してくれるというので、彼女はついて行っていた。
その道中でイリーズが彼女の事を知りたいと言って来たので、服や食事の恩もあるので答える事にした。
亜人が迫害を受ける街での路上生活、そこで囚えられ収容所に入れられた事。そこでの生活と亜人の一斉蜂起の説明をしていたが、イリーズが食いついてきたのは、彼女に名前が無い事だった。
「ええ。私は生まれた時から親とかいなかったし、生きる上では必要無かったから気にしなかったんですけど、何か問題があるんですか?」
「そうですね。名前、特に本当の名前である真名が無い状態で魔術を使える事が驚きですよ。魔術の中でも精霊の力を借りる時には、名乗って契約する必要がありますから」
イリーズは驚いているが、それは彼女も同じように驚いていた。
精霊魔術は最初から使えないので、そこは気にしない事にしたが、まさか名前にそんな効果があるとは思っていなかった。
「そうなの?」
彼女は前を飛ぶサラーマに尋ねる。
「ああ。魔術ってのはほとんど全てにおいて、何らかの精霊の力を使うからな。自身で魔力を生成する場合ですら、体を巡る生命の精霊の力を借りる事になる。その際に必要なのが、自分を表す最重要の記号となる名前な訳だ。ああ、アレだ。名前が無い奴が精霊の力を借りるってのは、名前も知らない赤の他人に金貸す様なモンなんだよ。ほとんどの場合、借りられないんだが、お前は例外みたいだな」
サラーマが苦笑いしながら言う。
例えは納得出来ないところはあったが、名前というものには大きな意味があるらしい。収容所でも名前を使う事を禁じていたが、どうやら本当に意味があったという事だ。
「よほど魔術に適した資質があるんだと思いますよ?」
ウェンディーも驚いている。
「そうなの? 名前って、そんなに大事なモノだったのね」
「イリーズ様、何か名前を付けてあげてはいかがですか?」
「僕が? 僕なんかよりウェンディーやサラーマの方が適任でしょう?」
「俺はパス。ガラじゃねーよ」
「私もここは遠慮させて下さい。私はイリーズ様が助けようとなさらなければ、この方を見捨てていたのですから」
ウェンディーは本心を吐露しているが、彼女はそれを責めるつもりはない。
元々助ける義理も無ければ、医療費を払えるワケでも、彼女を助ける事で何か得するという事も無い。それでも助けたと言うイリーズが例外の中の例外なのだ。
「僕で良いんですか?」
「正直、ここまでで十分過ぎる恩をいただいてますから、これ以上ってなると本当にどう返していいのか分からないんで。気が向いたらって事で」
彼女は恐縮しながらイリーズに言う。
「気が向いたら、ですか」
イリーズは複雑な笑顔を浮かべる。
「しかし、改めて聞くと、スーパーハードな人生送ってるよな、その歳で。って言うか何歳なんだ?」
「さあ? 正確な誕生日なんか知らないし、何回四季が巡ったかなんて覚えてないもん」
「だよな? 見た感じ、イリーズよりちょっと年下ってところか?」
「僕は十七歳になったところですよ。だから、十四か五というところじゃないでしょうか」
「ま、その辺かな? 今日から十五歳って言えよ」
サラーマが彼女に言う。
名前もそうだが、年齢も生きる上ではさほど必要の無い情報だと思っていた彼女だが、名前にも意味があったように年齢にも意味があるのかもしれない。
「じゃ、今日から十五歳? だいぶ中途半端な感じがするんだけど?」
「大体そんなモンだよ」
サラーマの言葉からは、年齢にはあまり重要な意味は無さそうだった。
イリーズ達が『黒い剣』と言う武器のある洞窟へ案内してくれるというので、彼女はついて行っていた。
その道中でイリーズが彼女の事を知りたいと言って来たので、服や食事の恩もあるので答える事にした。
亜人が迫害を受ける街での路上生活、そこで囚えられ収容所に入れられた事。そこでの生活と亜人の一斉蜂起の説明をしていたが、イリーズが食いついてきたのは、彼女に名前が無い事だった。
「ええ。私は生まれた時から親とかいなかったし、生きる上では必要無かったから気にしなかったんですけど、何か問題があるんですか?」
「そうですね。名前、特に本当の名前である真名が無い状態で魔術を使える事が驚きですよ。魔術の中でも精霊の力を借りる時には、名乗って契約する必要がありますから」
イリーズは驚いているが、それは彼女も同じように驚いていた。
精霊魔術は最初から使えないので、そこは気にしない事にしたが、まさか名前にそんな効果があるとは思っていなかった。
「そうなの?」
彼女は前を飛ぶサラーマに尋ねる。
「ああ。魔術ってのはほとんど全てにおいて、何らかの精霊の力を使うからな。自身で魔力を生成する場合ですら、体を巡る生命の精霊の力を借りる事になる。その際に必要なのが、自分を表す最重要の記号となる名前な訳だ。ああ、アレだ。名前が無い奴が精霊の力を借りるってのは、名前も知らない赤の他人に金貸す様なモンなんだよ。ほとんどの場合、借りられないんだが、お前は例外みたいだな」
サラーマが苦笑いしながら言う。
例えは納得出来ないところはあったが、名前というものには大きな意味があるらしい。収容所でも名前を使う事を禁じていたが、どうやら本当に意味があったという事だ。
「よほど魔術に適した資質があるんだと思いますよ?」
ウェンディーも驚いている。
「そうなの? 名前って、そんなに大事なモノだったのね」
「イリーズ様、何か名前を付けてあげてはいかがですか?」
「僕が? 僕なんかよりウェンディーやサラーマの方が適任でしょう?」
「俺はパス。ガラじゃねーよ」
「私もここは遠慮させて下さい。私はイリーズ様が助けようとなさらなければ、この方を見捨てていたのですから」
ウェンディーは本心を吐露しているが、彼女はそれを責めるつもりはない。
元々助ける義理も無ければ、医療費を払えるワケでも、彼女を助ける事で何か得するという事も無い。それでも助けたと言うイリーズが例外の中の例外なのだ。
「僕で良いんですか?」
「正直、ここまでで十分過ぎる恩をいただいてますから、これ以上ってなると本当にどう返していいのか分からないんで。気が向いたらって事で」
彼女は恐縮しながらイリーズに言う。
「気が向いたら、ですか」
イリーズは複雑な笑顔を浮かべる。
「しかし、改めて聞くと、スーパーハードな人生送ってるよな、その歳で。って言うか何歳なんだ?」
「さあ? 正確な誕生日なんか知らないし、何回四季が巡ったかなんて覚えてないもん」
「だよな? 見た感じ、イリーズよりちょっと年下ってところか?」
「僕は十七歳になったところですよ。だから、十四か五というところじゃないでしょうか」
「ま、その辺かな? 今日から十五歳って言えよ」
サラーマが彼女に言う。
名前もそうだが、年齢も生きる上ではさほど必要の無い情報だと思っていた彼女だが、名前にも意味があったように年齢にも意味があるのかもしれない。
「じゃ、今日から十五歳? だいぶ中途半端な感じがするんだけど?」
「大体そんなモンだよ」
サラーマの言葉からは、年齢にはあまり重要な意味は無さそうだった。
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