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第2話 黒い幸せ
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「「んあ!?」」
街の方から激しい音が響いてきた。
「あそこから聞こえてきたぞ。」
謎のイケメンは街のど真ん中に建つ大きな塔を指差した。
「あそこか、一体なんなんだ。」
「あれはこの島のエネルギー源なのじゃ。あの塔が倒れてもうたら、電気は消え、暗闇に飲み込まれてしまうのじゃ。」
謎のおじさんは汗垂らして焦っていた。
「なんか分からんけど、犯人をぶっ飛ばせばいいんだな?」
「なに言ってんだお前、そもそも叶う的じゃないかもしれないぞ。」
「それはそれでゲームっぽいだろ? ニッヒヒ。」
「電気が消えれば、夜は地獄になるじゃろう。ゴブリンに支配されてしもうのう。」
興奮のあまりか、いつのまにかリューマは服を脱いでズボンだけになっていた。
「って、お前! 服どうした!?」
「ダァアアア!? いつのまに!?」
「まぁ、いいさ。お前、ここで肉食ってろ。」
「ん? どゆことだ?」
「俺が犯人をぶった切るからだよ、ばぁか。」
謎のイケメンは音の響いてきた方向へと走り出した。
「んだとこら! 待て待て待てぃ!」
リューマはすぐさま謎のイケメンと肩を並び、猛スピードで走り争っていた。
「って、老人が話してるんじゃぞ!無視するなぁ! まぁいいや、慣れっこじゃ。」
すると謎のイケメンは90度きっぱり曲がって走り出した。
「おめぇどこ行くんだ? 塔はあっちだぞ?」
「んあ? わかってんよ、うるせぇ。」
そしてまたも90度きっぱり曲がって逆方向へと走り出した。
「そっちは俺らが来たとこだぞ! お前、ひでぇ方向音痴だな。」
こんなことを繰り返し繰り返すこと10分。塔の前まで無事たどり着くことができた。
「ハァ、ハァ、おめぇ、疲れてないのか? 1番走っていたじゃねぇか。」
謎のイケメンは微塵も疲れていないかのようにぽつんと立っていた。
「お前が体力ないだけだろ、ほら、開けるぞ。」
それは塔の中へと導く大きな門。どうやらボタンを押すことで開く仕組みになってるようだ。そしてそこには2つのボタン、青と黒いドクロが描かれた赤いボタン。
「待てよ、俺がいいって、言うまで、絶対に、開けるなよ。」
謎のイケメンはボタンに手を当て、強く押した。
「もう押した。」
「お前許さんぞ…って、それドクロのマークじゃね!? やべぇだろ、おい!」
「先に言えよ。遅い。」
「となりに青いボタンあるだろうがよ!」
「そうなのか。」
すると塔が爆発した。リューマと謎のイケメンは爆発の威力によって遠く飛ばされたのである。
「あぁ、痛ぇ。ヴァ!? 手が!? いや、脚が!? 死ぬ死ぬ死ぬ。」
爆発を間に受けた不幸なリューマ。藁の塊の上で手脚が跡形もなく消えて倒れている。それは無残な姿だった。
「落ち着け、再生する。」
アイラか!? 俺、死ぬのか?
「これくらいなら、超回復で自動的に回復するわよ。」
すると氷でできた紫色の手と脚が再生し、やがて人のものとなった。
「うわぁ、ぐろい。」
「グロいとか言うな、失敬な。」
爆発のせいで感覚が鈍ったのか、リューマは立とうとはするが、生まれたての子鹿のように滑りこけていた。
「しかし困ったね、これじゃ生きたままカラスに喰われるわ。」
怖ぇこと言うなよ。たしかにまだ動けないけどよ。
「そういえばあの男、目が見えないわね。」
えぇ!! そうなの!?
「気づいてなかったの?」
でも、塔の場所がわかっていたぞ? それにあの青い目、俺を見ているようにしか見えなかったぞ。
「目が不自由な人は聴覚が際どく発達するわ。それに恐らくあの男はオールのノラ使いだわ。」
オール? ノラ使い? なんだそれ。
「オールは的確とまではいかないが、周囲のものを瞬時に察知できる能力の1つよ。これをノラというの。そしてこう言ったノラが使える人のことをここではノラ使いと呼ぶわよ。」
ほぉ、以外と詳しいな、アイラ。
「それぐらい知っておいて。」
んじゃ、あのイケメンさんはそのオールのノラをさらに発達させてるってわけか。
「恐らくね。」
そしてリューマは少しずつ立ち上がりはじめていた。
お、慣れてきた。イケメンさんを探すか。
「跡形もなく消えたんじゃないのかな。」
あいつなら生きてるさ。冒険に仲間は必須だろ。俺の仲間がそう簡単にくたばるかよ。
「とりあえずそこら辺の藁の家を訪ねて塔の位置を確認してみれば?
そこは何千、いや、何万もの藁でできた家が立ち並んでいた。
そうだな。って、俺らが上に乗ってるのって、藁だよな。
「そ、そうだね…リューマ? どこに手を当ててるのかしら?」
ん? 柔らかい…弾力があって、少し丸くて!?
「へ、変態ぃい!!」
藁の下から出てきたのは、器用にに結ばれた葉っぱでうまく3箇所を隠している葉っぱ。細くて痩せているその体に色をつけるかのような迫力のある胸の美女。
「ウォア!? オーマイエロの神さま…じゃなくて誰だ、お前?」
「あなたこそなんなんだよ! 人のお家に落ちてきた挙句、一揉みとか許せない!」
どうやらリューマは一揉みしたようだが、彼に後悔してる様子は見られない。
「確かに、藁の家が沢山並んでいるなぁ。今気づいたぁ。」
「人の話をき…キャァ!? 塔がない!?」
なにかを言いたそうな美女だったが、あるべき位置に無かった塔を恐れ、胸を揺らせながら走り去った。
「なんだぁ、あいつ。まぁ、塔があっちだってことがわかった。」
「そうだね、彼女は塔の位置する方向を見ていたはずだからね。」
行くかぁ。
「行くしかないわね。」
一方、謎のイケメンは…
「あぁ、参ったな。」
仰向けになって水面に浮かんでいた。身体は無事のようだが、どうやら爆音が原因で耳をやられたようだ。
「耳鳴りが止まねぇ。」
聴覚は動物にとって必要不可欠なもの。音を聞くことで精神が安定する。また、自分からその音までのおよその距離をはかることもできる。しかし、それよりも重要なの役割を果たしている。それは、バランスである。二足歩行の人間は耳で感覚を覚え、不足で立っていられる。急に聞こえなくなってしまえば、感覚は崩れ、バランスは取れない。
謎のイケメンはとりあえず泳ぎ、陸に上がった。
「くっそ、立つこともできねぇ。」
立ち上がろうとするものの、バランスが取れなくて何度も膝をつく。
「ん? なんだこれは? 爪…ふわふわ…曲がった…角? 羊か!?」
「メェェエエ!」
「いや、待てよ…このヒゲ。ヤ…ヤギィイ!?」
「メェエエ!!」
どうやら謎のイケメンはヤギが苦手のようだ。そう、これはヤギ。
「お前、近づいてみろ! この刀でぶった切るぞ!」
謎のイケメンは刀を抜き、ヤギに刃を向けた。しかし、勇敢なヤギは、刀の先を口に加え、もぐもぐしはじめた。
「お前、まさか、俺の刀を!? 離せゴラァ!」
刀を持ったまま、四足歩行で行くあてもなくただ走り続けた。しかし、ヤギもまたしつこい動物。その跡を休むことなく追いかけた。
そう、これは、四足歩行で走る盲目な剣士と二足歩行で追いかける超ヤギの物語であった。
「そういえば大賢者、ドラゴンにもカップサイズとかあるのか?」
「黙れ。」
街の方から激しい音が響いてきた。
「あそこから聞こえてきたぞ。」
謎のイケメンは街のど真ん中に建つ大きな塔を指差した。
「あそこか、一体なんなんだ。」
「あれはこの島のエネルギー源なのじゃ。あの塔が倒れてもうたら、電気は消え、暗闇に飲み込まれてしまうのじゃ。」
謎のおじさんは汗垂らして焦っていた。
「なんか分からんけど、犯人をぶっ飛ばせばいいんだな?」
「なに言ってんだお前、そもそも叶う的じゃないかもしれないぞ。」
「それはそれでゲームっぽいだろ? ニッヒヒ。」
「電気が消えれば、夜は地獄になるじゃろう。ゴブリンに支配されてしもうのう。」
興奮のあまりか、いつのまにかリューマは服を脱いでズボンだけになっていた。
「って、お前! 服どうした!?」
「ダァアアア!? いつのまに!?」
「まぁ、いいさ。お前、ここで肉食ってろ。」
「ん? どゆことだ?」
「俺が犯人をぶった切るからだよ、ばぁか。」
謎のイケメンは音の響いてきた方向へと走り出した。
「んだとこら! 待て待て待てぃ!」
リューマはすぐさま謎のイケメンと肩を並び、猛スピードで走り争っていた。
「って、老人が話してるんじゃぞ!無視するなぁ! まぁいいや、慣れっこじゃ。」
すると謎のイケメンは90度きっぱり曲がって走り出した。
「おめぇどこ行くんだ? 塔はあっちだぞ?」
「んあ? わかってんよ、うるせぇ。」
そしてまたも90度きっぱり曲がって逆方向へと走り出した。
「そっちは俺らが来たとこだぞ! お前、ひでぇ方向音痴だな。」
こんなことを繰り返し繰り返すこと10分。塔の前まで無事たどり着くことができた。
「ハァ、ハァ、おめぇ、疲れてないのか? 1番走っていたじゃねぇか。」
謎のイケメンは微塵も疲れていないかのようにぽつんと立っていた。
「お前が体力ないだけだろ、ほら、開けるぞ。」
それは塔の中へと導く大きな門。どうやらボタンを押すことで開く仕組みになってるようだ。そしてそこには2つのボタン、青と黒いドクロが描かれた赤いボタン。
「待てよ、俺がいいって、言うまで、絶対に、開けるなよ。」
謎のイケメンはボタンに手を当て、強く押した。
「もう押した。」
「お前許さんぞ…って、それドクロのマークじゃね!? やべぇだろ、おい!」
「先に言えよ。遅い。」
「となりに青いボタンあるだろうがよ!」
「そうなのか。」
すると塔が爆発した。リューマと謎のイケメンは爆発の威力によって遠く飛ばされたのである。
「あぁ、痛ぇ。ヴァ!? 手が!? いや、脚が!? 死ぬ死ぬ死ぬ。」
爆発を間に受けた不幸なリューマ。藁の塊の上で手脚が跡形もなく消えて倒れている。それは無残な姿だった。
「落ち着け、再生する。」
アイラか!? 俺、死ぬのか?
「これくらいなら、超回復で自動的に回復するわよ。」
すると氷でできた紫色の手と脚が再生し、やがて人のものとなった。
「うわぁ、ぐろい。」
「グロいとか言うな、失敬な。」
爆発のせいで感覚が鈍ったのか、リューマは立とうとはするが、生まれたての子鹿のように滑りこけていた。
「しかし困ったね、これじゃ生きたままカラスに喰われるわ。」
怖ぇこと言うなよ。たしかにまだ動けないけどよ。
「そういえばあの男、目が見えないわね。」
えぇ!! そうなの!?
「気づいてなかったの?」
でも、塔の場所がわかっていたぞ? それにあの青い目、俺を見ているようにしか見えなかったぞ。
「目が不自由な人は聴覚が際どく発達するわ。それに恐らくあの男はオールのノラ使いだわ。」
オール? ノラ使い? なんだそれ。
「オールは的確とまではいかないが、周囲のものを瞬時に察知できる能力の1つよ。これをノラというの。そしてこう言ったノラが使える人のことをここではノラ使いと呼ぶわよ。」
ほぉ、以外と詳しいな、アイラ。
「それぐらい知っておいて。」
んじゃ、あのイケメンさんはそのオールのノラをさらに発達させてるってわけか。
「恐らくね。」
そしてリューマは少しずつ立ち上がりはじめていた。
お、慣れてきた。イケメンさんを探すか。
「跡形もなく消えたんじゃないのかな。」
あいつなら生きてるさ。冒険に仲間は必須だろ。俺の仲間がそう簡単にくたばるかよ。
「とりあえずそこら辺の藁の家を訪ねて塔の位置を確認してみれば?
そこは何千、いや、何万もの藁でできた家が立ち並んでいた。
そうだな。って、俺らが上に乗ってるのって、藁だよな。
「そ、そうだね…リューマ? どこに手を当ててるのかしら?」
ん? 柔らかい…弾力があって、少し丸くて!?
「へ、変態ぃい!!」
藁の下から出てきたのは、器用にに結ばれた葉っぱでうまく3箇所を隠している葉っぱ。細くて痩せているその体に色をつけるかのような迫力のある胸の美女。
「ウォア!? オーマイエロの神さま…じゃなくて誰だ、お前?」
「あなたこそなんなんだよ! 人のお家に落ちてきた挙句、一揉みとか許せない!」
どうやらリューマは一揉みしたようだが、彼に後悔してる様子は見られない。
「確かに、藁の家が沢山並んでいるなぁ。今気づいたぁ。」
「人の話をき…キャァ!? 塔がない!?」
なにかを言いたそうな美女だったが、あるべき位置に無かった塔を恐れ、胸を揺らせながら走り去った。
「なんだぁ、あいつ。まぁ、塔があっちだってことがわかった。」
「そうだね、彼女は塔の位置する方向を見ていたはずだからね。」
行くかぁ。
「行くしかないわね。」
一方、謎のイケメンは…
「あぁ、参ったな。」
仰向けになって水面に浮かんでいた。身体は無事のようだが、どうやら爆音が原因で耳をやられたようだ。
「耳鳴りが止まねぇ。」
聴覚は動物にとって必要不可欠なもの。音を聞くことで精神が安定する。また、自分からその音までのおよその距離をはかることもできる。しかし、それよりも重要なの役割を果たしている。それは、バランスである。二足歩行の人間は耳で感覚を覚え、不足で立っていられる。急に聞こえなくなってしまえば、感覚は崩れ、バランスは取れない。
謎のイケメンはとりあえず泳ぎ、陸に上がった。
「くっそ、立つこともできねぇ。」
立ち上がろうとするものの、バランスが取れなくて何度も膝をつく。
「ん? なんだこれは? 爪…ふわふわ…曲がった…角? 羊か!?」
「メェェエエ!」
「いや、待てよ…このヒゲ。ヤ…ヤギィイ!?」
「メェエエ!!」
どうやら謎のイケメンはヤギが苦手のようだ。そう、これはヤギ。
「お前、近づいてみろ! この刀でぶった切るぞ!」
謎のイケメンは刀を抜き、ヤギに刃を向けた。しかし、勇敢なヤギは、刀の先を口に加え、もぐもぐしはじめた。
「お前、まさか、俺の刀を!? 離せゴラァ!」
刀を持ったまま、四足歩行で行くあてもなくただ走り続けた。しかし、ヤギもまたしつこい動物。その跡を休むことなく追いかけた。
そう、これは、四足歩行で走る盲目な剣士と二足歩行で追いかける超ヤギの物語であった。
「そういえば大賢者、ドラゴンにもカップサイズとかあるのか?」
「黙れ。」
応援ありがとうございます!
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