1 / 3
第一章
しおりを挟む
白無垢
これ以上はないまで憧れていた。
薄絹の重ね着をした白い小袖に白帯、やはり白の内掛。
絹紋織りの白で襦袢の赤を際立たせていて。
やはり白地の幸菱の地紋に銀の箔押しと縫箔である。小物入れまであり扇の末広に守り刀、帯び締に抱え帯まである。
頭には文金高島田に結った髪の上に真綿の綿帽子、どれを取っても完璧なまでの美しさがそこにある。その白無垢にだ。
佐古下優香里はこれ以上にないまでにだ、幼い頃から憧れていた。それでいつも祖母や母にこう言っていた。
「私大きくなったら」
「その時はだね」
「優香里ちゃんがお嫁さんになった時は」
「あの白い着物着るの」
こう言っていた。
「絶対に着るから」
「そうだね、結婚する時はね」
「やっぱりあれよね」
祖母も母も言うのだった。
「白無垢だね」
「日本ならね」
「うん、ウェディングドレスよりも」
それこそと言う優香里だった、やはりいつも。
「白無垢がいいから」
「それじゃあね」
「その時は出してあげるわね」
「うちの白無垢」
「あの服を」
「うちにあるのよね」
いつも聞いているがだ、優香里は常にこのことを確認していた。そうせずにはいられなかったからである。
「あの白い着物」
「あるよ、お祖母ちゃんもお母さんもね」
「あの服着て結婚したのよ」
「お祖父ちゃんとね」
「お父さんとね」
こう言うのだった。
「だから優香里ちゃんもね」
「結婚して式をする時は」
「ちゃんとね」
「あれを着るのよ」
「うん、私絶対に着るから」
優香里も目を輝かせて祖母にも母にも答えるのだった。
「用意しておいてね」
「そうだね、虫にやられない様にして」
「いつも奇麗にしておいて」
「優香里ちゃんが結婚した時は」
「その時に着るのよ」
「私絶対に着るから」
強い決意と共の言葉だった、そして。
そのうえでだ、優香里はいつも白無垢に憧れていた。優香里の家はその地域で代々続いている旧家でありかつては庄屋、地主だった。
そして今も多くの土地を持っている、家も大きく資産がある。造り酒屋でもあり今も結構な実入りがある家だ。
優香里はその家の長女で歳の離れた兄がいる、その兄に十二歳の時にこう言われた。
「御前の許嫁が決まった」
「許嫁?」
「そうだ、今度その許嫁に会わせてやる」
こう兄が言って来たのだ。
「わかったな」
「うん、それじゃあ」
こうしてその許嫁に会った、大人しく中性的な顔立ちの男の子だった。話していると和やかな雰囲気になれた。
兄がだ、彼と会った後の優香里に問うてきた。家に帰る途中の車の中で。
「どう思う?」
「あの子のこと?」
「将来御前の旦那様になる人だがな」
「いい子よね」
思ったことをだ、優香里はそのまま言った。
これ以上はないまで憧れていた。
薄絹の重ね着をした白い小袖に白帯、やはり白の内掛。
絹紋織りの白で襦袢の赤を際立たせていて。
やはり白地の幸菱の地紋に銀の箔押しと縫箔である。小物入れまであり扇の末広に守り刀、帯び締に抱え帯まである。
頭には文金高島田に結った髪の上に真綿の綿帽子、どれを取っても完璧なまでの美しさがそこにある。その白無垢にだ。
佐古下優香里はこれ以上にないまでにだ、幼い頃から憧れていた。それでいつも祖母や母にこう言っていた。
「私大きくなったら」
「その時はだね」
「優香里ちゃんがお嫁さんになった時は」
「あの白い着物着るの」
こう言っていた。
「絶対に着るから」
「そうだね、結婚する時はね」
「やっぱりあれよね」
祖母も母も言うのだった。
「白無垢だね」
「日本ならね」
「うん、ウェディングドレスよりも」
それこそと言う優香里だった、やはりいつも。
「白無垢がいいから」
「それじゃあね」
「その時は出してあげるわね」
「うちの白無垢」
「あの服を」
「うちにあるのよね」
いつも聞いているがだ、優香里は常にこのことを確認していた。そうせずにはいられなかったからである。
「あの白い着物」
「あるよ、お祖母ちゃんもお母さんもね」
「あの服着て結婚したのよ」
「お祖父ちゃんとね」
「お父さんとね」
こう言うのだった。
「だから優香里ちゃんもね」
「結婚して式をする時は」
「ちゃんとね」
「あれを着るのよ」
「うん、私絶対に着るから」
優香里も目を輝かせて祖母にも母にも答えるのだった。
「用意しておいてね」
「そうだね、虫にやられない様にして」
「いつも奇麗にしておいて」
「優香里ちゃんが結婚した時は」
「その時に着るのよ」
「私絶対に着るから」
強い決意と共の言葉だった、そして。
そのうえでだ、優香里はいつも白無垢に憧れていた。優香里の家はその地域で代々続いている旧家でありかつては庄屋、地主だった。
そして今も多くの土地を持っている、家も大きく資産がある。造り酒屋でもあり今も結構な実入りがある家だ。
優香里はその家の長女で歳の離れた兄がいる、その兄に十二歳の時にこう言われた。
「御前の許嫁が決まった」
「許嫁?」
「そうだ、今度その許嫁に会わせてやる」
こう兄が言って来たのだ。
「わかったな」
「うん、それじゃあ」
こうしてその許嫁に会った、大人しく中性的な顔立ちの男の子だった。話していると和やかな雰囲気になれた。
兄がだ、彼と会った後の優香里に問うてきた。家に帰る途中の車の中で。
「どう思う?」
「あの子のこと?」
「将来御前の旦那様になる人だがな」
「いい子よね」
思ったことをだ、優香里はそのまま言った。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜
小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。
でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。
就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。
そこには玲央がいる。
それなのに、私は玲央に選ばれない……
そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。
瀬川真冬 25歳
一ノ瀬玲央 25歳
ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。
表紙は簡単表紙メーカーにて作成。
アルファポリス公開日 2024/10/21
作品の無断転載はご遠慮ください。
あの夜、あなたがくれた大切な宝物~御曹司はどうしようもないくらい愛おしく狂おしく愛を囁く~【after story】
けいこ
恋愛
あの夜、あなたがくれた大切な宝物~御曹司はどうしようもないくらい愛おしく狂おしく愛を囁く~
のafter storyです。
よろしくお願い致しますm(_ _)m
あなたへの愛を捨てた日
柴田はつみ
恋愛
公爵夫人エステルは、冷徹な夫レオニスを心から愛していた。彼の好みを調べ、帰宅を待ちわび、献身的に尽くす毎日。
しかし、ある夜会の回廊で、エステルは残酷な真実を知る。
レオニスが、未亡人クラリスの手を取り囁いていたのだ。
「君のような(自立した)女性が、私の隣にいるべきだった」
エステルは悟る。自分の愛は彼にとって「重荷」であり、自分という人間は彼にとって「不足」だったのだと。その瞬間、彼女の中で何かが音を立てて砕け散る。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる