月日荘の妖美人

近衛樹里杏

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ミルカの嫉妬

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僕が月日荘に入居してまもなく、しばらく音信不通だった恋人ミルカが押し掛けてきた。
「古い建物ね」
 僕はミルカの図々しいさに少し嫌気がさしていた。勝手にお茶を淹れたり、家具を動かすのだ。「カーテンは遮光性のレースが良いわね」
 僕はまだカーテンを掛けてなかった。どういうつもりなのか?ミルカはうきうきしていた。
「わたし明日荷物を運ぶから」
 どういうことだ?ミルカはここにすむつもりなのだ。あんなにこのアパートメントを嫌ってたのに。僕は何か神聖な場所を侵されるかのような気分だった。ここはあの人の居る秘密の楽園なのだ。あの人を思えばまるで別世界に居るようなそんな気持ちになる。だから現実的にミルカは受け入れがたいのだ。お願いだ、そっとしておいてくれ。僕は切にそう願っていた。
「いいわね?あたし一緒に暮らすから」
 僕は怒りと焦りと失望で胸がムカムカした。
「どうしてだよ?」
 僕の声は震えていた。それをミルカは見逃さなかった。
「あら?嫌なの?」
「いや、それは…」
「いつか一緒に暮らそうって言ったわね?忘れたの?」
 そんなこと、恋のはじめに燃え上がってるときの戯言だ。誰だってそんなことくらい言うさ。僕はミルカの暴走が理解できない。そんな僕の戸惑いを彼女は嫉妬という形でぶつけてきた。
「ここの女管理人、駄目よ、惑わされちゃ。彼女は変な噂があるって聞いたわ。若い男を虜にして駄目にするって。翔也、まさかあなた?」
「なんてこというんだ!」
「何人も行方不明になってるのよ!」
「それはあの人と関係ないだろ!」
 僕はもう我慢ならなかった。素直で可愛いと思ってたミルカが憎く思えた。
 しかし、結局僕はミルカに押されてしまい、彼女との同棲を承知せざるを得なかったのだ。ミルカは住んでいた女子アパートを解約していたのだ。今思えばどうしてでも止めるべきだったのに。
 翌日彼女は越してきた。管理人の妖子に挨拶したが、あからさまに嫌な顔をされた。
「同棲は困るのんどすえ」
 その時ミルカは妖子をにらんだ。女ふたりの視線が絡みあって火花が散った。ミルカの運命があの時決まったのだ。
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