紺碧のミシマ ~ホームレスだったけど異世界へ行ってロボットになったので俺は自由に生きる~ Vol.3

田中

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第十章 南洋の密林の島に八つ首の大蛇は存在した

立つ鳥跡を濁さず

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 フェンデアの北、ンネグラ族の中央集落に戻った健太郎けんたろう達は集落の人々から感謝の言葉を投げかけられていた。

「あのときは、しゅ、しゅまなかった……ひどら……たおプシて……くれて、たすかた。ありが……とう……シャアアア」

 集落が襲われた時、族長のテダハを非難していた蜥蜴人も、語り部見習いのラデメヒから習った大陸共通語で、酷く聞取り辛かったが膝を突き腕を交差させて感謝を伝えてくれた。

「集落がこんな事になっちまって、手放しじゃ喜べないだろうけど……ともかく役に立てたようで良かったよ」
「シャアアア、プシプシッ、プシャアアア、シャアシャア」
「プシ、シャアア、プシャアア、シャアアアア、プシ」
「ヒドラは集落の破壊が目的で、俺達を森まで追っては来なかった。怪我人は多いが死人はそれ程いない。またやり直すさ。ですッ」

 男はラデメヒに自分の言葉を伝えて貰うと、満足した様子で壊された集落の再建作業へと戻って行った。

「さて、それじゃあ、あたし等も作業に加わろうか?」
「ホントにやるのね……」
「リーフェルドでも後始末したしな。立つ鳥跡を濁さずって奴だ」

 呆れた様子のイレーネにギャガンはニヤッと笑みを浮かべた。

「はぁ……これも冒険者とギルドのイメージアップの為……」

 ため息を一つ吐いて腕まくりをしたイレーネは、瓦礫の撤去に参加するようだ。
 ラデメヒに習ったのだろう片言の蜥蜴人語を使い、蜥蜴人達に話しかけながら働き始める。

「ミラルダ、杖の予備があれば貸してくれ。魔力の収束が出来れば角程では無いが今の私でも魔法を使える筈だ」
「あいよ。ちょっと感覚が違うだろうけど、大丈夫かい?」
「ふむ……万能なる魔力よ、彼の者と大地との軛を断ち切れ、浮遊フロート

 グリゼルダはミラルダから借り受けた杖に魔力を収束させ、浮遊魔法を瓦礫に放った。
 瓦礫は少し不安定さはあったが地面から浮かび上がり、集落のゴミ捨て場まで飛んで行った。

「……慣れれば大丈夫そうだ」
「そうかい……やっぱり魔人は凄いね。あたしゃ、杖に魔力を流すだけでも一月以上かかったからねぇ」
「フフ、魔人と魔法は生まれた時から共にあるからな。では私も撤去作業に行ってくる」
「コホー……」

 やっぱり魔法はいいなぁ……俺にも魔力があれば……。

 健太郎はせっかくファンタジーな剣と魔法の世界にいるのに、全く魔法に縁のない体を少し残念に思った。

「何言ってんだい。あんたは魔法なんて使えなくても色々便利な機能があるじゃないか。それよりこの前変形したちょっと小さい巨人になって、瓦礫を撤去しておくれ」
「コホー……」

 分かった……アレってば絶対戦闘用だろうけど……。

「ミシマ、戦闘用とか決めつけは良くないよ。いいじゃないか、大工仕事にも重宝するんだから」
「コホーッ」

 そうだな。元が何であろうが使い方は自由だよな。アム○もガ○ダムで色々してたし。

「んじゃ、俺とパムは木材の切り出しと加工に行ってくるわ」
「ああ、二人とも気をつけるんだよ」
「うん、ミラルダ達も怪我とかしないでね。まぁミシマは絶対大丈夫だろうけど」

 そんな感じで一週間程、蜥蜴人の集落の再建に手を貸した後、健太郎達はイレーネと共に各部族の集落を回り調査と冒険者ギルドについての説明をして回った。
 フェンデアの殆どの蜥蜴人が、ヒドラを撃退した事で冒険者という存在をおおよそ好意的に受け止めていた。

 更に集落の再建を手伝った事でンネグラ族の暮らす北部ではイレーネの提案、フェンデアに冒険者ギルドの支部を作るという話も大分前進した様だった。
 ただ、その為には通貨の流通とラーグから冒険者を送る為の転移魔法陣の設置等、クリアしないといけない課題も山積していたが……。

 ともかくとして冒険者ギルドからの依頼である蜥蜴人達の国、フェンデアの第一次調査は終わり、健太郎達はラーグはクルベストに向け帰還の途に就く事にした。
 修復の終わった中央集落の中心広場で族長テダハを始めとした蜥蜴人達が、VTOLモードの健太郎の前に並んだミラルダ達に視線を向けている。

「シャアアアア、プシプシ、シャアシャア、プシャアアア、プシ」
「遠い異国の客人達よ。今回はヒドラだけでなく、集落の再建にも手を貸して頂き感謝する。ですッ」
「気にしないでおくれ。これも仕事の一環だからさ」

 そう言って笑ったミラルダにテダハとラデメヒが頭を下げる。

「プシ……皆さん、本当にありがとうございました……今度はお仕事じゃなくて遊びに来て下さい。その時は北部の名所を案内しますから」
「フフ、そりゃ楽しみだねぇ」
「グリゼルダさんに長距離転移魔法の陣を刻んで貰ったから、次は一瞬で来れる筈よ」
「グリゼルダ、そんな事してたのか?」
「ああ、ただ、杖を使ったから少し陣がいびつになったが……」

 グリゼルダは集落の中央、広場の真ん中に据えた石に刻んだ陣の出来が不満なようだ。

「そうかなぁ。わたしには綺麗に描けてるように見えるけど……」
「刻んだ線の太さが所々、違うだろう? あれで使用する際、魔力のロスが生まれるんだ……」
「グリゼルダさんは職人気質ねぇ……」
「ともかく、ここでの仕事は終わりだね。んじゃ族長さん、ラデメヒ、あと蜥蜴人のみんな、元気でね!!」
「プシュ、シャアアア、プシ!!」
「はいッ、皆さんもお元気でッ!! ですッ!!」

 ミラルダ達はプシプシと鼻と喉を鳴らし手を振る蜥蜴人達に見送られ、VTOLモードの健太郎に乗り込んだ。

「ババババババッ!!」

 それじゃね、バイバイッ!!

 健太郎はエンジン音を響かせ、心の中で蜥蜴人達に手を振ると彼らの国、フェンデアを後にした。


■◇■◇■◇■


 帰還の道中、イレーネの乗り物酔い対策で変形した青黒い宇宙戦艦の中の一室、恐らく将校がくつろぐサロン的な部屋でミラルダ達は今後について相談を続けていた。

「やっぱり、帰って一番にやる事はグリゼルダの角の治療方法を見つける事だね」
「だな」
「……ミラルダに杖を借りて魔法を使ってみたが、やはり魔力の流れが感じにくいのは痛い。申し訳ないが角の修復に力を貸して欲しい」

 そう言って頭を下げたグリゼルダにミラルダは苦笑を浮かべる。

「申し訳ないとか思わなくていいよ。あんたは大事な仲間なんだから」
「そうだよ。それにあの時はわたし達を助けようとして、エキドナに魔法を使ったんだから」
「あの魔物は他人を道具としてしか見ていなかった。グリゼルダさんが危険だと感じたのも当然だわ」
「……魔法は効かないと分かってはいたんだが、諦めきれなくてな……」

 擁護する二人の言葉に自嘲気味な笑みを浮かべたグリゼルダの頭を、隣に座っていたギャガンがそっと抱き寄せる。

「ギャッ、ギャガン!?」
「仲間を守ろうとした。ならそいつは名誉の負傷だぜ」
「……そうか……」
「そうさ……」

 グリゼルダはギャガンの胸に手を当て静かに寄り添った。
 そんな二人を見て、パムとイレーネは顔を見合わせ笑う。

「ゴウンゴウン?」

 ねぇ、グリゼルダ、角を負傷した人は負傷者として補助を受けられるって言ってたけど、角の再生って絶対に無理なの?

「ミシマが角の再生は絶対に無理なのか? だって」
「高位の貴族なら移植という形で機能を回復させた例もあると聞いた事があるが……」
「移植……それって難しいのかい?」
「移植は提供者、つまり生きた魔人から貰い受ける事になる。エルダガンドで魔法を失う事は生活の基盤を失う事に等しい。一生困らないだけの金を用意出来る者にしか、そんな事は出来ないんだ」
「お金か……最近実入りがいいからそれなりに持ってはいるけど、流石に人一人が一生暮らしていける程は……」

 ミラルダが懐事情を考えながら眉を寄せていると、ギャガンがそうだと口を開く。

「エルダガンドの貴族といえばキュベルがいるじゃねぇか。あいつに相談してみるってのはどうだ?」
「ねぇ、ギャガン、キュベルって?」
「キュベルはエルダガンドで我儘わがまま放題やってた王のめかけだ」
「……我儘放題……そんな人が協力してくれるの?」
「そいつは話てみねぇと分からねぇが……」
「ゴウンゴウン……」



 キュベルか……あの子、ちゃんとやってるんだろうか……。

「うーん、キュベルねぇ……そんな大金を出してくれる程、あの子に貸しがある訳じゃないしねぇ……ともかくラーグで出来る事をやって、それでダメだったらエルダガンドに行ってみようか」
「決まりだな」
「我儘放題かぁ、不安だねぇ……ラーグで何とか出来るのがベストな気がするよう……」
「ゴウンゴウン……」

 エルダガンドじゃ俺、滅茶苦茶暴れたからなぁ……俺も出来ればラーグで終わらせたいぜ。

 そんな健太郎の呟きにミラルダだけが苦笑を浮かべていた。
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