紺碧のミシマ ~ホームレスだったけど異世界へ行ってロボットになったので俺は自由に生きる~ Vol.1

田中

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第三章 ヤクザな伯爵と冒険者

竜の子を探して

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 冒険者ギルドでの不愉快な一幕の後、健太郎けんたろうとミラルダは気を取り直して金髪角刈りおじさん(伯爵)の依頼である竜の卵及び幼生体の探索の為、赤竜せきりゅうほらと呼ばれるダンジョン(まぁ、健太郎が最初に目覚めたおなじみの場所なのだが)へと向かった。

 恐らく卵か幼生体は最下層にあるだろうとのミラルダの言葉で、健太郎は以前ビームで開けた穴を通り最下層までショートカットする事にした。
 穴は高熱により岩がガラス化しており足を取られた健太郎が最下層迄滑り落ちたりしたが、それ以外は特に問題無く最短で辿り着く事が出来た。

「ふぅ……一瞬で遠ざかって行くあんたを見て少し肝が冷えたよ……しかしまぁ、ホント頑丈だねぇ」

 ミラルダは滑り落ちた健太郎を追って、かなり急ぎ足で穴を駆けおりて来た。そして息を切らせながらも勢いのまま壁にめり込んでいた健太郎を助け出してくれたのだ。
 先程のセリフは壁を魔法で破壊し引き出した後、健太郎の体を確認して言った言葉だ。

「コホーッ……」

 足の裏も金属っぽいからねぇ、俺……こう、ゴム的な物があれば滑り止めになると思うんだけど……。

「滑り止めねぇ……うーん、そうだねぇ……ブーツでも履くかい? 取り敢えず、街に帰ったら見繕ってみようか?」

 ……裸にブーツだけって凄く変態っぽいんだが……ようやくロープの戒めから解放されたってのに……。

「まぁ、そいつは街に戻ってから考えるとして、今は地底湖に行こうじゃないか」
「コホーッ」

 そうだね。

 この階層では赤と青、二体のドラゴンを健太郎は倒していた。

 竜を倒せば卵が出現すると角刈りおじさんは言っていた。という事は赤い竜の卵もあるのだろうか……。
 正直、あいつの子供とか絶対、食い意地の張ったあんま賢くない奴だろうし、青でいいよね。

 そんな事を思いつつ、健太郎はミラルダに続いて地底湖へと足を向けた。

 辿り着いた地底湖は相変わらず幻想的で美しかった。
 ただ、この広大な空間からどうやって卵を探すのか、そう思いミラルダに目をやると鞄から杖を取り出し何やら呪文を唱えている。

「魔力よ大地を走る波となって我の周囲を照らし出せ……探知サーチ!」

 詠唱の終わりに合わせミラルダは杖で地面をトンッと叩く。するとそこから緑色の光の波が前方に向けて放射状に広がっていく。
 魔力を使ったソナーと言った所だろうか。

 やっぱり魔法は便利だしカッコいいな……俺もロボットなんだからこう、レーダーみたいなものがあってもいいと思うんだが……。

 そんな事を健太郎が考えていると、頭頂部が開き小さなパラボラアンテナが現れ回転を始めた。それに合わせて健太郎の視界の右上に何やら緑のラインで描かれた方眼紙状の物が表示される。
 その方眼紙にパラボラの動きに合わせ回転するラインと、生物反応と思しき光点が表示されていた。



 あるんだ……。そういうのさ、言わなくてもやってくれよぉ。

「ミシマ、何だいその頭の飾りは?」
「コホー? コッ、コホーッ!?」

 飾り? あっ、何か出ててるッ!? しかも回ってるぞコレッ! クッ、レーダーはいい機能だけど、こんなの頭の上でクルクル回してたら間抜け以外の何者でもないじゃないか!

「ふぅ……次から次へと忙しい奴だねぇ。それより卵らしき反応を見つけたよ。湖の底みたいだから水中呼吸と水圧無効を掛けて取りに行こうか?」
「……コホーッ」

 ……了解。あっ、でも俺は溺れる事は無いから魔法はいらないよ。

「ん? 魔法はいいのかい? ……そういえばあんた、最初に会った時、水の中に随分長い間潜ってたねぇ……もしかして息しなくても大丈夫なのかい?」
「コホーッ!」

 腕で丸を作った健太郎を見て、ミラルダは苦笑を浮かべる。

「フフッ、伊達にゴーレムじゃ無いって訳だね……魔法も無限に使える訳じゃないし、お言葉に甘えるとするかね」

 そう言うとミラルダは自身に魔法を掛け、湖面に足を踏み入れた。ザブザブと音を立て進んで行くミラルダの後ろを健太郎も追う。

 そんな二人の様子を石柱の影から覗いている目が六つあった。
 その内の四つは黒髪の青年と金髪の女。
 もう一対は、人間の子供程の大きさの影の物だった。


■◇■◇■◇■


 健太郎達が地底湖に身を沈めてから一時間後、湖面にクルクルと回るパラボラアンテナが潜水艦の潜望鏡の様に現れる。
 やがてその下の青黒い金属の輝きを持った頭部が現れ、それに続いて紫の色のトンガリ帽子も姿を見せた。

 それは真っすぐに湖岸に近づき、やがて上半身を水面に覗かせる、その姿を見せた彼の腕には一抱え程の大きさの白い卵が乗せられていた。

「ふぅ……運んでくれてありがとねミシマ。この湖の水は結構冷たいけど流石に鞄の中程じゃないからさ」
「コホーッ」

 お安い御用だ。

 片手で卵を抱えながら、右手の親指を立てた健太郎にミラルダは微笑みを返す。

「さて、これで依頼は達成だね。じゃあミシマ、街に帰るとしようか?」

「そうはいかないわ。後をつけて来て正解ね、その竜の卵、頂くわ」
「キュエーッ!」



「フィリス!? それに竜!?」

 ミラルダの言葉通り、柱の影から姿を見せたのは剣を抜いた将吾に杖を掲げたフィリス、そして別の柱の影から飛び出した赤い鱗を持った人の子供程の大きさの竜だった。

「何ッ、幼生体!?」
「将吾、そいつを捕まえたら、わざわざ卵から育てなくても念願の竜騎士になれるわよ!」
「確かにその方が手っ取り早そうだ」

 そう言うと将吾は刃を健太郎達から赤いチビ竜へと向け変えた。

「キュルルルルッ……」

 チビ竜は将吾を警戒したのかじりじりと後退りを始めていた。

「へへッ、こいつ怯えてやがる。これなら多少痛めつけりゃ言う事聞く様になりそうだぜ」

 ニヤつく笑みを浮かべた将吾とチビ竜の間にザリッと足音を鳴らし青黒い体が割り込んだ。

「フンッ、なんだよ? 邪魔しようってのか?」
「コホーッ」

 多分だけど、こいつの親とは知らない仲じゃないんでね。それに俺、虐待は許せないタイプだからさぁ。

 そう心の中で言って健太郎は双眸を輝かせた。
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