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第七章 大森林のそのまた奥の
お仕置きの時間
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ギャガンが対峙した三人目の貴族は雷神に無数の電撃を撃たせとにかく接近させない構えを取った。
「チッ、面倒な……」
いかに素早さに優れた獣人であっても網の目の様に雷を落とされては近づく事も出来ない。
「大地よ、我が魔力に応え鋼の刃を、土刃」
「万能なる魔力よ、風を巡らせこの者に俊足を、加速。今だギャガン、突っ込めッ!」
少し高い声と低い声、二つの詠唱が同時に聞こえ、大地から突き出た鋼の刃が雷を引き寄せ、同時にギャガンの体が軽くなる。
「グリゼルダか……ニーナは……」
ギャガンが観客席にチラリと目を向けると、ニーナはギャガンによって見張りの貴族が倒された個所の観客席の客を促し、会場から観客を逃がしていた。
「なるほどな、こいつは派手にやれそうだぜ」
小さく呟きニヤリと笑うと、ギャガンは突き出た刃によって穴の開いた雷の隙間を潜り抜け、トールの前で跳躍、すれ違いざまに鎧ごとその首を落とし、その勢いのまま雷となり消えたトールの後ろ、目を見開いた貴族の顔面に拳を叩き込んだ。
「グリゼルダッ、このまま周回してこいつ等を潰すッ!! 防御は頼んだッ!!」
「了解だッ!!」
ギャガンの斜め後ろ、上空を舞っていたグリゼルダはギュと右手の親指を立てた。
「頼りにしてるぜ……オラッ、テメェら、戦えない奴相手にイキッてんじゃねぇよッ!!」
「炎よ、我が魔力に応え、全てを焼き尽くす業火の壁を、火炎壁」
「万能なる魔力よ、彼の者に抗魔の鎧を対魔鎧」
叫びと共に、ギャガンは貴族の呼び出した氷の魔狼に肉薄、フェンリルは吹雪で対抗しようとしたが、吐き出した氷の嵐は地面から吹き上げた爆炎により無効化される。
その直後、炎を切り裂き飛び込んだ黒い獣は、フェンリルの腹の下を駆け抜け四肢を切断、そのまま剣を握った拳で召喚した貴族の顎を砕き昏倒させた。
「グッ、なんだあの獣人は……」
「このままだと観客を押さえておけないぞッ!?」
「その通りだ」
突然掛けられた声に貴族が目をやると、光輝く槍を持った女が彼の呼び出した土巨人を切り裂いていた。
「フォミナの娘ッ!?」
「娘だけではなく父親もいるぞ」
「なッ!? グェッ!?」
振り返った貴族の腹に岩の巨人が放った拳がめり込む。巨人の一撃で吹き飛ばされた貴族の男は地面に落ちると動かなくなった。
「父上、父上は右を、私は左へ向かいますッ!」
「一人で大丈夫か?」
「グリモラとの戦い、ご覧になったでしょう?」
「見たから言っている……ふぅ……魔力が尽きる前に退避するのだぞ」
「分かっています」
そう言うとロミナは光の槍を次の標的である風の王に向けて投擲、再度、槍を生み出すとジーニーに向けて突進した。
「はぁ……アレは誰に似たのか……さて、娘には負けていられんな」
ロミナの父、バリアラは土巨人と同化し岩の塊となった体を次のターゲットである火炎魔人へと向かわせた。
同じ頃、真田と精魔騎士ランベルは貴族達が呼び出した火炎魔人を狩り、クーデターを起こした貴族の意識を刈り取っていた。
如何にエルフの貴族が精霊魔法に長けているとはいえ、相手は精霊魔闘会を征した真田と大会三位のランベルだ。
上位精霊と言えども相手にはならず、彼らは着実にその数を減らしていた。
■◇■◇■◇■
「ググッ……エルフという種族の価値を理解しない愚か者どもが……」
クーデターの首謀者であるラハンは次々と狩られていく賛同者を見ながら歯を軋らせた。
『大海蛇よッ、我が敵を大海の藻屑にせよッ!!』
ラハンの声でヨルムンガンドは再びその首をもたげ、深海から海水を呼び寄せようと口を開いた。
その口を赤い閃光が貫く。
閃光は一撃でヨルムンガンドの頭を蒸発、消失させた。
「何だとッ!? 大海蛇が一撃でッ!?」
「コホーッ」
種族や民族に誇りを持つのは良いけど、それを他者に強要すべきじゃない。
「またお前かッ!? 人でさえないモンスターがしゃしゃり出るなッ!! 『魂の精霊、円環の龍よ、我が呼び声に答えよッ!!』
ラハンが精霊語で叫ぶと、自身の尾を咥えた赤い鱗の龍が彼の背後に現れる。
『円環龍ッ!!』
ラハンが叫ぶと龍はおもむろに回転を始め、その円の中心、何も無い空間に光が収束し閃光が放たれた。
放たれた閃光は健太郎を直撃、試合場を白く染める。
「クククッ、大海蛇の水撃には耐えたようだが、精神に影響する円環龍の波動は防げまい……」
「コホーッ」
「何だとッ!?」
「へへッ、何の準備も無しに戦う訳ないだろ!? ミシマにはありったけの魔力を込めて反魔鏡を掛けてある、上位精霊の魔法だって弾いちまうさッ!!」
声の主である空を舞う赤い髪の女の頭には獣の耳がピョコピョコと揺れていた。
「汚らわしい獣人と人の混血め……『円環龍、まずは奴を!!』」
「コホーッ!!」
やらせるかッ!! 疾風……一閃ッ!!
健太郎の背中、ハッチが開き露出したスラスターが唸りを上げウロボロスへ向け飛ぶ。
「コホーッ!!!!」
ミシマ・トルネードォォォ!!!!
健太郎は両手を広げ揚力を生み出しその力によって、自身の体を回転させた。
喰らえッ!! ドリルスマッシャーアタァァァックッ!!!!
その後、両手を上に翳しドリルの様にウロボロスへと突っ込んだ。
ミラルダに体を向け回転を始めていたウロボロスは健太郎の攻撃によって自身の回転に沿って体を抉られ、その身を四散させる。
「馬鹿なッ!? 円環龍はアトラに次いで高位の存在だぞッ!?」
「コホーッ!!」
高位だろうが何だろうが関係無いッ、ミラルダを傷つけようとする奴はぶちのめすッ!!
試合場の地面に降り立った健太郎は、ゆっくりと身を起こすと、拳を鳴らすジェスチャーをしながらラハンに歩み寄った。
「ぼっ、僕に近づくなッ!!」
ラハンは腰の剣を抜き健太郎に斬りかかる。
それなりの太刀筋ではあったが、ギャガンの斬撃を見慣れていた健太郎は難無くその攻撃を見切り、ラハンの剣を絡め取った。
「あっ!? グェッ!?」
剣を絡め取られた事で流れた体にボディーブローを叩き込む。
ラハンは体をくの字に曲げ、胃の中身をぶちまけた。
「コホー……」
さて、エルフの国の王子様……お仕置きの時間だべぇぇ……。
ザリッと音を立て歩を進めた健太郎にラハンは咽ながら、怯えてフルフルと首を振った。
しかし、健太郎はそれに構わず彼に体を絡めると、毒蛇の様にその体を締め上げた。
「グアアアッ!! やっ、止めてくれっ!! 身体が、骨がッ折れるッ!!」
「コホーッ?」
大丈夫、大丈夫、折れない程度に加減してやってるから。どうだい、これが俺が考えた殺さずに人にお仕置きする方法だよ?
「……うん、見事なコブラツイストやね……なるほど、関節技やったら加減も出来るし、考えたなミシマはん」
「フィー、感心してないで、こいつ等縛るのを手伝ってくれ」
「あっ、はいはい」
ランベルに声を掛けられた真田はうめき声を上げるラハンを横目に、昏倒させたエルフ達に縄を掛けたのだった。
「チッ、面倒な……」
いかに素早さに優れた獣人であっても網の目の様に雷を落とされては近づく事も出来ない。
「大地よ、我が魔力に応え鋼の刃を、土刃」
「万能なる魔力よ、風を巡らせこの者に俊足を、加速。今だギャガン、突っ込めッ!」
少し高い声と低い声、二つの詠唱が同時に聞こえ、大地から突き出た鋼の刃が雷を引き寄せ、同時にギャガンの体が軽くなる。
「グリゼルダか……ニーナは……」
ギャガンが観客席にチラリと目を向けると、ニーナはギャガンによって見張りの貴族が倒された個所の観客席の客を促し、会場から観客を逃がしていた。
「なるほどな、こいつは派手にやれそうだぜ」
小さく呟きニヤリと笑うと、ギャガンは突き出た刃によって穴の開いた雷の隙間を潜り抜け、トールの前で跳躍、すれ違いざまに鎧ごとその首を落とし、その勢いのまま雷となり消えたトールの後ろ、目を見開いた貴族の顔面に拳を叩き込んだ。
「グリゼルダッ、このまま周回してこいつ等を潰すッ!! 防御は頼んだッ!!」
「了解だッ!!」
ギャガンの斜め後ろ、上空を舞っていたグリゼルダはギュと右手の親指を立てた。
「頼りにしてるぜ……オラッ、テメェら、戦えない奴相手にイキッてんじゃねぇよッ!!」
「炎よ、我が魔力に応え、全てを焼き尽くす業火の壁を、火炎壁」
「万能なる魔力よ、彼の者に抗魔の鎧を対魔鎧」
叫びと共に、ギャガンは貴族の呼び出した氷の魔狼に肉薄、フェンリルは吹雪で対抗しようとしたが、吐き出した氷の嵐は地面から吹き上げた爆炎により無効化される。
その直後、炎を切り裂き飛び込んだ黒い獣は、フェンリルの腹の下を駆け抜け四肢を切断、そのまま剣を握った拳で召喚した貴族の顎を砕き昏倒させた。
「グッ、なんだあの獣人は……」
「このままだと観客を押さえておけないぞッ!?」
「その通りだ」
突然掛けられた声に貴族が目をやると、光輝く槍を持った女が彼の呼び出した土巨人を切り裂いていた。
「フォミナの娘ッ!?」
「娘だけではなく父親もいるぞ」
「なッ!? グェッ!?」
振り返った貴族の腹に岩の巨人が放った拳がめり込む。巨人の一撃で吹き飛ばされた貴族の男は地面に落ちると動かなくなった。
「父上、父上は右を、私は左へ向かいますッ!」
「一人で大丈夫か?」
「グリモラとの戦い、ご覧になったでしょう?」
「見たから言っている……ふぅ……魔力が尽きる前に退避するのだぞ」
「分かっています」
そう言うとロミナは光の槍を次の標的である風の王に向けて投擲、再度、槍を生み出すとジーニーに向けて突進した。
「はぁ……アレは誰に似たのか……さて、娘には負けていられんな」
ロミナの父、バリアラは土巨人と同化し岩の塊となった体を次のターゲットである火炎魔人へと向かわせた。
同じ頃、真田と精魔騎士ランベルは貴族達が呼び出した火炎魔人を狩り、クーデターを起こした貴族の意識を刈り取っていた。
如何にエルフの貴族が精霊魔法に長けているとはいえ、相手は精霊魔闘会を征した真田と大会三位のランベルだ。
上位精霊と言えども相手にはならず、彼らは着実にその数を減らしていた。
■◇■◇■◇■
「ググッ……エルフという種族の価値を理解しない愚か者どもが……」
クーデターの首謀者であるラハンは次々と狩られていく賛同者を見ながら歯を軋らせた。
『大海蛇よッ、我が敵を大海の藻屑にせよッ!!』
ラハンの声でヨルムンガンドは再びその首をもたげ、深海から海水を呼び寄せようと口を開いた。
その口を赤い閃光が貫く。
閃光は一撃でヨルムンガンドの頭を蒸発、消失させた。
「何だとッ!? 大海蛇が一撃でッ!?」
「コホーッ」
種族や民族に誇りを持つのは良いけど、それを他者に強要すべきじゃない。
「またお前かッ!? 人でさえないモンスターがしゃしゃり出るなッ!! 『魂の精霊、円環の龍よ、我が呼び声に答えよッ!!』
ラハンが精霊語で叫ぶと、自身の尾を咥えた赤い鱗の龍が彼の背後に現れる。
『円環龍ッ!!』
ラハンが叫ぶと龍はおもむろに回転を始め、その円の中心、何も無い空間に光が収束し閃光が放たれた。
放たれた閃光は健太郎を直撃、試合場を白く染める。
「クククッ、大海蛇の水撃には耐えたようだが、精神に影響する円環龍の波動は防げまい……」
「コホーッ」
「何だとッ!?」
「へへッ、何の準備も無しに戦う訳ないだろ!? ミシマにはありったけの魔力を込めて反魔鏡を掛けてある、上位精霊の魔法だって弾いちまうさッ!!」
声の主である空を舞う赤い髪の女の頭には獣の耳がピョコピョコと揺れていた。
「汚らわしい獣人と人の混血め……『円環龍、まずは奴を!!』」
「コホーッ!!」
やらせるかッ!! 疾風……一閃ッ!!
健太郎の背中、ハッチが開き露出したスラスターが唸りを上げウロボロスへ向け飛ぶ。
「コホーッ!!!!」
ミシマ・トルネードォォォ!!!!
健太郎は両手を広げ揚力を生み出しその力によって、自身の体を回転させた。
喰らえッ!! ドリルスマッシャーアタァァァックッ!!!!
その後、両手を上に翳しドリルの様にウロボロスへと突っ込んだ。
ミラルダに体を向け回転を始めていたウロボロスは健太郎の攻撃によって自身の回転に沿って体を抉られ、その身を四散させる。
「馬鹿なッ!? 円環龍はアトラに次いで高位の存在だぞッ!?」
「コホーッ!!」
高位だろうが何だろうが関係無いッ、ミラルダを傷つけようとする奴はぶちのめすッ!!
試合場の地面に降り立った健太郎は、ゆっくりと身を起こすと、拳を鳴らすジェスチャーをしながらラハンに歩み寄った。
「ぼっ、僕に近づくなッ!!」
ラハンは腰の剣を抜き健太郎に斬りかかる。
それなりの太刀筋ではあったが、ギャガンの斬撃を見慣れていた健太郎は難無くその攻撃を見切り、ラハンの剣を絡め取った。
「あっ!? グェッ!?」
剣を絡め取られた事で流れた体にボディーブローを叩き込む。
ラハンは体をくの字に曲げ、胃の中身をぶちまけた。
「コホー……」
さて、エルフの国の王子様……お仕置きの時間だべぇぇ……。
ザリッと音を立て歩を進めた健太郎にラハンは咽ながら、怯えてフルフルと首を振った。
しかし、健太郎はそれに構わず彼に体を絡めると、毒蛇の様にその体を締め上げた。
「グアアアッ!! やっ、止めてくれっ!! 身体が、骨がッ折れるッ!!」
「コホーッ?」
大丈夫、大丈夫、折れない程度に加減してやってるから。どうだい、これが俺が考えた殺さずに人にお仕置きする方法だよ?
「……うん、見事なコブラツイストやね……なるほど、関節技やったら加減も出来るし、考えたなミシマはん」
「フィー、感心してないで、こいつ等縛るのを手伝ってくれ」
「あっ、はいはい」
ランベルに声を掛けられた真田はうめき声を上げるラハンを横目に、昏倒させたエルフ達に縄を掛けたのだった。
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