お飾りは花だけにしとけ

イケのタコ

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7話

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 楠野を待つ間は暇なので図書室を回る桃谷は、料理本を手に取った。作れそうなものはないか、ページを流すように捲りながら時間を潰す。
 本に集中して気づかなかった、相手が近くに来ていたことも。

「料理が好きなのか」

 後方から突然の声に驚き、体が飛び上がる。本を閉じ恐る恐るゆっくりと振り返れば、再び風紀委員長が立っていた。

「ふ、風紀委員長……さんっか。びっくりした」
「すまない、また驚かしたようだ」
「いえ、特に気にしないです」

 驚かされたよりも、姿がバレないか内心ヒヤヒヤの桃谷。敵意のない水崎に優しく話しかけられるのは逆に恐くて、笑顔が引き攣る。

「料理してるのか」
「えっ、ええまぁ。それなりにしてますけど」
「そうか」

 興味を持って訊いてきては頷くだけ。何故、話しかけてくるのか。助けた時におかしな事をしたのだろうか、それとも俺だと分かっていて試されているのか、桃谷の頭を悩ました。

「あの、なにか、おかしなこと言いましたか」
「いや、別に。すまない、初対面だというのに話しかけ過ぎだな……俺も何やってるだ」

 小さな声、悩ましそうに水崎は指で口を摘む。明らかな動揺。出会ってから見たことがない、自信の無さそうな風紀委員長の姿があった。

「あの、大丈夫ですか」
「大丈夫だ。知り合いに似ていたから、思わず話しかけただけだ。だから、取り締まるとかないから、そんなに怯えなくていい」

 瀬戸際に立たされた警戒心が、水崎には怯えていたように見えていたようだ。肩の力を抜きたいのは山々だが、今は敵である以上油断は出来ない。

「べつ、別に怯えてなんかないです。そっそれより、風紀委員長さんは巡回とかしなくて大丈夫ですか」
「そうだな、ここで休んでる場合じゃないな。時間を取らせて悪かった」

 風紀委員長は大人しく引き下がる。やっと帰ってくれるだろうか、と安堵の息が漏れ出す桃谷。
 しかし、それを欺くかのように一歩前と距離を詰めて、水崎は顔を近づけた。

やばい!流石にバレた。
観察をするような目付き、距離を詰められた桃谷は本を盾に顔を隠す。心臓は早さを増して跳ね、油染みた生ぬるい汗が流れる。

「委員長っ!」

  叫びながら走ってきたのは、風紀委員の腕章をつけた男は、手を膝について荒い息のまま報告する。

「お忙しいところ、すいません。またあいつらが喧嘩を始めまして、僕達では手がつけられなくて」
「またか。分かったすぐに行く」

 ため息を深くつくと、

「急用が出来だようだ。もし、お……君も不安な事や悩みがあれば、俺たちを頼ってくれ」
「ありがとうございます?」

 そう言ってどこでも誠実な風紀委長は去っていく。なんだっただろうか、と不安に思いながら肩の力を下ろす。
 あの風紀の慌てた様子。前に会議で課題にもなったが、不良の統制に中々苦難しているらしい。
 理由としては、風紀の人数不足と去年の後始末が大いに関係している。去年の負債がなければ委員長が出向く事もなく、もっと荷も軽かった筈だ。流石の水崎さんも、気を詰めているはずだ。
手伝ってあげたいのは山々だが、自分の所が砂塔では意味がない、それまでは知らないふりだ。

「すみません、遅くなりました。今終わりまして」

 風紀委員が去った後に、丁度入れ替わるように楠木が駆け寄って来た。

「どうかしましたか」

 まだ、動揺が残っているか、いつの間にか胸に手を置いて服を握りしめていた。上手く返事が出来ない、楠木は不思議そうに首を傾げ。

「いや、大丈夫だ」

 さっきのは気にしない、心中で唱え、俺は図書室の机を借りて話すことを提案した。


 
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