ママはどこ?

ひまじん

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ママはどこ?

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「ママぁ…。ママはどこ?」

スーパーでママと一緒に買い物をしていた咲良ちゃんは、いつの間にかママとはぐれてしまいました。

一生懸命ママを探す咲良ちゃん。

あっちこっち探していると、後ろから声が聞こえました。
「こっちよ、咲良。」

咲良ちゃんはママに見つけてもらえて一安心。ママと一緒に手をつないで帰りました。


夜になりました。
「ママぁ。」
咲良ちゃんはママを呼びます。
ママは咲良ちゃんに聞きます。
「どうしたの?」
「おしっこ。」
まだまだ小さな咲良ちゃんは夜の闇が怖くて仕方がありません。夜はいつもママにトイレに連れていってもらいます。

夜、寝る時も一緒です。

咲良ちゃんはいつでもママと一緒。

咲良ちゃんはよくママと一緒に買い物に出かけます。

ママと一緒に動物園にも出かけました。

遊園地も一緒です。

ママは咲良ちゃんの手をずっと握っていました。


そうして咲良ちゃんは大きくなり、だんだんママの手から離れていきます。

そして更に大きくなった咲良ちゃんの手は、大好きな旦那様に握ってもらえるようになりました。

やがて咲良ちゃんも娘のすみれちゃんを産みました。すみれちゃんの手はまだまだ小さいので、咲良ちゃんもそっと握ります。

すみれちゃんが幼稚園に行くようになった頃、すみれちゃんはよく、
「ママ、ママ。」
と呼びます。
咲良ちゃんは子供の頃を思い出し、すみれちゃんの手を握っては
「ここよ。どうしたの?」
と声をかけていました。


またしばらく経った頃、咲良ちゃんのママはすっかりおばあちゃんになりました。咲良ちゃんのママは病気で寝たきりになっていました。

今度は咲良ちゃんがママの手を握る番です。
手を握り、
「ママ…、大丈夫?大丈夫?」
と何度も聞きます。
咲良ちゃんのママは咲良ちゃんに言います。
「大丈夫よ。ありがとう、咲良。」

咲良ちゃんはママの手と、娘のすみれちゃんの手を握らなければいけません。でも咲良ちゃんはちっとも苦ではありません。咲良ちゃんが小さかった頃にしてもらった事を、同じように返しているのです。


「ママ、おしっこ。」
すみれちゃんも夜の闇が怖いのです。咲良ちゃんはすみれちゃんの手を握り、トイレについていきます。

「やっぱり私の娘で甘えん坊なのね。」
咲良ちゃんはクスリと笑い、すみれちゃんの手を、離さないように離さないようにしようと思いました。

いつしかすみれちゃんが大きくなり、咲良ちゃんの手を握るまでは…。


~完~
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