死者の電車

ひまじん

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死者の電車

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ガタンゴトン
ガタンゴトン

小さな男の子、連くんは電車の中にいました。
となりにはママも一緒です。

ガタンゴトン…
ガタンゴトン…

途中、連くんは様子がおかしい事に気づきます。
電車に乗っている人達のみんなが元気がないのです。

連くんはママに聞きます。
「ねぇ、ママ。なんでみんな元気がないの?」
ママは答えます。
「それはね、この電車が死者の電車だからよ!」
ママの顔がみるみるうちに悪魔に変わっていきます。
連くんは怖くて驚いて声をあげました。
「うわぁっ!」


連くんが気がつくとベットの中です。
横を見ると、ママが眠たそうに起きてきました。
連くんは夢を見ていたのです。

ママが心配そうに聞いてきます。
「どうしたの、連くん?叫び声をあげたりして。」
連くんはママに夢の話をしました。
そして連くんはママに聞きます。
「ママ?死者の電車ってなぁに?」
「それはね、死んじゃった人達の乗る、悲しい電車よ。」
「だからみんな元気なかったんだね。途中で降りれないの?」
「降りれないし、引き返せないの。終着駅までずっと座ったままなのよ。」
「終着駅って?」
「一番最後の駅よ。」
「そこに着くとどうなるの?」
「そこがあの世の世界。死んじゃった人達が行く世界ね。どんな所かママも知らないの。天国かな?地獄かな?」
連くんは怖くなりました。
ママは連くんに教えます。
「連くん。天国に行きたいなら、この世で良い事をいっぱいしなさい。生きてる間に良い事をいっぱいするのよ。いいわね?」
「うん!わかった!」

連くんはママの言いつけ通り良い事をいっぱいしようと思います。
「元気のない電車には乗りたくないや。」

ある日、連くんはママに連れられて、隣町まで買い物に出かける事になりました。

途中で電車に乗ります。

連くんは怖くなってママに聞きます。
「ママ、この電車、死者の電車じゃない?」
ママはクスクス笑いながら連くんに言います。
「死者の電車じゃないわよ。ホラ、ママもみんなも元気でしょ?」
連くんは納得して電車に乗りました。

ガタンゴトン
ガタンゴトン

電車に揺られながらママは連くんに言います。
「連くん。死者の電車にはね、めったに乗れないのよ。だって死んじゃった人達の乗る電車だもの。夢の中とはいえ、連くんは貴重な体験をしたのね。」
連くんは不思議な気持ちで、でもなんとなくわかったような気がしました。


良い事、いっぱいしなくちゃ…。


連くんはそう思いながら、いつしかウトウト眠りにつきました。

連くんが目を覚ましました。
まだ電車の中です。

ガタンゴトン
ガタンゴトン

連くんはふとママがいない事に気づきます。
「ママぁ!ママどこにいるの!?」
大声を出してもママは見つかりません。
それどころか、乗ってる人達みんな元気がありません。

連くんはハッとします。
「まさか…死者の電車…。」

連くんはあわてます。
「いやだ!いやだ!僕を降ろして!降ろしてよ!」

連くんが騒いでいると車掌さんがやってきました。
車掌さんが言います。
「坊や、電車の中では静かにしないといけないよ。」
連くんはあわてたままです。
「だって、これ、死者の電車でしょ!?降ろしてよ!」
車掌さんは静かに言います。
「坊や、切符はあるかい?」
「切符…。」
連くんはポケットをガサゴソ探します。
切符はどこにもありませんでした。
連くんはオドオドして
「ないよ…。」
と答えます。

車掌さんは相変わらず静かに言います。
「それならねぇ、坊や。次の駅で降りなさい。絶対に終着駅まで行ってはいけないよ。」
連くんは頷きます。
車掌さんは続けます。
「絶対に終着駅まで行ってはいけないよ。この電車は地獄行き。だからね、次の駅で降りて、反対方向の電車に乗るんだよ?いいね?」
「うん。」

連くんは車掌さんに言われた通りにします。
反対方向の電車の中で連くんは思います。
「この電車、どこに行くんだろう?切符、なくて大丈夫なのかな?」

連くんは緊張して、心配して、ずっとビクビクオドオド。
連くんは気疲れして、いつしか眠ってしまいました。


連くんが目を覚ますと病院のベットの上でした。
ママが連くんに話しかけます。
「連くん、大丈夫?」
連くんは体のあちこちが痛みます。
連くんは聞きました。
「ママ、僕、どうしちゃったの?」
「連くんはね、車にはねられちゃったの。ダメじゃない。横断歩道を渡る時はキチンと左右を確認しなきゃ。」
連くんはママに言います。
「ママ、僕また死者の電車に乗っちゃった。キチンと左右を確認しない、悪い事をしちゃったから、地獄行きの電車に乗っちゃって…。でも、途中で降りれたし、帰ってこれたよ。」

ママは安心してわんわん泣きました。

ケガが治って退院した連くんは交通ルールを守って、良い事をいっぱいする男の子になりました。


~完~
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