TEAM【完結】

Lucas

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第33話

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「ごめん、すぐ行く!」
 スズメはそう答えると、少しためらいながらコネコに手を差し出しました。コネコは何事もなかったようにその手を取ると、「行こう」と言って早足で階段を上り始めます。
 三階を過ぎ、屋上へ。三つ子達が一生懸命に押す扉のノブを回すスズメ。
「開かない!」
「いや、だからそう言ったじゃないか少年。鍵がかかってるんだよ」
「どうしよう……」
「少年が体当たりしてぶち破る事はできないか?」
「なるほど!」
 ポロの提案にも、スズメのやる気にも、コネコ達は首を振ります。
「スズメ様では無理ですよ!」
「ひょろひょろー」
「俺様でも開けられなかった扉を、そんな細腕で破れると思うのか?」
「あなたが何度体当たりしても絶対無駄よ。先に体が折れるわ」
「うぅ、みんなひどい」
 そう言って項垂れながらも、確かにみんなの言う通りだと思い言い返せません。頑丈な鉄の扉は、例え全員でぶつかったとしてもびくともしないでしょう。
「さあ、どうする?」
 何故か不敵な笑みで、この状況を楽しんでいるかのようなポロ。スズメは少し考えた後、あっと手を叩きました。
「三階から上がるのはどうかな?」
「一旦お店の中に入るの? まださっきの人がうろついてるかもなのに?」
 コネコは不安そうですが、他に道はありません。
「大丈夫。まずはおれが様子を見てくるから」
 そう言って階段を軽快に駆け降りるスズメ。みんなもその後に続き、来た道を引き返します。
「あ、開かない!」
 そして、ノブを回しながら青ざめているスズメを見て、大きくため息をつくのでした。
「非常口がふさがっていたら、非常の時に役に立たないぜ」
 呆れ気味に言い放つポロを見て、スズメはさらにうーんと考えます。
「ちょっと遠くなるけど、二階から上がってみよう。屋上の駐車場へ行くルートまではふさがれていないはずだから、建物内からはきっと行けるはず」
 スズメは自信満々にそう言って、次は二階へと降りて行きます。屋上へ行くまでの道のりが長くなるという事は、それだけ誰かに出くわす可能性も高くなってしまいます。コネコ達はやはり不安そうにその後を追います。そして、ノブを回すスズメ。
「あ、開いちゃった!」
「何でちょっと嫌そうなんだよ少年。お前かなりビビってるだろ」
「だって……。いや、ビビってないよ! じゃあ、ちょっと様子を見てくるね! みんなは待っててね! 絶対待っててね!」
「お、おう。どこにも行かねーよ」
「スズメ様、ファイト!」
「うーらーめーしーやー」
「ちょっとやめてよクウソウ!」
 涙目になるスズメを見て、コネコとコウソウはやれやれと肩をすくめました。
「仕方ないわね。私も行くわ」
「仕方ないな。ここは俺様がしっかり見張っててやるから、気にせずに行ってこい」
「コウソウ行かないの?」
 コネコが思わずそう聞き返しますが、コウソウの意志は揺るがなそうです。まるで根が生えたようにその場から動きません。
「コネコも待ってて。危ないから」
「わ、私は行くわよ。怖くないし。あなた一人の方が危なっかしいわ」
 コネコはそう言ってスズメの腕にしがみつきます。
「ヒューヒュー!」
「熱いねー、お二人さん!」
 呑気に囃し立てるみんなを置いて、スズメ達は建物内に入る決意をしました。
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