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第8話
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「ヒロ! ちょうど良かった、手伝ってくれよ!」
「ヒロ君、あたしの勝ちだね!」
そこにいたのは慌てた様子のタカノ君と勝ち誇った顔のモカちゃん。
二人は手術台に縛られた白衣を着た男の人を助けようとしていた。
「タカノ君、院長室に行ったんじゃなかったの?」
「は? 俺、親父が心配で見に来たんだよ! 院長っていえば手術室だろ?」
え、そうなの? そういうものなの? 違うよね?
ていう事はこの男の人が院長?
「私の事はいいから逃げなさい!」
あれ? 院長が元締めじゃないの?
「親父、大丈夫だって! こっちには最強のヒーローがついてるんだぜ!」
タカノ君が目を輝かせながらこっちを見た。
院長は怪訝な顔つきで僕を上から下まで見る。それが普通の人の反応だよね。
その時、手術室に誰かが入ってきた。看護師さんだ。お母さんくらいの年の看護師さんがこっちへ近づいてくる。
「し、師長! 君は一体どういうつもりだ!」
院長が叫ぶ。
分かった、師長が元締めなんだ。
「ニョホホホ。どういうつもりかにゃんて決まっているにゃにゃいにょよ。こにょ病院をにょっとり地球を征服するにょよにゃ」
え? ちょ、え? 何て? 聞き取りにくい!
「くそっ、かなり寄生が進んでやがる!」
つくねがそう言う。寄生の進み方おかしくない?
「親父をどうするつもりだ!」
タカノ君が師長を睨みつける。真面目な顔をしているとタカノ君は迫力がある。でも手に握られているのはリコーダーだ。どこに持っていたの? そして今日音楽の授業ないのに何で持っていたの?
「助太刀いたす!」
モカちゃんが竹刀を構える。マジでどこに持ってたの? 何で剣道部でもないのにそんなの持ってるの?
「いいから逃げるんだ! そいつらは普通じゃない!」
そいつらって言った! 院長僕の事めっちゃ見ながら言った! 師長の仲間だと思われてる!
「逃がにゃにゃいにゃ!」
師長が両手にメスを持って襲いかかってきた。こえぇ!
「はっ!」
「やぁっ!」
タカノ君とモカちゃんが師長の攻撃をはじく。二人とも超強い!
「ヒロ、お前にも武器を出してやる! うぉぉぉおお!」
つくねがプルプルしだした。
別に出さなくていいのに。あの中に入ってく勇気ないよ。
ていうか自分でも忘れてたけど僕一応病人だよ。
つくねが吐き出したのは、僕の身長くらいある大きな黄色い羽根だった。
「これは、『ひよこウィングソード』だ! これで戦え!」
「ソードって、これ剣なの? そんなの使って師長が死んじゃわない?」
「大丈夫だ! この剣は悪にしか効かない! 奴の中のにゃんこマンだけ倒せる!」
「本当に本当? 絶対嘘じゃない? 明日から僕塀の中に入っちゃってない?」
「大丈夫だっつってんだろ! 何ならまずお前で試してやろうか?」
「ヒロ行っきます!」
ひよこウィングソードを持ち上げた瞬間僕は異変に気づく。
「つくね、僕、やっぱりできないよ……」
「一回殺ると決めた事を投げ出すんじゃねえ!」
字が違うよつくねさん。そんな事決めてないし。
「つくね、そうじゃなくてこの剣じゃ無……」
「あぁ? 俺はやりもしねーで無理とか言う奴が一番ムカつくんだよ!」
まだ言ってない。まだ『無』までしか言ってない。まだ『理』を言ってません。
「だってこの剣、ぐにゃんぐにゃんなんだもん! ふにゃんふにゃんで普通に羽根なんだもん!」
「だから、『ウィング』ソードだっつってんだろ! いいからソイツに向けて振ってみろ!」
まんまウィングって事だったの? じゃあ、もうソードはいらないじゃん。
僕はとにかく無言で師長を扇いだ。
「にゃあああああ!」
すると、すさまじい突風が起こり師長が吹っ飛んでいった。
「しちょおおお! にゃんこマンだけに効くんじゃなかったの?」
「落ち着け。悪は倒したかも」
い、いつもとセリフが違う! 倒したかもって何?
「ぐっ……こにょガキ強いにゃ。しかたにゃい、本気を出すにょにゃ。はぁああああああっ!」
なんと師長が起き上がり天井に両手を掲げて力をためだした。
「現れるにゃ! 我が同志達にょ!」
師長の後ろからさっきのゾンビもどき達がわんさか現れた。何で天井に向かって力ためたんだろう?
「タカノ、手術室の扉を閉めるんだ!」
院長がそう叫ぶ。しかし、扉は吹っ飛んで行ったからない。
師長が呼んだゾンビっぽい人たちがどんどんこっちに向かってくる。
「つ、つ、つくね! どどどどうしよう?」
「落ち着け馬鹿! せっとくちばしがあるだろうが!」
ここでそれ使うの? 最初から使えば良かったじゃん。
僕はいつの間にか吐き出されたせっとくちばしを装着した。
「み、みんな止まって!」
その場にいた人達の動きがピタリと止まる。もちろんあの二人を除いて。
「ヒロ君、今がチャンスだよー!」
モカちゃんが超期待の眼差しでこっちを見てくる。
「はいヒロ。これで吹っ飛ばそうぜ!」
タカノ君が僕にひよこウィングソードという凶器を握らせる。つくねが目でやれと合図してくる。
敵以上に僕に逃げ場がない。
やるしかない。
覚悟を決めて前を見た瞬間。
師長と目があった。
めちゃくちゃニヤニヤしてるし。怖いしもう嫌な予感しかしないしとにかく怖いし。
あっ、もしかしてさっき力をためていたのは……。
師長がニョホホホと高笑いする。
「つくね、な、何で? せっとくちばしで、止まってって言ったのに!」
「お前、止まってとしか言わなかったろ。喋るなとは言ってなかったからな」
だから、せっとくちばしめんどくせぇ!
「師長ボンバーーーー!」
師長はそう叫ぶと、全身から眩い光を放ち、
そして……巨大化した。
そして、天井に頭をぶつけた。
床に崩れ落ちそのまま気を失う師長。
僕は師長に勝利した。
もう何も言う気にもなれない。
周りにいたゾンビさん達も次々と倒れていく。
「よくやった、ヒロ。さあ、トドメをさして来い」
嫌に決まってるだろ。
とにかく僕達は院長を縛っている縄をほどこうとした。
何か忘れてる気が……。
「師長からはデローンってしないんだな」
それだ! タカノ君の発言が初めて役に立った。
僕は慌てて師長の方を見た。
いる! ムキムキにゃんこ立ってる! 僕の真後ろでマッチョポージングでこっち見てる!
僕は声にならない悲鳴をあげて腰を抜かした。僕以外の人達は無反応だけど僕の反応が一番正しいと思う。
「ここで会ったが百年目にゃ。スペースヒーローつくね……」
「お、お前は……スペースにゃんこマン四天王の一人、たまふぉーむ!」
ツッコミ所が多すぎる。
「お前を倒す為に、最後の力を振り絞るにゃ!」
たまふぉーむが拳を振り上げる。
「危ない!」
タカノ君が二本目のリコーダーを投げた。本当にどこに持ってたのよそれ。
「ぐわあああ!」
たまふぉーむが吹っ飛んだ。ダメージ受けすぎでしょ。
リコーダーだよ? 何でひよこウィングソードと同じくらいダメージ受けてるの?
「みんな、大丈夫か?」
なんやかんやで僕達がなかなか縄をほどかないから院長は手術台ごと立ち上がった。
手術台って動くの? 床から外れるものなの?
「親父、大丈夫に決まってるだろ! だってヒロはひよこマンなんだぜ!」
でもトドメをさしたのは僕じゃない。
ていうか何で普通に会話してんの? 早くほどいてあげなよ。
「やったねヒロくーん!」
モカちゃんのハイタッチは最早はなから僕の顔をめがけて飛んできた。あまりの速さに避けきれなかった。
「うぅ……」
あっ、師長が起きちゃう!
「マズい、みんなが起きる前にずらかるぞ」
「分かった、つくね!」
僕はせっとくちばしを装着した。
しかし、ここで思わぬ邪魔が入る。
つくねさんだ。つくねさんがせっとくちばしを蹴り飛ばした。
「ずらかるぞっつってんだろ! さっさとしろやハゲ!」
「ハゲてないもん! ていうか、院長このままでいいの?」
「ヒロ、安心しろよ! 親父には俺から説明しておくって!」
何が何でも僕が何とかしなければ。
「い、院長な。はいはい分かってるっつーの。わざとだっつーの」
つくねさん、照れてる場合じゃないです。
僕はせっとくちばしを拾い上げて叫んだ。
「ここで起こった出来事は全部忘れて!」
「何を言ってるんだ君は?」
せ、せっとくちばしが効かないだと? さすがタカノ君のダディ!
「えと、いや、あの、その……」
予想外の出来事に対応できず僕はパニックになる。
連続舌打ちをしてくるつくね。
そんな僕たちを見て院長が口を開いた。
「本来ならば警察に連絡するところだが……」
まず本来ならばこんな出来事ありえない。
「状況は大体把握できた」
把握できたの? どこをどう見て何を把握したの?
「ここは私に任せなさい。上手くごまかしておこう。もちろん、私もこの事は誰にも話さないよ」
何この物分かりの良さ。
「こいつ、なかなか話が分かるやつじゃねーか。さあヒロ、行こうぜ」
「ちょ、つくねいいの? あれだけヒーローの正体バレちゃダメとかほざいてたのに! 確かにこれで丸く収まるかもだけど、僕はこれ以上ひよこマンの存在をオープンにしたくないよ!」
「あ、そういえばヒロ君。熱大丈夫?」
モカちゃんがそう言って僕に近づいてくる。嫌な予感がする。
「あ、そっか! 忘れてたな! 親父、ヒロの事診てやってくれよ!」
「…………うむ」
めっちゃ嫌そう。この人ただ単に僕の事さっさと追い返したいだけじゃないの?
「じゃあ、まずはお熱計りましょうね」
モカちゃんが僕の頭を両手で掴む。
ここで僕の意識は途絶えた。
「ヒロ君、あたしの勝ちだね!」
そこにいたのは慌てた様子のタカノ君と勝ち誇った顔のモカちゃん。
二人は手術台に縛られた白衣を着た男の人を助けようとしていた。
「タカノ君、院長室に行ったんじゃなかったの?」
「は? 俺、親父が心配で見に来たんだよ! 院長っていえば手術室だろ?」
え、そうなの? そういうものなの? 違うよね?
ていう事はこの男の人が院長?
「私の事はいいから逃げなさい!」
あれ? 院長が元締めじゃないの?
「親父、大丈夫だって! こっちには最強のヒーローがついてるんだぜ!」
タカノ君が目を輝かせながらこっちを見た。
院長は怪訝な顔つきで僕を上から下まで見る。それが普通の人の反応だよね。
その時、手術室に誰かが入ってきた。看護師さんだ。お母さんくらいの年の看護師さんがこっちへ近づいてくる。
「し、師長! 君は一体どういうつもりだ!」
院長が叫ぶ。
分かった、師長が元締めなんだ。
「ニョホホホ。どういうつもりかにゃんて決まっているにゃにゃいにょよ。こにょ病院をにょっとり地球を征服するにょよにゃ」
え? ちょ、え? 何て? 聞き取りにくい!
「くそっ、かなり寄生が進んでやがる!」
つくねがそう言う。寄生の進み方おかしくない?
「親父をどうするつもりだ!」
タカノ君が師長を睨みつける。真面目な顔をしているとタカノ君は迫力がある。でも手に握られているのはリコーダーだ。どこに持っていたの? そして今日音楽の授業ないのに何で持っていたの?
「助太刀いたす!」
モカちゃんが竹刀を構える。マジでどこに持ってたの? 何で剣道部でもないのにそんなの持ってるの?
「いいから逃げるんだ! そいつらは普通じゃない!」
そいつらって言った! 院長僕の事めっちゃ見ながら言った! 師長の仲間だと思われてる!
「逃がにゃにゃいにゃ!」
師長が両手にメスを持って襲いかかってきた。こえぇ!
「はっ!」
「やぁっ!」
タカノ君とモカちゃんが師長の攻撃をはじく。二人とも超強い!
「ヒロ、お前にも武器を出してやる! うぉぉぉおお!」
つくねがプルプルしだした。
別に出さなくていいのに。あの中に入ってく勇気ないよ。
ていうか自分でも忘れてたけど僕一応病人だよ。
つくねが吐き出したのは、僕の身長くらいある大きな黄色い羽根だった。
「これは、『ひよこウィングソード』だ! これで戦え!」
「ソードって、これ剣なの? そんなの使って師長が死んじゃわない?」
「大丈夫だ! この剣は悪にしか効かない! 奴の中のにゃんこマンだけ倒せる!」
「本当に本当? 絶対嘘じゃない? 明日から僕塀の中に入っちゃってない?」
「大丈夫だっつってんだろ! 何ならまずお前で試してやろうか?」
「ヒロ行っきます!」
ひよこウィングソードを持ち上げた瞬間僕は異変に気づく。
「つくね、僕、やっぱりできないよ……」
「一回殺ると決めた事を投げ出すんじゃねえ!」
字が違うよつくねさん。そんな事決めてないし。
「つくね、そうじゃなくてこの剣じゃ無……」
「あぁ? 俺はやりもしねーで無理とか言う奴が一番ムカつくんだよ!」
まだ言ってない。まだ『無』までしか言ってない。まだ『理』を言ってません。
「だってこの剣、ぐにゃんぐにゃんなんだもん! ふにゃんふにゃんで普通に羽根なんだもん!」
「だから、『ウィング』ソードだっつってんだろ! いいからソイツに向けて振ってみろ!」
まんまウィングって事だったの? じゃあ、もうソードはいらないじゃん。
僕はとにかく無言で師長を扇いだ。
「にゃあああああ!」
すると、すさまじい突風が起こり師長が吹っ飛んでいった。
「しちょおおお! にゃんこマンだけに効くんじゃなかったの?」
「落ち着け。悪は倒したかも」
い、いつもとセリフが違う! 倒したかもって何?
「ぐっ……こにょガキ強いにゃ。しかたにゃい、本気を出すにょにゃ。はぁああああああっ!」
なんと師長が起き上がり天井に両手を掲げて力をためだした。
「現れるにゃ! 我が同志達にょ!」
師長の後ろからさっきのゾンビもどき達がわんさか現れた。何で天井に向かって力ためたんだろう?
「タカノ、手術室の扉を閉めるんだ!」
院長がそう叫ぶ。しかし、扉は吹っ飛んで行ったからない。
師長が呼んだゾンビっぽい人たちがどんどんこっちに向かってくる。
「つ、つ、つくね! どどどどうしよう?」
「落ち着け馬鹿! せっとくちばしがあるだろうが!」
ここでそれ使うの? 最初から使えば良かったじゃん。
僕はいつの間にか吐き出されたせっとくちばしを装着した。
「み、みんな止まって!」
その場にいた人達の動きがピタリと止まる。もちろんあの二人を除いて。
「ヒロ君、今がチャンスだよー!」
モカちゃんが超期待の眼差しでこっちを見てくる。
「はいヒロ。これで吹っ飛ばそうぜ!」
タカノ君が僕にひよこウィングソードという凶器を握らせる。つくねが目でやれと合図してくる。
敵以上に僕に逃げ場がない。
やるしかない。
覚悟を決めて前を見た瞬間。
師長と目があった。
めちゃくちゃニヤニヤしてるし。怖いしもう嫌な予感しかしないしとにかく怖いし。
あっ、もしかしてさっき力をためていたのは……。
師長がニョホホホと高笑いする。
「つくね、な、何で? せっとくちばしで、止まってって言ったのに!」
「お前、止まってとしか言わなかったろ。喋るなとは言ってなかったからな」
だから、せっとくちばしめんどくせぇ!
「師長ボンバーーーー!」
師長はそう叫ぶと、全身から眩い光を放ち、
そして……巨大化した。
そして、天井に頭をぶつけた。
床に崩れ落ちそのまま気を失う師長。
僕は師長に勝利した。
もう何も言う気にもなれない。
周りにいたゾンビさん達も次々と倒れていく。
「よくやった、ヒロ。さあ、トドメをさして来い」
嫌に決まってるだろ。
とにかく僕達は院長を縛っている縄をほどこうとした。
何か忘れてる気が……。
「師長からはデローンってしないんだな」
それだ! タカノ君の発言が初めて役に立った。
僕は慌てて師長の方を見た。
いる! ムキムキにゃんこ立ってる! 僕の真後ろでマッチョポージングでこっち見てる!
僕は声にならない悲鳴をあげて腰を抜かした。僕以外の人達は無反応だけど僕の反応が一番正しいと思う。
「ここで会ったが百年目にゃ。スペースヒーローつくね……」
「お、お前は……スペースにゃんこマン四天王の一人、たまふぉーむ!」
ツッコミ所が多すぎる。
「お前を倒す為に、最後の力を振り絞るにゃ!」
たまふぉーむが拳を振り上げる。
「危ない!」
タカノ君が二本目のリコーダーを投げた。本当にどこに持ってたのよそれ。
「ぐわあああ!」
たまふぉーむが吹っ飛んだ。ダメージ受けすぎでしょ。
リコーダーだよ? 何でひよこウィングソードと同じくらいダメージ受けてるの?
「みんな、大丈夫か?」
なんやかんやで僕達がなかなか縄をほどかないから院長は手術台ごと立ち上がった。
手術台って動くの? 床から外れるものなの?
「親父、大丈夫に決まってるだろ! だってヒロはひよこマンなんだぜ!」
でもトドメをさしたのは僕じゃない。
ていうか何で普通に会話してんの? 早くほどいてあげなよ。
「やったねヒロくーん!」
モカちゃんのハイタッチは最早はなから僕の顔をめがけて飛んできた。あまりの速さに避けきれなかった。
「うぅ……」
あっ、師長が起きちゃう!
「マズい、みんなが起きる前にずらかるぞ」
「分かった、つくね!」
僕はせっとくちばしを装着した。
しかし、ここで思わぬ邪魔が入る。
つくねさんだ。つくねさんがせっとくちばしを蹴り飛ばした。
「ずらかるぞっつってんだろ! さっさとしろやハゲ!」
「ハゲてないもん! ていうか、院長このままでいいの?」
「ヒロ、安心しろよ! 親父には俺から説明しておくって!」
何が何でも僕が何とかしなければ。
「い、院長な。はいはい分かってるっつーの。わざとだっつーの」
つくねさん、照れてる場合じゃないです。
僕はせっとくちばしを拾い上げて叫んだ。
「ここで起こった出来事は全部忘れて!」
「何を言ってるんだ君は?」
せ、せっとくちばしが効かないだと? さすがタカノ君のダディ!
「えと、いや、あの、その……」
予想外の出来事に対応できず僕はパニックになる。
連続舌打ちをしてくるつくね。
そんな僕たちを見て院長が口を開いた。
「本来ならば警察に連絡するところだが……」
まず本来ならばこんな出来事ありえない。
「状況は大体把握できた」
把握できたの? どこをどう見て何を把握したの?
「ここは私に任せなさい。上手くごまかしておこう。もちろん、私もこの事は誰にも話さないよ」
何この物分かりの良さ。
「こいつ、なかなか話が分かるやつじゃねーか。さあヒロ、行こうぜ」
「ちょ、つくねいいの? あれだけヒーローの正体バレちゃダメとかほざいてたのに! 確かにこれで丸く収まるかもだけど、僕はこれ以上ひよこマンの存在をオープンにしたくないよ!」
「あ、そういえばヒロ君。熱大丈夫?」
モカちゃんがそう言って僕に近づいてくる。嫌な予感がする。
「あ、そっか! 忘れてたな! 親父、ヒロの事診てやってくれよ!」
「…………うむ」
めっちゃ嫌そう。この人ただ単に僕の事さっさと追い返したいだけじゃないの?
「じゃあ、まずはお熱計りましょうね」
モカちゃんが僕の頭を両手で掴む。
ここで僕の意識は途絶えた。
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