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第零章
第弐拾壱話 風立ちぬ
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弘安四年 七月二十七日
ー鷹島沖上にてー
先の六月八日に行った志賀島の戦いで敗れ、東路軍はしばらくは防衛戦をしていたが倭の国の攻撃に耐えきれず壱岐島に撤退。
壱岐島に到着したのは良いものの東路軍は満身創痍であった。
おまけに疫病が流行り軍船は病人と負傷者で一杯となり東路軍だけで侵攻するのは不可能になった。
頼みの綱は第二遠征軍江南軍だが期日の六月十五日になってもくる気配がない。
食糧は三カ月分を持って来たがもう一カ月しかない。
江南軍がいつ来るか分からないまま倭の国の軍と小競り合いをしていたが六月二十四日、江南軍の先遣隊が到着した。
先遣隊の話によると江南軍本隊の到着が七月二十七日になるそうだ。
金方慶は何故こんなに遅くなったのか問いただした。
話によると江南軍司令官アラカイが病のため辞退。代わりの者を捜すのに手間取ったため出航したのが六月十八日であった。
六月二十日、壱岐島の戦いが勃発。
倭の国の総攻撃に七月二十六日まで耐え、
江南軍鷹島に上陸の報せを受け、東路軍は合流するべく鷹島まで撤退した。
東路軍司令官クドゥンは博多侵攻の今後について江南軍司令官らを招いて軍議が開いた。
場の空気が重いな
金方慶はため息をつく。
東路軍の指揮官たちを集めたが皆顔は暗く厭戦の雰囲気が漂っていた。
そして船内はとてもくさい臭いも充満している。
臭いの元は洪茶丘である。
どうも志賀島の戦い後、軍船内で治療し安静にしていた所、倭国の兵に臭いものを投げ入れられ内容物が身体中にかかったようだ。
臭いに悶えていると火も投げ入れられ船内と洪茶丘を含む兵達は業火の海に呑まれたそうだ。
早く海に飛び込んだため軽度の火傷で済んだようだが臭いと火傷の痕が残ってしまった。
金方慶はざまぁみろと内心ほくそ笑んでいると江南軍司令官 范文虎達が入ってくる。
「お待ちしておりました。」
東路軍司令官クドゥンが范文虎を迎える。
しかし、范文虎たちの顔は暗かった。
「そんな暗い顔をしてどうしたのですか?」
「どうしたも何も、、、」
范文虎は先日起きた鷹島沖での出来事を話した。
同月二十六日、東路軍の到着を待ち江南軍は鷹島沖で停泊していた所、倭国の小舟の集団が向かって来たらしい。
范文虎らは十万の大軍に小勢で挑むはずがないと思っていた。
しかし実際はこちらに矢を射掛けきた。
そのまま戦闘に入り、混戦となる。
日中から夜明けまで続いた。
これに対し江南軍は衝撃を受けた。
我らの軍が圧倒しているのではないのか
倭国の兵は士気が下がるどころかこちらに挑んでくる始末。
倭国の兵の士気の高さと獰猛さに恐れをなし江南軍の士気は駄々下がりになった。
これを聞いた東路軍の指揮官達は絶句した。
十万の大軍を目にしても恐れない、イカれた民族なんだと皆は同じことを思った。
しばらく沈黙は続いたがクドゥンが口を開く。
「数日ばかり兵を休め、士気を回復させるのはどうかな?」
一同は騒つく。
金方慶が咳払いをする。
「賛成の者は手を挙げるよう」
一同は少し考え込むが次々と異議なしと手を挙げる。
洪茶丘は不機嫌そうに手を挙げる。
嫌いな金方慶が取り仕切っているからだろうとクドゥンは察した。
手を挙げぬ者はいるが七割は賛成であった。
「賛成が多数、では、数日後博多侵攻の再開しよう。軍議はこれで終いだ。」
軍議は終わったが三日後、この選択は大きな間違いだと知ることになる。
七月三十日、北九州に台風が直撃、鷹島に停泊していた江南軍、東路軍の軍船の多くは沈没、大破。
軍船に乗っていた兵はほとんど溺れ死に被害は甚大であった。
後にいう神風である。
後世では神風のおかげで元軍は撤退したと言われているが実際は武士達の力で元軍を鷹島まで追い返しそこに神風が吹いたのだ。
翌日、再び軍議を行い、范文虎は日本征伐の続行は不可能、本国に撤退すべきと提案した。
異議を立てる者は誰一人いなかった。
こうして元軍は撤退することなった。
続
ー鷹島沖上にてー
先の六月八日に行った志賀島の戦いで敗れ、東路軍はしばらくは防衛戦をしていたが倭の国の攻撃に耐えきれず壱岐島に撤退。
壱岐島に到着したのは良いものの東路軍は満身創痍であった。
おまけに疫病が流行り軍船は病人と負傷者で一杯となり東路軍だけで侵攻するのは不可能になった。
頼みの綱は第二遠征軍江南軍だが期日の六月十五日になってもくる気配がない。
食糧は三カ月分を持って来たがもう一カ月しかない。
江南軍がいつ来るか分からないまま倭の国の軍と小競り合いをしていたが六月二十四日、江南軍の先遣隊が到着した。
先遣隊の話によると江南軍本隊の到着が七月二十七日になるそうだ。
金方慶は何故こんなに遅くなったのか問いただした。
話によると江南軍司令官アラカイが病のため辞退。代わりの者を捜すのに手間取ったため出航したのが六月十八日であった。
六月二十日、壱岐島の戦いが勃発。
倭の国の総攻撃に七月二十六日まで耐え、
江南軍鷹島に上陸の報せを受け、東路軍は合流するべく鷹島まで撤退した。
東路軍司令官クドゥンは博多侵攻の今後について江南軍司令官らを招いて軍議が開いた。
場の空気が重いな
金方慶はため息をつく。
東路軍の指揮官たちを集めたが皆顔は暗く厭戦の雰囲気が漂っていた。
そして船内はとてもくさい臭いも充満している。
臭いの元は洪茶丘である。
どうも志賀島の戦い後、軍船内で治療し安静にしていた所、倭国の兵に臭いものを投げ入れられ内容物が身体中にかかったようだ。
臭いに悶えていると火も投げ入れられ船内と洪茶丘を含む兵達は業火の海に呑まれたそうだ。
早く海に飛び込んだため軽度の火傷で済んだようだが臭いと火傷の痕が残ってしまった。
金方慶はざまぁみろと内心ほくそ笑んでいると江南軍司令官 范文虎達が入ってくる。
「お待ちしておりました。」
東路軍司令官クドゥンが范文虎を迎える。
しかし、范文虎たちの顔は暗かった。
「そんな暗い顔をしてどうしたのですか?」
「どうしたも何も、、、」
范文虎は先日起きた鷹島沖での出来事を話した。
同月二十六日、東路軍の到着を待ち江南軍は鷹島沖で停泊していた所、倭国の小舟の集団が向かって来たらしい。
范文虎らは十万の大軍に小勢で挑むはずがないと思っていた。
しかし実際はこちらに矢を射掛けきた。
そのまま戦闘に入り、混戦となる。
日中から夜明けまで続いた。
これに対し江南軍は衝撃を受けた。
我らの軍が圧倒しているのではないのか
倭国の兵は士気が下がるどころかこちらに挑んでくる始末。
倭国の兵の士気の高さと獰猛さに恐れをなし江南軍の士気は駄々下がりになった。
これを聞いた東路軍の指揮官達は絶句した。
十万の大軍を目にしても恐れない、イカれた民族なんだと皆は同じことを思った。
しばらく沈黙は続いたがクドゥンが口を開く。
「数日ばかり兵を休め、士気を回復させるのはどうかな?」
一同は騒つく。
金方慶が咳払いをする。
「賛成の者は手を挙げるよう」
一同は少し考え込むが次々と異議なしと手を挙げる。
洪茶丘は不機嫌そうに手を挙げる。
嫌いな金方慶が取り仕切っているからだろうとクドゥンは察した。
手を挙げぬ者はいるが七割は賛成であった。
「賛成が多数、では、数日後博多侵攻の再開しよう。軍議はこれで終いだ。」
軍議は終わったが三日後、この選択は大きな間違いだと知ることになる。
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後にいう神風である。
後世では神風のおかげで元軍は撤退したと言われているが実際は武士達の力で元軍を鷹島まで追い返しそこに神風が吹いたのだ。
翌日、再び軍議を行い、范文虎は日本征伐の続行は不可能、本国に撤退すべきと提案した。
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