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所詮は幼馴染み
事の発端は、オレのセクシャルマイノリティを唯一知る友人が「こんなの見付けた!」とあるアプリを勝手にダウンロードし勝手に登録した事から始まった。
〝ゲイ専用マッチングアプリ〟。
斗真よりも早く自分がゲイである事に気付いていたからこそ斗真を好きだって自覚したんだけど、その友人はオレが今だに諦められていないって知ってるからかこれをオススメしてきたそうだ。
友人の身近にもゲイの人がいて、このアプリを通して恋人を見付けて幸せになったそうだから、オレにも新しい恋で傷を癒して欲しいらしい。
いい奴だよ、ほんと。
ただ、写真はもうちょっと何とかならなかったものか。
大口開けて飯食ってるシーンとか、誰に需要があるんだよ⋯とか思ってたのに、意外にも〝いいね〟は付くしメッセージも送られてくる。
物好きなって言いたいけど、同性だとそれだけ出会いがないんだろうなって分かるから無碍にも出来ない。まぁ明らかなヤリ目っぽいメッセージは即座に消したけど。
そんな風にチャラい文面が多い中、たった1人凄く丁寧にメッセージをくれてる人がいて、オレが(友人が)登録してから2週間何のアクションもしていないのに昨日で2回目の連絡が来てた。
その人の名前はREIさん。年は26で、外資系企業に勤めるサラリーマン。身長185センチ、体重71キロ。趣味は映画鑑賞と甘い物巡り、特技は料理だけど家事全般それなりに得意。
写真は口元から下だし、性格とかは書いてあっても本当にそうか分からないから省くけど、これだけ読めば相当モテるんじゃないかって思う。
「こんだけ丁寧に書かれてると、返事しないとって思うよなぁ⋯どうしよう」
返事をするかどうか、その場合の文面をどうするか、それを昨日からひたすらに悩んでた。
だから一応原因である友人に聞いたら、返してみたら? という何ともあっさりした答えだったからこんなに考えた事あるかってくらい一文一文に頭を使って打ち込み、数回深呼吸をして送ったのが三日前。
果たして返事はくるのか。好きな人がいるからって説明したから来ない可能性の方が高いけど、まぁその時はその時だ。
木曜日の夜、とある情報を手に入れたオレはさっそく斗真へと共有すべく風呂上がりに電話をかけていた。
『もしもし?』
「あ、斗真? 最新のゲームニュース見たか?」
『いや、最新のはまだ追えてないな』
「魔女騎士のニュースなんだけど、今駅前でコラボカフェやってるらしい」
『へぇ。あれ、割とマイナーなゲームだと思ってたけど、そういうのするんだな』
魔女騎士とは、アクションアドベンチャーの〝2人の魔女と屍の騎士〟という作品で、初代から斗真と一緒に遊んでたゲームだ。操作性は単純なのにエフェクトや効果音が結構派手で、プレイしてて爽快感を感じられるいいゲームだったんだよな。
今だって新作が出れば買って遊びたいくらいにはハマってる。
「意外だよな。でさ、せっかく近場でやってんだし一緒に行かないかなって思って」
『おー、いいな。行くか』
「日曜日とかどう? 昼飯がてらみたいな」
『オッケー。それでいいよ』
もしかしたら伊月くんと約束してるかなって思ったけど、そんな事はなかったみたいで普通に了承して貰えて心の中でガッツポーズをする。
そのまま待ち合わせ場所と時間を決めて通話を終えベッドへとダイブした。
例え想いを寄せていたとしても、口にさえ出さなければこうして遊ぶくらいは許されるはずだ。
進展する事なんて、絶対ないんだから。
「よし、飯食お」
服を選んだりとかいつもより身綺麗にしようとか、そんな気持ちはまったくない。
ベッドから下りて伸びをしたオレは、あらかじめ準備しておいた夕飯を温めるべくキッチンへと向かった。
もっとちゃんとしたご飯が食べたいってのは⋯贅沢だよな。
それから約束の日曜日。
10分早く待ち合わせ場所に着いたオレは、魔女騎士コラボカフェのポスターを眺めながら斗真を待ってる。飲み物とかは属性魔法の色で、食べ物はゲーム内で出て来た物がメインらしい。
朝も食べてないから見てるだけでお腹空いてきた。
予約時間は余裕を見て11時半にしといたけど、昼前とはいえ休日だから人多そうだな。
「⋯⋯⋯⋯」
何だかんだであと5分を切ったけど、斗真の姿は一向に見えない。
ちょこちょこスマホも確認してるものの、メッセージさえ入ってこなかった。
「おかしいな。アイツ、時間ピッタリに来るような奴じゃないのに」
いつもなら5分前にはそこにいるし、場合によってはオレより早い時もある。
別に待つ事は苦じゃないし、たまにはそんな事もあるだろうと構内の太い柱に寄り掛かって斗真が来る方をぼんやりと眺めていたオレは、いつの間にか約束の時間を過ぎてた事に気付いた。
(えー⋯ドタキャンですか? 斗真くん)
何の連絡もなしにそんな事するような性格はしてないから、今はスマホを触れない状態なのかもしれない。とはいえ、予約の時間もあるし来れるのかどうかは確認したいから、メッセージアプリを起動してその旨を送ろうとした時スマホが震えた。
言わずもがな斗真からの着信で、オレは呆れながら通話ボタンを押す。
「おーいー。時間過ぎてんだけどー?」
『ごめん、天音。ちょっと今日行けなくなった』
「だったら一言くらいメッセージ送って⋯」
『斗真先輩』
事前の連絡がなかった事に文句を言おうとしたオレの耳に、斗真を呼ぶ柔らかな声が聞こえてきた。
瞬間、オレの頭の中がすーっと冷静になる。
(⋯何だ、そういう事か)
『もう少し待ってて。それで天音、悪いんだけどまた今度で⋯』
「このコラボカフェ、今日までだから」
『え、あー⋯そうなのか』
「邪魔してごめんな。⋯また明日」
『いや、こっちこそごめん。明日な』
そう交わしてプツリと切れた電話に情けなくも泣きたくなる。
そりゃ幼馴染みより恋人優先なのは分かるけど、オレの方が先約なのに何でって気持ちがない訳じゃない。
こういう時、まざまざと思い知らされるな。
(⋯⋯楽しみにしてたんだけどな⋯)
2人分で予約取ったのに1人で行くのはさすがに虚しいし、仕方ないからコラボカフェは諦めるか。オマケのステッカーはちょっと欲しかったけど。
とりあえずポスターだけ写真に収め、一応外観だけでも見て行こうと思ってカフェがある通りへ足を向ける。
無性に寂しさを感じたのは、気のせいだと思いたい。
〝ゲイ専用マッチングアプリ〟。
斗真よりも早く自分がゲイである事に気付いていたからこそ斗真を好きだって自覚したんだけど、その友人はオレが今だに諦められていないって知ってるからかこれをオススメしてきたそうだ。
友人の身近にもゲイの人がいて、このアプリを通して恋人を見付けて幸せになったそうだから、オレにも新しい恋で傷を癒して欲しいらしい。
いい奴だよ、ほんと。
ただ、写真はもうちょっと何とかならなかったものか。
大口開けて飯食ってるシーンとか、誰に需要があるんだよ⋯とか思ってたのに、意外にも〝いいね〟は付くしメッセージも送られてくる。
物好きなって言いたいけど、同性だとそれだけ出会いがないんだろうなって分かるから無碍にも出来ない。まぁ明らかなヤリ目っぽいメッセージは即座に消したけど。
そんな風にチャラい文面が多い中、たった1人凄く丁寧にメッセージをくれてる人がいて、オレが(友人が)登録してから2週間何のアクションもしていないのに昨日で2回目の連絡が来てた。
その人の名前はREIさん。年は26で、外資系企業に勤めるサラリーマン。身長185センチ、体重71キロ。趣味は映画鑑賞と甘い物巡り、特技は料理だけど家事全般それなりに得意。
写真は口元から下だし、性格とかは書いてあっても本当にそうか分からないから省くけど、これだけ読めば相当モテるんじゃないかって思う。
「こんだけ丁寧に書かれてると、返事しないとって思うよなぁ⋯どうしよう」
返事をするかどうか、その場合の文面をどうするか、それを昨日からひたすらに悩んでた。
だから一応原因である友人に聞いたら、返してみたら? という何ともあっさりした答えだったからこんなに考えた事あるかってくらい一文一文に頭を使って打ち込み、数回深呼吸をして送ったのが三日前。
果たして返事はくるのか。好きな人がいるからって説明したから来ない可能性の方が高いけど、まぁその時はその時だ。
木曜日の夜、とある情報を手に入れたオレはさっそく斗真へと共有すべく風呂上がりに電話をかけていた。
『もしもし?』
「あ、斗真? 最新のゲームニュース見たか?」
『いや、最新のはまだ追えてないな』
「魔女騎士のニュースなんだけど、今駅前でコラボカフェやってるらしい」
『へぇ。あれ、割とマイナーなゲームだと思ってたけど、そういうのするんだな』
魔女騎士とは、アクションアドベンチャーの〝2人の魔女と屍の騎士〟という作品で、初代から斗真と一緒に遊んでたゲームだ。操作性は単純なのにエフェクトや効果音が結構派手で、プレイしてて爽快感を感じられるいいゲームだったんだよな。
今だって新作が出れば買って遊びたいくらいにはハマってる。
「意外だよな。でさ、せっかく近場でやってんだし一緒に行かないかなって思って」
『おー、いいな。行くか』
「日曜日とかどう? 昼飯がてらみたいな」
『オッケー。それでいいよ』
もしかしたら伊月くんと約束してるかなって思ったけど、そんな事はなかったみたいで普通に了承して貰えて心の中でガッツポーズをする。
そのまま待ち合わせ場所と時間を決めて通話を終えベッドへとダイブした。
例え想いを寄せていたとしても、口にさえ出さなければこうして遊ぶくらいは許されるはずだ。
進展する事なんて、絶対ないんだから。
「よし、飯食お」
服を選んだりとかいつもより身綺麗にしようとか、そんな気持ちはまったくない。
ベッドから下りて伸びをしたオレは、あらかじめ準備しておいた夕飯を温めるべくキッチンへと向かった。
もっとちゃんとしたご飯が食べたいってのは⋯贅沢だよな。
それから約束の日曜日。
10分早く待ち合わせ場所に着いたオレは、魔女騎士コラボカフェのポスターを眺めながら斗真を待ってる。飲み物とかは属性魔法の色で、食べ物はゲーム内で出て来た物がメインらしい。
朝も食べてないから見てるだけでお腹空いてきた。
予約時間は余裕を見て11時半にしといたけど、昼前とはいえ休日だから人多そうだな。
「⋯⋯⋯⋯」
何だかんだであと5分を切ったけど、斗真の姿は一向に見えない。
ちょこちょこスマホも確認してるものの、メッセージさえ入ってこなかった。
「おかしいな。アイツ、時間ピッタリに来るような奴じゃないのに」
いつもなら5分前にはそこにいるし、場合によってはオレより早い時もある。
別に待つ事は苦じゃないし、たまにはそんな事もあるだろうと構内の太い柱に寄り掛かって斗真が来る方をぼんやりと眺めていたオレは、いつの間にか約束の時間を過ぎてた事に気付いた。
(えー⋯ドタキャンですか? 斗真くん)
何の連絡もなしにそんな事するような性格はしてないから、今はスマホを触れない状態なのかもしれない。とはいえ、予約の時間もあるし来れるのかどうかは確認したいから、メッセージアプリを起動してその旨を送ろうとした時スマホが震えた。
言わずもがな斗真からの着信で、オレは呆れながら通話ボタンを押す。
「おーいー。時間過ぎてんだけどー?」
『ごめん、天音。ちょっと今日行けなくなった』
「だったら一言くらいメッセージ送って⋯」
『斗真先輩』
事前の連絡がなかった事に文句を言おうとしたオレの耳に、斗真を呼ぶ柔らかな声が聞こえてきた。
瞬間、オレの頭の中がすーっと冷静になる。
(⋯何だ、そういう事か)
『もう少し待ってて。それで天音、悪いんだけどまた今度で⋯』
「このコラボカフェ、今日までだから」
『え、あー⋯そうなのか』
「邪魔してごめんな。⋯また明日」
『いや、こっちこそごめん。明日な』
そう交わしてプツリと切れた電話に情けなくも泣きたくなる。
そりゃ幼馴染みより恋人優先なのは分かるけど、オレの方が先約なのに何でって気持ちがない訳じゃない。
こういう時、まざまざと思い知らされるな。
(⋯⋯楽しみにしてたんだけどな⋯)
2人分で予約取ったのに1人で行くのはさすがに虚しいし、仕方ないからコラボカフェは諦めるか。オマケのステッカーはちょっと欲しかったけど。
とりあえずポスターだけ写真に収め、一応外観だけでも見て行こうと思ってカフェがある通りへ足を向ける。
無性に寂しさを感じたのは、気のせいだと思いたい。
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