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気の置ける友人
何だかんだコラボカフェを楽しんだ翌日、斗真の好きなキャラクターのステッカーを持って大学の最寄り駅で待っていたら、伊月くんと一緒に改札を抜けて来るのが見えたから慌てて隠れた。
別にコソコソしなくていいんだけど、何となく二人でいる時に割り込みたくはないんだよな。気を遣ってるとかじゃなく、純粋にオレの感情的な問題で。
(⋯あとで渡せばいいか)
いくら恋人だからって全部の講義を被せてる訳でもないし、オレと斗真のコマが同じ時だってあるんだ。機会はいくらでもあるしと駅から出ようとした時、ポケットに入れていたスマホが通知音を鳴らした。
おっと、マナーモードにし忘れてたか。
見るとREIさんからで、今から取引先に行かなきゃいけないけど憂鬱というメッセージが送られてきてた。
「⋯また言ってる」
オレが返事をしたあと、4日目の夜にREIさんからの返信があり、それからこうしてちょくちょくやり取りしている。
文面から頼れる大人感が溢れてるのに時々こんな風に弱音を吐く事もあって、何か気を許して貰えてるみたいでちょっと嬉しいんだよな。しかも話も合うみたいで全然苦じゃないってか、意外にも楽しいんだなーこれが。
こういうアプリってあんまいいイメージなかったけど、REIさんと知り合えた事は良かったと思ってる。
続いて送られてきたアプリ内で使えるスタンプの1つであるしょんぼり犬のスタンプに笑ったオレは、「朝からお疲れ様です! これで元気出して下さい!」と送り、〝ファイト〟と書かれた看板を持った物凄くシュールなキャラクターのスタンプを追加した。
社会人はほんと、大変だよなぁ。明日は我が身。
駅にも通りにもスーツを着た人はたくさんいるし、どのお店の中にだって働いてる人がいる。かくいうオレもバイトはしてるけど、仕送り貰ってるし小遣い程度だから自分の稼ぎで生活してる人ってホントに凄いなって思う。
どのみち大学出るまでには決めなきゃいけないから、頑張んなきゃなー。
なんて考えてたらまたスマホが震えた。
『天音くんって独特なスタンプを選ぶよね』
『基本ウケ狙いなので』
『確かに見た瞬間気が緩んだよ、ありがとう』
『それは良かったです』
『それじゃあ行ってくるね。天音くんも、勉強頑張って』
『はい。行ってらっしゃい』
この文面だけ見たらもう付き合ってるだろって思われるかもしれないけど、オレ的には年上の友達って感じで下心はない。
そもそもまだ斗真の事が好きだし。
「あーまね!」
「うわっ」
やり取りの終わった画面をぼんやり眺めてたら、衝撃と肩に重みを感じてよろめきスマホが滑り落ちた。結構な音がして急いで拾ったけど、少し端が欠けたくらいでヒビは入っていなかったからホッと息を吐き原因である友人を振り返る。
「お前な、壊れたらどうすんだよ」
「ごめんごめん」
「ったく⋯」
苦笑し頭を掻く友人―秋庭 智弘は、スマホをしまうオレを見て何かを思い出したのか、「そういえば」と口を開いた。
再び歩き出したオレの隣に並び顔を覗き込んでくる。
「あれ、どうなった?」
「あれって?」
「マッチングアプリだよ。返事しようかって悩んでたじゃん」
そう、実はコイツがオレのスマホを勝手に操作した悪いヤツなんだけど、現状実害もないからとりあえずは不問にしてる。
「ああ、うん。連絡取り合ってる」
「え、ついに天音にも春が?」
「いやいや、そう簡単にはなびきませんから」
「でも続けてるって事はいい人なんだろ?」
「まぁな。メッセージだけだけど、端々から滲み出る穏やかさというか⋯とにかく話しやすい人ではある」
性格欄のとこには〝他人から温厚篤実だと評される〟って書いてあったけど、最初は繕ってるのかもって思った文面がどんな時でも何ひとつ変わらないから、本当にその通りなんだなって思った。
まだ数日しか経ってないけど、オレの中ではいい人認定されてる。
「天音が楽しいならいいんじゃね?」
「楽しいは楽しい。相変わらずヤリ目メッセージはくるけど」
「それはしゃーない。ってか、まだサイト通じてやってんの?」
「まだ早いかなーって。REIさんも言ってこないし」
「ふーん⋯ま、何か進展あったら教えて」
「進展なんてあるかどうか」
6つも離れてるし、REIさんにとってもオレは恋愛対象にはならないんじゃないかって思ってる。良くて弟。
オレだってこんだけ話しが合う兄ちゃんがいれば楽しかっただろうなってくらいだし、進展したところで友情エンドだ。
あっけらかんと答えるオレに不満なのか、智弘は首が締まらない程度に腕を回してきて頭をぽんぽんしてきた。
「ホントにもう、この子は。マッチングアプリの意味がないじゃない」
「ごめんねー」
「あたしに似て可愛い顔してるんだから、ちょっと迫れば一発よ」
「それはどうかと思うよ、母さん」
智弘のこういったおふざけはいつもの事だから流し気味に応えてやるけど、智弘に似て可愛いって何なんだ。いや、まぁ、確かに智弘もイケメン枠ではあるけども。
チラッと見上げたら目が合った智弘がニヤリと笑って前髪を弄ってきた。
「何だよー。俺がいい男だからって惚れるなよー?」
「お前はタイプじゃない」
「ですよねー」
「⋯あれ、一コマ目同じ?」
「同じ。その前に自販機行こうぜ」
「オレ麦茶」
「はいはい」
手を離してくれないから必然的にオレも行く事になるし、せっかくだし奢って貰うかと欲しい物を口にすれば笑いながら了承してくれる。
そういえば、智弘にねだった時断られた記憶ない気がするな。
「お前、いい奴だな」
「え、何急に」
首に回されたままの腕を軽く叩きながら言うと思いっきり怪訝そうな顔をされた。
仕方ないから、もう少しだけでも優しくしてやるか。
別にコソコソしなくていいんだけど、何となく二人でいる時に割り込みたくはないんだよな。気を遣ってるとかじゃなく、純粋にオレの感情的な問題で。
(⋯あとで渡せばいいか)
いくら恋人だからって全部の講義を被せてる訳でもないし、オレと斗真のコマが同じ時だってあるんだ。機会はいくらでもあるしと駅から出ようとした時、ポケットに入れていたスマホが通知音を鳴らした。
おっと、マナーモードにし忘れてたか。
見るとREIさんからで、今から取引先に行かなきゃいけないけど憂鬱というメッセージが送られてきてた。
「⋯また言ってる」
オレが返事をしたあと、4日目の夜にREIさんからの返信があり、それからこうしてちょくちょくやり取りしている。
文面から頼れる大人感が溢れてるのに時々こんな風に弱音を吐く事もあって、何か気を許して貰えてるみたいでちょっと嬉しいんだよな。しかも話も合うみたいで全然苦じゃないってか、意外にも楽しいんだなーこれが。
こういうアプリってあんまいいイメージなかったけど、REIさんと知り合えた事は良かったと思ってる。
続いて送られてきたアプリ内で使えるスタンプの1つであるしょんぼり犬のスタンプに笑ったオレは、「朝からお疲れ様です! これで元気出して下さい!」と送り、〝ファイト〟と書かれた看板を持った物凄くシュールなキャラクターのスタンプを追加した。
社会人はほんと、大変だよなぁ。明日は我が身。
駅にも通りにもスーツを着た人はたくさんいるし、どのお店の中にだって働いてる人がいる。かくいうオレもバイトはしてるけど、仕送り貰ってるし小遣い程度だから自分の稼ぎで生活してる人ってホントに凄いなって思う。
どのみち大学出るまでには決めなきゃいけないから、頑張んなきゃなー。
なんて考えてたらまたスマホが震えた。
『天音くんって独特なスタンプを選ぶよね』
『基本ウケ狙いなので』
『確かに見た瞬間気が緩んだよ、ありがとう』
『それは良かったです』
『それじゃあ行ってくるね。天音くんも、勉強頑張って』
『はい。行ってらっしゃい』
この文面だけ見たらもう付き合ってるだろって思われるかもしれないけど、オレ的には年上の友達って感じで下心はない。
そもそもまだ斗真の事が好きだし。
「あーまね!」
「うわっ」
やり取りの終わった画面をぼんやり眺めてたら、衝撃と肩に重みを感じてよろめきスマホが滑り落ちた。結構な音がして急いで拾ったけど、少し端が欠けたくらいでヒビは入っていなかったからホッと息を吐き原因である友人を振り返る。
「お前な、壊れたらどうすんだよ」
「ごめんごめん」
「ったく⋯」
苦笑し頭を掻く友人―秋庭 智弘は、スマホをしまうオレを見て何かを思い出したのか、「そういえば」と口を開いた。
再び歩き出したオレの隣に並び顔を覗き込んでくる。
「あれ、どうなった?」
「あれって?」
「マッチングアプリだよ。返事しようかって悩んでたじゃん」
そう、実はコイツがオレのスマホを勝手に操作した悪いヤツなんだけど、現状実害もないからとりあえずは不問にしてる。
「ああ、うん。連絡取り合ってる」
「え、ついに天音にも春が?」
「いやいや、そう簡単にはなびきませんから」
「でも続けてるって事はいい人なんだろ?」
「まぁな。メッセージだけだけど、端々から滲み出る穏やかさというか⋯とにかく話しやすい人ではある」
性格欄のとこには〝他人から温厚篤実だと評される〟って書いてあったけど、最初は繕ってるのかもって思った文面がどんな時でも何ひとつ変わらないから、本当にその通りなんだなって思った。
まだ数日しか経ってないけど、オレの中ではいい人認定されてる。
「天音が楽しいならいいんじゃね?」
「楽しいは楽しい。相変わらずヤリ目メッセージはくるけど」
「それはしゃーない。ってか、まだサイト通じてやってんの?」
「まだ早いかなーって。REIさんも言ってこないし」
「ふーん⋯ま、何か進展あったら教えて」
「進展なんてあるかどうか」
6つも離れてるし、REIさんにとってもオレは恋愛対象にはならないんじゃないかって思ってる。良くて弟。
オレだってこんだけ話しが合う兄ちゃんがいれば楽しかっただろうなってくらいだし、進展したところで友情エンドだ。
あっけらかんと答えるオレに不満なのか、智弘は首が締まらない程度に腕を回してきて頭をぽんぽんしてきた。
「ホントにもう、この子は。マッチングアプリの意味がないじゃない」
「ごめんねー」
「あたしに似て可愛い顔してるんだから、ちょっと迫れば一発よ」
「それはどうかと思うよ、母さん」
智弘のこういったおふざけはいつもの事だから流し気味に応えてやるけど、智弘に似て可愛いって何なんだ。いや、まぁ、確かに智弘もイケメン枠ではあるけども。
チラッと見上げたら目が合った智弘がニヤリと笑って前髪を弄ってきた。
「何だよー。俺がいい男だからって惚れるなよー?」
「お前はタイプじゃない」
「ですよねー」
「⋯あれ、一コマ目同じ?」
「同じ。その前に自販機行こうぜ」
「オレ麦茶」
「はいはい」
手を離してくれないから必然的にオレも行く事になるし、せっかくだし奢って貰うかと欲しい物を口にすれば笑いながら了承してくれる。
そういえば、智弘にねだった時断られた記憶ない気がするな。
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「え、何急に」
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仕方ないから、もう少しだけでも優しくしてやるか。
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