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決心
あのあと、オレをカフェに連れて行ってくれた玲さんは1時間くらい一緒にいてくれて、何かあったらまた連絡してって言って会社に戻って行った。
甘い物を食べて、他愛ない話をたくさんして、穏やかな声で名前を呼ばれて。
消えたいくらい沈んでた気持ちが再浮上したオレは、帰宅するなりスマホの真っ暗な画面を見てずっと考えてた。
玲さんはきっと、今のままでも何も言わないんだろうな。
でももう、あの人にあんな失礼な事したくない。何かあって縋るにしたって、斗真の事は玲さんに関係ないんだから甘えたくない。
だから決めた。
不誠実なオレを好きでいてくれる玲さんの為にも、不安にさせてる伊月くんの為にも、斗真に今までの事ちゃんと全部話すって。
その結果、幼馴染みでいられなくなったって仕方ない。
そう決めたオレはスマホの画面を点灯させると、SNSを起動させて斗真の名前をタップした。
こういうのは、決めたらすぐに行動しないとだからな。
次の日、さすがに大学内では話せないから近くの公園に斗真を呼び出したオレは、入り口から見える場所にあるベンチに腰掛け待ってた。
正直逃げ出したいくらい緊張してるけど、いつかはやらなきゃいけないんだからって足を踏ん張る。
そうこうしてるうちに斗真が現れ、眉を顰めながらもオレの隣に腰を下ろした。ピリピリしてるなぁ。
「伊月くんは?」
「先に家に送った」
「そっか」
てっきり連れて来ると思ってたから拍子抜けしたけど、まぁとりあえずは斗真とサシで話すべきか。どうせ斗真の口から伝わるだろうし。
まずは何から話そうかって思ってたら、斗真が低い声で「何で避けてた」って聞いてきた。
「あー⋯まぁそれはいろいろあるんだけど⋯」
「避けてたの、今度は否定しないんだな」
「もう誤魔化さないって決めたから」
伊月くんに言われた事は教えるつもりないけど、言わなきゃいけない事は話すつもりだ。
「誤魔化さない、ね。じゃあ、いいと思ってる人がいるってのは?」
「そう言えば斗真は引いてくれると思った。離れる理由になるから」
「そもそも離れなきゃいけないってのが分からない。別に四六時中一緒って訳じゃないのに、何で距離を取る必要があるんだ?」
「オレが斗真を、そういう意味で好きだからだよ」
「⋯え?」
斗真にとって伊月くんは〝いなきゃいけない特別な人〟で、オレは〝いて当たり前の家族〟なんだよな。
だからこそオレが避ける事に納得がいかなかったんだろうけど、その理由を口にすれば斗真はオレの方を向いて固まった。
困惑してるのが横目にも分かる。
「⋯⋯いつから⋯」
「自覚したのは中学ん時」
「お前、一度もそんな素振り見せなかっただろ」
「だって、斗真はノンケだと思ってたから。それにもし伝えて、幼馴染みでさえいられなくなったらって怖かったんだ」
おかげで何も言えないまま失恋したんだけど。
ベンチの背凭れに寄りかかり地面を見ながら自嘲気味に言えば、斗真は小さく息を吐いて項垂れた。
膝に肘をつき手で顔を覆ってる姿は、自己嫌悪に陥ってるように見える。
「⋯じゃあ俺、お前にひどい事してたんだな⋯」
「知らなかったんだから、斗真は何も悪くない」
「でも無神経に伊月の事とか相談してただろ」
「頼って貰えて嬉しかったのは本当だよ。確かにしんどいなって時もあったけど、オレだからこそ話してくれたんだろうなとは思うから」
斗真の事だから、伊月くんと付き合ってる事今だにおじさんやおばさんには言えてないんだろうし、どれだけ胸が痛くてもオレは味方でいてあげたかった。
何より斗真と伊月くんはお似合いだから、オレが何かして喧嘩したり拗れたりするのは嫌だったんだよな。
「もっと早く言ってくれてれば⋯」
「そうしたら、オレと付き合ってくれたか?」
「⋯⋯⋯」
「斗真にとってオレは弟だもんな」
例え伊月くんと知り合う前に告白してたとしても、きっと斗真と付き合う事は出来なかったって今なら思う。
顔を上げ斗真の方を向いたオレは、明らかに落ち込んでる姿に苦笑しその肩を叩いた。
「斗真が気に病む事はないんだって。オレはお前が伊月くんといて幸せだって感じるならそれでいいんだから」
「天音⋯」
「だからほら、ちゃんと答えてくれ」
真っ直ぐに斗真を見てそう言えば、斗真は眉根を寄せたあと息を吐いてオレへと向き合った。
返事は最初から分かった上で伝えたんだ、幼馴染みでもいられないって言うならオレは受け入れるだけ。
「天音の気持ちは嬉しい。でも、俺は伊月が好きだから応えられない。ごめん」
「うん、ありがとう」
「ただ天音は俺にとって、やっぱり大事な存在だから⋯」
「分かってるって」
不安そうに言うけど、それは斗真の気持ちだからオレは何も言うつもりないし受け入れてるから笑いながら頷けば、斗真もホッとしたように表情を緩めてオレの頭を撫でてきた。
「ありがとな、天音」
「ん」
こっちこそ聞いてくれて、応えてくれてありがとうだ。
ちゃんと振られたのに思ったよりも辛くはなくて、それどころかスッキリして晴れやかな気持ちになってる。
オレは立ち上がり伸びをすると、ベンチに置いていたリュックを持ち上げ肩にかけた。
「じゃ、オレ帰るな」
「天音」
「ん?」
「また明日な」
いつも当たり前のように交わされる挨拶。それはきっと、幼馴染みでさえいられなくなったらって零したオレへの、斗真なりの気遣いなんだろうな。
オレはにっと笑うと、一歩下がり片手を上げて軽く振る。
「また明日!」
きっともう、2人が並んでいる姿を見ても大丈夫。
立ち上がった斗真にくるりと背を向け、オレは足取りも軽く公園を出て家路へとついた。
玲さんにもちゃんと報告しないとな。
甘い物を食べて、他愛ない話をたくさんして、穏やかな声で名前を呼ばれて。
消えたいくらい沈んでた気持ちが再浮上したオレは、帰宅するなりスマホの真っ暗な画面を見てずっと考えてた。
玲さんはきっと、今のままでも何も言わないんだろうな。
でももう、あの人にあんな失礼な事したくない。何かあって縋るにしたって、斗真の事は玲さんに関係ないんだから甘えたくない。
だから決めた。
不誠実なオレを好きでいてくれる玲さんの為にも、不安にさせてる伊月くんの為にも、斗真に今までの事ちゃんと全部話すって。
その結果、幼馴染みでいられなくなったって仕方ない。
そう決めたオレはスマホの画面を点灯させると、SNSを起動させて斗真の名前をタップした。
こういうのは、決めたらすぐに行動しないとだからな。
次の日、さすがに大学内では話せないから近くの公園に斗真を呼び出したオレは、入り口から見える場所にあるベンチに腰掛け待ってた。
正直逃げ出したいくらい緊張してるけど、いつかはやらなきゃいけないんだからって足を踏ん張る。
そうこうしてるうちに斗真が現れ、眉を顰めながらもオレの隣に腰を下ろした。ピリピリしてるなぁ。
「伊月くんは?」
「先に家に送った」
「そっか」
てっきり連れて来ると思ってたから拍子抜けしたけど、まぁとりあえずは斗真とサシで話すべきか。どうせ斗真の口から伝わるだろうし。
まずは何から話そうかって思ってたら、斗真が低い声で「何で避けてた」って聞いてきた。
「あー⋯まぁそれはいろいろあるんだけど⋯」
「避けてたの、今度は否定しないんだな」
「もう誤魔化さないって決めたから」
伊月くんに言われた事は教えるつもりないけど、言わなきゃいけない事は話すつもりだ。
「誤魔化さない、ね。じゃあ、いいと思ってる人がいるってのは?」
「そう言えば斗真は引いてくれると思った。離れる理由になるから」
「そもそも離れなきゃいけないってのが分からない。別に四六時中一緒って訳じゃないのに、何で距離を取る必要があるんだ?」
「オレが斗真を、そういう意味で好きだからだよ」
「⋯え?」
斗真にとって伊月くんは〝いなきゃいけない特別な人〟で、オレは〝いて当たり前の家族〟なんだよな。
だからこそオレが避ける事に納得がいかなかったんだろうけど、その理由を口にすれば斗真はオレの方を向いて固まった。
困惑してるのが横目にも分かる。
「⋯⋯いつから⋯」
「自覚したのは中学ん時」
「お前、一度もそんな素振り見せなかっただろ」
「だって、斗真はノンケだと思ってたから。それにもし伝えて、幼馴染みでさえいられなくなったらって怖かったんだ」
おかげで何も言えないまま失恋したんだけど。
ベンチの背凭れに寄りかかり地面を見ながら自嘲気味に言えば、斗真は小さく息を吐いて項垂れた。
膝に肘をつき手で顔を覆ってる姿は、自己嫌悪に陥ってるように見える。
「⋯じゃあ俺、お前にひどい事してたんだな⋯」
「知らなかったんだから、斗真は何も悪くない」
「でも無神経に伊月の事とか相談してただろ」
「頼って貰えて嬉しかったのは本当だよ。確かにしんどいなって時もあったけど、オレだからこそ話してくれたんだろうなとは思うから」
斗真の事だから、伊月くんと付き合ってる事今だにおじさんやおばさんには言えてないんだろうし、どれだけ胸が痛くてもオレは味方でいてあげたかった。
何より斗真と伊月くんはお似合いだから、オレが何かして喧嘩したり拗れたりするのは嫌だったんだよな。
「もっと早く言ってくれてれば⋯」
「そうしたら、オレと付き合ってくれたか?」
「⋯⋯⋯」
「斗真にとってオレは弟だもんな」
例え伊月くんと知り合う前に告白してたとしても、きっと斗真と付き合う事は出来なかったって今なら思う。
顔を上げ斗真の方を向いたオレは、明らかに落ち込んでる姿に苦笑しその肩を叩いた。
「斗真が気に病む事はないんだって。オレはお前が伊月くんといて幸せだって感じるならそれでいいんだから」
「天音⋯」
「だからほら、ちゃんと答えてくれ」
真っ直ぐに斗真を見てそう言えば、斗真は眉根を寄せたあと息を吐いてオレへと向き合った。
返事は最初から分かった上で伝えたんだ、幼馴染みでもいられないって言うならオレは受け入れるだけ。
「天音の気持ちは嬉しい。でも、俺は伊月が好きだから応えられない。ごめん」
「うん、ありがとう」
「ただ天音は俺にとって、やっぱり大事な存在だから⋯」
「分かってるって」
不安そうに言うけど、それは斗真の気持ちだからオレは何も言うつもりないし受け入れてるから笑いながら頷けば、斗真もホッとしたように表情を緩めてオレの頭を撫でてきた。
「ありがとな、天音」
「ん」
こっちこそ聞いてくれて、応えてくれてありがとうだ。
ちゃんと振られたのに思ったよりも辛くはなくて、それどころかスッキリして晴れやかな気持ちになってる。
オレは立ち上がり伸びをすると、ベンチに置いていたリュックを持ち上げ肩にかけた。
「じゃ、オレ帰るな」
「天音」
「ん?」
「また明日な」
いつも当たり前のように交わされる挨拶。それはきっと、幼馴染みでさえいられなくなったらって零したオレへの、斗真なりの気遣いなんだろうな。
オレはにっと笑うと、一歩下がり片手を上げて軽く振る。
「また明日!」
きっともう、2人が並んでいる姿を見ても大丈夫。
立ち上がった斗真にくるりと背を向け、オレは足取りも軽く公園を出て家路へとついた。
玲さんにもちゃんと報告しないとな。
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