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優良物件
今日は3週間ぶりに玲さんと会う日だ。
仕事で大きなトラブルがあり、玲さん含む社員さん総出で奔走しどうにかこうにか解決出来たのが2週間。諸々の報告や手続きで1週間かかったらしい。
声を聞くと会いたくなるからって言われてメッセージだけのやり取りだったけど、しんどいとか疲れたとかちょっとした愚痴とか、玲さんは絶対送った来なかった。
ただ、一度だけ〝会いたい〟とは言われたけどな。
久しぶりの休みだから家でゆっくりした方がいいんじゃないかって提案したんだけど、むしろオレといたいって言ってくれて会う事になった。
斗真との事もまだ話してないし、ちょうどいいかも。
という訳で、オレは今自分が住んでるマンション前で待ってる。
玲さん、ナンパされるからって待ち合わせだけはしてくれないんだよなぁ。オレなんかを誰がナンパするって言うんだ。
ほんと、玲さんの方が心配になるよ。
スマホで時間を見ながら待っていたら黒い車が目の前で止まり、クラクションが鳴らされる。
すっかり見慣れた車の助手席に乗り込めばふわりと玲さんの香りがした。
「おはよう、天音くん」
「おはようございます。昨日はよく眠れましたか?」
「帰って泥のように眠ったよ」
「それなら良かったです」
少しでも休めたなら一安心だ。
シートベルトをかけ、玲さんの方を向くとクスリと笑われる。
「よく出来ました。それじゃあ行こうか」
「はい」
凄く自然にオレの頭を撫でた玲さんは前を向いてハンドルを握ると、アクセルを踏んでゆっくりと車を走らせ始めた。
もう何度も乗ってるけど、玲さんの運転って丁寧だから今のところ一度も酔った事ない。高校の修学旅行以降は車に乗る事あんまりなかったけど、その時も酔い止めは必須だったのに。
そういえば、今日はどこに行くんだろう。
「今日の予定は決まってるんですか?」
「天音くんと行きたいところがあって」
「行きたいところ?」
「屋内型テーマパークって知ってる?」
「知ってます。雨天でも遊べる遊園地ですよね」
室内なのにジェットコースターやメリーゴーランドがあって、本当に言葉通りの屋根がある遊園地だ。
動画投稿サイトやテレビで見るたび行ってみたいなって思ってたけど、もしかして今向かってるところってそこ?
「そう。今日はそこで遊ぼうかなって」
「オレは嬉しいですけど、玲さん疲れてるのにいいんですか?」
「天音くんと遊んでたら元気になるから」
アトラクションって乗るだけでも体力使うのに大丈夫かなって思って聞いたら、赤信号で停まった玲さんがオレの方を向いてにこっと笑う。
オレと遊んで元気になるって、やっぱり玲さんは変わってるな。
信号が青に変わり、また車が発進して外の景色が流れる。
「こうして一緒にいるだけでも、充分癒されるけどね」
「オレに癒し要素はないですよ」
「そこはほら、本人は気付かないものだから」
「そういうものですか?」
「そういうものだよ」
前もそんな事を言ってたけど、伊月くんのような子ならともかくオレのどこで玲さんは癒されてるんだろうか。
どれだけ否定しても玲さんには暖簾に腕押しで、諦めて違う話題でもって思ったオレは斗真との話を思い出し「そうだ」と切り出した。
「玲さんに言わなきゃいけない事があって」
「うん、何?」
「オレ、好きな人に告白して振られました」
「え?」
重い空気にはしたくないから明るく言えば、玲さんは呆けたような声を上げどうしてかハザードを出し路肩へと車を停めた。
何でって思ってたら驚いたようにオレを見て少しだけ身を乗り出す。
「こ、告白したの?」
「はい、しました」
「それで⋯振られた?」
「はい、ちゃんと振ってくれました」
「振ってくれました⋯」
凄い、珍しいくらい玲さんが困惑してる。
首を傾げたら眉尻を下げ、膝に置いていた手が掬われて握られた。
「そっか⋯辛かったね」
「それが、思ったよりも大丈夫なんです。自分でもびっくりなんですけど、振られるって分かってたからかむしろ伝えられてホッとしました」
「吹っ切れたって事?」
「たぶん。でも今思えば、何であんなに拗らせてたんだろうって不思議な感じです」
叶わないって分かっているのにずっと斗真を好きって思ってたのは、もしかしたら意地もあったのかもしれない。
それも本人に全部吐き出したからこそ、気持ちを下ろす事が出来たのかもな。
ふと握られた手が親指で撫でられ、玲さんの顔が近付く。
「じゃあ、次は新しい恋だね」
「え」
「自分で言うのもなんだけど、俺は優良物件だと思うよ? 一途だし、真面目だし、顔も悪くないはず」
「それは確かに⋯でも玲さん、見る目ないですよね」
超優良物件なのは間違いない。
6つも年上の玲さんからしたらオレなんて子供だろうに、どうしてそんなに好きでいてくれるのか。
苦笑しながらそう言えば、玲さんはキョトンとしたあとオレの指に口付けて柔らかく微笑んだ。
「見る目しかないと思うけど?」
「⋯⋯⋯」
「好きだよ、天音くん。俺の事、好きになって」
絶世のイケメンにこんな事言われて何とも思わないヤツいる?
顔も指先も熱くて顔を背けたら、玲さんが吐息で笑いオレの手を膝に戻してまたハンドルを握った。
好きになってなんて、そんな言い方ズルい。
仕事で大きなトラブルがあり、玲さん含む社員さん総出で奔走しどうにかこうにか解決出来たのが2週間。諸々の報告や手続きで1週間かかったらしい。
声を聞くと会いたくなるからって言われてメッセージだけのやり取りだったけど、しんどいとか疲れたとかちょっとした愚痴とか、玲さんは絶対送った来なかった。
ただ、一度だけ〝会いたい〟とは言われたけどな。
久しぶりの休みだから家でゆっくりした方がいいんじゃないかって提案したんだけど、むしろオレといたいって言ってくれて会う事になった。
斗真との事もまだ話してないし、ちょうどいいかも。
という訳で、オレは今自分が住んでるマンション前で待ってる。
玲さん、ナンパされるからって待ち合わせだけはしてくれないんだよなぁ。オレなんかを誰がナンパするって言うんだ。
ほんと、玲さんの方が心配になるよ。
スマホで時間を見ながら待っていたら黒い車が目の前で止まり、クラクションが鳴らされる。
すっかり見慣れた車の助手席に乗り込めばふわりと玲さんの香りがした。
「おはよう、天音くん」
「おはようございます。昨日はよく眠れましたか?」
「帰って泥のように眠ったよ」
「それなら良かったです」
少しでも休めたなら一安心だ。
シートベルトをかけ、玲さんの方を向くとクスリと笑われる。
「よく出来ました。それじゃあ行こうか」
「はい」
凄く自然にオレの頭を撫でた玲さんは前を向いてハンドルを握ると、アクセルを踏んでゆっくりと車を走らせ始めた。
もう何度も乗ってるけど、玲さんの運転って丁寧だから今のところ一度も酔った事ない。高校の修学旅行以降は車に乗る事あんまりなかったけど、その時も酔い止めは必須だったのに。
そういえば、今日はどこに行くんだろう。
「今日の予定は決まってるんですか?」
「天音くんと行きたいところがあって」
「行きたいところ?」
「屋内型テーマパークって知ってる?」
「知ってます。雨天でも遊べる遊園地ですよね」
室内なのにジェットコースターやメリーゴーランドがあって、本当に言葉通りの屋根がある遊園地だ。
動画投稿サイトやテレビで見るたび行ってみたいなって思ってたけど、もしかして今向かってるところってそこ?
「そう。今日はそこで遊ぼうかなって」
「オレは嬉しいですけど、玲さん疲れてるのにいいんですか?」
「天音くんと遊んでたら元気になるから」
アトラクションって乗るだけでも体力使うのに大丈夫かなって思って聞いたら、赤信号で停まった玲さんがオレの方を向いてにこっと笑う。
オレと遊んで元気になるって、やっぱり玲さんは変わってるな。
信号が青に変わり、また車が発進して外の景色が流れる。
「こうして一緒にいるだけでも、充分癒されるけどね」
「オレに癒し要素はないですよ」
「そこはほら、本人は気付かないものだから」
「そういうものですか?」
「そういうものだよ」
前もそんな事を言ってたけど、伊月くんのような子ならともかくオレのどこで玲さんは癒されてるんだろうか。
どれだけ否定しても玲さんには暖簾に腕押しで、諦めて違う話題でもって思ったオレは斗真との話を思い出し「そうだ」と切り出した。
「玲さんに言わなきゃいけない事があって」
「うん、何?」
「オレ、好きな人に告白して振られました」
「え?」
重い空気にはしたくないから明るく言えば、玲さんは呆けたような声を上げどうしてかハザードを出し路肩へと車を停めた。
何でって思ってたら驚いたようにオレを見て少しだけ身を乗り出す。
「こ、告白したの?」
「はい、しました」
「それで⋯振られた?」
「はい、ちゃんと振ってくれました」
「振ってくれました⋯」
凄い、珍しいくらい玲さんが困惑してる。
首を傾げたら眉尻を下げ、膝に置いていた手が掬われて握られた。
「そっか⋯辛かったね」
「それが、思ったよりも大丈夫なんです。自分でもびっくりなんですけど、振られるって分かってたからかむしろ伝えられてホッとしました」
「吹っ切れたって事?」
「たぶん。でも今思えば、何であんなに拗らせてたんだろうって不思議な感じです」
叶わないって分かっているのにずっと斗真を好きって思ってたのは、もしかしたら意地もあったのかもしれない。
それも本人に全部吐き出したからこそ、気持ちを下ろす事が出来たのかもな。
ふと握られた手が親指で撫でられ、玲さんの顔が近付く。
「じゃあ、次は新しい恋だね」
「え」
「自分で言うのもなんだけど、俺は優良物件だと思うよ? 一途だし、真面目だし、顔も悪くないはず」
「それは確かに⋯でも玲さん、見る目ないですよね」
超優良物件なのは間違いない。
6つも年上の玲さんからしたらオレなんて子供だろうに、どうしてそんなに好きでいてくれるのか。
苦笑しながらそう言えば、玲さんはキョトンとしたあとオレの指に口付けて柔らかく微笑んだ。
「見る目しかないと思うけど?」
「⋯⋯⋯」
「好きだよ、天音くん。俺の事、好きになって」
絶世のイケメンにこんな事言われて何とも思わないヤツいる?
顔も指先も熱くて顔を背けたら、玲さんが吐息で笑いオレの手を膝に戻してまたハンドルを握った。
好きになってなんて、そんな言い方ズルい。
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