二度目の恋は蕩けるほどに甘い

ミヅハ

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恋人だから

 何やかんやありつつクリスマスデートが始まった訳だけど、オレは目の前で繰り広げられている光景に呆然としてた。

「こんな日に1人なんてもったいないですよぉ」
「私たちとご飯でも行きません?」
「お兄さんなら喜んで奢っちゃう」

 3人の女の人が玲さんを囲って口々に誘ってる。
 トイレに行って戻ってきたらあの状態で、近付く事も出来ないオレはどうしたものかと考えてた。
 遠巻きに見てる人もいる中、あそこに割って入るのはなかなかに勇気がいる。
 でも玲さんはオレのトイレを待っていたからああなってる訳で、ここはオレが頑張らなきゃいけないよな。
 ⋯⋯うん、よし。

「悪いけど、女性に興味ないから」

 だけどオレが近付くより前に玲さんの冷たい声がして、あんなにキャッキャしてた女の人たちが「え?」って静かになった。
 周りにいた人たちも目を瞬いてる。
 戸惑う3人を意に介さず、玲さんは無表情のままその間を抜けてオレのところまでくると見せ付けるように肩を抱き寄せた。

「というか、この子以外はいらない」

 ポカンとする女の人たちに言い放ち、玲さんはオレへと視線を向けるとにこっと笑い「行こうか」と促した。少し先に進んで、肩から手を離した玲さんが今度はオレの手を握る。

「女性は積極的だよね」
「やっぱり、しょっちゅう声かけられますか?」
「うん。1人でいると特に」

 そりゃこんだけのイケメンが1人でいたら、あわよくばで声かけたくなるか。オレはさすがにナンパはしないけど。
 綺麗な顔だなってじっと見てたら玲さんが優しく笑い、空いている手で頭を撫でてきた。

「そんなに可愛い顔で見てると、イタズラしちゃうよ」
「へ⋯」
「今はまだしないけど」
「ま、まだ⋯?」
「天音くんがして欲しいならするよ?」

〝イタズラ〟と〝まだ〟って言葉で頭の中がハテナでいっぱいになってたけど、最後だけは理解出来て首を振れば玲さんは「残念」って肩を竦めた。
 玲さんが口にすると、イタズラも何かに聞こえる。
 ⋯⋯ぶっちゃけオレも男だから、興味がない訳じゃないけど。

「お腹空いたよね。そろそろ予約の時間だから、お店に行こうか」
「え、わざわざ予約してくれたんですか?」
「今日は特に混むから。お腹が空いてる天音くんを待たせるなんて出来ないよ」

 どこのお店とは決めてなかったけど、オレはファミレスとかチェーン店でも良かったから、まさか玲さんが予約を取ってくれてたなんて驚きだ。
 しかも理由がオレって⋯何かこう⋯ムズムズする。
 恋人っていつもこんな感じなんだろうか。


 玲さんが予約してくれたお店はカジュアルだけど夜景の見えるレストランで、驚く事に窓際にある半個室のカップルシートだった。
 テーブルも椅子も、窓の外を眺められるように外向きに設置されてる。
 ただクリスマスデートにしたってこれは張り切り過ぎなような⋯玲さんってこういう事サラッとやっちゃうから、オレはいつも戸惑いの方が勝ってる気がする。
 注文して、しばらく夜景を見ていたオレはふと思い出した疑問を玲さんに投げてみた。

「そういえば、メッセージを送ってきてから待ち合わせ場所にくるの、凄く早くなかったですか?」

 玲さんの会社がどこにあるかは分からないけど、オレの最寄り駅周りじゃない事は聞いた事あったし。

「ああ、出先からの直帰だったから。駐車場に車を停めてから送ったんだ」
「そうだったんですね」
「早く会いたくて、着替えもせず来ちゃったけど」
「玲さんのスーツ姿、カッコいいから全然オッケーです」

 背が高くて手も足も長いから、スーツとかロングコートが映えてイケメン度も上がってるんだよな。ただ目の保養ではあるけど、隣にいるのがオレなのはやっぱり申し訳ない。
 先に運ばれて来た水を飲みつつ、今度写真撮らせて貰おうかなって考えてたら、オレの頭に玲さんが頭を寄り掛からせてきた。

「本当? かっこいい?」
「は、はい。カッコいい、です⋯」
「幼馴染みくんより?」

 耳元で聞こえる玲さんの声にどぎまぎしながらも頷いたらまさかの斗真が出てきて、不思議に思いつつオレはチラリと玲さんを見る。
 表情は⋯見えないからちょっと分からないな。

「えっと⋯何で斗真が⋯?」
「だって天音くんは元々あの子が好きだったでしょ? それに、幼馴染みって事は俺の知らない天音くんを知ってる訳だし」

 つまりそれはヤキモチでは⋯え、玲さんでも妬くんだ。
 大人な玲さんがちょっと拗ねてるように感じて可愛いし、妬いて貰えて嬉しいんだけど⋯幼馴染みと彼氏って違うからそんな気にしなくてもいいのに。

「あの⋯でも、玲さんはもう⋯か、彼氏、ですし⋯これからのオレは玲さんしか知り得ないかな⋯と⋯」

 まだ〝彼氏〟って言葉には慣れなくて口にするのは照れ臭い。
 それでも思った事は伝えた方がいいって、少しだけ頭を動かして玲さんを見上げれば、数回目を瞬いた玲さんがぎゅうっとオレを抱き締めてきた。

「? 玲さん?」
「もう少し手加減して欲しいね」
「え?」
「可愛すぎて困る」

 困ると言われても⋯そもそもどこでそう思うのか、玲さんの感覚は今だに分からない。
 ただ玲さんの匂いに包まれてるこの状況は嬉しくて、肩に頬を寄せたら料理を運んできた店員さんが入ってきて見られてしまった。
 にこっと笑ってくれたけど、今度からお店でのハグは遠慮して貰おう。
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