二度目の恋は蕩けるほどに甘い

ミヅハ

文字の大きさ
25 / 65

年の瀬の約束

 クリスマスデートが終わりそのまま冬休みに突入したオレは、玲さんと連絡を取ったりデートしたりしつつ、参考書や資料片手に勉強に取り組んでいた。
 オレの首には、玲さんからのクリスマスプレゼントで貰った2連リングのネックレスが揺れてて、それがチラリとでも視界に入るたびにやにやしてしまう。
 ちなみに、オレが贈ったネクタイは次の日にさっそく着けてくれて、写真まで撮って教えてくれた。あとから、会社の人にネクタイの事を褒められて恋人に貰ったって自慢したと聞いて度肝を抜いたけど。
 でもそれだけ喜んでくれたんだと思うと嬉しい。
 そろそろ夕飯の時間だしとテーブルの上を片付け、床から立ち上がった時スマホが通知音を鳴らした。
 玲さんかなと思って開くと母親からで、年末年始はどうするのかって連絡だった。

(忘れてた⋯)

 いつもなら帰るか帰らないかの連絡はするんだけど、いろいろあって頭にもなかった。
 どうしよう⋯一応、玲さんの予定を聞いてから返事した方がいいのかな。
 一旦母親とのトーク画面を閉じ、玲さんの名前をタップしてオレは考えながら文字を打ち始める。
 まだ帰ってきた連絡はないから、会社にいるかもしれないけど。

『玲さんは、年末年始はどうしてますか?』

 返信はゆっくり待とうとキッチンに行き、野菜や肉を出して玲さんから教えて貰ったレシピを開く。
 最初こそ指を切ったり火傷したり生焼けだったりと散々だったけど、何度か作った事があるものなら味付けも完璧に出来るようになった。新しいレシピは必ず失敗するんだけど。

「玲さんの手料理、食べてみたいなぁ⋯」

 相変わらず料理の写真をくれるけど、盛り付けも綺麗で本当にお店で出てくるようなのばっかりなんだよな。空腹時に見たらもうヤバい。
 いつかは食べさせてくれたりするだろうか。
 野菜を不揃いにカットし、肉と一緒に炒めて合わせ調味料で味付ける。
 いつの間にか軽量スプーンとか軽量カップとか増えてて、調味料も玲さんに聞いて揃えた。おかげでキッチンが充実してて、料理を楽しいと思い始めてる。

「あ」

 スマホでレシピを見ていたらSNSの通知が来て、それをタップして表示させたオレは気の抜けた笑みを浮かべる。

『天音くんと過ごせるなら嬉しいけど、友達に誘われてたり実家に帰ったりするかもだから、天音くんの予定を優先させてね』
「また言ってる」

 どんな時でもオレの予定を気にしてくれるのは嬉しいけど、たまにはぐいぐいきてくれてもいいのにな。

『実家に帰ろうかどうか迷ってます』
『顔を見せてあげると喜ぶよ』
『でもオレ、玲さんとも過ごしたいんです』

 だから迷ってるっていうのもあるけど。
 そう送ったら、少ししてからメッセージじゃなく電話が鳴って、オレは目を瞬きつつ通話ボタンを押した。

『ズルいよ、天音くん』
「へ?」

 もしもしって言う前にそんな言葉が聞こえて、何がズルいのか分からず間抜けな声を出したら玲さんが電話越しに溜め息をく。
 オレ、何か変な文送ったっけ。

『俺とも過ごしたいって⋯あんな事言われたら、実家に帰せなくなるよ』
「え、でも本心ですし⋯」
『ほんとにズルい』

 そんなズルいズルい言わなくても。
 どう返せばいいか分からなくて悩んでると、玲さんが静かな声で話し出す。

『帰るか帰らないかは天音くんが決めるといいよ。でも、少しでもご両親に会いたい気持ちがあるなら帰った方がいい。俺とはそのあとだって一緒にいられるから』
「はい⋯」
『でも、実家に帰る前に少しでも会えたら嬉しいかな』

 そんな優しい声でそんな事を言う方がズルい気がする。
 オレはカレンダーを見て今年最後のバイト日を確認すると、数字を軽く叩いて1人頷いた。

「じゃあ、30日は空いてますか?」
『仕事が終わってからになるけど、それでもいいなら』
「会えるなら何時でも。玲さん側の駅行きます」
『駄目。迎えに行くから、マンションで待ってて』

 仕事ならオレが玲さんに合わせた方がいいって思っての提案だったんだけど、即座に却下されてしまいオレは苦笑する。
 オレに何かあるかもって考えてるのは玲さんだけだ。
 まぁクリスマスは我儘聞いて貰ったし心配させたい訳じゃないから、それで玲さんが安心するならいっか。

「はい、じゃあ待ってますね」
『たぶん19時までには行けると思う』
「分かりました」
『ちなみに食べたいものある?』

 そう聞かれた瞬間、頭に浮かんだのは玲さんの料理だった。
 でも言っていいのか分からなくて「うーん」って唸ってたら、玲さんが『良かったらなんだけど』って切り出す。

『うちで食べる?』
「え⋯いいんですか?」
『年末はどこも混むし、うちなら天音くんが食べたいもの作ってあげられるから』
「うわぁ、嬉しいです」

 食べたいものを玲さんの手作りで食べられるなんて、そんな贅沢な事ない。
 テンションも上がり、自分でも分かるくらい明るい声で答えれば玲さんはホッとしたように息を吐いた。
 今度聞いてみようって思ってた事がこんなにすぐ叶うなんて。

『当日は会社を出る時に連絡するから』
「はい、楽しみにしてます」
『俺も楽しみだよ。じゃあまたあとで』
「はい!」

 あとでっていうのはいつもの寝る前にするやり取りの事で、挨拶して通話を終えたオレは次に母親へ大晦日に帰る旨を連絡してまたレシピを表示させた。
 そうだ、お邪魔するなら手土産あった方がいいよな。
 お酒とか持って行ったら、玲さんも飲んでくれたりするんだろうか。
感想 29

あなたにおすすめの小説

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

あなたの愛したご令嬢は俺なんです

久野字
BL
「愛しい令息と結ばれたい。お前の家を金銭援助するからなんとかしろ」 没落寸前の家を救うため、強制的な契約を結ばれたアディル。一年限りで自分の体が令嬢に変わる秘薬を飲まされた彼は、無事に令息と思いを通じ合わせることに成功するが……

「仲睦まじい夫婦」であるはずのわたしの夫は、わたしの葬儀で本性をあらわした

ぽんた
恋愛
サヤ・ラドフォード侯爵夫人が死んだ。その葬儀で、マッケイン王国でも「仲睦まじい夫婦」であるはずの彼女の夫が、妻を冒涜した。その聞くに堪えない本音。そんな夫の横には、夫が従妹だというレディが寄り添っている。サヤ・ラドフォードの棺の前で、夫とその従妹はサヤを断罪する。サヤは、ほんとうに彼らがいうような悪女だったのか?  ※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

それは、最低の求婚だった。

あんど もあ
ファンタジー
三十歳年上の男の後妻として結婚させられた姉は、夜会で再会した妹に哀れな女とあざ笑われる。 そう、それは最低な縁談のはずだったから……。

別れたはずの元彼に口説かれています

水無月にいち
BL
 高三の佐倉天は一歳下の松橋和馬に一目惚れをして告白をする。お世話をするという条件の元、付き合えることになった。  なにかと世話を焼いていたが、和馬と距離が縮まらないことに焦っている。  キスを強請った以降和馬とギクシャクしてしまい、別れを告げる。  だが別れたのに和馬は何度も会いに来てーー?  「やっぱりアレがだめだった?」    アレってなに?  別れてから始まる二人の物語。

また恋人に振られたので酒に飲まれていたらゴツい騎士に求婚していた件

月衣
BL
また恋人に振られた魔導省のエリート官吏アルヴィス。失恋のショックで酒に溺れた彼は勢いのまま酒場に現れた屈強な王宮騎士ガラティスに求婚してしまう。 翌朝すべての記憶を保持したまま絶望するアルヴィスだったが当のガラティスはなぜか本気だった。 「安心しろ。俺は誠実な男だ。一度決めたことは覆さない」 逃げようとするエリート魔導師と絶対に逃がさない最強騎士 貢ぎ体質な男が捕まる強制恋愛コメディのつもりです!!

【完結】好きな人の待ち受け画像は僕ではありませんでした

鳥居之イチ
BL
———————————————————— 受:久遠 酵汰《くおん こうた》 攻:金城 桜花《かねしろ おうか》 ———————————————————— あることがきっかけで好きな人である金城の待ち受け画像を見てしまった久遠。 その待ち受け画像は久遠ではなく、クラスの別の男子でした。 上北学園高等学校では、今SNSを中心に広がっているお呪いがある。 それは消しゴムに好きな人の前を書いて、使い切ると両想いになれるというお呪いの現代版。 お呪いのルールはたったの二つ。  ■待ち受けを好きな人の写真にして3ヶ月間好きな人にそのことをバレてはいけないこと。  ■待ち受けにする写真は自分しか持っていない写真であること。 つまりそれは、金城は久遠ではなく、そのクラスの別の男子のことが好きであることを意味していた。 久遠は落ち込むも、金城のためにできることを考えた結果、 金城が金城の待ち受けと付き合えるように、協力を持ちかけることになるが… ———————————————————— この作品は他サイトでも投稿しております。