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冬休みが終わり、また大学とバイトと家を往復する日々が始まった。
夏休みほど長くはないとはいえ、今年は後半ぐうたらしまくってたから大学初日がめちゃくちゃ面倒臭くて⋯寝坊しなかっただけでも褒めて欲しい。
まぁそれも1週間も経てば慣れたけど。
これまでのお礼として玲さんに何かお返しがしたい。そう思って冬休みの間から智弘に相談してたんだけど、もういろいろ調べ過ぎて訳が分からなくなってきてた。
クリスマスはネクタイを贈ったからネクタイピンとかもありかなと思いつつ、いくつかリストにして智弘に見せたらざっと目を通したあと頬杖をつく。
「なぁ、玲さんとやらは腕時計してないのか?」
「してた気がする」
「なら腕時計は除外か⋯結構いい意味あったんだけどな」
「意味?」
時計に何の意味があるんだと首を傾げたら、智弘はニヤリと笑ってオレに顔を近付けてきた。
「腕時計をプレゼントととして贈る意味が、〝同じ時間を共有したい〟とか、〝これからも一緒に歩んでいきたい〟なんだと」
「へぇ⋯」
「天音がそう思ってるなら、考えてみてもいいんじゃないか?」
贈り物によっては何かしらあるのは知ってたけど、腕時計だとそんな意味があるのか。智弘の言う通りオレの気持ちとしてはアリだけど、まだ付き合って半年も経ってないのに重くないか?
それにいきなり腕時計のプレゼントなんて、困らせないかが心配だ。
「オレもいいとは思うけど⋯意味を玲さんが知ってたら恥ずかしくないか?」
「知ってたら知ってたでいいじゃん。それだけ好きが伝わるんだし」
「⋯それは確かに」
「喜んでくれるって」
智弘ってマイナスな事を言わないから、〝大丈夫〟って言われるだけでもそっかって納得出来るんだよな。
玲さんに突っ込まれたらたぶんめちゃくちゃ照れ臭いだろうけど、プレゼントは腕時計にしよう。
「ありがとう、智弘。助かった」
「どういたしまして。いろいろ頑張れ」
いろいろって何だって思いつつ頷き、オレはリストを片付けて店を探す為スマホを開いた。
店員さんに聞いたら、スーツに合う時計とか選んでくれるんだろうか。
「ごめん、天音くん。会社でちょっとトラブルがあったみたいで、今から行かなきゃいけないんだ。たぶん、2、3時間で帰って来れるとは思うけど⋯」
玲さんもオレも休みの土曜日。
すっかりお邪魔する事が当たり前になった玲さんの家のリビングでテレビを見てたら、電話で席を外していた玲さんが申し訳なさそうにそう言ってきた。
ありゃ、なんて思いながらオレは頷く。
「分かりました。オレの事は気にせず、解決してきてください」
「ごめんね。うちにある物なら好きに使っていいから」
「ありがとうございます」
「⋯待っててくれる?」
「はい、待ってます」
不意に不安そうな顔をするから笑いながら答えれば、玲さんはホッと笑顔になり僕を抱き締める。
それからスーツに着替え、必要な物を持ち、「行ってくるね」とオレにキスをして出て行った。「行ってらっしゃい」って見送ったけど、何か新婚さんみたいで気恥ずかしいな。
熱を持った顔を手で仰ぎつつリビングに戻ったオレは、壁にかけられた時計を見て考える。
昼ご飯は食べたばっかだし、さっき見てたテレビは終わってしまった。
映画を観るのもいいけど、やっぱりそういうのは玲さんと一緒がいい。
「あ、そうだ」
家にある物なら好きにって言ってたし、今日は読書の日にしようかな。幸い玲さんは読書家でもあって、小説とかエッセイとか自伝とか結構あるから時間潰しにはちょうどいいと思うし。
そう決めたオレは、玲さんが仕事場にしている書斎に入り本棚の前に立った。
ここは無難に小説にしとくか。
「どれにしようかな⋯」
目に付いた物を1冊1冊手に取りパラパラと捲る。
あんまり文字が詰め詰めじゃない方がいいななんて考えながら新しく本を引き抜いたら、本と本の隙間に挟まってたのか何かがヒラヒラと落ちていった。
「やば!」
何か大事な物かもと思い慌てて拾ったオレは、裏返しで落ちてたそれを拾い何気なく表に向けて固まる。
メモとか書類とかかなって思ってたら写真で、そこに写っていたのは紛れもなく玲さんなんだけど⋯金髪な上にピアスバチバチで何というか⋯ガラが悪い。
表情は気怠げで、オレの知ってる穏やかな玲さんとは違う。
っていうか、このピアスってあの時見つけたヤツ⋯だよな。
「⋯もしかして玲さん、結構ワルだった⋯?」
正直この写真を見ても信じられないけど、こんなイケメンはそうそういないから間違いようがない。
実際会ったら圧があるんだろうなと思いつつ、オレには見せないアンニュイな顔をしている玲さんにドキドキする。
カッコよすぎるだろ。
この写真の事聞きたいけど、聞いてもいいのかな。黒歴史だったりする?
「でも、不可抗力とはいえ見た事は謝った方がいいよな」
もし玲さんが見られたくなかったらそれこそ申し訳ないし。
とりあえず気になった本と写真を持ってリビングに戻りソファに座ったオレは、玲さんが帰って来るまで読書に耽る事にした。
早く時間がすぎないかな。
夏休みほど長くはないとはいえ、今年は後半ぐうたらしまくってたから大学初日がめちゃくちゃ面倒臭くて⋯寝坊しなかっただけでも褒めて欲しい。
まぁそれも1週間も経てば慣れたけど。
これまでのお礼として玲さんに何かお返しがしたい。そう思って冬休みの間から智弘に相談してたんだけど、もういろいろ調べ過ぎて訳が分からなくなってきてた。
クリスマスはネクタイを贈ったからネクタイピンとかもありかなと思いつつ、いくつかリストにして智弘に見せたらざっと目を通したあと頬杖をつく。
「なぁ、玲さんとやらは腕時計してないのか?」
「してた気がする」
「なら腕時計は除外か⋯結構いい意味あったんだけどな」
「意味?」
時計に何の意味があるんだと首を傾げたら、智弘はニヤリと笑ってオレに顔を近付けてきた。
「腕時計をプレゼントととして贈る意味が、〝同じ時間を共有したい〟とか、〝これからも一緒に歩んでいきたい〟なんだと」
「へぇ⋯」
「天音がそう思ってるなら、考えてみてもいいんじゃないか?」
贈り物によっては何かしらあるのは知ってたけど、腕時計だとそんな意味があるのか。智弘の言う通りオレの気持ちとしてはアリだけど、まだ付き合って半年も経ってないのに重くないか?
それにいきなり腕時計のプレゼントなんて、困らせないかが心配だ。
「オレもいいとは思うけど⋯意味を玲さんが知ってたら恥ずかしくないか?」
「知ってたら知ってたでいいじゃん。それだけ好きが伝わるんだし」
「⋯それは確かに」
「喜んでくれるって」
智弘ってマイナスな事を言わないから、〝大丈夫〟って言われるだけでもそっかって納得出来るんだよな。
玲さんに突っ込まれたらたぶんめちゃくちゃ照れ臭いだろうけど、プレゼントは腕時計にしよう。
「ありがとう、智弘。助かった」
「どういたしまして。いろいろ頑張れ」
いろいろって何だって思いつつ頷き、オレはリストを片付けて店を探す為スマホを開いた。
店員さんに聞いたら、スーツに合う時計とか選んでくれるんだろうか。
「ごめん、天音くん。会社でちょっとトラブルがあったみたいで、今から行かなきゃいけないんだ。たぶん、2、3時間で帰って来れるとは思うけど⋯」
玲さんもオレも休みの土曜日。
すっかりお邪魔する事が当たり前になった玲さんの家のリビングでテレビを見てたら、電話で席を外していた玲さんが申し訳なさそうにそう言ってきた。
ありゃ、なんて思いながらオレは頷く。
「分かりました。オレの事は気にせず、解決してきてください」
「ごめんね。うちにある物なら好きに使っていいから」
「ありがとうございます」
「⋯待っててくれる?」
「はい、待ってます」
不意に不安そうな顔をするから笑いながら答えれば、玲さんはホッと笑顔になり僕を抱き締める。
それからスーツに着替え、必要な物を持ち、「行ってくるね」とオレにキスをして出て行った。「行ってらっしゃい」って見送ったけど、何か新婚さんみたいで気恥ずかしいな。
熱を持った顔を手で仰ぎつつリビングに戻ったオレは、壁にかけられた時計を見て考える。
昼ご飯は食べたばっかだし、さっき見てたテレビは終わってしまった。
映画を観るのもいいけど、やっぱりそういうのは玲さんと一緒がいい。
「あ、そうだ」
家にある物なら好きにって言ってたし、今日は読書の日にしようかな。幸い玲さんは読書家でもあって、小説とかエッセイとか自伝とか結構あるから時間潰しにはちょうどいいと思うし。
そう決めたオレは、玲さんが仕事場にしている書斎に入り本棚の前に立った。
ここは無難に小説にしとくか。
「どれにしようかな⋯」
目に付いた物を1冊1冊手に取りパラパラと捲る。
あんまり文字が詰め詰めじゃない方がいいななんて考えながら新しく本を引き抜いたら、本と本の隙間に挟まってたのか何かがヒラヒラと落ちていった。
「やば!」
何か大事な物かもと思い慌てて拾ったオレは、裏返しで落ちてたそれを拾い何気なく表に向けて固まる。
メモとか書類とかかなって思ってたら写真で、そこに写っていたのは紛れもなく玲さんなんだけど⋯金髪な上にピアスバチバチで何というか⋯ガラが悪い。
表情は気怠げで、オレの知ってる穏やかな玲さんとは違う。
っていうか、このピアスってあの時見つけたヤツ⋯だよな。
「⋯もしかして玲さん、結構ワルだった⋯?」
正直この写真を見ても信じられないけど、こんなイケメンはそうそういないから間違いようがない。
実際会ったら圧があるんだろうなと思いつつ、オレには見せないアンニュイな顔をしている玲さんにドキドキする。
カッコよすぎるだろ。
この写真の事聞きたいけど、聞いてもいいのかな。黒歴史だったりする?
「でも、不可抗力とはいえ見た事は謝った方がいいよな」
もし玲さんが見られたくなかったらそれこそ申し訳ないし。
とりあえず気になった本と写真を持ってリビングに戻りソファに座ったオレは、玲さんが帰って来るまで読書に耽る事にした。
早く時間がすぎないかな。
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