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知りたい
読書の途中で片付けたり掃除したりしつつ、ソファでのんびりと本を読んでおよそ4時間。玄関の開く音がして玲さんが帰ってきた。
まだ読み終えてはいないけど、何も挟まないまま閉じて立ち上がったら同じタイミングで玲さんがリビングに入ってきて、オレを見るなり大股で近付き抱き締める。
玲さんのとは違う甘い匂いがして眉を顰めたけど、小さく息を吐く玲さんの様子に疲れてるんだって心配の方が勝った。
まぁ本来は休みで、心身ともに気も抜けてたところに仕事のトラブルだもんな。
手を上げて柔らかな髪を撫でたらオレの頭に頬擦りしてきて、なんかちょっとキュンってした。普段は大人でしっかりしてる玲さんが甘えてくれるの嬉しい。
玲さんもオレを甘やかす時、こんな気持になってんのかな。
「おかえりなさい」
「ただいま。帰って来たら天音くんがいるの、幸せ過ぎる⋯」
「誰かが出迎えてくれるの嬉しいですよね。1人暮らしして身に沁みました」
実家にいたら当たり前な事だったけど、1人だけの生活を始めて初日で「おかえり」がない寂しさを知った。
玲さんもそうなんだろうなって笑えば、パッと顔を上げた玲さんが真剣な表情でオレを見て緩く首を振る。
「違うよ。天音くんが出迎えてくれるから幸せなんだよ」
「そ、そうなんですか⋯」
「あと2年くらいでこれが当たり前になるんだなと思うと嬉し過ぎる」
そんなに楽しみにしてくれてるんだ。
照れ臭くて口をもごもごさせてたら玲さんがふわりと笑い、軽く唇を触れ合わせてきた。
数回オレの唇を啄んでから離し、もう1度ギュッてしたあと「着替えてくるね」って寝室へと向かった玲さんを見送り息を吐く。
もしかして、同棲したら毎日こんな感じなのか? あと2年で慣れてくれるならいいんだけど⋯そんな未来が見えない。
今はまだ恋愛初心者を抜けられていないからかもしれないけど。
「あ、そうだ」
時間が経ったのと本を読んでたから忘れてたけど、写真見た事、玲さんに謝らないと。
テーブルに置いていた写真を手に取ったところでラフな格好に着替えた玲さんが戻ってきたから、特に気にせず「玲さんこれ」と言って見せたら、視線を向けた玲さんが分かりやすく固まった。
「な、ど、え⋯?」
「読む本を探してた時に抜いた本と一緒に落ちてきて⋯ごめんなさい、見てしまいました」
見た事ないくらい動揺する玲さんに正直に話して謝ったら、「あー⋯」って唸ったあと額を押さえて何度も頷き写真を受け取る。
やっぱり見られたくなかったんだな⋯意図してなかったとはいえ申し訳ない事してしまった。
呆れられたかもって俯いたら、頭にポンと玲さんの手が乗せられ軽く撫でられる。
「天音くんは悪くないよ。俺が面倒がって適当に片付けたのがいけないんだ」
「でも⋯」
「天音くんが気に病む必要は本当にないから。⋯ただ、天音くんはこれを見てどう思った?」
「カッコいいって思いました」
「⋯本当に?」
「はい。金髪も似合ってるし、ピアスたくさんなのめちゃくちゃカッコいいです」
最初見た時はさすがに驚いたけど、まず玲さんがカッコいいんだからどんな格好をしてたって似合うと思うんだよな。
大きく頷いて答えたら、玲さんは安心したように肩から力を抜いた。
「その写真って、高校生くらいですか?」
「うん。中3の受験の時、いろいろあっていきなりプッツンきちゃってね。そのまま高校入って、その時にはすでにグレてた頼人に誘われる感じでどんどん見た目も変えていって⋯これはその完成形かな」
「つまり、やんちゃしてたと⋯」
「天音くんが思うほど、俺は理性的じゃないんだよ」
誰よりも優しくて、温かくて、大人な玲さん。
そりゃ全部を知ってる訳じゃないけど、この過去があっての玲さんなんだろうしむしろ意外性があってオレはいいと思ってる。
ただ、実際に会ったら怖いが勝つのは否定出来ないんだけど。
玲さんの表情に、もしかしなくても落ち込んでるんじゃって心配になったオレは、少し悩んでから玲さんの手を握り顔を覗き込んだ。
「もし玲さんがよければ、その時の話もっと聞かせて欲しいです」
「え?」
「玲さんの事知りたいから、言える事だけでもいいので全部教えて欲しいんです」
他の誰か、それこそやんちゃ仲間だったらしい頼人さんとかから聞くのは嫌だし、流れもちょうどいいからこの機会に聞けるなら聞きたい。
だからそう言えば、玲さんは数回目を瞬いたあと仕方ないなって感じで笑い、オレの手を握り返して額を合わせてきた。
「いいよ、教えてあげる。でも出来れば引かないでくれると嬉しい」
「引く訳ないじゃないですか」
オレが知りたいってお願いしたのに。
だけど引かないでとか、そんな事を言うってどんな内容の話をされるんだろう。そんなにえげつないやんちゃしてたんだろうか。
一般的な不良を想像するオレの手を引いてソファに腰を下ろした玲さんは、そのまま膝の上に横向きでオレを座らせ腕で囲うように腰のところで手を組んだ。
玲さんを見るより早く目蓋に薄めの唇が触れて、しばらくして玲さんが話し始める。
「まぁ天音くんが言った通り、高校時代はやんちゃをしてたんだよね。あ、でも、暴力とかカツアゲとかはしてないよ? そういうのは頼人の役目だったし、そんな事に労力を使いたくなかったから」
「頼人さんって、そんなに怖い人だったんだ⋯」
「大丈夫だよ。天音くんには絶対何もさせないから」
そう言ってにこっと笑った玲さんはいつも通りだけど、何かを思い出したのか空気が一瞬ひんやりとした⋯気がする。
それにしても、労力を使いたくなかったから暴力は振るわなかったって、オレには考えもつかない理由だ。
「俺はある意味高校デビューだけど、頼人はもともとその界隈では有名だったから一緒にいるうちに俺も周りから一線引かれるようになってね。目が合うだけで半殺しにされるとか言われてたよ」
「ひぇ⋯」
「⋯天音くんに出会えるって分かってたら、もっと品行方正に過ごしたんだけどな」
ぽつりと溢された言葉にオレは何も言えなくて、そこから黙り込んだ玲さんはどこか遠い目をしてたからオレは大人しく続きを待つ事にした。
ていうかサラッと流したけど、〝その界隈〟ってなんなんだ?
まだ読み終えてはいないけど、何も挟まないまま閉じて立ち上がったら同じタイミングで玲さんがリビングに入ってきて、オレを見るなり大股で近付き抱き締める。
玲さんのとは違う甘い匂いがして眉を顰めたけど、小さく息を吐く玲さんの様子に疲れてるんだって心配の方が勝った。
まぁ本来は休みで、心身ともに気も抜けてたところに仕事のトラブルだもんな。
手を上げて柔らかな髪を撫でたらオレの頭に頬擦りしてきて、なんかちょっとキュンってした。普段は大人でしっかりしてる玲さんが甘えてくれるの嬉しい。
玲さんもオレを甘やかす時、こんな気持になってんのかな。
「おかえりなさい」
「ただいま。帰って来たら天音くんがいるの、幸せ過ぎる⋯」
「誰かが出迎えてくれるの嬉しいですよね。1人暮らしして身に沁みました」
実家にいたら当たり前な事だったけど、1人だけの生活を始めて初日で「おかえり」がない寂しさを知った。
玲さんもそうなんだろうなって笑えば、パッと顔を上げた玲さんが真剣な表情でオレを見て緩く首を振る。
「違うよ。天音くんが出迎えてくれるから幸せなんだよ」
「そ、そうなんですか⋯」
「あと2年くらいでこれが当たり前になるんだなと思うと嬉し過ぎる」
そんなに楽しみにしてくれてるんだ。
照れ臭くて口をもごもごさせてたら玲さんがふわりと笑い、軽く唇を触れ合わせてきた。
数回オレの唇を啄んでから離し、もう1度ギュッてしたあと「着替えてくるね」って寝室へと向かった玲さんを見送り息を吐く。
もしかして、同棲したら毎日こんな感じなのか? あと2年で慣れてくれるならいいんだけど⋯そんな未来が見えない。
今はまだ恋愛初心者を抜けられていないからかもしれないけど。
「あ、そうだ」
時間が経ったのと本を読んでたから忘れてたけど、写真見た事、玲さんに謝らないと。
テーブルに置いていた写真を手に取ったところでラフな格好に着替えた玲さんが戻ってきたから、特に気にせず「玲さんこれ」と言って見せたら、視線を向けた玲さんが分かりやすく固まった。
「な、ど、え⋯?」
「読む本を探してた時に抜いた本と一緒に落ちてきて⋯ごめんなさい、見てしまいました」
見た事ないくらい動揺する玲さんに正直に話して謝ったら、「あー⋯」って唸ったあと額を押さえて何度も頷き写真を受け取る。
やっぱり見られたくなかったんだな⋯意図してなかったとはいえ申し訳ない事してしまった。
呆れられたかもって俯いたら、頭にポンと玲さんの手が乗せられ軽く撫でられる。
「天音くんは悪くないよ。俺が面倒がって適当に片付けたのがいけないんだ」
「でも⋯」
「天音くんが気に病む必要は本当にないから。⋯ただ、天音くんはこれを見てどう思った?」
「カッコいいって思いました」
「⋯本当に?」
「はい。金髪も似合ってるし、ピアスたくさんなのめちゃくちゃカッコいいです」
最初見た時はさすがに驚いたけど、まず玲さんがカッコいいんだからどんな格好をしてたって似合うと思うんだよな。
大きく頷いて答えたら、玲さんは安心したように肩から力を抜いた。
「その写真って、高校生くらいですか?」
「うん。中3の受験の時、いろいろあっていきなりプッツンきちゃってね。そのまま高校入って、その時にはすでにグレてた頼人に誘われる感じでどんどん見た目も変えていって⋯これはその完成形かな」
「つまり、やんちゃしてたと⋯」
「天音くんが思うほど、俺は理性的じゃないんだよ」
誰よりも優しくて、温かくて、大人な玲さん。
そりゃ全部を知ってる訳じゃないけど、この過去があっての玲さんなんだろうしむしろ意外性があってオレはいいと思ってる。
ただ、実際に会ったら怖いが勝つのは否定出来ないんだけど。
玲さんの表情に、もしかしなくても落ち込んでるんじゃって心配になったオレは、少し悩んでから玲さんの手を握り顔を覗き込んだ。
「もし玲さんがよければ、その時の話もっと聞かせて欲しいです」
「え?」
「玲さんの事知りたいから、言える事だけでもいいので全部教えて欲しいんです」
他の誰か、それこそやんちゃ仲間だったらしい頼人さんとかから聞くのは嫌だし、流れもちょうどいいからこの機会に聞けるなら聞きたい。
だからそう言えば、玲さんは数回目を瞬いたあと仕方ないなって感じで笑い、オレの手を握り返して額を合わせてきた。
「いいよ、教えてあげる。でも出来れば引かないでくれると嬉しい」
「引く訳ないじゃないですか」
オレが知りたいってお願いしたのに。
だけど引かないでとか、そんな事を言うってどんな内容の話をされるんだろう。そんなにえげつないやんちゃしてたんだろうか。
一般的な不良を想像するオレの手を引いてソファに腰を下ろした玲さんは、そのまま膝の上に横向きでオレを座らせ腕で囲うように腰のところで手を組んだ。
玲さんを見るより早く目蓋に薄めの唇が触れて、しばらくして玲さんが話し始める。
「まぁ天音くんが言った通り、高校時代はやんちゃをしてたんだよね。あ、でも、暴力とかカツアゲとかはしてないよ? そういうのは頼人の役目だったし、そんな事に労力を使いたくなかったから」
「頼人さんって、そんなに怖い人だったんだ⋯」
「大丈夫だよ。天音くんには絶対何もさせないから」
そう言ってにこっと笑った玲さんはいつも通りだけど、何かを思い出したのか空気が一瞬ひんやりとした⋯気がする。
それにしても、労力を使いたくなかったから暴力は振るわなかったって、オレには考えもつかない理由だ。
「俺はある意味高校デビューだけど、頼人はもともとその界隈では有名だったから一緒にいるうちに俺も周りから一線引かれるようになってね。目が合うだけで半殺しにされるとか言われてたよ」
「ひぇ⋯」
「⋯天音くんに出会えるって分かってたら、もっと品行方正に過ごしたんだけどな」
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