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突然の来訪
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「⋯ん、斗希く⋯」
「もっと口開けろ」
「んん⋯っ」
斗希くんの看病のおかげで熱も下がり、数日経ったとある土曜日の朝。
僕が目を覚ました時には斗希くんはもう起きてて、僕と目が合うなり「おはよう」もなく覆い被さって唇を塞いできた。
最初は触れ合わせるだけだったキスが深く長くなって、口の中や上顎が舌先で撫でられ甘えた声が出る。
「は⋯ぅ、ん⋯⋯もっと⋯」
「⋯ねだんの上手くなったな」
頭がふわふわするくらい気持ち良くて、離れたくなくて斗希くんの首に腕を回したら少しだけカサついた手が服の裾から入ってきた。脇腹から撫でるように上がってきて、尖った場所が親指で押されて腰が跳ねる。
今からするのかなってドキドキして、お腹の下が疼いて僕が膝を擦り合わせた時。
ピーンポーン。
「⋯っ⋯!?」
「⋯⋯⋯」
突然のインターホンに、僕は驚いて腕を離し両手で口を覆った。
今度は違う意味で心臓が早鐘を打ち、出るべきか知らないフリするべきか迷ってたらまたインターホンが鳴る。
通販もデリバリーも頼んでないし、特に来客予定もない。
困惑してたら今度は玄関扉がノックされ斗希くんが舌打ちして起き上がった。
「うぜぇな」
低く呟いてベッドから降りる斗希くんを僕も慌てて追い掛け、先にモニターを覗いた瞬間ポカンとしてしまった。
ずいぶんと久し振りな人たちが首を傾げて立ってる。
「⋯誰だ? このおっさんとおばさん」
「⋯⋯と、父さんと、母さん⋯」
「は?」
驚き過ぎて気の抜けた声で答える僕に斗希くんも珍しく目を丸くし、もう一度インターホンが鳴らされると急いで着替え始めた。
僕は応答しない訳にはいかないから、髪を手櫛で整えつつ通話ボタンを押す。
「ふ、2人とも急にどうしたの?」
『何だ、いるんじゃないか』
『もしかしてまだ寝てたの?』
「休みだからゆっくりしてたんだよ。先に連絡くれれば、駅まで迎えに行ったのに」
『陽依をびっくりさせようと思って』
確かにびっくりはしたけど、タイミングが悪過ぎて心臓止まりかけたよ。
チラリと斗希くんを見たら、着替えたもののどうしたらいいか分からないのか立ち尽くしてて、僕は父さんたちに少しだけ待っててと伝えモニターを消した。
ベッドを整え、着替えてカーテンと窓を開け斗希くんへと近寄る。
「俺がここにいるのマズくね?」
「たぶん、大丈夫だと思う。斗希くんの事は話してるし」
「付き合ってるって?」
「うん」
「じゃあなおさら良くねぇんじゃ⋯」
恋人って分かってるからこそいてもおかしくないと思うんだけど、斗希くんは額を押さえて息を吐くと自分の荷物を纏めて壁際に寄せ上着を被せた。
その行動の意味が分からなくて目を瞬く僕に頷き、落ち着かない様子で腰を下ろす。
たぶん入れてもいいよって事なんだろうけど、よく考えたら恋人の親に心の準備もないまま会うのって緊張するよね。
「斗希くん、僕、父さんたち連れてどこか行ってくるよ」
「いや、いい。いつかは挨拶しねぇとって思ってたんだし、むしろチャンスだろ」
「でも⋯」
「ここで逃げたら、俺はお前の隣にいられなくなる。お前の事でそんな情けない真似したくねぇよ」
情けないなんて思わないのに、僕の為に頑張ってくれるんだ。
その気持ちが嬉しくて、後ろから斗希くんに抱き着いたらすかさず頬に口付けられ腕が軽く叩かれた。
「ほら、入って貰え」
「うん。斗希くん、ありがとう。大好き」
「ん」
ちゃんと恋人になってから、こうして斗希くんの優しさや思い遣りに触れるたび好きが溢れていく。
僕からも斗希くんの頬にキスを返してから離し、玄関に向かって扉を開けたらまず母さんと目が合い朗らかに微笑まれた。
「久し振りね、陽依。元気にしてた?」
「うん、元気だよ。2人も変わりないようで安心した」
「お前が1人前になるまでは、くたばる訳にはいかんからな」
「じゃあ長生きするね」
父さんと母さんが元気でいてくれるなら、いつまでも半人前だっていい。そんな気持ちを込めて笑ったら父さんは呆れたように首を振った。
「ところで、お家には入れて貰えないのかしら」
「あ、もちろんいいんだけど⋯びっくりしないでね」
「何だ、そんなに散らかってるのか」
「そうじゃなくて⋯⋯その⋯彼氏が来てる、から⋯」
「まぁ」
彼氏がいる事は知ってても会った事はないし、背の高さもあって結構圧を感じる人だから念の為そう前置くと母さんの表情が明るくなる。
なんか、なんだろう⋯照れ臭い。
「ついに陽依の彼氏くんに会えるのね」
「緊張してるから、意地悪はしないであげてね?」
「何?緊張? そんな軟弱者なら許さんぞ」
「お父さんたら」
「斗希くん困らせたら怒るよ」
鼻を鳴らす父さんに眉を顰めつつ玄関へと招き入れる。
部屋までは短い廊下があるからまだ斗希くんの姿は見えないけど、きっと難しい顔をしてじっと待ってるんだろうな。
父さんたちに先に行って貰い、靴を並べてからあとを追った僕は、両親と斗希くんが顔を見合せて固まっている事に気付いて「あれ?」と小さく声を漏らした。
斗希くん、いつの間にか立ってるし⋯もしかして、3人とも緊張してる?
なんだか、ここだけ時が止まってるみたいだ。
「もっと口開けろ」
「んん⋯っ」
斗希くんの看病のおかげで熱も下がり、数日経ったとある土曜日の朝。
僕が目を覚ました時には斗希くんはもう起きてて、僕と目が合うなり「おはよう」もなく覆い被さって唇を塞いできた。
最初は触れ合わせるだけだったキスが深く長くなって、口の中や上顎が舌先で撫でられ甘えた声が出る。
「は⋯ぅ、ん⋯⋯もっと⋯」
「⋯ねだんの上手くなったな」
頭がふわふわするくらい気持ち良くて、離れたくなくて斗希くんの首に腕を回したら少しだけカサついた手が服の裾から入ってきた。脇腹から撫でるように上がってきて、尖った場所が親指で押されて腰が跳ねる。
今からするのかなってドキドキして、お腹の下が疼いて僕が膝を擦り合わせた時。
ピーンポーン。
「⋯っ⋯!?」
「⋯⋯⋯」
突然のインターホンに、僕は驚いて腕を離し両手で口を覆った。
今度は違う意味で心臓が早鐘を打ち、出るべきか知らないフリするべきか迷ってたらまたインターホンが鳴る。
通販もデリバリーも頼んでないし、特に来客予定もない。
困惑してたら今度は玄関扉がノックされ斗希くんが舌打ちして起き上がった。
「うぜぇな」
低く呟いてベッドから降りる斗希くんを僕も慌てて追い掛け、先にモニターを覗いた瞬間ポカンとしてしまった。
ずいぶんと久し振りな人たちが首を傾げて立ってる。
「⋯誰だ? このおっさんとおばさん」
「⋯⋯と、父さんと、母さん⋯」
「は?」
驚き過ぎて気の抜けた声で答える僕に斗希くんも珍しく目を丸くし、もう一度インターホンが鳴らされると急いで着替え始めた。
僕は応答しない訳にはいかないから、髪を手櫛で整えつつ通話ボタンを押す。
「ふ、2人とも急にどうしたの?」
『何だ、いるんじゃないか』
『もしかしてまだ寝てたの?』
「休みだからゆっくりしてたんだよ。先に連絡くれれば、駅まで迎えに行ったのに」
『陽依をびっくりさせようと思って』
確かにびっくりはしたけど、タイミングが悪過ぎて心臓止まりかけたよ。
チラリと斗希くんを見たら、着替えたもののどうしたらいいか分からないのか立ち尽くしてて、僕は父さんたちに少しだけ待っててと伝えモニターを消した。
ベッドを整え、着替えてカーテンと窓を開け斗希くんへと近寄る。
「俺がここにいるのマズくね?」
「たぶん、大丈夫だと思う。斗希くんの事は話してるし」
「付き合ってるって?」
「うん」
「じゃあなおさら良くねぇんじゃ⋯」
恋人って分かってるからこそいてもおかしくないと思うんだけど、斗希くんは額を押さえて息を吐くと自分の荷物を纏めて壁際に寄せ上着を被せた。
その行動の意味が分からなくて目を瞬く僕に頷き、落ち着かない様子で腰を下ろす。
たぶん入れてもいいよって事なんだろうけど、よく考えたら恋人の親に心の準備もないまま会うのって緊張するよね。
「斗希くん、僕、父さんたち連れてどこか行ってくるよ」
「いや、いい。いつかは挨拶しねぇとって思ってたんだし、むしろチャンスだろ」
「でも⋯」
「ここで逃げたら、俺はお前の隣にいられなくなる。お前の事でそんな情けない真似したくねぇよ」
情けないなんて思わないのに、僕の為に頑張ってくれるんだ。
その気持ちが嬉しくて、後ろから斗希くんに抱き着いたらすかさず頬に口付けられ腕が軽く叩かれた。
「ほら、入って貰え」
「うん。斗希くん、ありがとう。大好き」
「ん」
ちゃんと恋人になってから、こうして斗希くんの優しさや思い遣りに触れるたび好きが溢れていく。
僕からも斗希くんの頬にキスを返してから離し、玄関に向かって扉を開けたらまず母さんと目が合い朗らかに微笑まれた。
「久し振りね、陽依。元気にしてた?」
「うん、元気だよ。2人も変わりないようで安心した」
「お前が1人前になるまでは、くたばる訳にはいかんからな」
「じゃあ長生きするね」
父さんと母さんが元気でいてくれるなら、いつまでも半人前だっていい。そんな気持ちを込めて笑ったら父さんは呆れたように首を振った。
「ところで、お家には入れて貰えないのかしら」
「あ、もちろんいいんだけど⋯びっくりしないでね」
「何だ、そんなに散らかってるのか」
「そうじゃなくて⋯⋯その⋯彼氏が来てる、から⋯」
「まぁ」
彼氏がいる事は知ってても会った事はないし、背の高さもあって結構圧を感じる人だから念の為そう前置くと母さんの表情が明るくなる。
なんか、なんだろう⋯照れ臭い。
「ついに陽依の彼氏くんに会えるのね」
「緊張してるから、意地悪はしないであげてね?」
「何?緊張? そんな軟弱者なら許さんぞ」
「お父さんたら」
「斗希くん困らせたら怒るよ」
鼻を鳴らす父さんに眉を顰めつつ玄関へと招き入れる。
部屋までは短い廊下があるからまだ斗希くんの姿は見えないけど、きっと難しい顔をしてじっと待ってるんだろうな。
父さんたちに先に行って貰い、靴を並べてからあとを追った僕は、両親と斗希くんが顔を見合せて固まっている事に気付いて「あれ?」と小さく声を漏らした。
斗希くん、いつの間にか立ってるし⋯もしかして、3人とも緊張してる?
なんだか、ここだけ時が止まってるみたいだ。
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