人気アイドルになった美形幼馴染みに溺愛されています

ミヅハ

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番外編

たくさんの優しさに囲まれて

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 今日は取ってる講義が昼からだから午前中だけバイトをしに事務所に来てたんだけど、終業三十分ほど前に内線で社長室に呼ばれ入室するなり抱き締められたのはさすがに驚いた。すぐに高橋さんが引き剥がしてくれたけど、ここに真那がいなくて良かったと思うくらい熱烈なハグだった。
 社長であり雇用主という事もあって下手な事が言えないのが難点だよなぁ。

「あの、それでお話というのは?」
「確か午後から大学だったね。だから手短に話すけど、もう一度真那とモデルをやってくれないかな?」
「…はい?」

 手短過ぎませんか?
 キョトンとして傑さんを見ていると、お茶を淹れて運んで来てくれた高橋さんが苦笑して窘めてくれる。

「社長、さすがに諸々端折り過ぎです」
「時間がないと思って…そうだな、陽向くんは木南さんを覚えてるかな」
「確か、【soar】が雑誌や宣材の撮影をする時のカメラマンさん…ですよね?」
「そうだよ。その木南さんが、今回のコンセプトにはどうしても陽向くんが必要だって言っててね。良かったらやってくれないかなって」
「どうしても、ですか? ちなみに真那はこの事…」
「言ってないし、言わない。真那を驚かせてあげようと思って」

 また何か碌でもない事を考えているんだな、この人。
 真那がムキになるのはオレの事だけだし、ここぞとばかりに弄るつもりなんだろうなぁ。

「ちなみにちゃんとお給料は発生します」
「それは有り難いんですけど…今回は顔出ますよね?」
「だって君たち公表してるし」
「ですよね」

 別に顔出しが嫌な訳じゃないんだけど、雑誌に載る真那はいつも以上に王子様になるからオレの存在が霞みそうで…そんなんで役に立つのかと。
 それにオレ自身もドキドキして直視出来なくなる。生まれた時から見てる顔だろって突っ込まれるかもしれないけど、幼馴染みとして見てた顔と恋人として見る顔は違うんだからな。

「どうしても無理なら断っておくよ」
「あ、いえ、大丈夫です。お引き受けします」
「本当に? ありがとう、助かるよ。週末、真那を送ったあとに水島くんが迎えに行くから」
「はい」
「時間を取らせて悪かったね。大学まで送ろうか?」
「い、いえ、充分間に合うので」
「そうか。じゃあよろしく頼むよ、陽向くん」
「はい、失礼します」

 お茶を飲み干し、高橋さんにお礼を言って社長室を出るとふぅと息を吐く。気さくな人だけど、オーラが凄いから何度会っても緊張する。
 週末まで黙ってるのは心苦しいけど、企業のトップが言わない事をオレが言う訳にもいかないから頑張って知らないフリしないとな。
 それにしても、オレがどうしても必要なコンセプトって何なんだろう?





 そうして週末、何も知らずに先に出た真那を見送って数十分後、再びマンションまで来てくれた水島さんの車に乗り込みスタジオへと向かったオレはそのまま控え室に連れて行かれて目を瞬いた。
 えーっと、これはまさか…。

「ウェディングドレス…?」

 真っ白で緻密で繊細なデザインのもう誰が見ても分かる衣装に困惑してると、前回もお世話になったメイクさんがそれはもうにこやかに手招きしてくれてる。もしかしたらまた女装なのかもとは思ってたけど、これは予想外過ぎた。

「久し振りね、陽向くん。相変わらず可愛い」
「あの、あれオレが着るんですか?」
「もちろん。今回はウェディング特集が組まれててね、出版社からもぜひ真那くんを起用してくれって来てて…でもほら、真那くんって陽向くん以外には笑わないじゃない? でも花婿さんも笑顔の方が絶対いいから」
「だからオレ、なんですね」

 納得がいった。でもこれで味を占めた会社がオレをセットで起用しないか心配にはなる。そもそも前回も今回も女装が前提なのはどうかと思うよ。
 メイクさんに示された椅子に座りウィッグを被るためのネットを頭に被せられる。

「陽向くん、お肌何かしてる?」
「あ、真那が手入れも大事だよってスキンケア一式買ってくれました。ちょっと面倒ですけど、頑張って使ってます」
「そうなんだ。前より肌が綺麗になってるからびっくりしちゃった」
「なら真那様様ですね」

 正直、男だからいいじゃんって思ったりもするんだけど、現役アイドルに「お肌の手入れしてね」なんて言われたらしない訳にもいかず、おまけに高そうなケア用品をプレゼントされたらいらないとも言えなくて。
 でもそのおかげで肌の調子がすこぶるいい。

「これだけ素材が良いならナチュラルでもいいんだけど、撮影だから少し濃いめにするね」
「お任せします」

 俺には化粧云々は分からないから、プロに任せるのが一番いい。
 メイクさんの指示に従いながら目を閉じたり目線を上げたりで顔を作って貰い、ロングウィッグが装着されそれを纏め上げられる。
 ウェディングドレスを四苦八苦しながら身に着け最後にヴェールを被せれば完成だ。……結構時間かかったな。でもメイクさんが頑張ってくれたおかげで、鏡に映るオレは別人みたいになってた。

「か、可愛い! 可愛すぎる!」
「渾身の力作ですね!」
「これはもう陽向くんにファンがついちゃうんじゃないですか!?」
「う、動きにくい…」

 メイクさんや衣装さんが凄く興奮してるけど、オレはキラキラするウェディングドレスに戦々恐々してた。スカートの部分、パニエだかバニエだか分かんないもんで広がってるけど裾が長いから踏まないか心配になる。

「比嘉さん。今なら真那くん休憩入ってるから、陽向くんピンで撮っちゃおうって木南さんが」
「あ、はーい」
「転んだらどうしよう…」
「あはは、大丈夫だよ。ちゃんとエスコートさせて頂きますから」
「不慣れですいません」

 いや、男なんだから不慣れで当たり前なんだけど、メイクさんたちの手を煩わせるのが申し訳なくて。靴も見えないから歩きやすいの履いてるのに、めちゃくちゃぎこちない移動で前よりも時間がかかった。

「陽向くん」
「あ、木南さん。こんにちは、お久し振りです」
「久し振り、受けてくれてありがとう。すっごく綺麗だよ。真那くんより先に見ちゃったのが申し訳ないくらいだ」
「あはは~…ありがとうございます…」

 前もこんなやり取りした気がするなぁ。
 木南さんにセット前へと案内され、ブーケを受け取りカメラに対して横向きになる。

「最初はカメラを意識しなくていいからね」

 と申されましても現状バチバチ意識してるんだけど……とりあえず、自分の世界に入ってしまえばいい訳だよな。
 落ち着こうと目を閉じて深呼吸していると、ブーケからいい匂いがして思わず鼻を寄せた。何かこれ、ちょっと真那の匂いに似てるかも。そう思ってくんくんしたら周りからクスクスと笑い声が上がる。

「嗅いでる、可愛い」
「いい匂いでしょ?」
「あ、はい。真那の匂いに似てて好きです」
「あらあら」
「惚気られちゃった」
「……あ!」

 そんなつもりはなかったのにうっかり口が滑って思ってた事を言ってしまった。ハッとしてブーケで口元を隠すとニヤニヤされる。
 こんな大勢の前で恋人の匂いが好きとか、恥ずかしい。

「ホント可愛いなぁ。このまま専属でモデルやってくれないかな」
「真那くんに怒られますよ」
「んー、だよね。じゃあ陽向くん、今度はベンチに座ってみようか」

 あれ、いつの間にか写真撮られてた?
 スタッフさんが来てオレの手を引いて白い花で飾られたベンチに座らせスカートの形を整える。足元も見えないようにフリルの部分を綺麗にして、ベールが左肩からかかるように垂らされた。

「目を伏せて…ちょっとだけ微笑めるかな」
「……」
「じゃあ、目の前に真那くんがいると思って」

 微笑んでと言われて簡単に出来るものじゃなく、自分でもぎこちないなと思ってたらそんな事を言われた。
    目の前に真那がいる。
 考えた末に目を閉じて、ブーケの香りで真那を思い浮かべて……。

『ヒナ』

 真那の優しい声と、いつもオレを安心させてくれる大きな身体と手。真那の笑った顔が目前にある気がして口元が緩んだ瞬間シャッターが下りる音が聞こえた。

「いいね、その表情。その調子でいろいろ撮ってみようか」

 その後それなりにカメラにも慣れていくつかのポーズや表情パターンで撮影してたんだけど、途中からみんながニヤニヤし出してちょっと怖かった。
 まだ撮影中だから敢えて突っ込まなかったんだけど、入口の方に背を向けてスタッフさんにベールを直して貰ってたらいきなり「あ」って顔をするから何だと思ってたら、脇の下に手が差し込まれて抱き上げられ、そこから何とも鮮やかにお姫様抱っこにチェンジされ目を丸くする。

「ヒナ!」

 これも既視感が…でも前と違うのは、真那の目が凄くキラキラしてた事。ってか何だこの人、いつもの倍以上の王子様に出来上がってるんだけど。
 これが花婿効果か。

「ヒナ、どうしてここに? それにこの格好……ああどうしよう、凄く綺麗でドキドキしてる。誰にも見せたくない。一緒に控え室に戻ろうか」
「ま、真那、落ち着け」
「こんなに可愛くなったヒナがいるのに落ち着けないよ。そもそも何で俺が一番最後なの? 何で俺を差し置いてみんながみてるの?」
「や、えっと…」

 珍しく感情剥き出しで早口で捲し立てる真那に戸惑いながらもオレは視線をウロウロさせる。
 額が触れ合いビクリと肩が跳ねた。

「どうせ傑さん辺りの仕業だろうけど、さすがに今回は悪戯じゃ済まないな。こんなに可愛くなったヒナを雑誌に載せるなんて……誰かの手に渡らないうちに俺が全俺買い占めてやろうか」
「た、頼むから落ち着けって…」

 真那のダークな部分が垣間見え若干焦る。
 本気で発行部数丸々買いそうで恐ろしい。ってかいい加減顔を離してくれ。

「ヒナ、撮影なんて抜け出してこのまま式場予約して結婚式しよう?」
「し、しない…撮影する…」
「俺は心底嫌なんだけど………ねぇヒナ、どうして顔を隠すの?」
「……直視出来ないから」
「何を?」

 真那の顔をだよ。
 オレは赤い顔を見られないようにブーケで隠してるんだけど、真那はお構いなしに片手でオレを抱くと手首を掴んで離そうとする。信じられん…どんだけ力持ちなんだ、こいつは。

「ヒナ、ね、ちゃんと顔見せて」
「今は嫌だ」
「ヒーナ」

 意地でも見せるかと掴まれた手首に力を込めて攻防してるとピピっと音が鳴りシャッターが切られた。
 へ? っと思って木南さんを見ると、にっこり笑いながら親指を立てる。

「いいね、その自然な感じ。真那くん、もう一回陽向くんをお姫様抱っこしてくれる? 陽向くんは、真那くんを見てね」
「……うん」
「は、はい」

 引き受けた仕事である以上与えられた役目くらいはこなせなければと真那を見るけど、珍しくぶすくれた顔を表に出してた。それでもオレが見ている事に気付くとふわりと優しく微笑むんだからズルいよな。
    その顔が綺麗過ぎてまた鼻までブーケで隠すとふふっと笑われた。
 もう目元が見えてりゃOKにして欲しい。
 木南さんは何度もシャッターを切るけど指示らしい指示はして来なかった。
 おかけで最後の方は真那の顔見て笑えるようになってたけど。

「じゃあ真那くん。陽向くんを降ろして二人向かい合って…何か適当に話して」
「適当……」

 適当って何気に一番難しい言葉だよな。料理でも適宜とか適量とかあるけど、苦手な人には謎分量だと思う。

「ヒナ、この花の名前知ってる?」
「え、知らない。真那知ってるのか?」
「ううん、知らない」
「じゃあ何で聞いたんだ」

 その聞き方だとてっきり知ってるものだと思ったのに。真那のあっさりとした答えに思わず笑ってしまう。
 真那の胸元とオレの頭…ウィッグだけど、そこには桔梗の花が飾られていて、メイクさんに聞いたら〝永久の愛〟って花言葉を持ってるらしい。さすが女性、そういうのには詳しいな。

「ヒナ、見て、ここ。ここにヒナの誕生花が彫ってあるんだよ」
「ホントだ。でも真那、イヤーカフスなんて持ってなかったよな?」
「この仕事が来た時、風音の知り合いにアクセショップ経営してる人がいたからお願いしたんだ」
「へぇ……何で?」
「ウェディング特集だから、ヒナにも傍にいて欲しくて」
「!」

 な、何てキザな事を。第一、指輪だってあるのにわざわざオレの誕生花彫って貰うとか……どんだけオレを喜ばせれば気が済むんだ。

「この花みたいに赤いね」
「誰のせいだ」

 嬉しそうな真那をジロリと睨みオレはふんっと顔を背ける。でもすぐに真那の手が頬に触れて向き合わされて額に口付けられた。
 それから左手を取られ、今はウェディンググローブをしてるから見えないけど、ちゃんと指輪の嵌っている薬指にキスをする。そうなるともうオレの負けだ。
 絆されて笑みを零すと真那も安心したように笑うから、オレだって真那には本気で怒れない。
 一回でいいから真那と喧嘩をしてみたいけど。


「素敵な表情ですね」
「うん。自然で、それでいてお互いを想い合ってるってちゃんと分かる。被写体としても最高の二人だよ」
「生まれた頃から知ってる幼馴染みだからこそ、でしょうか」
「それもあるだろうけど、恋人にならなきゃあの雰囲気は出せなかっただろうね。二人とも本当に可愛い」


 真那とあーだこーだ話してる内に、最後に並んだ写真を撮りたいと言われ横並びになる。初めてちゃんと見たけど、白タキシードヤバいな。

「真那くん、陽向くんの腰に手を回して……うん、いいよ。二人ともお互いを見て、そのままこっち向いて」

 何だかまるで本当に結婚式してるみたいだなと思って真那を見上げると、同じ事を思ってたのか「誓いの言葉、言う?」って聞かれたから笑って首を振り真那に寄り掛かる。
 誓いの言葉を言わなくたってオレたちはずっと共に歩んで行くだろ?
 楽しい事は二人で倍にして、悲しい事は二人で分け合って。今までだってそうしてきた。真那は当たり前のように、そうしてオレの隣にいてくれたんだから。

「オッケー! 撮影終了! 二人ともお疲れ様!」
「お疲れ様でーす」

 やっと終わった。ウェディングドレスって普通の服に比べるとちょっと重くないか? スカートかな。前より疲れた気がする。

「お疲れ様です。それじゃあ陽向くん、こっちに行こうか」
「え?」
「比嘉さん、ヒナをどこに……」
「真那くんはここで待っててね」

 ポカンとするオレの腕を引き真那の慌てた声も何のその、メイクさん…比嘉さんはさっきの控え室へとオレを連れていくと、今度は真那が着ていたような白いタキシードを渡してきた。
 目を瞬くオレの頭からヴェールを外し、ウィッグとウェディングドレスも脱がせていく。

「あ、あの…?」
「メイクは新しくするから、一回落とすね」
「あ、はい……え?」

 新しくするんですか?
 もうホントに訳が分からない状態で一旦メイクオフにされ、今度はさっきよりも薄めなのかあんまり時間は掛からなかった。髪も整えられて、タキシードを着てネクタイを締めて貰えばあらびっくり、新郎さんの出来上がりだ。
 全身鏡で見て呆けてるオレの手がまた比嘉さんによって引かれる。

「お待たせしましたー」
「あら、陽向くん。似合ってるわよ」
「こうして見るとホントに顔小さいし華奢ね」
「ほらほら、真那くんの隣に並んで」

 これも撮影の一貫なのかと思って押されるままに真那の隣に立ったけど、真那も驚いててこれは想定外なんだと悟った。

「ヒナ、そういうのも似合うね。可愛いよ。前髪分けてるのも新鮮」
「真那の中にカッコイイって褒め言葉はないのか?」
「俺にとってヒナはずっと可愛い人だから」

 二つも下だと弟感覚が抜けないんだろうか。年齢も背も体格も性格も、真那の方がずっと上で悔しい。オレが勝てるのは若さくらいだ。
 それよりこれ、一体どういう状況なんだろう。
 スタッフさんがセットの配置を変えて、オレと真那の後ろにフラワーアーチを立ててくれた。
 ……もしかしてこれって。

「木南さん」
「僕たちからのささやかなお祝いだよ。ウェディングフォト、撮ってあげる」
「……」

 こんな事ってあるか? 真那はともかく、オレは木南さんやみんなと関わったのは今回で二度目だ。それなのに、オレと真那の事でこんなサプライズしてくれるとか……涙出そう。いや、実際出てる。

「ヒナ、泣くとメイクが落ちちゃうよ」
「そ、そんな事言ったって…」
「はは、落ちる前に写真撮ろうか」

 真那の手が頬に触れ親指が優しく目尻をなぞる。このままじゃ比嘉さんが施してくれたせっかくのメイクが台無しになるし、この場を設けてくれた木南さんやスタッフさんにも申し訳ない。

「ヒナ、笑って」
「…うん」

 深呼吸して、少しだけ崩れたメイクを直してくれた比嘉さんに頭を下げるも、どういうポーズをしたらいいのか分からなくて真那を見上げる。真那は少し考える素振りをしてオレの両腕を取ると自分の腰に回させ、真那の腕が肩を抱き寄せた。
 今までの撮影で一番密着してる気がして恥ずかしいけど、真那が嬉しそうだからオレも恥を捨ててぎゅっと抱き着く。

「じゃあ撮るよ」

 木南さんの声がかかりシャッターが切られる。一回一回フラッシュが炊かれるたびに真那の手がオレの髪や頬を撫でたりするから段々と擽ったくなってきて、笑いながら首を竦めると木南さんから終了の声がかかった。
 オレ、途中で写真撮られてるっていうの忘れてた。

「凄くいい顔してたよ、二人とも」
「写真は現像して、写真立てに入れて渡すね」
「あ、ありがとうございます。本当に…こんな……」
「ヒナ」

 オレはもう胸がいっぱいでそれ以上言葉が出て来なくて俯いた。
 こんなにして貰って良かったのかな。みんなあったかくて優しくて心がほかほかしてる。
 撮影データがパソコンに映し出されて見たんだけど、木南さんの言うように本当にいい写真だった。真那もオレも幸せそうに笑ってて、これ以上ないくらい最高のウェディングフォトだって思った。

 オレたちって本当に幸せ者だ。こんなにたくさんの人たちに受け入れて貰えて、祝って貰えて、これ以上ないくらい嬉しさで胸がいっぱいになってる。
 傑さんも、高橋さんも、水島さんも、志摩さんも、風音さんも…木南さんや比嘉さん、ここにいる素敵な人たちに少しでも返せていけたらいいな。
 オレが泣いてる事にオロオロしていた真那を見上げ、泣き笑いに近い顔を向けると心配そうにしていた真那も柔らかく微笑んでくれた。


 その後、真那とオレがモデルを務めたウェディング特集の記事が載った雑誌は飛ぶように売れ、「陽向くんのファンクラブはないんですか!?」なんて問い合わせが事務所に殺到したとかなんとか。
 オレはアイドルでもなんでもないので、そういうのは勘弁して欲しいと思いました。




 オレと真那のウェディングフォトはリビングの一番目立つところに飾ってある。どうしてか、オレがウェディングドレス着て真那と並んでるのもあるけど、これはこれでいい思い出として大事にしたいな。
 年を取って、顔や手に皺が出来たって真那はいつまでもオレの王子様だ。

「ヒナ、行くよ」
「うん」

 玄関を開けて、窓から吹き抜けた風が真那の蜂蜜色の髪を撫でる。袖を引くと一瞬キョトンとしてから微笑みオレの肩を抱き寄せた。
 近付いてくる綺麗な顔と、細められた緑がかった目に吸い寄せられるように背伸びをしたオレはふっと笑って目を閉じた。





FIN.


⟡.· ⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯ ⟡.·

 これにて番外編はひとまず終了となります。
 もしかしたら不意に書きたくなって上げるかもしれませんが、一応明日からは新しいお話を公開したいと思っております。
 新作は不良×少年の同級生もので、こちらも短編予定です。
 良ければ読んで頂けると幸いです♪


 それでは、ここまでお読み下さりありがとうございました!
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