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小さな兎は銀の狼を手懐ける【完】
兎と狼のある日の夜【ハロウィンSS】
時々訪れる忙しさが久し振りに落ち着いた今日この頃、オレは街中の雰囲気を見てもうすぐハロウィンが来るという事を知った。しかも去年は慣れない仕事もしてたからもっと忙しくて、気付いたら十一月に入ってたんだよな。
朔夜は何も言わなかったけど、たぶん一緒に過ごしたかったんじゃないかって思ってる。
だって今まさに目の前にいる朔夜が、オレに何かを差し出してるから。
「何これ?」
「うさぎの耳付きパーカー」
「パーカーはまぁいいとして、何でピンク?」
「上総は可愛いから」
果たしてそれは答えになるのか。まぁ朔夜の事だから本心なんだろうけど、これどう見ても女性用だよなぁ。いや、オレがチビガリだから、女性用もしくは子供用しかないんだ。朔夜のせいじゃない。
それに、ウサギはオレと朔夜にとっては思い入れのあるものだし、朔夜が着て欲しいなら着ますとも、はい。
「ハロウィンのコスプレ代わり?」
「ん。ルームウェアだから、そのまま寝れる」
「そうなんだ。実用的でいいな」
「絶対セットで着て欲しい」
珍しく強めの声で言ってくる朔夜に戸惑いつつも頷けば、まだ封も切られていないうさ耳付きパーカーを渡されそのまま抱き締められる。
髪に頬擦りしてくる朔夜の背中を撫でながら、バニーガールじゃなくて良かったと心底ホッとした。コスプレに関しては触れて来なかったから、朔夜が好きかどうかも分かんなかったからな。
万が一それだったら断固として拒否してたけど。
(ってか、朔夜にもして欲しいな)
どうせ自分のは用意してないだろうし、朔夜のはオレが探そうかな。オオカミって種類少なそうだけど、せめて耳くらいはあるだろ。
あ、その時は前髪上げて貰おうかな。
「⋯っ、ん⋯」
そんな事を考えていたらいつの間にか服が脱がされてて、朔夜の舌が身体を這ってた。
「さ、朔夜⋯っ、まだ風呂入ってな⋯」
「いい」
「良くな⋯んん⋯っ」
「上総は綺麗だから大丈夫」
仕事から帰ってきたままの状態だから、汗も掻いてるし少なからず埃を被ってたりもする。衛生的に良くないのに、大きな朔夜に押さえ込まれると止める事も出来ない。
胸元を強く吸われて身体が反応するのは朔夜がそうしたからだ。
オレを押し倒そうとする朔夜の肩を押すと不満そうな顔をするけど、これだけはどうしても譲れない。
「一緒でいいから⋯風呂、入りたい⋯」
「⋯⋯分かった」
若干渋々だったけど、頷いてくれた朔夜はいつものように軽々とオレを抱き上げ浴室へと向かう。その間も首筋にキスしたり甘噛みしたりと、もうすっかりその気な朔夜に元気だなと感心した。
浴室でもベッドでも、こういう時ばかりは〝待て〟をしてくれない朔夜に散々啼かされたオレは、案の定キスマと歯型だらけになってる身体を見下ろして苦笑する。
見えないところなのは偉いけど、もう少し数を減らしてくれないだろうか。
ハロウィン当日。
残業になった朔夜より早く帰宅したオレは、今日の夕飯作りを終わらせて風呂に入ってからウサギのルームウェアに袖を通したんだけど⋯マジか。
「ズボン短!」
いや、女性用なら有り得ない事もないんだけど、いくらなんでも男がこれはヤバすぎる。これ、腰で履いたら下着が見えるくらい短くて、見えてる部分ほぼ足。
オレの事大好きな朔夜でも、さすがに引くんじゃないか?
「でも絶対セットで着てって言ってたし、約束したんだから耐えるか」
落ち着かなさ半端ないけど、もうハーフパンツだと思い込む事にしてオレは朔夜用に買った物を袋から取り出した。
朔夜の髪色よりは暗めの、どっちかといえばグレー寄りの犬耳。残念ながらオオカミの耳はなかったから、これなら大差ないだろうしって事で。
ちなみに尻尾を検索したらコレジャナイ感があったからやめておいた。
「さて、そろそろ朔夜も帰ってくるし、温め直すかな」
犬耳を袋に戻して立ち上がったオレは、キッチンに移動し味噌汁の鍋を火にかける。メインや副菜を盛り付けてると、リビングの扉が開いて疲れた様子の朔夜が入ってきた。
「あ、おかえり、朔夜」
「⋯⋯⋯⋯」
「朔夜?」
声をかけたら気怠げにこっちを向いたけど、すぐに目を見瞠ると鞄も下ろさず無言で近付いてきてウサギ耳のついたフードを被せてきた。
それから抱き締められ頭に頬擦りされる。
「ただいま」
「ん、おかえり」
「可愛い、上総」
「これズボンの丈短過ぎるんだけど⋯」
「知ってる」
「知ってる? え、これわざと?」
「うん」
引くどころか朔夜の好みだったのか⋯ワンチャン朔夜がマジかってなるなら脱げはいいやとか思ってたのに、そうなら今日はこのままか。
火を止め背中に腕を回すと更に強く抱き締められる。
仕事帰りでもいい匂いのする朔夜の襟元を嗅いでたら、太腿が撫で上げられ肩が跳ねた。
「こら」
「上総の足、えろい」
「どこがだ。あ、ちょ、待て待て⋯っ」
「やだ」
「やだじゃない⋯っ」
ズボンの裾から手を入れてくる朔夜を必死に止め、両手で頬を挟むとあからさまにムッとする。いつだって欲望に忠実な恋人に呆れつつも盛り付けた夕飯を指差せば、少し考えたあとやめてくれたけど代わりに顎に指がかかって上向かされた。
すぐに唇が塞がれ舌が入ってくる。
「ん⋯っ」
「⋯⋯風呂入ってくる」
「⋯う、うん⋯」
口内をまさぐるだけまさぐり、音を立てて唇を離した朔夜がそう言って頬にまで口付けてリビングから出て行った。キスしてた時間は一分もなかったと思うけど、結構激しかったから息が上がってる。
熱くなってる顔を手団扇で冷ましつつ、ご飯と味噌汁もよそいテーブルへと運び定位置に座って待ってるとスマホが震えた。
「あれ、立夏くんだ」
朔夜の友達である立夏くんとは今でも時々やりとりしてて、楽しい事があったり面白い場所を見付けたら教えてくれるんだよな。友達ってよりも慕ってくれてるって感じで、オレにとっても可愛い後輩だ。
そんな立夏くんからのメッセージには写真と動画がついてて、どうやら何人かでコスプレしたらしく『今度は一緒にしようね』ときてた。
アニメか何かのキャラクターなのか、オレには分からないコスプレだったけど立夏くんによく似合ってる。
「楽しそうで何よりだ」
「何見てんの」
「立夏くんから送られてきた動画」
動画を再生し賑やかな内容に笑みを浮かべてると、風呂から上がった朔夜が後ろから覗き込んできた。スマホを少し持ち上げて見せると、器用に片眉を跳ね上げて向かいの椅子まで移動し腰を下ろす。
これが立夏くんじゃなければ取り上げられてたんだろうけど、朔夜にとっても大事な友達だから何も言わないんだよな。そういうとこ、凄くいいと思う。
「食べるか」
「ん」
お互いどれだけ遅く帰っても、こうして向かい合って食事をしようって約束した訳でもないのに当たり前になってる事が嬉しい。あんま表情には出ないけど、オレの料理を美味しいって思ってくれてるのも分かるし。
今日のご飯でも表情を柔らかくする朔夜に一人笑みを零し、他愛ない話をしながら夕飯を食べ進めた。
「朔夜、これ着けて」
「何。耳?」
「オオカミはなかったから犬だけど。あと、前髪も上げて欲しい」
「分かった、ちょっと待ってろ」
夕飯を終わらせ片付けも終えたあと、例の犬耳を朔夜に渡したオレは黄色の瞳が見えるように朔夜の前髪を弄りながらお願いしてみる。間髪入れずに頷き洗面所に行く後ろ姿を追い掛けたくなったけど、待ってろって言われたから大人しくソファで待機する事にした。
っていうか、さっき椅子に座った時に知ったんだけど、このズボン尻尾が付いてるみたいで若干座りにくい。これも知ってて何だろうな。
落ち着かなくてモゾモゾしてたら朔夜が戻って来て、何気なく視線を向けたオレはその姿に目を瞬いた。
相変わらずのイケメンなのに、耳が可愛さを引き立てたる。
「うわ、朔夜似合ってる! 可愛い!」
「可愛いは嬉しくねぇ」
「何で、撫でくり回したくなる。ってか撫でくり回したい!」
「⋯⋯」
朔夜の両目が見える状態って破壊力凄まじいんだけど、今はそれよりも犬耳が買っててよしよししたくなる。
腕を伸ばすオレに溜め息をついた朔夜は、それでも隣に座ると頭を差し出してきた。こういう素直なとこはいつでも可愛いんだけどな。
「よしよし、いい子だなー」
高校の時は良くこうしてたけど、大人になるにつれオレの方が撫でられる事多くなったんだよな。社会人になって朔夜も落ち着いたし、一つしか変わらないとはいえ今では朔夜の方が年上かってくらいしっかりしてる。
寝る時とかたまーにオレに腕枕させてくれるけど、朔夜はこう見えて甘やかしタイプだから基本的にはオレがされる側なんだよな。
だからここぞとばかりに撫でまくってたら、唐突に腕が掴まれてソファに押し倒された。
「さ、朔夜⋯?」
「やっぱ駄目。可愛いのは上総だけでいい」
「何で⋯」
怒ってる訳ではないんだろうけど、目の据わった朔夜はそう言うとオレの言葉を遮るように唇を塞いできた。このまま口から食べられるんじゃないかってくらい激しく舐られ、上手く息が吸えなくて半分酸欠状態になり目尻に涙が浮かぶ。
朔夜の服を強めに掴んだら離れたけど、オレはもうキスだけでヘトヘトだ。
目を閉じて荒く呼吸するオレの唇が優しく拭われる。
「何年経っても慣れねぇの、ほんと可愛い」
「⋯っ⋯悪かったな⋯」
「悪くねぇよ。ああそうだ、いい事教えてやる」
「?」
「男はみんなオオカミだよ、うさぎ先輩」
「⋯へ⋯」
久し振りの呼び方をされドキッとするも、確かに朔夜はオオカミだなとは冗談めかしてでも言えない雰囲気にたじろんだオレに意地悪く笑った朔夜は、外した犬耳をソファに放り投げてオレを抱き上げると真っ直ぐ寝室に向かいベッドへと下ろした。
犬耳が生えた朔夜、もう少し堪能したかったんだけど、どうやらオレは何かのスイッチを押してしまったらしい。
それからは下だけ脱がされ、何度も貫かれ、頭も身体もドロドロになるまで抱かれて次の日は見事に動けなくなってしまった。
ハロウィンが来るって知って、有給取ってほんっとに良かったよ。
朔夜も同じ考えで取ってたのは照れ臭かったけど、オレのお世話をしてくれたからよしとしておいた。家の事も全部やってくれたし。
来年はどんなリクエストされるか分かんないけど、ウサギに拘るあまりバニーガールを選ばれそうだからそこは言っておかないといけないかも。仮にそれを用意されたとしても、本気で着るつもりはないからな。
それならいっそ、ウサギの耳だけでもいいんだし。
ちなみにあのルームウェアは、本格的に寒くなるまで着る羽目になった事をここに報告しておきます。
FIN.
朔夜は何も言わなかったけど、たぶん一緒に過ごしたかったんじゃないかって思ってる。
だって今まさに目の前にいる朔夜が、オレに何かを差し出してるから。
「何これ?」
「うさぎの耳付きパーカー」
「パーカーはまぁいいとして、何でピンク?」
「上総は可愛いから」
果たしてそれは答えになるのか。まぁ朔夜の事だから本心なんだろうけど、これどう見ても女性用だよなぁ。いや、オレがチビガリだから、女性用もしくは子供用しかないんだ。朔夜のせいじゃない。
それに、ウサギはオレと朔夜にとっては思い入れのあるものだし、朔夜が着て欲しいなら着ますとも、はい。
「ハロウィンのコスプレ代わり?」
「ん。ルームウェアだから、そのまま寝れる」
「そうなんだ。実用的でいいな」
「絶対セットで着て欲しい」
珍しく強めの声で言ってくる朔夜に戸惑いつつも頷けば、まだ封も切られていないうさ耳付きパーカーを渡されそのまま抱き締められる。
髪に頬擦りしてくる朔夜の背中を撫でながら、バニーガールじゃなくて良かったと心底ホッとした。コスプレに関しては触れて来なかったから、朔夜が好きかどうかも分かんなかったからな。
万が一それだったら断固として拒否してたけど。
(ってか、朔夜にもして欲しいな)
どうせ自分のは用意してないだろうし、朔夜のはオレが探そうかな。オオカミって種類少なそうだけど、せめて耳くらいはあるだろ。
あ、その時は前髪上げて貰おうかな。
「⋯っ、ん⋯」
そんな事を考えていたらいつの間にか服が脱がされてて、朔夜の舌が身体を這ってた。
「さ、朔夜⋯っ、まだ風呂入ってな⋯」
「いい」
「良くな⋯んん⋯っ」
「上総は綺麗だから大丈夫」
仕事から帰ってきたままの状態だから、汗も掻いてるし少なからず埃を被ってたりもする。衛生的に良くないのに、大きな朔夜に押さえ込まれると止める事も出来ない。
胸元を強く吸われて身体が反応するのは朔夜がそうしたからだ。
オレを押し倒そうとする朔夜の肩を押すと不満そうな顔をするけど、これだけはどうしても譲れない。
「一緒でいいから⋯風呂、入りたい⋯」
「⋯⋯分かった」
若干渋々だったけど、頷いてくれた朔夜はいつものように軽々とオレを抱き上げ浴室へと向かう。その間も首筋にキスしたり甘噛みしたりと、もうすっかりその気な朔夜に元気だなと感心した。
浴室でもベッドでも、こういう時ばかりは〝待て〟をしてくれない朔夜に散々啼かされたオレは、案の定キスマと歯型だらけになってる身体を見下ろして苦笑する。
見えないところなのは偉いけど、もう少し数を減らしてくれないだろうか。
ハロウィン当日。
残業になった朔夜より早く帰宅したオレは、今日の夕飯作りを終わらせて風呂に入ってからウサギのルームウェアに袖を通したんだけど⋯マジか。
「ズボン短!」
いや、女性用なら有り得ない事もないんだけど、いくらなんでも男がこれはヤバすぎる。これ、腰で履いたら下着が見えるくらい短くて、見えてる部分ほぼ足。
オレの事大好きな朔夜でも、さすがに引くんじゃないか?
「でも絶対セットで着てって言ってたし、約束したんだから耐えるか」
落ち着かなさ半端ないけど、もうハーフパンツだと思い込む事にしてオレは朔夜用に買った物を袋から取り出した。
朔夜の髪色よりは暗めの、どっちかといえばグレー寄りの犬耳。残念ながらオオカミの耳はなかったから、これなら大差ないだろうしって事で。
ちなみに尻尾を検索したらコレジャナイ感があったからやめておいた。
「さて、そろそろ朔夜も帰ってくるし、温め直すかな」
犬耳を袋に戻して立ち上がったオレは、キッチンに移動し味噌汁の鍋を火にかける。メインや副菜を盛り付けてると、リビングの扉が開いて疲れた様子の朔夜が入ってきた。
「あ、おかえり、朔夜」
「⋯⋯⋯⋯」
「朔夜?」
声をかけたら気怠げにこっちを向いたけど、すぐに目を見瞠ると鞄も下ろさず無言で近付いてきてウサギ耳のついたフードを被せてきた。
それから抱き締められ頭に頬擦りされる。
「ただいま」
「ん、おかえり」
「可愛い、上総」
「これズボンの丈短過ぎるんだけど⋯」
「知ってる」
「知ってる? え、これわざと?」
「うん」
引くどころか朔夜の好みだったのか⋯ワンチャン朔夜がマジかってなるなら脱げはいいやとか思ってたのに、そうなら今日はこのままか。
火を止め背中に腕を回すと更に強く抱き締められる。
仕事帰りでもいい匂いのする朔夜の襟元を嗅いでたら、太腿が撫で上げられ肩が跳ねた。
「こら」
「上総の足、えろい」
「どこがだ。あ、ちょ、待て待て⋯っ」
「やだ」
「やだじゃない⋯っ」
ズボンの裾から手を入れてくる朔夜を必死に止め、両手で頬を挟むとあからさまにムッとする。いつだって欲望に忠実な恋人に呆れつつも盛り付けた夕飯を指差せば、少し考えたあとやめてくれたけど代わりに顎に指がかかって上向かされた。
すぐに唇が塞がれ舌が入ってくる。
「ん⋯っ」
「⋯⋯風呂入ってくる」
「⋯う、うん⋯」
口内をまさぐるだけまさぐり、音を立てて唇を離した朔夜がそう言って頬にまで口付けてリビングから出て行った。キスしてた時間は一分もなかったと思うけど、結構激しかったから息が上がってる。
熱くなってる顔を手団扇で冷ましつつ、ご飯と味噌汁もよそいテーブルへと運び定位置に座って待ってるとスマホが震えた。
「あれ、立夏くんだ」
朔夜の友達である立夏くんとは今でも時々やりとりしてて、楽しい事があったり面白い場所を見付けたら教えてくれるんだよな。友達ってよりも慕ってくれてるって感じで、オレにとっても可愛い後輩だ。
そんな立夏くんからのメッセージには写真と動画がついてて、どうやら何人かでコスプレしたらしく『今度は一緒にしようね』ときてた。
アニメか何かのキャラクターなのか、オレには分からないコスプレだったけど立夏くんによく似合ってる。
「楽しそうで何よりだ」
「何見てんの」
「立夏くんから送られてきた動画」
動画を再生し賑やかな内容に笑みを浮かべてると、風呂から上がった朔夜が後ろから覗き込んできた。スマホを少し持ち上げて見せると、器用に片眉を跳ね上げて向かいの椅子まで移動し腰を下ろす。
これが立夏くんじゃなければ取り上げられてたんだろうけど、朔夜にとっても大事な友達だから何も言わないんだよな。そういうとこ、凄くいいと思う。
「食べるか」
「ん」
お互いどれだけ遅く帰っても、こうして向かい合って食事をしようって約束した訳でもないのに当たり前になってる事が嬉しい。あんま表情には出ないけど、オレの料理を美味しいって思ってくれてるのも分かるし。
今日のご飯でも表情を柔らかくする朔夜に一人笑みを零し、他愛ない話をしながら夕飯を食べ進めた。
「朔夜、これ着けて」
「何。耳?」
「オオカミはなかったから犬だけど。あと、前髪も上げて欲しい」
「分かった、ちょっと待ってろ」
夕飯を終わらせ片付けも終えたあと、例の犬耳を朔夜に渡したオレは黄色の瞳が見えるように朔夜の前髪を弄りながらお願いしてみる。間髪入れずに頷き洗面所に行く後ろ姿を追い掛けたくなったけど、待ってろって言われたから大人しくソファで待機する事にした。
っていうか、さっき椅子に座った時に知ったんだけど、このズボン尻尾が付いてるみたいで若干座りにくい。これも知ってて何だろうな。
落ち着かなくてモゾモゾしてたら朔夜が戻って来て、何気なく視線を向けたオレはその姿に目を瞬いた。
相変わらずのイケメンなのに、耳が可愛さを引き立てたる。
「うわ、朔夜似合ってる! 可愛い!」
「可愛いは嬉しくねぇ」
「何で、撫でくり回したくなる。ってか撫でくり回したい!」
「⋯⋯」
朔夜の両目が見える状態って破壊力凄まじいんだけど、今はそれよりも犬耳が買っててよしよししたくなる。
腕を伸ばすオレに溜め息をついた朔夜は、それでも隣に座ると頭を差し出してきた。こういう素直なとこはいつでも可愛いんだけどな。
「よしよし、いい子だなー」
高校の時は良くこうしてたけど、大人になるにつれオレの方が撫でられる事多くなったんだよな。社会人になって朔夜も落ち着いたし、一つしか変わらないとはいえ今では朔夜の方が年上かってくらいしっかりしてる。
寝る時とかたまーにオレに腕枕させてくれるけど、朔夜はこう見えて甘やかしタイプだから基本的にはオレがされる側なんだよな。
だからここぞとばかりに撫でまくってたら、唐突に腕が掴まれてソファに押し倒された。
「さ、朔夜⋯?」
「やっぱ駄目。可愛いのは上総だけでいい」
「何で⋯」
怒ってる訳ではないんだろうけど、目の据わった朔夜はそう言うとオレの言葉を遮るように唇を塞いできた。このまま口から食べられるんじゃないかってくらい激しく舐られ、上手く息が吸えなくて半分酸欠状態になり目尻に涙が浮かぶ。
朔夜の服を強めに掴んだら離れたけど、オレはもうキスだけでヘトヘトだ。
目を閉じて荒く呼吸するオレの唇が優しく拭われる。
「何年経っても慣れねぇの、ほんと可愛い」
「⋯っ⋯悪かったな⋯」
「悪くねぇよ。ああそうだ、いい事教えてやる」
「?」
「男はみんなオオカミだよ、うさぎ先輩」
「⋯へ⋯」
久し振りの呼び方をされドキッとするも、確かに朔夜はオオカミだなとは冗談めかしてでも言えない雰囲気にたじろんだオレに意地悪く笑った朔夜は、外した犬耳をソファに放り投げてオレを抱き上げると真っ直ぐ寝室に向かいベッドへと下ろした。
犬耳が生えた朔夜、もう少し堪能したかったんだけど、どうやらオレは何かのスイッチを押してしまったらしい。
それからは下だけ脱がされ、何度も貫かれ、頭も身体もドロドロになるまで抱かれて次の日は見事に動けなくなってしまった。
ハロウィンが来るって知って、有給取ってほんっとに良かったよ。
朔夜も同じ考えで取ってたのは照れ臭かったけど、オレのお世話をしてくれたからよしとしておいた。家の事も全部やってくれたし。
来年はどんなリクエストされるか分かんないけど、ウサギに拘るあまりバニーガールを選ばれそうだからそこは言っておかないといけないかも。仮にそれを用意されたとしても、本気で着るつもりはないからな。
それならいっそ、ウサギの耳だけでもいいんだし。
ちなみにあのルームウェアは、本格的に寒くなるまで着る羽目になった事をここに報告しておきます。
FIN.
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