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噂の不良は甘やかし上手なイケメンくんでした
何気ない幸せ【クリスマスSS】
周防くんはコスプレが好き⋯というか、俺に着せるのが好きで、気に入った物があればいつの間にか買ってて俺に渡してくる。
布面積の多いものから際どいものまでいろいろあるけど、スカートが全部短いのはもう趣味なんだと思ってて、最初こそ恥ずかしかった俺も今となってはその長さの違いを比べるまでになってた。
ハロウィンやクリスマスなんて世間がそうだから毎年何かしら着てるけど、たまにはサンタさんじゃなくてトナカイとかでもいいと思うんだ。
でも周防くん、拘りがあるみたいだから今年もサンタさんだろうな。
「湊、今年はこれな」
「また新しく買ったの?」
「絶対可愛いと思ったから」
仕事から帰って来て早々、周防くんがそう言って紙袋を渡してきた。中に何が入ってるのかはもう分かってるけど、コスプレ衣装これで何着目だろう。
もうクローゼット半分が埋まってるんだけど、コスプレって一回着たら袖通さなくなるものあるよね。あのチャイナ服とか、いつのハロウィンで着たっけ。
それにしても去年のと何が違うのかな。
不思議に思いつつ引っ張り出して折り畳まれていたものを広げると、ふわりとスカートが広がった。
「す、周防くん⋯これ⋯」
「湊の白い背中、丸見えだな」
「ハリボテみたい⋯」
前はよく見るサンタさんの服なのに、背中側は肩から腰まで布がなくて背中が剥き出しになるデザインになってた。しかもノースリーブだし、外で着たら確実に風邪を引くくらい布面積が少ない。
スカートは裾に白いふわふわがついてて、その重みで揺れて可愛いのに全体的に凄くえっちだ。
「あとこの帽子とニーハイもセットな」
「う、うん」
「出来れば、俺が帰るまでには着ておいて欲しい」
「分かった」
今すぐにでも着て欲しそうなくらいソワソワしてるけど、こういうのは当日に着ないと意味ないから今はどこかに置いておこう。
洗面所から一本ハンガーを取り、部屋にあるポールに引っ掛けたら後ろから抱き締められた。
「湊、違うやつ着てシよっか」
「え?」
「セーラー服がいいな」
「い、今から?」
「今から」
まだ夜ご飯も食べてないし、お風呂にも入ってないのに。
目を瞬く俺ににこっと笑った周防くんは、小さな掛け声と共に俺を抱き上げると寝室に向かった。
クローゼットを開けてセーラー服を手にするから、仕方なく着替えればベッドに乗り上げるように言われる。
「俺の事、先輩って呼んでみて」
「⋯周防先輩?」
「うん、可愛い」
何か、どんどん周防くんが変態になっていってる気がする。
俺はベッドの上にいるのに周防くんはなかなか来てくれないから腕を伸ばしたら、少しだけ目を見瞠ったあと微笑んで抱き締めてくれた。
「あとで一緒に風呂入って、飯食おうな」
「うん」
いつだってすっぽりと包み込んでくれる周防くんの腕の中が一番安心する。
大きな手がスカートの裾から入ってきて太腿を撫でる感覚に擽ったさを感じつつ、俺は周防くんの首に腕を回して唇を触れ合わせた。
十二月二十四日、クリスマスイブ。
バイトが休みの俺は、大学から帰るとさっそく料理の準備を始めた。
周防くんは十八時には帰ってくるそうだから、それまでに終わらせて着替えればお出迎えには間に合うかな。
「ローストビーフ、フライドチキン、パン、サラダ、ポタージュ⋯二人だし、これくらい?」
ビーフシチューとかポットパイとかもありだけど、あんまり作っても食べられなかったら勿体ないし充分だろうとエプロンを身に着け、袖を捲り上げて材料をワークトップに並べて行く。
毎年だから被らないようにメニューを考えるのも大変だけど、周防くんが喜んでくれる姿を想像するだけで頑張れるんだよね。
いつも美味しいって言ってくれる周防くんの為に頑張るぞって気合いを入れて、まずはローストビーフに取り掛かった。
ちなみにソースが市販なのは、作るのが苦手だからだったりする。
出来たてが美味しい物は下準備だけ済ませた俺は、数日前に周防くんに渡されサンタ服を身に着け洗面所の鏡の前に立った。着てから気付いたんだけど、背中の部分、お尻の割れ目がチラ見えするくらい開いてる。
下着履いてる方が格好悪いくらい。
「でも脱ぐのはやだなぁ⋯」
さすがに恥ずかし過ぎる。
前だけ見たら可愛いのに、後ろを向くと途端に違うものになるの凄い。
ニーハイ履いて、サンタ帽を被って一応は完璧。
「あ、そろそろ帰って来るかな」
毎日会社から出る時にメッセージをくれる周防くんは、それからおよそ三十分後に帰って来る。でも今日はケーキを受け取りに行ってくれてるから、いつもよりは十分くらい長めに見てた。
それを考えたとしてもあと五分くらい⋯なはず。
スリッパを鳴らして玄関に向かい、背中がスースーするのを感じながら待ってたら鍵が開いて扉が引かれた。
ロングコートにマフラー姿の周防くんが寒そうに入ってきて、俺の格好を見て表情を緩める。
「おかえりなさい」
「ただいま。ヤバいな、めっちゃ可愛い」
「ぎゅーは?」
「待って、すぐ着替えてくる。あ、これケーキな」
「ありがとう」
冷え冷えな周防くんは、冬場は絶対着替えてからただいまのぎゅーをしてくれる。たぶん俺が寒い思いをしないようになんだろうけど、本当は気にしないですぐに抱き締めて欲しいんだけどな。
周防くんからケーキの箱が入った袋を受け取り、再びキッチンに戻る。
フライドチキンを揚げて、パンにチーズを乗せて焼いて、ポタージュを温めてたら着替えた周防くんがキッチンまで来て俺の背中に触れてきた。
「擽ったいよ」
「何か物足りないな⋯⋯あ、そうだ」
「へ? あ⋯っ」
指を滑らせるように撫でていた周防くんがポツリと零したあと、おもむろに俺の背中に唇を寄せて吸い付いてきた。チクッとして身体を震わせたら、また別の場所でも同じ小さな痛みが走る。
それから周防くんの唇が点々としたあと離れたんだけど、こういうのっていつもえっちな事してる時につけるから俺はちょっと反応しちゃってた。
「敏感で可愛いな」
「周防く⋯⋯ご飯⋯」
「うん、すげぇ美味そう。ってかこれ、出しとくか?」
「き、聞きながら触らないで⋯っ」
どうにか押さえていたのに、周防くんが背中に被さるようにして俺の中心を撫でて来るから慌てて前屈みになる。でも止めてくれないどころか下着の中にまで入ってきて、うなじを甘噛みされながら刺激されるから俺は耐えられなくて出してしまった。
周防くんが受け止めてくれたけど、恥ずかしくて膨れてたら手を洗い始めた周防くんに宥められる。
「もう⋯」
「ごめんごめん。手伝うから許して」
「これ運んで」
「はい」
俺がどれだけ拗ねても怒っても、周防くんはどうしてか嬉しそうで俺の方が調子が狂ってしまう。今だってにこにこだし。
こめかみに口付けてくる周防くんに少し揚げ過ぎたフライドチキンを渡し、自分はパンが入ったバスケットを運んでテーブルに置く。残りも周防くんが持って来てくれたから、俺は寝室に隠していたプレゼントを持ってくる事にした。
今年はバイトを頑張ったから奮発出来て、有名ブランドのお財布したんだ。喜んでくれるといいんだけど。
「あの、周防くん」
「ん?」
「これ⋯」
「クリスマスプレゼント? 俺もあるから、ちょっと待ってて」
「うん」
言って、リビングの収納扉に向かう周防くんを見て目を瞬く。
そこ、掃除用具も入ってるからよく開けるのに気付かなかった。
しばらくガサガサしてた周防くんが、クリスマスカラーの包装された袋を手に戻ってきてそれを差し出して微笑んだ。
「はい」
「ありがとう! 開けてもいい?」
「もちろん。俺も開けるな」
「うん」
プレゼントを交換し、俺はリボンを解いて口を広げ中身を取り出す。
毛足が長めなボア素材の手触りのいい犬の着ぐるみで、中は裏起毛になってるから物凄く暖かそう。難点はつなぎタイプなところだけど、股のとこ開くし、お腹が出る心配はなさそうで安心だ。
「可愛いし、ふかふかしてる」
「今日からそれ着て寝てな」
「うん」
「ってか、俺のブランド物じゃん。本当にいいの?」
「周防くんにって渡したんだから、使って」
お洒落な周防くんだからこそお洒落な物を持って貰いたい。
笑って頷くと周防くんも表情を緩めてくれて、俺の頭を抱き寄せ額に口付けてきた。
「ありがとう」
「俺の方こそ、ありがとう」
「ん。飯食うか」
「ちょっと冷めちゃったかも」
「大丈夫、湊の料理は美味いから」
フライドチキン、少し失敗しちゃったのに。
定位置に腰を下ろす周防くんを見て着ぐるみをソファに置いた俺も向かいに座る。
今年も一緒にクリスマスが過ごせて良かったな。
「あ、そうだ。クラッカー買ってきたけど鳴らす?」
「やりたい!」
「いいよ、ほら」
「いっせーのでしよ」
「あっちに向けてな」
「うん。じゃあいくよ? いっせーのーで!」
クラッカーなんて滅多に触らない物まで用意してくれてた周防くんから一つ貰って、料理にかからない方に向けて掛け声と同時に紐を引っ張る。
破裂音がしてカラフルな紐がパッと飛び出た。今は飛び散らない物が主流だから、片付けも楽になったよね。
「これ、分かっててもビクッとするな」
「ね。でも楽しい」
「だな。湊と一緒だから、何だって楽しいよ」
「俺も。周防くんと一緒なら、ずっと楽しいし幸せ」
「まだまだ幸せにするから、覚悟しとけ」
「俺だってたくさん幸せになって貰うから、覚悟しといてね」
クラッカーから飛び出した紐をくるくると手繰り寄せ、端に置くとその手が取られ指先に口付けられる。その手を握ってお返しに周防くんの指にチュッてしたら、苦笑して頭を少しだけ乱暴に撫でられた。
「煽るな。ほら、食うぞ」
「あ、うん。⋯周防くん、あーん」
煽ってはないんだけどなと思いながらも、周防くんがフォークを手にしたのを見て俺も持つと、少し考えてローストビーフを二切れ刺し周防くんの口元へ差し出す。それにふっと笑った周防くんはパクッと食べて頷いた。
「ん、美味い。湊も食べな」
同じようにローストビーフを刺した周防くんが俺にも食べさせてくれて、こうして二人して美味しいねって笑う何気ない時間が本当に幸せだ。
向かいで今度はチキンにかぶりつく周防くんを見て笑った俺は、立ち上がって椅子ごと隣に移動するとスマホを構えて自分たちを写真に収めた。
来年は何を作ってどんなプレゼントにしようかな。
FIN.
布面積の多いものから際どいものまでいろいろあるけど、スカートが全部短いのはもう趣味なんだと思ってて、最初こそ恥ずかしかった俺も今となってはその長さの違いを比べるまでになってた。
ハロウィンやクリスマスなんて世間がそうだから毎年何かしら着てるけど、たまにはサンタさんじゃなくてトナカイとかでもいいと思うんだ。
でも周防くん、拘りがあるみたいだから今年もサンタさんだろうな。
「湊、今年はこれな」
「また新しく買ったの?」
「絶対可愛いと思ったから」
仕事から帰って来て早々、周防くんがそう言って紙袋を渡してきた。中に何が入ってるのかはもう分かってるけど、コスプレ衣装これで何着目だろう。
もうクローゼット半分が埋まってるんだけど、コスプレって一回着たら袖通さなくなるものあるよね。あのチャイナ服とか、いつのハロウィンで着たっけ。
それにしても去年のと何が違うのかな。
不思議に思いつつ引っ張り出して折り畳まれていたものを広げると、ふわりとスカートが広がった。
「す、周防くん⋯これ⋯」
「湊の白い背中、丸見えだな」
「ハリボテみたい⋯」
前はよく見るサンタさんの服なのに、背中側は肩から腰まで布がなくて背中が剥き出しになるデザインになってた。しかもノースリーブだし、外で着たら確実に風邪を引くくらい布面積が少ない。
スカートは裾に白いふわふわがついてて、その重みで揺れて可愛いのに全体的に凄くえっちだ。
「あとこの帽子とニーハイもセットな」
「う、うん」
「出来れば、俺が帰るまでには着ておいて欲しい」
「分かった」
今すぐにでも着て欲しそうなくらいソワソワしてるけど、こういうのは当日に着ないと意味ないから今はどこかに置いておこう。
洗面所から一本ハンガーを取り、部屋にあるポールに引っ掛けたら後ろから抱き締められた。
「湊、違うやつ着てシよっか」
「え?」
「セーラー服がいいな」
「い、今から?」
「今から」
まだ夜ご飯も食べてないし、お風呂にも入ってないのに。
目を瞬く俺ににこっと笑った周防くんは、小さな掛け声と共に俺を抱き上げると寝室に向かった。
クローゼットを開けてセーラー服を手にするから、仕方なく着替えればベッドに乗り上げるように言われる。
「俺の事、先輩って呼んでみて」
「⋯周防先輩?」
「うん、可愛い」
何か、どんどん周防くんが変態になっていってる気がする。
俺はベッドの上にいるのに周防くんはなかなか来てくれないから腕を伸ばしたら、少しだけ目を見瞠ったあと微笑んで抱き締めてくれた。
「あとで一緒に風呂入って、飯食おうな」
「うん」
いつだってすっぽりと包み込んでくれる周防くんの腕の中が一番安心する。
大きな手がスカートの裾から入ってきて太腿を撫でる感覚に擽ったさを感じつつ、俺は周防くんの首に腕を回して唇を触れ合わせた。
十二月二十四日、クリスマスイブ。
バイトが休みの俺は、大学から帰るとさっそく料理の準備を始めた。
周防くんは十八時には帰ってくるそうだから、それまでに終わらせて着替えればお出迎えには間に合うかな。
「ローストビーフ、フライドチキン、パン、サラダ、ポタージュ⋯二人だし、これくらい?」
ビーフシチューとかポットパイとかもありだけど、あんまり作っても食べられなかったら勿体ないし充分だろうとエプロンを身に着け、袖を捲り上げて材料をワークトップに並べて行く。
毎年だから被らないようにメニューを考えるのも大変だけど、周防くんが喜んでくれる姿を想像するだけで頑張れるんだよね。
いつも美味しいって言ってくれる周防くんの為に頑張るぞって気合いを入れて、まずはローストビーフに取り掛かった。
ちなみにソースが市販なのは、作るのが苦手だからだったりする。
出来たてが美味しい物は下準備だけ済ませた俺は、数日前に周防くんに渡されサンタ服を身に着け洗面所の鏡の前に立った。着てから気付いたんだけど、背中の部分、お尻の割れ目がチラ見えするくらい開いてる。
下着履いてる方が格好悪いくらい。
「でも脱ぐのはやだなぁ⋯」
さすがに恥ずかし過ぎる。
前だけ見たら可愛いのに、後ろを向くと途端に違うものになるの凄い。
ニーハイ履いて、サンタ帽を被って一応は完璧。
「あ、そろそろ帰って来るかな」
毎日会社から出る時にメッセージをくれる周防くんは、それからおよそ三十分後に帰って来る。でも今日はケーキを受け取りに行ってくれてるから、いつもよりは十分くらい長めに見てた。
それを考えたとしてもあと五分くらい⋯なはず。
スリッパを鳴らして玄関に向かい、背中がスースーするのを感じながら待ってたら鍵が開いて扉が引かれた。
ロングコートにマフラー姿の周防くんが寒そうに入ってきて、俺の格好を見て表情を緩める。
「おかえりなさい」
「ただいま。ヤバいな、めっちゃ可愛い」
「ぎゅーは?」
「待って、すぐ着替えてくる。あ、これケーキな」
「ありがとう」
冷え冷えな周防くんは、冬場は絶対着替えてからただいまのぎゅーをしてくれる。たぶん俺が寒い思いをしないようになんだろうけど、本当は気にしないですぐに抱き締めて欲しいんだけどな。
周防くんからケーキの箱が入った袋を受け取り、再びキッチンに戻る。
フライドチキンを揚げて、パンにチーズを乗せて焼いて、ポタージュを温めてたら着替えた周防くんがキッチンまで来て俺の背中に触れてきた。
「擽ったいよ」
「何か物足りないな⋯⋯あ、そうだ」
「へ? あ⋯っ」
指を滑らせるように撫でていた周防くんがポツリと零したあと、おもむろに俺の背中に唇を寄せて吸い付いてきた。チクッとして身体を震わせたら、また別の場所でも同じ小さな痛みが走る。
それから周防くんの唇が点々としたあと離れたんだけど、こういうのっていつもえっちな事してる時につけるから俺はちょっと反応しちゃってた。
「敏感で可愛いな」
「周防く⋯⋯ご飯⋯」
「うん、すげぇ美味そう。ってかこれ、出しとくか?」
「き、聞きながら触らないで⋯っ」
どうにか押さえていたのに、周防くんが背中に被さるようにして俺の中心を撫でて来るから慌てて前屈みになる。でも止めてくれないどころか下着の中にまで入ってきて、うなじを甘噛みされながら刺激されるから俺は耐えられなくて出してしまった。
周防くんが受け止めてくれたけど、恥ずかしくて膨れてたら手を洗い始めた周防くんに宥められる。
「もう⋯」
「ごめんごめん。手伝うから許して」
「これ運んで」
「はい」
俺がどれだけ拗ねても怒っても、周防くんはどうしてか嬉しそうで俺の方が調子が狂ってしまう。今だってにこにこだし。
こめかみに口付けてくる周防くんに少し揚げ過ぎたフライドチキンを渡し、自分はパンが入ったバスケットを運んでテーブルに置く。残りも周防くんが持って来てくれたから、俺は寝室に隠していたプレゼントを持ってくる事にした。
今年はバイトを頑張ったから奮発出来て、有名ブランドのお財布したんだ。喜んでくれるといいんだけど。
「あの、周防くん」
「ん?」
「これ⋯」
「クリスマスプレゼント? 俺もあるから、ちょっと待ってて」
「うん」
言って、リビングの収納扉に向かう周防くんを見て目を瞬く。
そこ、掃除用具も入ってるからよく開けるのに気付かなかった。
しばらくガサガサしてた周防くんが、クリスマスカラーの包装された袋を手に戻ってきてそれを差し出して微笑んだ。
「はい」
「ありがとう! 開けてもいい?」
「もちろん。俺も開けるな」
「うん」
プレゼントを交換し、俺はリボンを解いて口を広げ中身を取り出す。
毛足が長めなボア素材の手触りのいい犬の着ぐるみで、中は裏起毛になってるから物凄く暖かそう。難点はつなぎタイプなところだけど、股のとこ開くし、お腹が出る心配はなさそうで安心だ。
「可愛いし、ふかふかしてる」
「今日からそれ着て寝てな」
「うん」
「ってか、俺のブランド物じゃん。本当にいいの?」
「周防くんにって渡したんだから、使って」
お洒落な周防くんだからこそお洒落な物を持って貰いたい。
笑って頷くと周防くんも表情を緩めてくれて、俺の頭を抱き寄せ額に口付けてきた。
「ありがとう」
「俺の方こそ、ありがとう」
「ん。飯食うか」
「ちょっと冷めちゃったかも」
「大丈夫、湊の料理は美味いから」
フライドチキン、少し失敗しちゃったのに。
定位置に腰を下ろす周防くんを見て着ぐるみをソファに置いた俺も向かいに座る。
今年も一緒にクリスマスが過ごせて良かったな。
「あ、そうだ。クラッカー買ってきたけど鳴らす?」
「やりたい!」
「いいよ、ほら」
「いっせーのでしよ」
「あっちに向けてな」
「うん。じゃあいくよ? いっせーのーで!」
クラッカーなんて滅多に触らない物まで用意してくれてた周防くんから一つ貰って、料理にかからない方に向けて掛け声と同時に紐を引っ張る。
破裂音がしてカラフルな紐がパッと飛び出た。今は飛び散らない物が主流だから、片付けも楽になったよね。
「これ、分かっててもビクッとするな」
「ね。でも楽しい」
「だな。湊と一緒だから、何だって楽しいよ」
「俺も。周防くんと一緒なら、ずっと楽しいし幸せ」
「まだまだ幸せにするから、覚悟しとけ」
「俺だってたくさん幸せになって貰うから、覚悟しといてね」
クラッカーから飛び出した紐をくるくると手繰り寄せ、端に置くとその手が取られ指先に口付けられる。その手を握ってお返しに周防くんの指にチュッてしたら、苦笑して頭を少しだけ乱暴に撫でられた。
「煽るな。ほら、食うぞ」
「あ、うん。⋯周防くん、あーん」
煽ってはないんだけどなと思いながらも、周防くんがフォークを手にしたのを見て俺も持つと、少し考えてローストビーフを二切れ刺し周防くんの口元へ差し出す。それにふっと笑った周防くんはパクッと食べて頷いた。
「ん、美味い。湊も食べな」
同じようにローストビーフを刺した周防くんが俺にも食べさせてくれて、こうして二人して美味しいねって笑う何気ない時間が本当に幸せだ。
向かいで今度はチキンにかぶりつく周防くんを見て笑った俺は、立ち上がって椅子ごと隣に移動するとスマホを構えて自分たちを写真に収めた。
来年は何を作ってどんなプレゼントにしようかな。
FIN.
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