7 / 79
勉強会
季節はすっかり夏を迎え、もうすぐ夏休み前の期末テストがある。
勉強が苦手な俺は毎回赤点回避の為に必死に勉強してるんだけど、今回は何と天ヶ瀬くんが教えてくれる事になった。
場所はいつものように天ヶ瀬くんの家で、言われた時間にインターホンを鳴らしたら、落ち着いたダークブラウンのふわふわした髪の綺麗な女の人が出て来て驚く。
家を間違えたかと思って焦ってたら奥から天ヶ瀬くんが現れて「あ!」と声を上げた。
「何してんだよ」
「お客様が来たから」
「俺の客だから出なくていいっつったろ」
「そういえばそうだったわね。ごめんね、櫂くん」
「ったく⋯⋯楪、入ってこい」
女の人は天ヶ瀬くんの言葉にも朗らかに返してて、俺が入れるように扉の前から引いてくれた。
もしかして、天ヶ瀬くんのお姉さん、とか?
「あ、あの、楪 奏斗です。お邪魔しま⋯⋯わっ」
王子様の時の天ヶ瀬くんと同じ笑顔にドキドキしながら頭を下げて中に入ると、天ヶ瀬くんに腕が引かれてちゃんと挨拶し切れないまま部屋がある二階へと連れて行かれる。すっかり定位置になった、ベッドが背になる側に座ったらぐりぐりと頭を撫で回された。
「? ?」
「ちょっと待ってろ」
絶対髪ボサボサになってるだろうけど、された意味が分からなくて困惑してたら天ヶ瀬くんはそう言って部屋から出て行ってしまった。
目を瞬きつつも手で髪を整え、勉強道具をテーブルに出して待つ。
少しして戻ってきた天ヶ瀬くんの手にはいつものようにお盆があって、今日のお茶請けは何なんだろうと思いながら見てたら緑茶とカステラが乗ってた。
天ヶ瀬くんの家にお邪魔するようになってから知ったんだけど、このお家では絶対おもてなしを受ける。きっとご両親がそうしてるのを見てきたから、天ヶ瀬くんも当たり前のようにするんだろうな。
いつも思うけど、凄く素敵な事だよね。
「カステラ食える?」
「うん、好き」
「⋯⋯そりゃ良かった」
「?」
何か変な間があったけど、目の前にカステラが置かれたからそっちに意識が行った俺は天ヶ瀬くんが難しそうな顔をしている事に気付かなかった。
「いつもありがとう」
「いや⋯」
「そういえば、さっきの人はお姉さん?」
「まさか。おふくろだよ」
「お母さん!?」
あんなに若々しくて綺麗なのに、こんなに大きな子供がいるの?
驚いて目を丸くする俺にふっと笑い、俺の隣に腰を下ろした天ヶ瀬くんが一切れを半分に切ったカステラを一口で食べる。
「美人さんだね」
「若作りなだけだ。ほら、カステラ食ったら勉強するぞ」
「うん」
お母さんも綺麗でお父さんもイケメンなら、これだけ見目の整った人が生まれるのも納得だ。遺伝子って凄い。
でもお母さんと天ヶ瀬くんって、性格で言えば真逆っぽい?
少ししか話してないけど、雰囲気はほんわかしてたなぁなんて思いながらカステラを食べてたら、先に食べ終わった天ヶ瀬くんがお茶を一気飲みして立ち上がった。
何だろうと目で追うと本棚から何冊か大きさの違う本を持って戻ってきて、カステラを頬張る俺の前に並べる。
「こっちが基礎から組んでくやつで、こっちはちょい難しい問題メインで纏めてあるやつ。ちなみにこっちのノートは俺が書いたテスト対策とミスしやすい過去問集」
「こ、こんなに⋯」
「とりあえず、楪が何に躓いてんのかを見てみねぇとな」
「はい、よろしくお願いします」
天ヶ瀬くん、こんなにたくさん努力してきたんだ。凄いなぁ。
俺の勉強の為にたくさんの資料を持って来てくれた天ヶ瀬くんに頭を下げ、急いで食べようとしたら「ゆっくり食え」って言われて頭をポンポンされる。
何か、ちょっと前から力加減もバラバラではあるけど頭を撫でられるようになった。
どういう感覚でしてるのか分からないけど、普通はクラスメイトの、それも男の頭って撫でないよね。ふざけてとかなら見た事あるとはいえ、こんなにしょっちゅうはしない気がする。
王子様の時の天ヶ瀬くんだって、誰かにしてるの見た事ないし。
でも不思議と嫌じゃないのは、乱暴な時でも優しさを感じるからかも。
お言葉に甘えて詰めない程度にゆっくりと食べて、お茶まで飲んだ俺はさっそく勉強会の開始をお願いした。
勉強を始めてから一時間。
天ヶ瀬くんの教え方はその口調に似合わず丁寧で、俺が少しでも躓くとそれが何に対してなのかを紐解いてこうしたらいいって導いてくれる。
おかげで苦手だった問題も解けるようになってきたけど⋯脳を使った代わりなのか眠くなってきた。
「⋯楪?」
目蓋が重くて船を漕いでたら名前を呼ばれてハッとする。
目の前のノートにミミズが這ったような線が引かれてて、慌てて天ヶ瀬くんの方へ視線を向けたら呆れたような顔をされた。
「あ⋯」
「詰め込み過ぎたか?」
「あ、あの⋯えっと⋯」
「少し休憩すっか」
「だ、大丈夫。今のはちょっと、頭がふわっとしただけで⋯」
「いや、それ駄目だろ。頭働いてねぇ状態じゃ解けるもんも解けねぇし、何か摘めるもん持ってくるわ」
「気にしないで⋯⋯あー⋯」
俺の脳みその容量が小さいのが悪いんだし、天ヶ瀬くんに気を遣わせる訳にはって首を振ったのに、彼はすくっと立ち上がると止める間もなく部屋から出て行ってしまった。
ほんと俺って天ヶ瀬くんを困らせてばかりだなぁ。
シャーペンを置いて、天ヶ瀬くんの過去問集のノートを手に取った。
ケアレスミスしがちな部分に色ペンで線が引いてあって、要点とかも凄く細かく書かれてて天ヶ瀬くんの努力が伺える。
(みんなが望む王子様である為にここまで頑張る人⋯他にいないよ)
天ヶ瀬くんの秘密は絶対守らなきゃ。俺なんかのせいでバレるような事なんてあっちゃいけないんだから。
(頑張ろう)
優しい天ヶ瀬くんの為にそう決めた俺は、まずは赤点回避だと気合いを入れてさっきミスした問題を解いてみる事にした。
天ヶ瀬くんにとって、俺の存在が少しでもプラスになれればいいんだけどな。
勉強が苦手な俺は毎回赤点回避の為に必死に勉強してるんだけど、今回は何と天ヶ瀬くんが教えてくれる事になった。
場所はいつものように天ヶ瀬くんの家で、言われた時間にインターホンを鳴らしたら、落ち着いたダークブラウンのふわふわした髪の綺麗な女の人が出て来て驚く。
家を間違えたかと思って焦ってたら奥から天ヶ瀬くんが現れて「あ!」と声を上げた。
「何してんだよ」
「お客様が来たから」
「俺の客だから出なくていいっつったろ」
「そういえばそうだったわね。ごめんね、櫂くん」
「ったく⋯⋯楪、入ってこい」
女の人は天ヶ瀬くんの言葉にも朗らかに返してて、俺が入れるように扉の前から引いてくれた。
もしかして、天ヶ瀬くんのお姉さん、とか?
「あ、あの、楪 奏斗です。お邪魔しま⋯⋯わっ」
王子様の時の天ヶ瀬くんと同じ笑顔にドキドキしながら頭を下げて中に入ると、天ヶ瀬くんに腕が引かれてちゃんと挨拶し切れないまま部屋がある二階へと連れて行かれる。すっかり定位置になった、ベッドが背になる側に座ったらぐりぐりと頭を撫で回された。
「? ?」
「ちょっと待ってろ」
絶対髪ボサボサになってるだろうけど、された意味が分からなくて困惑してたら天ヶ瀬くんはそう言って部屋から出て行ってしまった。
目を瞬きつつも手で髪を整え、勉強道具をテーブルに出して待つ。
少しして戻ってきた天ヶ瀬くんの手にはいつものようにお盆があって、今日のお茶請けは何なんだろうと思いながら見てたら緑茶とカステラが乗ってた。
天ヶ瀬くんの家にお邪魔するようになってから知ったんだけど、このお家では絶対おもてなしを受ける。きっとご両親がそうしてるのを見てきたから、天ヶ瀬くんも当たり前のようにするんだろうな。
いつも思うけど、凄く素敵な事だよね。
「カステラ食える?」
「うん、好き」
「⋯⋯そりゃ良かった」
「?」
何か変な間があったけど、目の前にカステラが置かれたからそっちに意識が行った俺は天ヶ瀬くんが難しそうな顔をしている事に気付かなかった。
「いつもありがとう」
「いや⋯」
「そういえば、さっきの人はお姉さん?」
「まさか。おふくろだよ」
「お母さん!?」
あんなに若々しくて綺麗なのに、こんなに大きな子供がいるの?
驚いて目を丸くする俺にふっと笑い、俺の隣に腰を下ろした天ヶ瀬くんが一切れを半分に切ったカステラを一口で食べる。
「美人さんだね」
「若作りなだけだ。ほら、カステラ食ったら勉強するぞ」
「うん」
お母さんも綺麗でお父さんもイケメンなら、これだけ見目の整った人が生まれるのも納得だ。遺伝子って凄い。
でもお母さんと天ヶ瀬くんって、性格で言えば真逆っぽい?
少ししか話してないけど、雰囲気はほんわかしてたなぁなんて思いながらカステラを食べてたら、先に食べ終わった天ヶ瀬くんがお茶を一気飲みして立ち上がった。
何だろうと目で追うと本棚から何冊か大きさの違う本を持って戻ってきて、カステラを頬張る俺の前に並べる。
「こっちが基礎から組んでくやつで、こっちはちょい難しい問題メインで纏めてあるやつ。ちなみにこっちのノートは俺が書いたテスト対策とミスしやすい過去問集」
「こ、こんなに⋯」
「とりあえず、楪が何に躓いてんのかを見てみねぇとな」
「はい、よろしくお願いします」
天ヶ瀬くん、こんなにたくさん努力してきたんだ。凄いなぁ。
俺の勉強の為にたくさんの資料を持って来てくれた天ヶ瀬くんに頭を下げ、急いで食べようとしたら「ゆっくり食え」って言われて頭をポンポンされる。
何か、ちょっと前から力加減もバラバラではあるけど頭を撫でられるようになった。
どういう感覚でしてるのか分からないけど、普通はクラスメイトの、それも男の頭って撫でないよね。ふざけてとかなら見た事あるとはいえ、こんなにしょっちゅうはしない気がする。
王子様の時の天ヶ瀬くんだって、誰かにしてるの見た事ないし。
でも不思議と嫌じゃないのは、乱暴な時でも優しさを感じるからかも。
お言葉に甘えて詰めない程度にゆっくりと食べて、お茶まで飲んだ俺はさっそく勉強会の開始をお願いした。
勉強を始めてから一時間。
天ヶ瀬くんの教え方はその口調に似合わず丁寧で、俺が少しでも躓くとそれが何に対してなのかを紐解いてこうしたらいいって導いてくれる。
おかげで苦手だった問題も解けるようになってきたけど⋯脳を使った代わりなのか眠くなってきた。
「⋯楪?」
目蓋が重くて船を漕いでたら名前を呼ばれてハッとする。
目の前のノートにミミズが這ったような線が引かれてて、慌てて天ヶ瀬くんの方へ視線を向けたら呆れたような顔をされた。
「あ⋯」
「詰め込み過ぎたか?」
「あ、あの⋯えっと⋯」
「少し休憩すっか」
「だ、大丈夫。今のはちょっと、頭がふわっとしただけで⋯」
「いや、それ駄目だろ。頭働いてねぇ状態じゃ解けるもんも解けねぇし、何か摘めるもん持ってくるわ」
「気にしないで⋯⋯あー⋯」
俺の脳みその容量が小さいのが悪いんだし、天ヶ瀬くんに気を遣わせる訳にはって首を振ったのに、彼はすくっと立ち上がると止める間もなく部屋から出て行ってしまった。
ほんと俺って天ヶ瀬くんを困らせてばかりだなぁ。
シャーペンを置いて、天ヶ瀬くんの過去問集のノートを手に取った。
ケアレスミスしがちな部分に色ペンで線が引いてあって、要点とかも凄く細かく書かれてて天ヶ瀬くんの努力が伺える。
(みんなが望む王子様である為にここまで頑張る人⋯他にいないよ)
天ヶ瀬くんの秘密は絶対守らなきゃ。俺なんかのせいでバレるような事なんてあっちゃいけないんだから。
(頑張ろう)
優しい天ヶ瀬くんの為にそう決めた俺は、まずは赤点回避だと気合いを入れてさっきミスした問題を解いてみる事にした。
天ヶ瀬くんにとって、俺の存在が少しでもプラスになれればいいんだけどな。
あなたにおすすめの小説
また恋人に振られたので酒に飲まれていたらゴツい騎士に求婚していた件
月衣
BL
また恋人に振られた魔導省のエリート官吏アルヴィス。失恋のショックで酒に溺れた彼は勢いのまま酒場に現れた屈強な王宮騎士ガラティスに求婚してしまう。
翌朝すべての記憶を保持したまま絶望するアルヴィスだったが当のガラティスはなぜか本気だった。
「安心しろ。俺は誠実な男だ。一度決めたことは覆さない」
逃げようとするエリート魔導師と絶対に逃がさない最強騎士
貢ぎ体質な男が捕まる強制恋愛コメディのつもりです!!
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
【完結】逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。抱かれたら身代わりがばれてしまうので初夜は断固拒否します!
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
隣国の国王キリアン(アルファ)に嫁がされたオメガの王子リュカ。
しかし実は、結婚から逃げ出した双子の弟セラの身代わりなのです…
本当の花嫁じゃないとばれたら大変!
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだんキリアンに惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた
やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。
俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。
独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。
好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け
ムーンライトノベルズにも掲載しています。
挿絵をchat gptに作成してもらいました(*'▽'*)
【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。