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撫でるなら
「今回も一位は王子かー」
「まぁ分かってた事だけどな」
「やっぱり天ヶ瀬くんすごーい」
「ってか、今回の難しくなかった?」
「私、赤点ギリギリだった」
期末テストが終わり、廊下の壁に貼られた順位表を見てみんなが盛り上がってる。
一年の時から天ヶ瀬くんは首位をキープしていて、何も知らなかった頃の俺はただ頭が良いんだなーって思ってただけだけど、今はそれが天ヶ瀬くんの頑張った証みたいな感じがして人知れず喜んでた。
少し遅れて順位表まで来た天ヶ瀬くんを、たくさんの人が取り囲む。
「天ヶ瀬、お前ほんっとすげーよ」
「ずっと一位とか、普通じゃ無理だもん」
「俺らと脳の構造が違うんだろうな」
「そんな事ないよ。数学とか危なかったし」
「いやいやいや、あの点数で危なかったって」
どれくらい危なかったんだろうって数学の欄を見てきたけど、それでも九十点以上は取ってる。前回のは覚えてないけど、二位との差が一教科じゃ埋まらないくらいあるから、たとえ数学が赤点ギリギリだったとしても天ヶ瀬くんが一位だっただろうな。
あのノートたちを思い浮かべながら困ったように笑う天ヶ瀬くんを見てたら、不意に目が合って天ヶ瀬くんの表情が少しだけ緩む。
目を瞬いたら「あとで」でって口元が動いて、くるりと背中を向けると教室へと向かって歩き出した。そのうしろを女の子たちが話し掛けながらついて行くけど、ふと変な気配を感じてそっちを見たら、凄く怖い顔をした男子生徒が天ヶ瀬くんを睨み付けてた。
確か、三組の崎森 貴斗くん。
テストの順位はいつも二位だから、他の人からは天ヶ瀬くんと競ってるんじゃないかって言われてる。
目が合うのも怖くて順位表に視線を向けると視界の端で崎森くんが動き出したのが見えた。
「⋯いつまでも調子に乗ってるなよ⋯⋯僕の方が出来るんだ⋯あんな奴の好き勝手にさせてたまるか⋯」
横を通り過ぎる瞬間そう聞こえてきて、その声の低さと込められた感情に俺はゾッとする。
何だか精神的にも危うい感じがするけど、一応天ヶ瀬くんにも伝えた方がいいのかな。
どうしてか分からないけど、少しだけ不安になってきた。
「崎森?」
昼休み、いつものように屋上でお弁当を食べてる時に朝の話をしたら、天ヶ瀬くんは途端に嫌そうな顔になった。
「あいつ、何か知んねぇけど俺を目の敵にしてくんだよ。睨まれてんのも分かってる」
「そ、そうなんだ⋯」
「俺は別に気にしてねぇからほっとけ。お前は関わろうとすんなよ」
「⋯⋯分かった⋯」
でも、あの状況って崎森くんにとっても良くないんじゃないかな。凄く怒ってるみたいだったし⋯かと言って俺がどうこう出来る問題でもないっていうのは分かってるけど。
俯く俺の頭に天ヶ瀬くんの手が乗せられ優しく撫でられる。
「必要なら俺の方でどうにかするって」
「⋯うん」
「ほら、今日はどこ行きたいっつってたっけ?」
「駅南にある本屋さん」
「ん。帰りに行こうな」
それ以上は崎森くんの話はしないとばかりに話題を変えられて、首を竦めつつ答えると笑って頷いた天ヶ瀬くんが今度は少しだけ乱暴に撫でてきた。
こうされる事にも慣れてきたけど、やっぱり不思議には思ってしまう。
「⋯天ヶ瀬くん」
「ん?」
「天ヶ瀬くんは、どうして俺の頭を撫でるの?」
「え」
天ヶ瀬くんは聞けば答えてくれるって分かってるから思い切って聞いてみたら、僅かに目を見瞠った天ヶ瀬くんがゆっくりと視線を逸らし俺の頭から手を離す。
あれ、何でそんな反応?
「こういうのは女の子にやった方がいいと思うよ。あ、でも、ちゃんと好きな人だけにしないと、勘違いしちゃう子も出てくるかもだから気を付けてね。天ヶ瀬くんモテモテだし」
何と言ってもガチ恋製造機の王子様だ。
学校中のとまでは言わなくても、大半の人が天ヶ瀬くんの彼女になりたがってる。頭を撫でるなんて距離が近くないとしないし、されたらされたでもしかしてって思っちゃう子も絶対いると思うんだ。
⋯⋯あれ、そう考えたら俺と天ヶ瀬くんの仲良し度って結構高め?
「好きな子だけに、ね⋯」
「?」
今なら友達って言って貰えるかもなんて内心で喜んでたら、俺の頭に触れてた手を見下ろした天ヶ瀬くんが溜め息混じりに反芻した。
何か、変な事言ったかな。
首を傾げて言葉の続きを待ってたら予鈴が鳴って、いつの間にそんな時間が経ってたんだろうと慌てた俺は急いでお弁当の残りを掻き込む。
ちなみに天ヶ瀬くんはとっくのとうに食べ終わってて、今は胡座を掻いて俺を待ってくれてた。
「だからやってんだけどな」
こんなに急いで食べる事ってめったにないと思いつつ完食し、天ヶ瀬くんのお弁当箱も受け取って直してたら、また手が伸びてきてポンポンってされる。
さっき言ったばっかなのにと眉尻を下げる俺は、片付けの最中に天ヶ瀬くんが呟いた言葉には気付かなかった。
あれ、そういえば気にした事もなかったけど、天ヶ瀬くんって好きな子っているのかな。もっと仲良くなったら教えてくれたりする?
もし教えてくれるならその時は全力で応援しよう。
まぁ天ヶ瀬くんなら、俺の応援なんてなくても実らせちゃいそうだけど。
「まぁ分かってた事だけどな」
「やっぱり天ヶ瀬くんすごーい」
「ってか、今回の難しくなかった?」
「私、赤点ギリギリだった」
期末テストが終わり、廊下の壁に貼られた順位表を見てみんなが盛り上がってる。
一年の時から天ヶ瀬くんは首位をキープしていて、何も知らなかった頃の俺はただ頭が良いんだなーって思ってただけだけど、今はそれが天ヶ瀬くんの頑張った証みたいな感じがして人知れず喜んでた。
少し遅れて順位表まで来た天ヶ瀬くんを、たくさんの人が取り囲む。
「天ヶ瀬、お前ほんっとすげーよ」
「ずっと一位とか、普通じゃ無理だもん」
「俺らと脳の構造が違うんだろうな」
「そんな事ないよ。数学とか危なかったし」
「いやいやいや、あの点数で危なかったって」
どれくらい危なかったんだろうって数学の欄を見てきたけど、それでも九十点以上は取ってる。前回のは覚えてないけど、二位との差が一教科じゃ埋まらないくらいあるから、たとえ数学が赤点ギリギリだったとしても天ヶ瀬くんが一位だっただろうな。
あのノートたちを思い浮かべながら困ったように笑う天ヶ瀬くんを見てたら、不意に目が合って天ヶ瀬くんの表情が少しだけ緩む。
目を瞬いたら「あとで」でって口元が動いて、くるりと背中を向けると教室へと向かって歩き出した。そのうしろを女の子たちが話し掛けながらついて行くけど、ふと変な気配を感じてそっちを見たら、凄く怖い顔をした男子生徒が天ヶ瀬くんを睨み付けてた。
確か、三組の崎森 貴斗くん。
テストの順位はいつも二位だから、他の人からは天ヶ瀬くんと競ってるんじゃないかって言われてる。
目が合うのも怖くて順位表に視線を向けると視界の端で崎森くんが動き出したのが見えた。
「⋯いつまでも調子に乗ってるなよ⋯⋯僕の方が出来るんだ⋯あんな奴の好き勝手にさせてたまるか⋯」
横を通り過ぎる瞬間そう聞こえてきて、その声の低さと込められた感情に俺はゾッとする。
何だか精神的にも危うい感じがするけど、一応天ヶ瀬くんにも伝えた方がいいのかな。
どうしてか分からないけど、少しだけ不安になってきた。
「崎森?」
昼休み、いつものように屋上でお弁当を食べてる時に朝の話をしたら、天ヶ瀬くんは途端に嫌そうな顔になった。
「あいつ、何か知んねぇけど俺を目の敵にしてくんだよ。睨まれてんのも分かってる」
「そ、そうなんだ⋯」
「俺は別に気にしてねぇからほっとけ。お前は関わろうとすんなよ」
「⋯⋯分かった⋯」
でも、あの状況って崎森くんにとっても良くないんじゃないかな。凄く怒ってるみたいだったし⋯かと言って俺がどうこう出来る問題でもないっていうのは分かってるけど。
俯く俺の頭に天ヶ瀬くんの手が乗せられ優しく撫でられる。
「必要なら俺の方でどうにかするって」
「⋯うん」
「ほら、今日はどこ行きたいっつってたっけ?」
「駅南にある本屋さん」
「ん。帰りに行こうな」
それ以上は崎森くんの話はしないとばかりに話題を変えられて、首を竦めつつ答えると笑って頷いた天ヶ瀬くんが今度は少しだけ乱暴に撫でてきた。
こうされる事にも慣れてきたけど、やっぱり不思議には思ってしまう。
「⋯天ヶ瀬くん」
「ん?」
「天ヶ瀬くんは、どうして俺の頭を撫でるの?」
「え」
天ヶ瀬くんは聞けば答えてくれるって分かってるから思い切って聞いてみたら、僅かに目を見瞠った天ヶ瀬くんがゆっくりと視線を逸らし俺の頭から手を離す。
あれ、何でそんな反応?
「こういうのは女の子にやった方がいいと思うよ。あ、でも、ちゃんと好きな人だけにしないと、勘違いしちゃう子も出てくるかもだから気を付けてね。天ヶ瀬くんモテモテだし」
何と言ってもガチ恋製造機の王子様だ。
学校中のとまでは言わなくても、大半の人が天ヶ瀬くんの彼女になりたがってる。頭を撫でるなんて距離が近くないとしないし、されたらされたでもしかしてって思っちゃう子も絶対いると思うんだ。
⋯⋯あれ、そう考えたら俺と天ヶ瀬くんの仲良し度って結構高め?
「好きな子だけに、ね⋯」
「?」
今なら友達って言って貰えるかもなんて内心で喜んでたら、俺の頭に触れてた手を見下ろした天ヶ瀬くんが溜め息混じりに反芻した。
何か、変な事言ったかな。
首を傾げて言葉の続きを待ってたら予鈴が鳴って、いつの間にそんな時間が経ってたんだろうと慌てた俺は急いでお弁当の残りを掻き込む。
ちなみに天ヶ瀬くんはとっくのとうに食べ終わってて、今は胡座を掻いて俺を待ってくれてた。
「だからやってんだけどな」
こんなに急いで食べる事ってめったにないと思いつつ完食し、天ヶ瀬くんのお弁当箱も受け取って直してたら、また手が伸びてきてポンポンってされる。
さっき言ったばっかなのにと眉尻を下げる俺は、片付けの最中に天ヶ瀬くんが呟いた言葉には気付かなかった。
あれ、そういえば気にした事もなかったけど、天ヶ瀬くんって好きな子っているのかな。もっと仲良くなったら教えてくれたりする?
もし教えてくれるならその時は全力で応援しよう。
まぁ天ヶ瀬くんなら、俺の応援なんてなくても実らせちゃいそうだけど。
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