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お誘い
ショッピングモールに着き、昼前だから昼食を摂るかと最上階にあるフードコートに向かった俺たちは、夏休みの人口密度を舐めていた。
「これ、座れるとこねぇな」
「そう、だね⋯二人ならって思ったけど」
「とりあえず店決めてぐるぐるしてみるか」
「うん」
家族連れはこの混雑では空いているテーブルを見付けるのも大変だろうけど、二人ならカウンターのような席でもいいから誰かが立つのを期待して周りを歩いて見る事にした。
およそ五分ぐるぐるして、二人掛けのテーブルが空いたから急いで取って一人ずつ注文しに行く。天ヶ瀬くんは海鮮丼で、俺はオムライスにした。
それにしても、周りの視線が凄い。
「⋯人が食ってるとこ見て、何が楽しいんだろうな」
「天ヶ瀬くん、イケメンだから」
「知らん奴らに見られても嬉しくねぇ」
それはそうだ。
特に食べてる姿なんて誰だって見られたくないはずだし、俺だって嫌だし。
「帰ったら家飾られてんの?」
「ううん。そういうのは高校入ってからはしなくなったから」
「そっか。でもご馳走はあるんだろ?」
「今年もナシかな。俺一人だし、ケーキも一ピースだけ買って、ロウソクはなしにしようかと」
「ん? 一人?」
「うん。お父さん、この時期になると出張になったりするから。今回も一ヶ月出張」
ふわふわ卵のオムライスに舌鼓しながら答えると、箸を置いた天ヶ瀬くんが額を押さえて項垂れた。その口から深い深ーい溜め息が漏れて、首を傾げてたらスプーンを持っていない方の手をガッと掴まれる。
「!」
「⋯お前さぁ⋯」
「えっと⋯」
「って事は、あの肉フェスん時も一人だったって事か?」
「そうだね」
「呼べよ」
呼べよ、というのは天ヶ瀬くんをかな。どうしてだろう。
意味が分からなくて眉尻を下げて考えてたら、また溜め息をついた天ヶ瀬くんが今度は俺の頭を掴んできた。
左右に振ってから手を離すと、ポケットからスマホを取り出して操作し始める。
不思議に思いながらもオムライスを食べ進め、終わったのか天ヶ瀬くんも海鮮丼を掻き込み二人して手を合わせた。
「行きたいとこあるからついて来て」
「うん」
席を立ってそれぞれの返却口に出し歩き出そうとしたら人にぶつかりそうになって、ギリギリで肩を引いてくれた天ヶ瀬くんにお礼を言うと苦笑されてしまう。
当たり前のように手を繋がれて下りのエスカレーターに乗って三階まで降りると、天ヶ瀬くんは服屋さんへと入った。さすがに選ぶ間は邪魔になるから手を離したら、代わりに裾を掴まされてふっと笑われる。
今になって思ったんだけど、天ヶ瀬くんってもしかしなくても凄く心配性?
気になったものを手に取って確認してた天ヶ瀬くんを見てたら、不意にシャツが二枚こっちに向けられた。
シンプルな白のシャツと、英文字が書かれた黒のシャツ。
「どっちがいいと思う?」
「⋯⋯天ヶ瀬くんなら白かな」
「ちなみに楪が着るなら?」
「俺も白。下が黒めのが多いから」
「なるほど。じゃあ白にするか」
どちらかと言えば綺麗寄りの顔立ちをしている天ヶ瀬くんは、明るい色の方が似合うと思う。暗めの服も髪が映えていいかもしれないけど、今は夏だし涼し気な方がより天ヶ瀬くんを爽やかに見せてくれるだろうし。
「支払いしてくるから、ちょっと待っててな」
「うん」
さすがに店員さんの前で裾を掴んでるのは恥ずかしいから素直に頷き、レジへと向かった天ヶ瀬くんを見送って店内を歩く。適当に半袖のシャツをチラ見してみたけど、胸元に可愛いイラストがあってちょっと和んだ。
このサイズならゆるっと着れそうだし、部屋着にいいかも。
「楪、行くぞ」
「あ、はい」
チラチラハンガーをズラしながら見てたら支払いを終えた天ヶ瀬くんに呼ばれ、ハッとして返事をし駆け寄ると少し先の雑貨を指差された。
「次あそこ行く」
「うん」
「っつか、お前も行きたいとこあったら言えよ」
「ありがとう」
正直言うと、ショッピングモールを提案したもののこれと言った目的は特になかった。自分へのプレゼントをとかも思ったけど見てるだけで楽しいし、ぶっちゃけ天ヶ瀬くんといられる事がプレゼントな気もしてきてる。
だって、何年もずっと一人だった。
それに比べたら、天ヶ瀬くんが隣にいてくれるだけで凄く嬉しい。
「ん?」
「ううん、何でもない」
きっかけはアレだったけど、天ヶ瀬くんの事が知れて、ここまで仲良くなれて良かったって思ってる。
じっと横顔を見てたら気付かれて首を振ったら、怪訝そうな顔をしつつもお店へと向かう足は止めない。
あ、そうだ。天ヶ瀬くんに勉強教えて貰ったお礼まだしてなかった。
「俺、ちょっとあっち見てくるね」
「おー。店ん中から出んなよ」
「はーい」
そう言って一旦別れ、俺は天ヶ瀬くんへのお礼選びをスタートした。
いい物見付かりますように。
それから他にもお店を回ったり、ゲームセンターで遊んだりしてあっという間に夕飯時になった。
初めてガンシューティングしたけど、面白かったなぁ。
「天ヶ瀬くん、今日も誘ってくれてありがとう」
「や、俺も暇だったし。課題の息抜きも大事だからな」
「うん、楽しかった」
天ヶ瀬くんのおかげでそんなに行き詰まったりはしてないけど、今日遊べてかなり頭はリフレッシュ出来た。この調子ならもう一週間もすれば全部終わりそう。
ショッピングモールの一階まで降りて入り口から出て待ち合わせた駅に戻り、雑貨屋で買ったお礼を渡そうとしたら手首を掴まれた。
「帰っても一人なんだろ? 夕飯、うちで食わねぇ?」
「え? で、でもご迷惑じゃ⋯」
「いや、楪なら歓迎するっておふくろも言ってる」
いつの間に話を通してたのかと驚くけど、もしかして俺が一人なのずっと気にしてくれてた? もう慣れてるし、平気ではあるんだけど。
でも、天ヶ瀬くんの優しさは凄く嬉しい。
「えっと⋯本当にいいの?」
「良くなかったら誘わねぇって」
「じゃあ、お言葉に甘えて⋯」
「よし。んじゃ行こ」
申し訳ないなって気持ちはあれど、せっかくだしと頷けば天ヶ瀬くんはどうしてかホッとしたように息を吐き手を繋ぎ直してきた。
天ヶ瀬くんの家に行くならプレゼントはあとでいいかな。
思わぬお誘いだったけど、心がポカポカするのを感じながら天ヶ瀬くんに引かれるまま俺は歩き出した。
あれ、そういえばこういう時って手土産あった方が良かったりする?
「これ、座れるとこねぇな」
「そう、だね⋯二人ならって思ったけど」
「とりあえず店決めてぐるぐるしてみるか」
「うん」
家族連れはこの混雑では空いているテーブルを見付けるのも大変だろうけど、二人ならカウンターのような席でもいいから誰かが立つのを期待して周りを歩いて見る事にした。
およそ五分ぐるぐるして、二人掛けのテーブルが空いたから急いで取って一人ずつ注文しに行く。天ヶ瀬くんは海鮮丼で、俺はオムライスにした。
それにしても、周りの視線が凄い。
「⋯人が食ってるとこ見て、何が楽しいんだろうな」
「天ヶ瀬くん、イケメンだから」
「知らん奴らに見られても嬉しくねぇ」
それはそうだ。
特に食べてる姿なんて誰だって見られたくないはずだし、俺だって嫌だし。
「帰ったら家飾られてんの?」
「ううん。そういうのは高校入ってからはしなくなったから」
「そっか。でもご馳走はあるんだろ?」
「今年もナシかな。俺一人だし、ケーキも一ピースだけ買って、ロウソクはなしにしようかと」
「ん? 一人?」
「うん。お父さん、この時期になると出張になったりするから。今回も一ヶ月出張」
ふわふわ卵のオムライスに舌鼓しながら答えると、箸を置いた天ヶ瀬くんが額を押さえて項垂れた。その口から深い深ーい溜め息が漏れて、首を傾げてたらスプーンを持っていない方の手をガッと掴まれる。
「!」
「⋯お前さぁ⋯」
「えっと⋯」
「って事は、あの肉フェスん時も一人だったって事か?」
「そうだね」
「呼べよ」
呼べよ、というのは天ヶ瀬くんをかな。どうしてだろう。
意味が分からなくて眉尻を下げて考えてたら、また溜め息をついた天ヶ瀬くんが今度は俺の頭を掴んできた。
左右に振ってから手を離すと、ポケットからスマホを取り出して操作し始める。
不思議に思いながらもオムライスを食べ進め、終わったのか天ヶ瀬くんも海鮮丼を掻き込み二人して手を合わせた。
「行きたいとこあるからついて来て」
「うん」
席を立ってそれぞれの返却口に出し歩き出そうとしたら人にぶつかりそうになって、ギリギリで肩を引いてくれた天ヶ瀬くんにお礼を言うと苦笑されてしまう。
当たり前のように手を繋がれて下りのエスカレーターに乗って三階まで降りると、天ヶ瀬くんは服屋さんへと入った。さすがに選ぶ間は邪魔になるから手を離したら、代わりに裾を掴まされてふっと笑われる。
今になって思ったんだけど、天ヶ瀬くんってもしかしなくても凄く心配性?
気になったものを手に取って確認してた天ヶ瀬くんを見てたら、不意にシャツが二枚こっちに向けられた。
シンプルな白のシャツと、英文字が書かれた黒のシャツ。
「どっちがいいと思う?」
「⋯⋯天ヶ瀬くんなら白かな」
「ちなみに楪が着るなら?」
「俺も白。下が黒めのが多いから」
「なるほど。じゃあ白にするか」
どちらかと言えば綺麗寄りの顔立ちをしている天ヶ瀬くんは、明るい色の方が似合うと思う。暗めの服も髪が映えていいかもしれないけど、今は夏だし涼し気な方がより天ヶ瀬くんを爽やかに見せてくれるだろうし。
「支払いしてくるから、ちょっと待っててな」
「うん」
さすがに店員さんの前で裾を掴んでるのは恥ずかしいから素直に頷き、レジへと向かった天ヶ瀬くんを見送って店内を歩く。適当に半袖のシャツをチラ見してみたけど、胸元に可愛いイラストがあってちょっと和んだ。
このサイズならゆるっと着れそうだし、部屋着にいいかも。
「楪、行くぞ」
「あ、はい」
チラチラハンガーをズラしながら見てたら支払いを終えた天ヶ瀬くんに呼ばれ、ハッとして返事をし駆け寄ると少し先の雑貨を指差された。
「次あそこ行く」
「うん」
「っつか、お前も行きたいとこあったら言えよ」
「ありがとう」
正直言うと、ショッピングモールを提案したもののこれと言った目的は特になかった。自分へのプレゼントをとかも思ったけど見てるだけで楽しいし、ぶっちゃけ天ヶ瀬くんといられる事がプレゼントな気もしてきてる。
だって、何年もずっと一人だった。
それに比べたら、天ヶ瀬くんが隣にいてくれるだけで凄く嬉しい。
「ん?」
「ううん、何でもない」
きっかけはアレだったけど、天ヶ瀬くんの事が知れて、ここまで仲良くなれて良かったって思ってる。
じっと横顔を見てたら気付かれて首を振ったら、怪訝そうな顔をしつつもお店へと向かう足は止めない。
あ、そうだ。天ヶ瀬くんに勉強教えて貰ったお礼まだしてなかった。
「俺、ちょっとあっち見てくるね」
「おー。店ん中から出んなよ」
「はーい」
そう言って一旦別れ、俺は天ヶ瀬くんへのお礼選びをスタートした。
いい物見付かりますように。
それから他にもお店を回ったり、ゲームセンターで遊んだりしてあっという間に夕飯時になった。
初めてガンシューティングしたけど、面白かったなぁ。
「天ヶ瀬くん、今日も誘ってくれてありがとう」
「や、俺も暇だったし。課題の息抜きも大事だからな」
「うん、楽しかった」
天ヶ瀬くんのおかげでそんなに行き詰まったりはしてないけど、今日遊べてかなり頭はリフレッシュ出来た。この調子ならもう一週間もすれば全部終わりそう。
ショッピングモールの一階まで降りて入り口から出て待ち合わせた駅に戻り、雑貨屋で買ったお礼を渡そうとしたら手首を掴まれた。
「帰っても一人なんだろ? 夕飯、うちで食わねぇ?」
「え? で、でもご迷惑じゃ⋯」
「いや、楪なら歓迎するっておふくろも言ってる」
いつの間に話を通してたのかと驚くけど、もしかして俺が一人なのずっと気にしてくれてた? もう慣れてるし、平気ではあるんだけど。
でも、天ヶ瀬くんの優しさは凄く嬉しい。
「えっと⋯本当にいいの?」
「良くなかったら誘わねぇって」
「じゃあ、お言葉に甘えて⋯」
「よし。んじゃ行こ」
申し訳ないなって気持ちはあれど、せっかくだしと頷けば天ヶ瀬くんはどうしてかホッとしたように息を吐き手を繋ぎ直してきた。
天ヶ瀬くんの家に行くならプレゼントはあとでいいかな。
思わぬお誘いだったけど、心がポカポカするのを感じながら天ヶ瀬くんに引かれるまま俺は歩き出した。
あれ、そういえばこういう時って手土産あった方が良かったりする?
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