モテモテ王子の秘密をうっかり知ったら溺愛されるようになりました

ミヅハ

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そっくりな父親(櫂視点)

 何となくで進めてた課題に飽きて、会いてぇなって思ったらもう楪に連絡してた自分が恐ろしい。とはいえ了承の返事が得られればそれだけで他はどうでも良くなって、俺は急いで支度して待ち合わせの駅へと向かった。
 先に待ってた楪と話しつつショッピングモールに向かってたんだけど、サラッととんでもない事を教えられて俺は思わず固まる。
 まさか、今日が楪の誕生日だったとは。
 しかもプレゼントに祝いの言葉とか⋯それは当たり前に言われる事でプレゼントじゃねぇのに。分かってた事だけど、楪は物欲がなさ過ぎる。
 おまけに親父さんが出張中で家に一人だって知って、俺はつい膝を抱えて座っている楪の姿を想像してしまい胸が痛くなった。何でもない日もそうだけど、誕生日に一人は普段以上に寂しいだろう。
 何かしてやりたくておふくろに事情を説明したら、『じゃあサプライズパーティしちゃいましょう。かなくんをお夕飯に誘ってね』とあっさりオーケーしてくれて、この人が母親で良かったって俺は思った。
 問題はいつ切り出すか⋯だったけど、結局いろいろ買ってる間に時間は過ぎて、もう帰る頃になってようやく言い出せて⋯今目の前に楪がいる。
 膝を立ててベッドに寄り掛かり、水滴のついたグラスをちまちま傾けてるからかより小さく見えて小動物みが増してんな。

「本当にお手伝いしなくていいの?」
「いいって。張り切ってっから、見ねぇでやって」
「そっか」

 グラスを置き、立てた膝を抱え顎を乗せて頷く楪を撫で回したい衝動に駆られつつ、今じゃ当たり前のように隣にいてくれる幸せを噛み締めてたら気付いた楪がにこっと笑いかけてきた。
 何だそれ、俺の理性試してんの?

(恋人だったらこのまま押し倒してんのに)

 だけど悲しいかな、楪からみれば俺は友人だ。
 どんだけ頭を撫でようとも手を繋ごうとも、楪は俺が自分を恋愛感情で見ているなんて気付きもしない。そりゃ男同士だからそういう思考にならないのは当たり前だけど、少しはときめいたりしてくれてもいいじゃねぇか?
 俺、一応学校ではモテモテの王子なんだけど。

「櫂くーん、ちょっとお手伝いしてくれるー?」
「あいよー。わり、行ってくる。本棚にあるもん読んでていいから」
「え、じゃあ俺も」
「お前は客だから大人しくしてろ」

 立ち上がる俺に合わせて腰を上げようとした楪を押し止め、漫画や参考書が並んでる本棚を指差す。生憎と小説の類はないが、暇つぶしにはなるだろう。
 それに、今楪に下に来られたら困るし。
 頭をポンポンと撫で叩いて言えば不満げにしながらも頷いてくれたから、今度こそ立ち上がり部屋をあとにする。
 階段を降りてリビングに向かうと、母親が俺が買ってきたバースデーオーナメントを壁に貼っているところだった。めちゃくちゃ背伸びしてるけど、貼りたい場所には届かないんだろうな。

「どこ?」
「もう少し上⋯あ、うん。そこ」
「これは?」
「それは下がる感じで貼ろうかなって」
「こう?」
「そうそう。さすが櫂くん」

 手を叩いて子供のように喜ぶおふくろは四十手前とは思えないほど幼い。俺は親父似だから、どこにこの人の要素が受け継がれたのかたまに不安になる。
 親父の遺伝子が強過ぎるのか?

「素敵なリビングになったね」
「ん」
「ケーキはお父さんが買ってきてくれるから⋯」
「かなくんとやらはどこだ!?」

 おふくろが言い終わる前にリビングの扉が開き、俺よりも背の高い金髪の外国人が入ってきた。言わずもがな親父だけど、ダイニングテーブルにケーキらしき箱の入った袋を置くなりキョロキョロと辺りを見回す。
 何でこの夫婦は楪を〝かなくん〟呼びするんだ? 俺ですらまだ苗字なのに。

「櫂、かなくんは」
「俺の部屋だし、気安く呼ぶな」
「うるせー、ケチくせぇ事言ってんじゃねぇよ」
「まだ会った事もねぇだろ」
「だから会おうとしてんじゃねぇか」

 改めて言うが、俺はだ。
 つまり、口の悪さも親父譲りであり、大体二人揃うと親戚でさえ怖がる。何せ親父は、日本に移住してきた祖父母から生まれた日本生まれ日本育ちな元ヤンキーだ。このタッパと見た目で相当ブイブイ(死語)言わせてたらしい。
 親父は天井を見上げると片眉を跳ね上げて頷き、さっそくリビングから飛び出した。

「お前の部屋だな。よし」
「あ、ちょ、待て待て!」

 楪に会いに行く気満々だが、さすがにいきなり親父と対面するのはあいつにはキツすぎる。慌てて追い掛けたけどそこはリーチの差、あっという間に階段を駆け上がりノックもなしに部屋へと入ったのが見えた。

「かなくん!」
「!?」
「⋯⋯おっと、君は本当にうちの息子と同じ男の子か?」

 言いたい事は分かるが、驚きと困惑で言葉が出ない楪は本棚の前で固まっていて、親父がにじり寄ると一歩後ずさった。
 完全に怖がってんじゃねぇか。

「親父、可哀想だからやめてやれ」
「あの怯えた顔が可愛くて⋯」
「変態思考やめろ」
「うるせぇ。お前、全然毛色違うじゃねぇか」
「当たり前だろ。っつかマジでやめろ」

 じりじりじりじり。壁際に追い詰められた楪はどうしたらいいか分からないのか物凄く不安そうな顔をしていて、溜め息をついた俺は親父と楪の間に立ち腕を組んだ。
 親父の気持ちも分かるけど、楪はそういうの慣れてないんだからやめろっつーに。

「あ、天ヶ瀬くん⋯」
「悪い。これ俺の親父。若い頃やんちゃしてたから口悪ぃけど、怖くねぇから」
とはなんだ」
「お、お父さん⋯そっくりだね」
「見た目も中身もな」

 嫌だとは思った事ねぇけど、せめてもうちょい親父の性格が大人しければ俺もマシだったかもしんねぇのに。
  目を瞬いてた楪は俺の背中から出てくると、親父の前に立ちぺこりと頭を下げた。

「は、初めまして。楪奏斗です。お邪魔してます」

 一応おふくろから聞かされてはいるのに、毎回ちゃんと自己紹介して律儀な奴だな。
 それをじっと見ていた親父は顎に手を当ててしばらく考えるような素振りをしたあと、俺を見て眉を顰めた。

「本当にお前の友達か?」

 正確には好きな人だけど、その言い方はあんまりにも失礼だろ。
 だけどそう言われた楪はキョトンとしたあと、照れたようにはにかんで目を伏せた。

「友達⋯で、いいのかな。そう思って貰えてるなら嬉しいです」
「⋯⋯⋯」

 そのいじらしさに、俺と親父が胸を撃ち抜かれたのは言うまでもない。
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