モテモテ王子の秘密をうっかり知ったら溺愛されるようになりました

ミヅハ

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帰り道

 天ヶ瀬くんがお母さんのお手伝いに行ってから数分後、いきなり部屋の扉が開くと同時に声がかけられて俺は心底驚いた。見ると天ヶ瀬くんそっくりの、天ヶ瀬くんよりも背の高い男の人がいてもしかしてって思ったけど⋯海外の俳優さんかと思うくらいイケメンさんで更にびっくり。
 自己紹介して、お父さんが天ヶ瀬くんに友達かって聞いてたからそうだと嬉しいって答えたら、どうしてか二人して黙り込んじゃって俺も口を噤む。
 変な事言っちゃったかな。

「⋯直美と同じで、浄化作用のある子だな」
「親父には効くだろ」
「人を怨霊か何かみてぇに言いやがって」
「そんなもんより凶悪じゃねぇか」
「お前はほんっとに〝ああ言えばこう言う〟だな」
「親父の子だからな」

 親子喧嘩ではないんだろうけど、打てば響くようなやり取りに圧倒されて二人の顔を交互に見ていたら、開いている扉からのんびりした声が聞こえてきた。

「櫂くーん、お父さーん。かなくんと一緒に降りてらっしゃーい」
「はいよー」
「だとよ。行くか、楪」
「う、うん」

 鶴の一声みたいなお母さんの声にあっさり睨み合いを解き、お父さんが先に部屋から出て天ヶ瀬くんが俺の肩に腕を回してあとに続く。
 なんか良く分かんなかったけど、これがこの家族の日常なのかな。

「ちょっとここで待っててくんねぇ?」

 階段を降りてリビングの扉の前まで来たらなぜか後ろを向かされてそう言われる。何か準備があるのかなって頷いたけど、夕飯前の準備ってなんだろう。
 少しして呼ばれたから中に入った瞬間、破裂音が三回して俺は思わず声を上げた。火薬の匂いと色とりどりの紐状になった紙が上から降ってきて、それが何かを理解するより先に壁に目が釘付けになる。

〝HAPPY BIRTHDAY〟

 俺の顔くらいある英文字のバルーンがそう綴られてぶら下げられていて、周りがキラキラしたガーランドやカラフルなペーパーフラワーで飾り付けられている。
 これってもしかして⋯。

「天ヶ瀬くんも誕生日なの?」
「いや何でだよ」
「櫂くんは、十二月十日よ」
「じゃあお父さんかお母さん?」
「すげぇ⋯自分が出てこねぇとか天才か」

 同じ誕生日だなんて奇遇だなって思ってたらお父さんからそう言われて、更に天ヶ瀬くんが俺の前に立ち綺麗にラッピングされた物を差し出してきた。

「誕生日おめでとう」
「⋯え⋯?」
「楪の誕生日会だよ」

 確かに今日は俺の誕生日だけど、ここは天ヶ瀬くんの家なのになんで⋯というかいつの間に? 天ヶ瀬くんの家に来てから一時間も経ってないのに。
 呆然とする俺の手にプレゼントを持たせた天ヶ瀬くんが、背中を押して真ん中に置かれた椅子-いわゆる誕生日席に座らせてくれる。
 テーブルの上には唐揚げやフライドポテト、ちらし寿司、サラダとか誕生日と言えばな料理がズラっと並んでた。

「あの⋯」
「おめでとう、かなくん。一緒にお祝い出来て嬉しいわ」
「おめでとう」
「⋯⋯⋯」
「楪?」

 夕飯に誘われた時、誕生日を一人で過ごさなくていいんだって嬉しくなった。
 それがまさかこんな風にお祝いして貰えるなんて思いもしなくて、みんなからのおめでとうにじわじわと想いが込み上げてくるのを感じる。
 俺、自分で思う以上に寂しかったのかな。

「⋯ありがと⋯ごさいます⋯」

 声が震えて、堪えきれなかった涙が溢れてきた。
 ギョッとした天ヶ瀬くんがあたふたしながら俺の顔を覗き込んできて、その様子がおかしくて笑ってしまったらホッとしたように頭を撫でられる。
 このプレゼントだって、きっと俺と買い物してる時にバレないようにって用意してくれたんだろうな。本当に、優し過ぎるくらい優しい人だ。
 天ヶ瀬くんのご両親だって素敵な人たちだなぁ。
 俺は泣き笑いのような顔になりながらも椅子から立ち上がると、改めて三人に頭を下げお礼を言った。
 こんなに賑やかな誕生日は久し振りだ。


 みんなでご飯を食べつつお喋りをする時間が楽し過ぎて、帰る頃には二十二時を過ぎていた。誰かの家にこんなに長居したのは初めてだ。
 今は夜道は危ないからって天ヶ瀬くんが送ってくれてる。

「機嫌いいな」

 鼻歌を歌いながら歩いてたら、少し後ろにいる天ヶ瀬くんに笑いながらそう言われた。振り返り、後ろ向きに進みながら大きく頷く。

「だって、あんなに楽しい誕生日になるとは思わなかったんだもん」
「喜んで貰えて何よりだ」
「本当に嬉しかった。ありがとう、天ヶ瀬くん」
「せっかく知れたんだし、一人だって聞いたらな」
「だからって、普通はあんな風にお祝いしないんだよ?」
「祝いたかったんだよ」
「その気持ちだけで充分なのに」

 それこそ、来年一人でも耐えられるくらい俺の心は幸せで満ちてる。いったい何年分のプレゼントを貰ったんだろう。

「でも、惣菜ばっかでごめんな?」
「ううん。嬉しかった」

 それにお惣菜だって凄く美味しかったし、俺を祝おうって用意してくれたものなんだからご馳走には違いない。
 前に向き直り、天ヶ瀬くんから貰ったプレゼントを抱き締めさっきまでいた空間を思い浮かべる。自然と頬が緩むのは仕方ないよね。

「俺、今日の事一生忘れない」
「一生?」
「うん。俺の大切な記憶。宝物だよ」

 俺のスマホにはオーナメントや料理、天ヶ瀬くんとお父さんとお母さん、それからみんなで撮った写真も入ってるから思い出としても残しておける。近いうちに現像して、写真立てに飾るつもり。
 もうすぐ家に着くからここでいいよって振り返ったら、真剣な顔をした天ヶ瀬くんにタイミング良く名前が呼ばれた。

「?」
「俺、来年もお前の誕生日祝いたい」
「え? あ、ありがとう⋯」
「来年だけじゃなく、再来年も、そのまた次の年もその先もずっと、誰よりも一番近くでおめでとうって言いたい」
「ず、ずっと?」

 そんなに長く俺と友達でいてくれるの?
 色んな意味で嬉しくはあるけど、さすがに今日みたいなお祝いは申し訳ないからどうしようかと悩んでいたら、天ヶ瀬くんの手が俺の頬に触れ上向かされた。

「天ヶ瀬くん⋯?」
「お前が好きだ」
「⋯え?」
「俺の恋人になって」

 聞き慣れない言葉に目が点になり、俺はますます言葉が見付けられなくなった。頭が上手く働いてない。
 好きって、恋人って、何だったっけ?
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