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恋人(櫂視点)
『だって俺、天ヶ瀬くんが好きだから⋯っ』
衣装を合わせて舞踏会のリハをする。それを聞いて、楪のドレス姿が見れるのかと楽しみにしていた俺は予想を遥かに超える出来栄えに思わず素で「可愛い」って言いそうになった。
髪長いの似合いすぎだろ。
慌てて押さえたおかげでバレてはないけど、こんな可愛い楪を周りの奴らが見てるのも観客に見せるのもすげぇ嫌で、正直この場から連れ去りたくて堪らなかった。
一部不快な奴らもいたけど、どうにか心を落ち着かせてたら今度は穂波がとんでも発言をしたせいで頭の中が真っ白になる。
キスシーン? 俺と楪が? 告白の返事待ちなのに?
俺が固まってる間に話はどんどん進むけど、ふと楪の方を見たら必死で首を横に振っていて胸が痛んだ。
フリでもすんの嫌なんだって思って一人気落ちして、早く帰れたからって俺と一緒に帰りたがる楪をそのまま家に連れて帰っては来たものの気分は上がらないでいた。
心配した楪が気にかけてくれたから、このままはこいつにも悪いしって誤魔化そうとしたのに理由を聞いてくるからつい答えたら⋯⋯まさかの冒頭のセリフ。
お互いにポカンとして、一足先に自分の発言に気付いた楪が真っ赤になって俺に背を向けたけど、俺はめちゃくちゃテンパってた。
(好き? 楪が俺を? だって告白した時は完全に友達だったのに⋯)
そりゃ前向きに考えて欲しいとは言ったけど、楪の事だから好きになって貰うまではもっと時間がかかると思ってた。友愛と恋愛の違いを分かってなさそうだったし⋯っつか、もしかして俺が告白したせいで余計にこんがらがったか?
本当に俺と同じ好きか知りたくて、どうにか気持ちを落ち着かせてから楪の肩に触れるとビクリと跳ねた。
うわ、耳まで赤い。
「楪」
「⋯⋯⋯」
「ゆーずーりーは」
「⋯っ、い、今は⋯そっとしておいて⋯」
震える声と熟れたりんごのような頬を見てそんな事出来るはずもなく、俺はいつも以上に小さく見える背中に覆い被さるよう抱き締めた。
俺の腕にすっぽりと収まる楪がどうしようもなく愛おしい。
「あ、天ヶ瀬く⋯」
「俺の好きって、楪とキスしたいしそれ以上もしてぇんだけど⋯同じ?」
楪の綺麗な気持ちとは別で、俺の好きは欲に塗れてドロドロしたものだ。今すぐにでも楪を組み敷きたいと思ってるし、身体中に俺のだって印を残したい。
だからそう聞けば、楪は少し黙り込んだあと小さく首を振った。
「⋯正直、そこまでは分かんない⋯⋯でも、手を繋ぐのも、頭を撫でられるのも⋯天ヶ瀬くんだけがいいって思ってる⋯」
「そっか」
楪としては今はこれが精一杯に出せる答えなんだろう。それでも、俺がしてきた事を俺だけって言ってくれるのは素直に嬉しかった。もちろん他の誰にもさせるつもりはねぇけど、楪自身がそう思ってくれてんのが一番大きい。
腕の力を少しだけ込めて髪に頬を寄せると、楪の手が遠慮がちに俺の腕に触れてきた。
「じゃあ、本当にキスシーンが嫌な訳じゃねぇんだな?」
「う、うん⋯⋯その、みんなの前でっていうのが恥ずかしくて⋯⋯それに、みんな天ヶ瀬くんが好きだから⋯怒る子もいるんじゃないかなって⋯」
「他の奴らに好かれたって何とも思わねぇよ。そもそも王子モードは万人受けするように猫被ってんだし、怒ったところで知るかっつの。楪じゃねぇなら意味がないんだよ」
「⋯⋯そっ、か⋯」
息を吐きながら頷いた楪の肩から力が抜ける。
俺に身を預けるまではいかなくても、腕の中にいてくれるだけで幸せを感じるんだから単純だよな。
中学の時にも一応彼女はいたけど、今思えばそこまで好きじゃなかったんだって楪を好きになってから気付いた。頭の先からつま先まで楪の全部が愛おしい。
こんなに欲しいって思ったのは楪が初めてだし、楪が笑ってくれんなら何でもしてやりたいって思ってる。
俺の全てを賭けてでも手に入れたいって。
いろいろ実感が湧いてきてホッと息を吐き、そのまましばらく抱き締めてたら楪が振り向いて俺を見上げてきた。
「あの⋯天ヶ瀬くん⋯」
「ん?」
「俺、そろそろ帰らないと⋯」
「あー、もうそんな時間か⋯」
親父さん、出張から帰って来てるから夕飯の準備とかもしなきゃなんねぇんだよな。最近は昼も別だから楪の弁当も食えてねぇし、正直俺はこのまま家にお邪魔してでも楪の飯が食いたい。
でも親父さんの心象を悪くするのはあとにも響くから、文化祭が終わるまでは耐えるしかねぇな。
とはいえこの腕は離しがたい。
「⋯なぁ、楪」
「?」
「俺たちって、恋人でいいんだよな?」
「え、えっと⋯そう、だね⋯」
「キスしていい?」
「え⋯!?」
完全両想いとまでは行かなくても、俺を好きだって楪は言ってくれたから一応恋人にはなれたはずだ。楪だって戸惑いながらも頷いてるし。
このまま帰したくなくて、振り向いたままの楪の頬に触れながら問い掛けると真っ赤になって大きく目を見開いた。高二にもなっていちいち反応がウブなんだよな。
「駄目か?」
「⋯だ、ダメって言うか⋯あの⋯その⋯」
「目、瞑って」
「⋯うぅ⋯⋯」
っつーかこの反応、キスした事もねぇな?
楪は湯気が出そうなほど赤い顔で忙しなく瞬きしながら視線を彷徨わせたあと、心を決めたのか唇を引き結びぎゅっと目を瞑って僅かに顎を上げた。
拒否したって怒ったりしねぇのに、応えてくれるんだな。
羞恥からか、小刻みに震える身体にしっかりと腕を回した俺は、ぴったりと閉じられた唇へとそっと口付けた。
少しずつでいいから、この強張りも解けていくといいんだけど。
衣装を合わせて舞踏会のリハをする。それを聞いて、楪のドレス姿が見れるのかと楽しみにしていた俺は予想を遥かに超える出来栄えに思わず素で「可愛い」って言いそうになった。
髪長いの似合いすぎだろ。
慌てて押さえたおかげでバレてはないけど、こんな可愛い楪を周りの奴らが見てるのも観客に見せるのもすげぇ嫌で、正直この場から連れ去りたくて堪らなかった。
一部不快な奴らもいたけど、どうにか心を落ち着かせてたら今度は穂波がとんでも発言をしたせいで頭の中が真っ白になる。
キスシーン? 俺と楪が? 告白の返事待ちなのに?
俺が固まってる間に話はどんどん進むけど、ふと楪の方を見たら必死で首を横に振っていて胸が痛んだ。
フリでもすんの嫌なんだって思って一人気落ちして、早く帰れたからって俺と一緒に帰りたがる楪をそのまま家に連れて帰っては来たものの気分は上がらないでいた。
心配した楪が気にかけてくれたから、このままはこいつにも悪いしって誤魔化そうとしたのに理由を聞いてくるからつい答えたら⋯⋯まさかの冒頭のセリフ。
お互いにポカンとして、一足先に自分の発言に気付いた楪が真っ赤になって俺に背を向けたけど、俺はめちゃくちゃテンパってた。
(好き? 楪が俺を? だって告白した時は完全に友達だったのに⋯)
そりゃ前向きに考えて欲しいとは言ったけど、楪の事だから好きになって貰うまではもっと時間がかかると思ってた。友愛と恋愛の違いを分かってなさそうだったし⋯っつか、もしかして俺が告白したせいで余計にこんがらがったか?
本当に俺と同じ好きか知りたくて、どうにか気持ちを落ち着かせてから楪の肩に触れるとビクリと跳ねた。
うわ、耳まで赤い。
「楪」
「⋯⋯⋯」
「ゆーずーりーは」
「⋯っ、い、今は⋯そっとしておいて⋯」
震える声と熟れたりんごのような頬を見てそんな事出来るはずもなく、俺はいつも以上に小さく見える背中に覆い被さるよう抱き締めた。
俺の腕にすっぽりと収まる楪がどうしようもなく愛おしい。
「あ、天ヶ瀬く⋯」
「俺の好きって、楪とキスしたいしそれ以上もしてぇんだけど⋯同じ?」
楪の綺麗な気持ちとは別で、俺の好きは欲に塗れてドロドロしたものだ。今すぐにでも楪を組み敷きたいと思ってるし、身体中に俺のだって印を残したい。
だからそう聞けば、楪は少し黙り込んだあと小さく首を振った。
「⋯正直、そこまでは分かんない⋯⋯でも、手を繋ぐのも、頭を撫でられるのも⋯天ヶ瀬くんだけがいいって思ってる⋯」
「そっか」
楪としては今はこれが精一杯に出せる答えなんだろう。それでも、俺がしてきた事を俺だけって言ってくれるのは素直に嬉しかった。もちろん他の誰にもさせるつもりはねぇけど、楪自身がそう思ってくれてんのが一番大きい。
腕の力を少しだけ込めて髪に頬を寄せると、楪の手が遠慮がちに俺の腕に触れてきた。
「じゃあ、本当にキスシーンが嫌な訳じゃねぇんだな?」
「う、うん⋯⋯その、みんなの前でっていうのが恥ずかしくて⋯⋯それに、みんな天ヶ瀬くんが好きだから⋯怒る子もいるんじゃないかなって⋯」
「他の奴らに好かれたって何とも思わねぇよ。そもそも王子モードは万人受けするように猫被ってんだし、怒ったところで知るかっつの。楪じゃねぇなら意味がないんだよ」
「⋯⋯そっ、か⋯」
息を吐きながら頷いた楪の肩から力が抜ける。
俺に身を預けるまではいかなくても、腕の中にいてくれるだけで幸せを感じるんだから単純だよな。
中学の時にも一応彼女はいたけど、今思えばそこまで好きじゃなかったんだって楪を好きになってから気付いた。頭の先からつま先まで楪の全部が愛おしい。
こんなに欲しいって思ったのは楪が初めてだし、楪が笑ってくれんなら何でもしてやりたいって思ってる。
俺の全てを賭けてでも手に入れたいって。
いろいろ実感が湧いてきてホッと息を吐き、そのまましばらく抱き締めてたら楪が振り向いて俺を見上げてきた。
「あの⋯天ヶ瀬くん⋯」
「ん?」
「俺、そろそろ帰らないと⋯」
「あー、もうそんな時間か⋯」
親父さん、出張から帰って来てるから夕飯の準備とかもしなきゃなんねぇんだよな。最近は昼も別だから楪の弁当も食えてねぇし、正直俺はこのまま家にお邪魔してでも楪の飯が食いたい。
でも親父さんの心象を悪くするのはあとにも響くから、文化祭が終わるまでは耐えるしかねぇな。
とはいえこの腕は離しがたい。
「⋯なぁ、楪」
「?」
「俺たちって、恋人でいいんだよな?」
「え、えっと⋯そう、だね⋯」
「キスしていい?」
「え⋯!?」
完全両想いとまでは行かなくても、俺を好きだって楪は言ってくれたから一応恋人にはなれたはずだ。楪だって戸惑いながらも頷いてるし。
このまま帰したくなくて、振り向いたままの楪の頬に触れながら問い掛けると真っ赤になって大きく目を見開いた。高二にもなっていちいち反応がウブなんだよな。
「駄目か?」
「⋯だ、ダメって言うか⋯あの⋯その⋯」
「目、瞑って」
「⋯うぅ⋯⋯」
っつーかこの反応、キスした事もねぇな?
楪は湯気が出そうなほど赤い顔で忙しなく瞬きしながら視線を彷徨わせたあと、心を決めたのか唇を引き結びぎゅっと目を瞑って僅かに顎を上げた。
拒否したって怒ったりしねぇのに、応えてくれるんだな。
羞恥からか、小刻みに震える身体にしっかりと腕を回した俺は、ぴったりと閉じられた唇へとそっと口付けた。
少しずつでいいから、この強張りも解けていくといいんだけど。
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