モテモテ王子の秘密をうっかり知ったら溺愛されるようになりました

ミヅハ

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いつもと違うキス

 あのあと、「下ろして」「下ろさない」の攻防を繰り返しつつ天ヶ瀬くんの家に連れて行かれた俺は、今胡座を掻いてる天ヶ瀬くんの膝の上に横向きに座らされてて羞恥心と戦ってた。
 というか、お姫様抱っこされてるとこ残ってる人たちに見られたけど本当に良かったのかな。
 みんな何事? って顔をしたあと、俺の足を見て「怪我人か」とか、「さすが王子」とか言ってたけど、天ヶ瀬くんが誰かに対してこんな行動を取った事一度もないんだよ?
 絶対みんな変に思ってる⋯バレたらどうするんだろう。

「⋯⋯あ、あの⋯天ヶ瀬くん⋯」
「却下」
「ま、まだ何も言ってない⋯」
「下ろさねぇよ。お前、俺がどんだけ心配したか分かってねぇだろ」

 心配してくれてるのは分かってるけど、骨が折れたとか物凄く腫れてるとかじゃないから俺自身も軽く見てた。こんなの月曜日には治ってるって。
 でも天ヶ瀬くんの声色に何だか申し訳なくなり、腰を支える手に躊躇いがちに触れたらコツンと痛くない頭突きをされた。肩を抱く手に力が込められて、額に天ヶ瀬くんの唇が触れる。

「俺の見てねぇとこで、怪我なんかすんな」
「ご、ごめ⋯」
「足に包帯巻いてんの見て、心臓止まるかと思った」

 そっか、傍から見ただけじゃ怪我の度合いなんて分かんないもんね。俺だって天ヶ瀬くんが包帯巻いてたら、ひどい怪我なのかと思っちゃうだろうし。
 俺は顔を上げると、天ヶ瀬くんの頬にそっと手を当て軽く撫でた。

「ごめんね。心配してくれてありがとう」
「⋯⋯楪」
「? ⋯⋯ん⋯」

 俺を大事に思ってくれてるその気持ちを俺も大事にしたい。
 だからそう言って微笑んだら、天ヶ瀬くんの手が前髪を避けて頬に滑り降りてきた。それから名前を呼ばれて首を傾げると言葉もなく唇が塞がれる。
 まだ恥ずかしさの方が強くてぎゅっと目を瞑って受け入れてたんだけど、今日のキスはいつもとは違ってた。

「!!」

 閉じたままの唇に軽く歯を立てられたと思ったら、ぬるりとしたものに舐められ肩が跳ねる。
 それが天ヶ瀬くんの舌だっていうのは分かったんだけど、何で舐めるのか分からなくて困惑してると、今度は唇全部が天ヶ瀬くんの唇で食まれた。

「⋯⋯口、開けれるか」
「く、ち⋯?」

 いつもより低めの声に言われて、ぼんやりしながらも薄く開けたら口の中に舌が入ってきて俺の舌を撫でてきた。
 初めての感触と感覚にゾワゾワして、天ヶ瀬くんの舌が動くたびに身体が震える。

「ん、んん⋯っ」

 何、これ。舌ってこんな感じ方もするの?
 ご飯食べてる時は何とも思わないのに、舌と舌が擦れ合うたび出した事ないような声が漏れる。これもキスなのかな。
 でもいつもしてるキス以上に上手く息が出来なくて、頭が真っ白になってきた頃に唇が離れ力なく天ヶ瀬くんに寄り掛かる。口の中がジンジンして震える手で口を押さえた。

「⋯嫌、だったか?」
「⋯⋯⋯」

 俺が口を押さえたからか、天ヶ瀬くんがどこかしょんぼりした声で聞いてきた。
 天ヶ瀬くんにされて嫌な事なんてないから首を振るとホッとしてたけど、俺はまだふわふわしてる。今のキスって、恋人なら当たり前のようにしてるのかな。
 あんなのたくさんしたら、俺どうなるんだろう。

「楪?」
「⋯⋯天ヶ瀬くん⋯」
「ん?」
「⋯俺⋯心臓壊れるかも⋯」
「え?」
「ずっとドキドキしてる⋯」
「⋯⋯⋯」

 身体だってまだポカポカしてるし、天ヶ瀬くんの手が頬や髪に触れるたび胸がきゅってなる。無意識に天ヶ瀬くんの肩に擦り寄りながらそう言うと、黙り込んだ天ヶ瀬くんに強めに抱き締められた。
 いつも思うけど、本当にすっぽりって感じで包まれる。

「可愛すぎ」
「ん⋯擽ったい⋯」
「擽ったいだけ?」
「⋯わ、分かんない⋯」

 髪を撫でていた手が毛先に沿うように滑り降りて首筋に触れる。不思議な感覚と擽ったさが混じって首を竦めたら、天ヶ瀬くんがクスリと笑って目蓋に口付けてきた。
 な、何だか今日はスキンシップが多い気がする。

「⋯そろそろ帰んねぇとだな。送ってく」
「一人で帰れるよ?」
「もう日が落ちんのも早くなってきたし、怪我もしてんだから危ねぇだろ」
「そ、そっか」

 俺だって男なのにと目を瞬くけど、これが特別扱いなんだって思えば嬉しいからお言葉に甘える事にする。
 そういえば、怪我の事は学校からお父さんに連絡いってるみたいで、今日はお弁当買って帰るから安静にってメッセージきてたっけ。歩きにくいだけでご飯は作れるのに、お父さんも天ヶ瀬くんに負けず劣らず心配性だ。
 とりあえず、俺が座ったままじゃ天ヶ瀬くんも動けないし、手を付いてどこうとしたんだけどどうしてか天ヶ瀬くんの腕が解けない。

「天ヶ瀬くん?」
「⋯やっぱあと五分」
「え⋯⋯んっ」

 そう言ってまたぎゅーって抱き締められて唇が重ねられる。
 触れて離れてを数回繰り返し、その間に長い指が耳やうなじを擽ってくるからまたゾワゾワしてきて、どうしてかあらぬところに熱が集まってきた。
 キスしてるだけなのに、何でこんなに身体が火照るんだろう。

「⋯ん⋯天ヶ瀬、くん⋯」
「⋯帰したくねぇな⋯」

 全身熱くて、部屋が暑い訳じゃないのに汗を掻きそうなくらいポカポカしてる。
 少しだけ上がった息を整えるように深めに吸って吐いてたら、天ヶ瀬くんが溜め息混じりにそう呟いた。

「今日いきなりの泊まりは無理だよ⋯?」
「⋯⋯合ってるようで違うんだけど⋯まぁいっか」

 その言葉に首を傾げ少し考えてから答えたら苦笑されたけど、そういう意味じゃなかったんだ⋯ちょっと恥ずかしい。
 でも今度こそ俺の肩に回していた手を離した天ヶ瀬くんは、包帯が巻かれた足を気遣ってくれながら膝から下ろすと「それはまた今度な」と言って頭をポンポンしてきた。
 今度って、いつだろう。
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