モテモテ王子の秘密をうっかり知ったら溺愛されるようになりました

ミヅハ

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イチャイチャ(櫂視点)

 楪の第一印象は、物静かで大人しい奴だった。
 二年で初めて同じクラスになったけど、いつも一人で本を呼んでるから目立ちもしないし、騒ぎもしないからそこだけ空間が違うのかってくらい静かだなと思った事を覚えてる。
 ただ、時折楽しそうに笑ってるクラスメイトに視線を向ける事もあり、本心では仲良くしたいのかと思って話しかけたのが始まりだ。
 王子は博愛主義で、誰に対しても平等に接する。
 だから面倒でも毎日楪に挨拶するようになったし、たまに話をしていい印象さえ持って貰えればいいやって惰性で続けてただけなのに⋯それが今や、こんなにも大切な存在になるとはな。
 人生ってほんと、何があるか分かんねぇや。


 球技大会も終わり、ようやく落ち着いた日常が戻ってきた。
 昼休みには楪の弁当が食えるし、放課後は時間が合えば俺の家に行ってイチャつけるし、何もない日最高。マジで行事とか当分いい。
 冬休み前には期末テストが実施されるけど、テスト期間だって俺が勉強を教えるから一緒にはいられるしな。
 でも今、俺の腸は煮えくり返りそうになってた。

「楪、ここ間違ってる」
「え? どこ?」
「ここ」

 つい最近席替えがあったのはいい。くじ引き形式だからどこが当たるかは分かんねぇのも仕方ねぇ。俺と楪の席が離れるのもまぁ我慢はする。
 ただ、と楪が前後なのは物凄く気に食わない。
 広尾 智成ひろお ともなり。文化祭の出し物である演劇、男だけのシンデレラで継母役をやってた奴なんだけど、どうやらあいつは楪に惚れてるらしく気付いたら楪の近くにいやがる。
 あの時あんなに楪に対して悪態をついてきたくせに都合良すぎるだろ。
 楪は楪で鈍感だから絶対気付いてねぇし、むしろ広尾の下心ありの親切に感謝さえしてた。
 学校じゃ王子モードは崩せねぇからあれだけど、本当なら今すぐにでも割り込んで楪を連れ去りたいと思うくらいには腹が立ってる。

「なぁ、今度の日曜って暇? 映画のチケット貰ったんだけどさ、良かったら一緒に行かね?」
「あ、その日は用事があって⋯ごめんね」
「そっか。じゃあまたタイミングあったらどっか行こ」
「う、うん」

 残念だったな、広尾。楪の休日は俺が独占してんだよ。
 楪に他の用事がある時は別として、空いてるなら俺と過ごして欲しいって言ってあるからな。
 っつーか、人の恋人を軽々しく誘ってんじゃねぇよ。
 表情は至って穏やかに、だけど内心は物凄くイライラながら頼まれ事の資料をホッチキスで留める作業をしてたら、俺が見ている事に気付いた楪が目を瞬いたあと控えめに微笑んだ。
 ピタッと手が止まり、微笑み返して噛み締める。

(あー、マジで可愛い。女子相手には思った事もねぇけど、楪だけは可愛過ぎて頭おかしくなりそう)

 あれだけでささくれまくってた心が浄化されて、さっきよりも落ち着いてホッチキスを動かす事が出来る。楪の表情や言葉一つで俺の気分は上がりもするし下がりもするんだから不思議だ。
 俺が単純なだけかもしんねぇけど。
 作業中だろうと話し掛けてくる女子に対応しつつ、広尾の事はいい加減どうにかしねぇとって考える。
 付き合ってる事、バラせたら一番早いんだけどな。


 テスト期間前から勉強会をするのは楪が苦手だからってのもあるけど、俺にとっては別の意味があった。

「⋯っ、ん⋯天ヶ瀬、く⋯」
「⋯ん?」
「べ、べんきょ⋯は⋯」

 部屋につくなり楪を膝に乗せ、小さな唇を貪っていた俺に楪の弱々しい声がかけられる。力なく俺の服を掴む手を握り、最後に軽く触れ合わせると微かに吐息が漏れた。
 学校ではなるべく我慢しているせいか、最近は邪魔の入らない場所に二人だけになると箍が外れたみたいに手が出るようになって、今じゃ話してる時間よりキスしてる時間の方が長い気がする。
 口ん中を舐め回してたからか、真っ赤になって忙しなく呼吸する楪を抱き締め背中を撫でてやると擦り寄ってくるのが堪らない。
 これ、楪は無意識でやってんだよな。

「もっとイチャイチャしてぇけど⋯⋯しゃーねぇ、勉強すっか」
「い、イチャイチャ⋯」

 楪曰く、恋人はおろか誰かを好きなった事もないらしいから、恋愛ごとには非常にウブだし疎い。こんな言葉にさえ照れるんだから、なかなかキス以上に進めないのはまぁ仕方ねぇよな。
 ただ、俺も健全な男子高校生だから、エロい事だってもちろんしたい。今すぐじゃなくて、いつかは。
 もじもじしてる楪を膝から下ろし、頭を撫でて気持ちを切り替える。

「今日は何にする?」
「えっと、英語」
「英語な。俺もあんま得意じゃねぇから教えんの下手かもしんねぇけど、まぁ一通りやって分かんなかったら聞いて」
「うん」

 勉強は嫌いじゃない。頭ん中の知識を増やす時は無心になれるし、分かんなかった問題が解けるようになると楽しい。おかげで学年首位をキープ出来てはいるけど、ちょっとでもサボれば一気に順位は落ちるだろうな。
 解説付きの参考書と俺の勉強ノートを出し、テーブルに向き合った楪の前に置くとパラパラと捲って真剣な顔で読み始める。
 だけど、そのままノートにでも書き込むのかと思いきや、楪は動きを止めて開いた状態の参考書を額に当てて顔を隠すと、少しだけ俺の方へと寄ってきた。
 見えてる頬とか耳が真っ赤になってる。

「⋯⋯あの⋯」
「どした?」
「⋯べ、勉強、終わったら⋯」
「うん」
「⋯⋯イチャイチャ、出来るよ⋯?」
「⋯⋯⋯」

 予想もしていなかった楪の言葉に俺は凍ったように固まる。
 っつーか、イチャイチャしてたいって言ったの気にしてくれてたのか。

(こういうとこ、敵わねぇよな)

 素直で真っ直ぐで、高二にもなって擦れたところが一つもない無垢で可愛い恋人。
 俺が反応しないからかだんだん俯き始めた楪の肩を抱きこめかみに口付けると、目の下まで参考書をずらして上目遣いに見てきた。
 あざとさすら感じる仕草にもドキッとするんだから、俺も相当重症だよな。

「じゃ、あとでイチャイチャしような」
「⋯う、うん⋯」

 恥ずかしがりながらも俺の意思を尊重してくれる楪に気持ちがどんどん増してく。
 すっかり癖になりつつある〝頭ポンポン〟をして一つ息を吐いた俺は、筆記用具からシャーペンを取り出しノートを開いた。
 イチャイチャの為にも、楪にはしっかり覚えて貰わねぇと。
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