モテモテ王子の秘密をうっかり知ったら溺愛されるようになりました

ミヅハ

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友達たくさん

 崎森くんの騒動から一週間、冬休み前直前の今、俺たち二年生は冬休み明けに実施される修学旅行の班決めをする為ホームルームを時間いっぱい使って話し合っていた。
 それでもなかなか決まらないのはもちろん天ヶ瀬くんを自分の班に入れたい女子の攻防戦が行われてるからだけど、困ったなって柔らかく微笑む横顔がちょっとピクピクしてるのが分かって俺は苦笑する。
 ちなみに俺は天ヶ瀬くんと同じ班で、広尾くんも入りたがってたのをどうしてか天ヶ瀬くんが一刀両断してた。

「天ヶ瀬くんと同じ班になるのは私たちよ!」
「だから、それならジャンケンしようって言ってるじゃない!」
「嫌! 負けたら立ち直れない!」
「諦めて!」
「そっちが諦めてよ!」

 さっきからずっとこうして言い合ってる。
 ジャンケンもあみだくじもあっち向いてホイも、あらゆる勝負を持ち出してもどっちかが却下するから一向に決まらない。
 いっそこの戦いに参加していない人がいいなと思った時、隣から呆れたような声が聞こえてきた。

「まだ決まってないの?」
「みんな目ギラッギラ」
「⋯⋯あ」
「? どうしたの? 楪くん」

 すごくいい人選がここにいた。
 この戦いに参加してなくて、さらに俺と天ヶ瀬くんの関係を知ってる人。

「あ、天ヶ瀬くん」
「⋯確かに」

 急いで隣にいる天ヶ瀬くんの袖を引いて穂波さんと相馬さんの方を向くと、分かってくれたようで何度も頷いたあと睨み合ってる女子たちへと声をかけた。
 さっきより声が明るくなってる。

「決まりそうにないし、俺の班には穂波さんと相馬さんに入って貰うね」
『え!?』
「いい? 二人とも」
「別にいいよ」
「どのみち女子が決まらないと、男子も決められないしね」

 そう、それが一番困ってた。穂波さんと相馬さん以外の女子はみんな天ヶ瀬くん争奪戦を繰り広げていたから、男子も眺めてるしか出来なかったんだよね。
 男女合わせての班だし。
 女子たちは凄くショックを受けていてみんな呆然としてるけど、天ヶ瀬くんはさっさと紙に書き込み俺の頭を撫でてきた。

「じゃあ俺もいーれーて」
「赤松くん」

 目を瞬いてたら肩を組まれて、天ヶ瀬くんと仲の良い赤松 駿あかまつ しゅんくんがにこやかに声をかけてきた。
 さすが陽キャと言われるグループの一人。
 距離が近いなって思ってたらその腕が外されて、代わりに天ヶ瀬くんの手に肩を抱かれる。

「気安く楪に触らないでくれる?」
「お前、まだシンデレラの王子役が抜けてないのかよ」
「ずっと抜けないかもね」
「やば」

 今までの天ヶ瀬くんは誰かに対してこんな風に触れる事がなかったからか、あの劇以降俺にこうしてちょっかいを出すのは役が抜けてないからだと思われてる。
 そうやって見て貰えるなら俺がシンデレラ役で良かったなって思いつつも、そのたびに向けられる女子の目は怖い。
 赤松くんは顔を顰めてメンバー表に自分の名前を書くと、先生に提出するため手に取って教卓へと向かった。
 それを見送ってたら穂波さんと相馬さんが空いてる席に腰を下ろして、修学旅行のプリントと何も書かれていない紙を置いて頬杖をつく。

「関西といえば有名なテーマパークあるけどどうする? 一応自由行動の選択肢には入ってるっぽいよ?」
「でも行くなら、時間とかに縛られない時の方が良くない?」
「それは言えてる。あ、着付け体験とかもあるよ」
「楪くん、一緒に着物着る?」
「え、遠慮しておきます⋯」

 シンデレラで充分女の子体験はしたし、俺の着物姿なんて誰も喜ばないから苦笑混じりに首を振ると、わざとらしく肩を竦めて「残念」って言われてしまった。
 プリントに視線を落とすと自由行動の欄に選択出来るお店や場所がいくつか書かれてる。
 湯呑み作りとか染め物とかの体験も出来るんだ。

「楪はやってみたいのある?」

 じっと見てたら天ヶ瀬くんに聞かれたけど、特にこれといった物がない俺は首を振る。全部楽しそうだし、何より天ヶ瀬くんやみんなと出来るなら何だって嬉しい。

「あ、そうだ。この班のグループ作らない? 冬休み明けすぐ修学旅行だし、もしはぐれたり迷子になった時に連絡取れるように」
「賛成」
「俺はいいけど⋯」

 確かにそれはあった方が便利だけど、俺以外とはID交換をしていない天ヶ瀬くんをチラリと見たら、一瞬だけ目を伏せて了承した。
 戻ってきた赤松くんにも話すと笑顔で頷いたから、みんなでスマホを出して交換し穂波さんが作ったグループに招待して貰う。一気に三人も友達が増えて賑やかになった画面を見てたら、相馬さんに「どうしたの?」って聞かれた。

「あ、えっと⋯俺、お父さん以外やり取りする人いなかったから、ここにみんなの名前が並んでるの嬉しいなって⋯」
「えー、何それ。可愛い」
「たくさんメッセージ送るね」
「あ、ありがとう」

 修学旅行以外でも送ってくれるんだ。
 嬉しくて口元を綻ばせていたら、にこにこ顔の相馬さんが両手で頬杖をついて天ヶ瀬くんの方を見る。

「天ヶ瀬くんも大変だねぇ」
「分かってくれる? 俺、毎日翻弄されてる」
「広尾くんってライバルもいるし、頑張らないとね」
「もちろん。誰にも渡さないから」
「お前ら何の話してるんだ?」

 訳知り顔で話す天ヶ瀬くんと相馬さんと穂波さんに、赤松くんが怪訝そうな顔でそう問い掛ける。俺も分からなくて首を傾げたけど、天ヶ瀬くんは優しく笑っただけで教えてはくれなかった。
 二人も赤松くんに「内緒」って言ってるし、三人だけで分かり合えてる様子にちょっとだけモヤモヤした俺は、みんなに見えないように天ヶ瀬くんのジャケットの裾を掴んだ。それに気付いてふっと笑った天ヶ瀬くんがポンポンって手を叩いて握ってくれる。
 そんな事で機嫌の良くなる俺って単純だなと思うけど、これが俺だけの特権だって分かってるから仕方ない。

「もう! あんたたちがさっさと諦めないから!」
「こっちのセリフよ!」
「最悪⋯っ」
「元はと言えばあんたが⋯!」

 女子たちの言い合いは今も続いてて、他の男子はいい加減にしてくれって顔をしてた。班が決まらないと計画も立てられないし困るよね。
 でもそれから十分しても収まらなかったから怒った先生の独断により班分けが行われた為、その日の放課後の教室は俺の班以外お通夜みたいになってた。
 先生も先生で大変だ。
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