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お仕置き
途中で道行く人たちの注目を浴びながらも、波から抜けて隅の方にある公衆トイレの個室に連れ込まれた俺は、今は天ヶ瀬くんに壁ドンされて見下ろされてた。
「広尾と二人になるなっつったよな」
「ご、ごめんなさい⋯⋯どうしたらいいか悩んでたら⋯」
「⋯まぁ、お前が断れない性格なのは分かってっけど、もうちょい注意しろ」
「はい⋯」
破りたくて破った訳じゃないけど、天ヶ瀬くんからすれば分からないしそうやって言われるのも仕方ない。だから素直に頷いたんだけど、それで終わりじゃないのか「それから」と付け加えられた。
「何でお前が口付けたやつを食わせようとしてんの?」
「え? 違う味も食べたいのかなって⋯」
「ンなもん口実に決まってんだろ」
一口欲しいが何の口実になるんだろう。
分からなさすぎて戸惑ってたら、それに気付いた天ヶ瀬くんが俺が持ったままの今川焼きにかぶりついた。
口の端についた餡を拭い半分に欠けた今川焼きを指差す。
「俺が食ったとこ、お前が食ったらどうなる?」
「⋯⋯えっと⋯」
「間接キスになるだろ?」
「⋯⋯⋯⋯あ」
「あと、あいつはお前にあーんして欲しかったんだろうよ」
そんな色んな事、考えてもいなかった。
でも俺と天ヶ瀬くんなら恋人だから分かるけど、どうして広尾くんがそんなのしたがるんだろ。男同士だから、むしろ嫌だなって思いそうなのに。
回し飲みとか出来るほど仲良くなれてるなんて自惚れも甚だしいだろうし。
天ヶ瀬くんの言葉を聞いてますます分からなくなった俺は、今川焼きを見ながら眉尻を下げた。
「何で広尾くんがあーんして欲しがるの?」
「⋯⋯⋯あー⋯なるほど、微塵も気付いてねぇのか」
「?」
「そうかそうか、じゃあいっか」
俺の質問には答えてくれず一人納得する天ヶ瀬くんに目を瞬いてたら、壁についていた手を離していつものように微笑んで抱き締めてくれた。
何か、良く分かんないけど機嫌が治った⋯のかな。
「⋯もう、怒ってない?」
「最初から怒ってねぇよ。約束破られて、悲しい気持ちになっただけ」
「ごめんなさい⋯」
「いいよ、もう気にしてねぇから」
約束破られるのは誰だって悲しい。
言えなかった俺が悪いから、抱き着いて謝ったら梳くように髪が撫でられた。今日は朝から忙しかった上に自由行動があんな状態だったから、こうして貰うのも一日振りだ。
「トイレっつって抜けて来たからそろそろ戻んねぇとだけど⋯約束破ったお仕置きは受けて貰おうかな」
「え⋯お、お仕置き⋯?」
「そう、お仕置き。楪からキスして」
「⋯!」
お仕置きって言葉に身構えてたら思わぬ提示をされ目を見瞠る。
お、俺からキスするの? 天ヶ瀬くんからのキスでさえまだ緊張しちゃうのに?
で、でも、それが罰なら俺は受け入れなきゃいけない。
「じゃ、じゃあ⋯目、瞑って⋯」
「ん。ちょっと待って」
覚悟を決めてせめてと思って言えば、天ヶ瀬くんは腕を離して便座へと腰を下ろし俺を見上げて目を閉じる。そんな顔もカッコよくて、ドキドキしながら手を肩に置いた俺は途中で何度も止まりつつ天ヶ瀬くんへと口付けた。
まぁ一瞬しか出来なかったんだけど、一応キスはキスだよね。
「⋯もう一回」
「え⋯」
「ほら」
「うぅ⋯」
恥ずかしさを押し込んでやったのにと唸る俺に、天ヶ瀬くんは楽しそうな顔で腰を抱いて促してきた。
すでに閉じられている目蓋を恨めしく見て息を吸い込んだ俺は、肩に置いていた手を首に回すとさっきよりもしっかりと触れ合わせる。これなら天ヶ瀬くんだって満足してくれるはず。
「⋯っん⋯」
限界がきて離れようとしたら後頭部が押さえられキスが深くなった。
肉厚な舌が入ってきて俺の舌が絡め取られ、擦り合わされ吸われる。引きたくても後頭部と腰にしっかりと手が回されてるからされるがままで、上手く息が出来なくてだんだんと息苦しくなってきた。
膝もガクガクしてきて腰が抜けそう。
「ん、んぅ⋯ふ、ぁ⋯ん⋯っ」
「⋯⋯こんくらいしてくんねぇとな」
「⋯む、り⋯だよ⋯」
「まぁそこが可愛いからいいんだけど」
天ヶ瀬くんを支えにして崩れそうになる膝を何とか立たせ上がった息を整える。いつもいつも俺だけヘトヘトでちょっとだけ悔しい。
それに最近⋯というか、触りっこしてからこういうキスをするとお臍の下が疼いて反応しそうになるから困ってる。
今だってもうちょっと長くされてたらヤバかった。
「さて、戻るか。俺が先に出るから、お前は落ち着いてから戻んな」
「う、うん⋯」
「一緒にいられなくてごめんな」
そう言って俺の頬に軽くキスをして立ち上がった天ヶ瀬くんは、くしゃくしゃと髪を撫でてから個室から出て行った。それを見送り壁に寄り掛かって息を吐く。
さっきまで触れ合っていた唇がまだ熱い気がして、指先で軽くなぞればしっとりと湿っていた。思い出したらまた赤くなりそうだから慌てて首を振り、ある程度火照りが治まるのを待って外に出る。
ただ、おかげでモヤモヤは完全になくなった。女子に囲まれる天ヶ瀬くんはまだ見る事になるだろうけど、最初よりは穏やかでいられると思う。
(よし、戻ろう)
自由行動終了まであと二時間。明日には地元に帰るし、出来るだけ楽しい思い出を作らないと。
すっかり冷めた今川焼きを完食した俺はそう気合いを入れると、みんながいる場所へと走って向かう。
穂波さんがずっと心配してくれてたようで、合流するなり抱き着かれて以降はずっと隣にいてくれた。相馬さんも気にかけてくれたりして、本当に優しいな。
おかげで一緒に学べたし、写真もたくさん撮れたから良かっ嬉しかった。
ただ、広尾くんがよそよそしくなって距離を取ってたのは気になったけど⋯。
こうして三泊四日の修学旅行は終わり、俺たちは新幹線で帰宅する事に。
そういえば、結局天ヶ瀬くんの名前呼べなかった。
もっと練習しないと。
「広尾と二人になるなっつったよな」
「ご、ごめんなさい⋯⋯どうしたらいいか悩んでたら⋯」
「⋯まぁ、お前が断れない性格なのは分かってっけど、もうちょい注意しろ」
「はい⋯」
破りたくて破った訳じゃないけど、天ヶ瀬くんからすれば分からないしそうやって言われるのも仕方ない。だから素直に頷いたんだけど、それで終わりじゃないのか「それから」と付け加えられた。
「何でお前が口付けたやつを食わせようとしてんの?」
「え? 違う味も食べたいのかなって⋯」
「ンなもん口実に決まってんだろ」
一口欲しいが何の口実になるんだろう。
分からなさすぎて戸惑ってたら、それに気付いた天ヶ瀬くんが俺が持ったままの今川焼きにかぶりついた。
口の端についた餡を拭い半分に欠けた今川焼きを指差す。
「俺が食ったとこ、お前が食ったらどうなる?」
「⋯⋯えっと⋯」
「間接キスになるだろ?」
「⋯⋯⋯⋯あ」
「あと、あいつはお前にあーんして欲しかったんだろうよ」
そんな色んな事、考えてもいなかった。
でも俺と天ヶ瀬くんなら恋人だから分かるけど、どうして広尾くんがそんなのしたがるんだろ。男同士だから、むしろ嫌だなって思いそうなのに。
回し飲みとか出来るほど仲良くなれてるなんて自惚れも甚だしいだろうし。
天ヶ瀬くんの言葉を聞いてますます分からなくなった俺は、今川焼きを見ながら眉尻を下げた。
「何で広尾くんがあーんして欲しがるの?」
「⋯⋯⋯あー⋯なるほど、微塵も気付いてねぇのか」
「?」
「そうかそうか、じゃあいっか」
俺の質問には答えてくれず一人納得する天ヶ瀬くんに目を瞬いてたら、壁についていた手を離していつものように微笑んで抱き締めてくれた。
何か、良く分かんないけど機嫌が治った⋯のかな。
「⋯もう、怒ってない?」
「最初から怒ってねぇよ。約束破られて、悲しい気持ちになっただけ」
「ごめんなさい⋯」
「いいよ、もう気にしてねぇから」
約束破られるのは誰だって悲しい。
言えなかった俺が悪いから、抱き着いて謝ったら梳くように髪が撫でられた。今日は朝から忙しかった上に自由行動があんな状態だったから、こうして貰うのも一日振りだ。
「トイレっつって抜けて来たからそろそろ戻んねぇとだけど⋯約束破ったお仕置きは受けて貰おうかな」
「え⋯お、お仕置き⋯?」
「そう、お仕置き。楪からキスして」
「⋯!」
お仕置きって言葉に身構えてたら思わぬ提示をされ目を見瞠る。
お、俺からキスするの? 天ヶ瀬くんからのキスでさえまだ緊張しちゃうのに?
で、でも、それが罰なら俺は受け入れなきゃいけない。
「じゃ、じゃあ⋯目、瞑って⋯」
「ん。ちょっと待って」
覚悟を決めてせめてと思って言えば、天ヶ瀬くんは腕を離して便座へと腰を下ろし俺を見上げて目を閉じる。そんな顔もカッコよくて、ドキドキしながら手を肩に置いた俺は途中で何度も止まりつつ天ヶ瀬くんへと口付けた。
まぁ一瞬しか出来なかったんだけど、一応キスはキスだよね。
「⋯もう一回」
「え⋯」
「ほら」
「うぅ⋯」
恥ずかしさを押し込んでやったのにと唸る俺に、天ヶ瀬くんは楽しそうな顔で腰を抱いて促してきた。
すでに閉じられている目蓋を恨めしく見て息を吸い込んだ俺は、肩に置いていた手を首に回すとさっきよりもしっかりと触れ合わせる。これなら天ヶ瀬くんだって満足してくれるはず。
「⋯っん⋯」
限界がきて離れようとしたら後頭部が押さえられキスが深くなった。
肉厚な舌が入ってきて俺の舌が絡め取られ、擦り合わされ吸われる。引きたくても後頭部と腰にしっかりと手が回されてるからされるがままで、上手く息が出来なくてだんだんと息苦しくなってきた。
膝もガクガクしてきて腰が抜けそう。
「ん、んぅ⋯ふ、ぁ⋯ん⋯っ」
「⋯⋯こんくらいしてくんねぇとな」
「⋯む、り⋯だよ⋯」
「まぁそこが可愛いからいいんだけど」
天ヶ瀬くんを支えにして崩れそうになる膝を何とか立たせ上がった息を整える。いつもいつも俺だけヘトヘトでちょっとだけ悔しい。
それに最近⋯というか、触りっこしてからこういうキスをするとお臍の下が疼いて反応しそうになるから困ってる。
今だってもうちょっと長くされてたらヤバかった。
「さて、戻るか。俺が先に出るから、お前は落ち着いてから戻んな」
「う、うん⋯」
「一緒にいられなくてごめんな」
そう言って俺の頬に軽くキスをして立ち上がった天ヶ瀬くんは、くしゃくしゃと髪を撫でてから個室から出て行った。それを見送り壁に寄り掛かって息を吐く。
さっきまで触れ合っていた唇がまだ熱い気がして、指先で軽くなぞればしっとりと湿っていた。思い出したらまた赤くなりそうだから慌てて首を振り、ある程度火照りが治まるのを待って外に出る。
ただ、おかげでモヤモヤは完全になくなった。女子に囲まれる天ヶ瀬くんはまだ見る事になるだろうけど、最初よりは穏やかでいられると思う。
(よし、戻ろう)
自由行動終了まであと二時間。明日には地元に帰るし、出来るだけ楽しい思い出を作らないと。
すっかり冷めた今川焼きを完食した俺はそう気合いを入れると、みんながいる場所へと走って向かう。
穂波さんがずっと心配してくれてたようで、合流するなり抱き着かれて以降はずっと隣にいてくれた。相馬さんも気にかけてくれたりして、本当に優しいな。
おかげで一緒に学べたし、写真もたくさん撮れたから良かっ嬉しかった。
ただ、広尾くんがよそよそしくなって距離を取ってたのは気になったけど⋯。
こうして三泊四日の修学旅行は終わり、俺たちは新幹線で帰宅する事に。
そういえば、結局天ヶ瀬くんの名前呼べなかった。
もっと練習しないと。
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