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全部あげる
俺のお父さんが出張に行ってるからか、家にお呼ばれして夕飯をご馳走になる事がわりとあるおかげで天ヶ瀬家にもだいぶ慣れた。
お父さんとお母さんも、まるでもう一人の息子みたいに俺に接してくれるし、何か話してる時も〝かなくんは?〟って聞いてくれるから置いてけぼりにされる事もない。
本当に優しくていい人たちで、俺はすっかり二人が好きになってた。
天ヶ瀬家はいつ来てもあったかいんだ。
手伝うって言ってくれた天ヶ瀬くんと夕飯を作って食べたあと順番にお風呂に入ったんだけど、上がった時いつもの場所にドライヤーがなくて「あれ?」と首を傾げた。
不思議に思いつつ聞けば分かるかなと部屋に戻ったら、どうしてか天ヶ瀬くんが手に持ってて手招きしてくる。
何となく予想がつきつつ近付くとベッドに座るよう示され、大人しく腰を下ろしたら後ろに回った天ヶ瀬くんがドライヤーのスイッチを入れて俺の髪に当ててきた。
予想通りの行動に俺は目を瞬く。
(乾かしてくれるんだ)
人にドライヤーをして貰うなんて子供の頃以来だし、櫛の代わりに撫でるように梳く手が何とも言えず気持ちいい。というか、まず天ヶ瀬くんに撫でられるのが好きだから何でもそう思うかも。
熱くもなく温くもないちょうどいい温度の風に満遍なく乾かされ、心地良さに半分寝掛けてたらドライヤーが止まって頭をポンポンされた。
「ん、終わり」
「ありがとう」
「眠い?」
「ううん、大丈夫」
ウトウトしていた事に気付いてたのか、天ヶ瀬くんがドライヤーをテーブルに置いてそう聞いてくる。眠い訳じゃなかったから首を振れば壁に寄り掛かって腕を広げてきた。
ベッドへと上がり傍に行くと優しく包まれる。
「いい匂い」
「天ヶ瀬くんと同じ匂いだよ?」
「楪の匂いが加味されてるから、俺のとはちょっと違うな」
俺の匂いって何だろうと思いつつ、袖に鼻を寄せて嗅いでみたらいつも使ってる柔軟剤の匂いがしたけど⋯さすがに髪には使わないから違うのかな。
正座になっていた足を崩し、更に天ヶ瀬くんに近付く。
「天ヶ瀬くんもいい匂いするよ」
「そうか?」
「うん。俺、天ヶ瀬くんの匂い好き」
「匂いだけ?」
「え? あ⋯えっと⋯⋯⋯あ、天ヶ瀬くんが⋯好き⋯です⋯」
何気なく言った事だったからそこを突っ込まれるとは思ってなくて、じわじわと顔が熱くなるのを感じながら答える。でも何か恥ずかしくて俯いたら顎に手が掛かって上向かされた。
「ほんっと可愛いな、お前」
「⋯っ、ん⋯」
目が細められ天ヶ瀬くんの顔がアップになったと思ったら唇が塞がれて舌が差し込まれる。最初から激しいキスをされてクラクラしてきて、息が苦しくなり顔を引こうとしたけど後頭部が押さえられて更に深くなった。
散々舐め回され、舌を吸われて、唾液が糸を引くくらい長いキスが終わって、唇が離れる頃には俺はもう酸欠状態で力が入らず、くたっと天ヶ瀬くんへと寄り掛かる。
火照った頬を撫でる感覚にも反応したら、天ヶ瀬くんが小さく息を吐いた。
「俺も、楪が好きだよ」
「⋯⋯⋯」
「めちゃくちゃ好き」
天ヶ瀬くんが俺の背中を撫でながら優しい声でそう言ってくれる。
まだ落ち着かない息と、それとは違うドキドキと、どうしようもないくらい幸せな気持ちが全身を満たして、俺は無意識に天ヶ瀬くんの頬に触れてた。
俺だって、この人が好きで好きで仕方がない。
「⋯⋯⋯櫂くん⋯」
「⋯!」
あれだけ本人を前にして呼べるかなって悩んでたのに、するりと口から出てきて天ヶ瀬くんが少しだけ目を見開く。
好きの気持ちって漠然としか想像出来なかったけど、この人になら何されてもいいって思えるくらい特別感があるものだったんだね。他の人じゃダメ。天ヶ瀬くん⋯⋯櫂くんだからこそ、苦しくてももっとして欲しいって思うんだ。
最初こそこんなに密着するのは恥ずかしかったのに、今は隙間なんて作りたくないくらいくっついていたい。
頬に触れていた手をそのまま櫂くんの首へと回し、肩に顔を埋めるほど強く抱き着くと、櫂くんも肩と腰に腕を巻き付けるようにして抱き締め返してくれた。
「お前ってマジで心臓に悪い⋯」
「ご、ごめんね⋯?」
「責めてる訳じゃねぇよ」
言葉の意味は分からないけど、何か困らせたのかなって謝ると苦笑混じりの声にそう言われて頭を撫でられる。
しばらくお互いに黙り込み抱き締め合ってたら、櫂くんの唇が耳に口付けたあと首筋まで降りてきて、軽く吸われて小さく声が漏れた。
服の下から手が入ってきて少しカサついた手に肌が撫でられる。
「か、櫂く⋯」
「奏斗」
「⋯っ⋯」
「お前が欲しい」
首に回していた腕を外し櫂くんの肩を軽く押したけど、離れるどころかさらに力が強くなり低い声が俺の名前を口にする。
な、名前呼ばれるってこんなにドキドキするんだ。
それに欲しいって⋯⋯もしかしなくてもそういう事? だって俺、櫂くんに〝抱きたい〟って言われたし⋯たぶん、そうだよね⋯。
(何も分からないし、ちょっと怖くはあるけど⋯)
微かに震えている手で服を握った俺は、少しだけ身体の力を抜いて櫂くんの頬に口付けた。
「⋯⋯いい、よ⋯」
「⋯え?」
「俺の全部⋯櫂くんにあげる⋯」
「⋯⋯⋯」
俺にあげられるものなら何だってあげたい。
だからそう言えば、顔を上げた櫂くんはぐっと眉根を寄せて再び強く抱き締めてきた。
「優しくする。絶対お前が嫌がるような事はしない」
「櫂くんの事、信じてるから大丈夫だよ」
「⋯お前⋯」
今日までだって嫌に思う事なんて一つもされなかったし、どちらかというとずっと優しいしかなかったから櫂くんなら大丈夫。
俺を見下ろす、いつもよりも真剣な目を真っ直ぐに見つめ返した俺は、少しして表情を緩めた櫂くんの顔がまた近付いてくる事に気付いて目を閉じた。
恥ずかしいけど、好きだからこそ全部見て欲しい。
櫂くんに見せられないところなんて、どこもないんだから。
お父さんとお母さんも、まるでもう一人の息子みたいに俺に接してくれるし、何か話してる時も〝かなくんは?〟って聞いてくれるから置いてけぼりにされる事もない。
本当に優しくていい人たちで、俺はすっかり二人が好きになってた。
天ヶ瀬家はいつ来てもあったかいんだ。
手伝うって言ってくれた天ヶ瀬くんと夕飯を作って食べたあと順番にお風呂に入ったんだけど、上がった時いつもの場所にドライヤーがなくて「あれ?」と首を傾げた。
不思議に思いつつ聞けば分かるかなと部屋に戻ったら、どうしてか天ヶ瀬くんが手に持ってて手招きしてくる。
何となく予想がつきつつ近付くとベッドに座るよう示され、大人しく腰を下ろしたら後ろに回った天ヶ瀬くんがドライヤーのスイッチを入れて俺の髪に当ててきた。
予想通りの行動に俺は目を瞬く。
(乾かしてくれるんだ)
人にドライヤーをして貰うなんて子供の頃以来だし、櫛の代わりに撫でるように梳く手が何とも言えず気持ちいい。というか、まず天ヶ瀬くんに撫でられるのが好きだから何でもそう思うかも。
熱くもなく温くもないちょうどいい温度の風に満遍なく乾かされ、心地良さに半分寝掛けてたらドライヤーが止まって頭をポンポンされた。
「ん、終わり」
「ありがとう」
「眠い?」
「ううん、大丈夫」
ウトウトしていた事に気付いてたのか、天ヶ瀬くんがドライヤーをテーブルに置いてそう聞いてくる。眠い訳じゃなかったから首を振れば壁に寄り掛かって腕を広げてきた。
ベッドへと上がり傍に行くと優しく包まれる。
「いい匂い」
「天ヶ瀬くんと同じ匂いだよ?」
「楪の匂いが加味されてるから、俺のとはちょっと違うな」
俺の匂いって何だろうと思いつつ、袖に鼻を寄せて嗅いでみたらいつも使ってる柔軟剤の匂いがしたけど⋯さすがに髪には使わないから違うのかな。
正座になっていた足を崩し、更に天ヶ瀬くんに近付く。
「天ヶ瀬くんもいい匂いするよ」
「そうか?」
「うん。俺、天ヶ瀬くんの匂い好き」
「匂いだけ?」
「え? あ⋯えっと⋯⋯⋯あ、天ヶ瀬くんが⋯好き⋯です⋯」
何気なく言った事だったからそこを突っ込まれるとは思ってなくて、じわじわと顔が熱くなるのを感じながら答える。でも何か恥ずかしくて俯いたら顎に手が掛かって上向かされた。
「ほんっと可愛いな、お前」
「⋯っ、ん⋯」
目が細められ天ヶ瀬くんの顔がアップになったと思ったら唇が塞がれて舌が差し込まれる。最初から激しいキスをされてクラクラしてきて、息が苦しくなり顔を引こうとしたけど後頭部が押さえられて更に深くなった。
散々舐め回され、舌を吸われて、唾液が糸を引くくらい長いキスが終わって、唇が離れる頃には俺はもう酸欠状態で力が入らず、くたっと天ヶ瀬くんへと寄り掛かる。
火照った頬を撫でる感覚にも反応したら、天ヶ瀬くんが小さく息を吐いた。
「俺も、楪が好きだよ」
「⋯⋯⋯」
「めちゃくちゃ好き」
天ヶ瀬くんが俺の背中を撫でながら優しい声でそう言ってくれる。
まだ落ち着かない息と、それとは違うドキドキと、どうしようもないくらい幸せな気持ちが全身を満たして、俺は無意識に天ヶ瀬くんの頬に触れてた。
俺だって、この人が好きで好きで仕方がない。
「⋯⋯⋯櫂くん⋯」
「⋯!」
あれだけ本人を前にして呼べるかなって悩んでたのに、するりと口から出てきて天ヶ瀬くんが少しだけ目を見開く。
好きの気持ちって漠然としか想像出来なかったけど、この人になら何されてもいいって思えるくらい特別感があるものだったんだね。他の人じゃダメ。天ヶ瀬くん⋯⋯櫂くんだからこそ、苦しくてももっとして欲しいって思うんだ。
最初こそこんなに密着するのは恥ずかしかったのに、今は隙間なんて作りたくないくらいくっついていたい。
頬に触れていた手をそのまま櫂くんの首へと回し、肩に顔を埋めるほど強く抱き着くと、櫂くんも肩と腰に腕を巻き付けるようにして抱き締め返してくれた。
「お前ってマジで心臓に悪い⋯」
「ご、ごめんね⋯?」
「責めてる訳じゃねぇよ」
言葉の意味は分からないけど、何か困らせたのかなって謝ると苦笑混じりの声にそう言われて頭を撫でられる。
しばらくお互いに黙り込み抱き締め合ってたら、櫂くんの唇が耳に口付けたあと首筋まで降りてきて、軽く吸われて小さく声が漏れた。
服の下から手が入ってきて少しカサついた手に肌が撫でられる。
「か、櫂く⋯」
「奏斗」
「⋯っ⋯」
「お前が欲しい」
首に回していた腕を外し櫂くんの肩を軽く押したけど、離れるどころかさらに力が強くなり低い声が俺の名前を口にする。
な、名前呼ばれるってこんなにドキドキするんだ。
それに欲しいって⋯⋯もしかしなくてもそういう事? だって俺、櫂くんに〝抱きたい〟って言われたし⋯たぶん、そうだよね⋯。
(何も分からないし、ちょっと怖くはあるけど⋯)
微かに震えている手で服を握った俺は、少しだけ身体の力を抜いて櫂くんの頬に口付けた。
「⋯⋯いい、よ⋯」
「⋯え?」
「俺の全部⋯櫂くんにあげる⋯」
「⋯⋯⋯」
俺にあげられるものなら何だってあげたい。
だからそう言えば、顔を上げた櫂くんはぐっと眉根を寄せて再び強く抱き締めてきた。
「優しくする。絶対お前が嫌がるような事はしない」
「櫂くんの事、信じてるから大丈夫だよ」
「⋯お前⋯」
今日までだって嫌に思う事なんて一つもされなかったし、どちらかというとずっと優しいしかなかったから櫂くんなら大丈夫。
俺を見下ろす、いつもよりも真剣な目を真っ直ぐに見つめ返した俺は、少しして表情を緩めた櫂くんの顔がまた近付いてくる事に気付いて目を閉じた。
恥ずかしいけど、好きだからこそ全部見て欲しい。
櫂くんに見せられないところなんて、どこもないんだから。
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