モテモテ王子の秘密をうっかり知ったら溺愛されるようになりました

ミヅハ

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騒ぎのあと

「つまり天ヶ瀬くんは、横澤さんからバラされて楪くんが傷付くくらいならって気持ちであんな事したの?」

 放課後の俺のクラスで、昼休みの騒動に巻き込まれた何人かの女子たちと穂波さん、俺と櫂くんとでどうしてああなったのかを話してた。
 それを聞いて、あの日櫂くんが何でバレたくない理由を聞いてきたのか、その真意に気付いて俺は愕然とする。
 どうにかするって言葉も、ごめんって言葉も、俺を守る為だったんだ。

(本当にいつも俺の事考えてくれてるんだね⋯)

 あのあと、予鈴が鳴ってしまい一時解散になったんだけど、穂波さんにキツく言われてからずっと俯いてた横澤さんは、男子からも冷たい目を向けられて居づらくなったのか先生が来る前に早退してしまったらしい。
 やってしまった事は消せないけど、せめて櫂くんには謝って欲しかったな。

 冒頭の問い掛けに櫂くんは思い出したのかムッとした顔で頷くと、膝に座る俺の頭にぐりぐりと額を擦り付けてきた。
 そうなんです。俺、櫂くんの膝の上に横向きに座らされてるんです。

「そう。最初から気に入らなかったんだよ、あの女。奏斗に会いに行きたくてもチョロチョロ周りをうろつきやがって⋯何度キレそうになったか」
「横澤さんは転校初日からそういう子だったよ。好みの男に彼女でもいようものなら、ある事ない事言い触らして別れるよう仕向けるの」
「そういや、三組の佐古さん、そのせいで彼氏と別れたって」
「一組にもいるよ。横澤さんに別れさせられたカップル」
「でもさ、それを信じる彼氏側もちょっと⋯じゃない?」

 うぅ⋯聞いてるだけで胸が痛くなる話だ。
 恋愛話は俺にはさっぱりだし出来ないけど、横澤さんの行動はあまりにもひどいというか⋯本当の事じゃないのに心が離れるのってどれだけ辛いか、想像だけでも悲しい。
 彼氏さんもいろいろ聞いて、好きなのに信じられなくなっちゃったのかな。
 でも、どんな事を言われたら別れるまでいくんだろう。

「それにしても、あそこまでヤバいとは思わなかったなぁ」
「ね。思った事は口に出すタイプなんだろうね」
「あれじゃあ社会に出てもやってけないわ」
「ってかさ、昼休みはえーって思ったけど、案外見慣れるもんだね」
「横澤さんのインパクトの方が凄かったからじゃない?」
「むしろここまでラブラブな姿を見せられたらね。文句も出ないよ」

 昼休みでもそうだったけど、思った以上に好意的に受け入れられてて俺も櫂くんも拍子抜けしてしまう。
 みんなからすれば櫂くんの行動も唐突だったはずなのに、この状況がもう当たり前みたいな扱いされてるし⋯⋯気にしてる俺がおかしいのかな。

「そういえば、どうして天ヶ瀬くんは話し方とか変えてたの?」
「王子モード作る前はそこまで人と関わって来なかったんだよ。でも告ってくるやつはいて、無理、嫌だって断ってたら〝そんな人だと思わなかった〟だの〝もっと優しいと思ってた〟だのなんだの散々言われて⋯どいつもこいつも外見しか見てねぇんだなってブチ切れた」
「あらら⋯」
「それはやさぐれたくもなるわ」
「とことんまで合致させてやろうじゃねぇかって張り切った結果があれ」
「張り切ったんだ」

 楽しそうな笑い声が上がり、和やかな雰囲気で話は進んでて俺は心底ホッとした。
 少なくともここにいる人たちは、櫂くんが素でいても前と変わらずにいてくれるみたい。こうしてちょっとずつでも櫂くんらしくいられる場所が増えるといいな。
 なんて思いつつ、ちょっと腕の力を緩めて欲しくて櫂くんの手を軽く引っ張ってたら視線を感じて、顔を上げると穂波さんと目が合った。
 首を傾げるとニコッと笑顔を返される。

「?」
「ちなみに楪くんは、天ヶ瀬くんのどこが好きなの?」
「どこ⋯⋯いっぱいあるけど、一番は安心させてくれるところ」
「安心?」
「うん。俺、櫂くんならどれだけ女子と距離が近くても、ヤキモチは妬くけど信じられるよ」
「ああ、浮気の心配がないって感じ?」

 言いたい事を理解してくれた穂波さんにこくりと頷く。
 例え横澤さんが櫂くんのありもしない噂を流して、万が一にもみんなが信じても俺だけは嘘だって思えるくらい櫂くんを信用してる。

「それは大事だよねぇ」
「こんな可愛い恋人いんのに、浮気なんかするかよ」
「あらら、惚気られちゃった」
「ほーんと、今までの天ヶ瀬くんと全然違うよね」
「⋯悪い」

 柔らかな口調と穏やかな物腰がみんなにとっての櫂くんだった。だからこそ櫂くんも素を出す事を気にはしてたのか、目を伏せて謝ったらみんなは一瞬きょとんとしたあと笑顔になって首を振る。

「やだもう、謝って欲しくて言ったんじゃないよ」
「そうそう。むしろワイルド王子って感じでアリだと思う」
「それに、こっちの天ヶ瀬くんの方が緊張せずに話せるし」
「むしろ今まで緊張してたのかよ」
「やっぱ完璧な人ってちょっとね」

 みんなの言いたい事よく分かる。俺も最初は美形過ぎて近寄り難いって思ってたから。
 初めて話しかけられた時はキョドりまくって変な人になってたし。

「でも、私は素の天ヶ瀬くんの方が好きだなぁ」
「!?」

 緩むどころか俺のお腹を撫で始めた手と格闘してたら、聞き捨てならない言葉が聞こえて目を見瞠る。
 でもその好きがどういう意味か聞きたいのに、みんなが話を進めるから口を挟めない。

「分かる。ギャップっていうの? 見た目はキラキラの王子様なのに、中身は不良っぽいとか二面性があってドキドキする」
「ますますモテそうだよね」
「告白は増えるんじゃない?」
「いや、それ以前に恋人持ちに告白はどうかって話ではあるけど」
「どういう断り方をされるのか興味あるなぁ」
「みんな、ちょっと」

 盛り上がる女子たちとは反対に、これ以上櫂くんがモテるのは嫌だって小刻みに首を振ってたら、気付いた穂波さんがみんなに声をかけ俺を指差した。
 女子たちと目が合い、ハッとして櫂くんの顔を両手で隠すとクスクスと笑い出す。

「やだ、可愛い」
「大丈夫だよ、奪ったりしないから」
「ほ、本当に?」
「ほんとほんと」
「というか、私はどっちかと言えば楪くんみたいな可愛い子がタイプなんだよね」
「え?」

 一人の髪の長い女子が一歩前に出て、柔らかく微笑んで俺の方に手を伸ばしてくる。
 つり目がちでキリッとした綺麗な人で⋯⋯何だろ、同性にモテる女子って言うのかな。雰囲気がカッコよくて、思わずドキッとしてしまった。
 でもすぐに櫂くんに抱え込まれて、その子の顔も手も見えなくなる。

「触んな」
「えー、ケチ」
「ケチで結構」

 俺の視界は櫂くんの制服で埋められてるから今みんながどんな顔をしてるか分からないけど、言葉のわりに険悪な雰囲気にはなってなくて安心する。
 誰にも触らせないとばかりにぎゅうっと抱き締めてくれる櫂くんの温もりに口元を緩めた俺は、目を閉じて広い肩へと頬を寄せた。
 それにしても、俺みたいなちんちくりんがタイプなんて、変わった人もいるものだ。
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