モテモテ王子の秘密をうっかり知ったら溺愛されるようになりました

ミヅハ

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これから先の事

 無事に期末テストを終えて俺たちは夏休みに入った。
 お父さんはまた一ヶ月の出張に行く事になり、俺は緩めに受験勉強をしながら何気ない日を過ごしてる。
 櫂くんにはその日に伝えてはいたんだけど一人にしたくないからうちに来いって言われて、さすがに一ヶ月のお泊まりは申し訳ないから、寂しくなったら絶対に言うって約束する事で何とか宥めた。
 でもメッセージや電話は毎日してたし、デートの回数とか泊まりも増えてたからそこまで一人とは感じなかったかも。
 たぶん櫂くんは、どれだけ夜が遅くても朝が早くても、俺が「寂しい」とか「会いたい」って言ったら来てくれるんだろうな。
 最近は特に櫂くんの想いを感じてる気がする。



 八月の中頃、誕生日前日。
 直美さんとウィルさんがまた誕生日パーティをしようって誘ってくれて、俺は泊まりの準備をして天ヶ瀬家へ訪れてた。
 今回は二泊三日でお世話になるんだ。
 すっかり慣れてしまったリビングのソファで、どうしても外せない用事が出来たからって出掛けた櫂くんを本を読みながら待ってたら、自室で仕事をしていたウィルさんが大きな欠伸をしながら入ってきた。
 俺がいる事に気付いて眉を跳ね上げ、傍まで来て頭を撫でられる。

「櫂はどうした?」
「用事が出来たみたいで、出掛けて行きました。すぐ帰ってくるとは言ってましたけど」
「アイツ⋯」
「あ、コーヒー飲みますか?」
「ん、頼む」
「はい」

 立ち上がり、本に栞を挟んでテーブルに置いてキッチンに行き、棚から粗挽きされたコーヒー豆とフィルターを取り出しカップに引っ掛ける。
 ここで何度もご飯を作ったりしているうちに何がどこにあるかもすっかり覚えてしまい、今では聞かなくても用意出来るくらいになった。高い位置にある物は取って貰ったりするけど、それ以外は基本的に俺が一人で立ってる。
 沸かしたてのお湯をゆっくり回しながら注いでカップを満たしていき、フィルターを外して砂糖もミルクもなしでウィルさんの元へと運ぶと、櫂くんに良く似た笑顔でお礼を言われた。
 実年齢は分からないけど、ウィルさんも直美さんも凄く若々しい。
 コーヒーを一口飲んだウィルさんは、ダイニングテーブルの向かいに座った俺を見て首を傾げた。

「カナは大学受験すんのか?」
「はい。本当は就職して少しでも父の助けになりたいって思ったんですけど、それを知った父に自分のやりたい事をしなさいって言って貰えて⋯経験を増やして視野を広げる為にも受験する事にしました」
「そうか、偉いな」

 偉いかどうかは分からないけど、その選択肢をくれたお父さんには感謝してる。実際悩んでたところはあるし。
 それに、男手一つでここまで育ててくれたんだから絶対親孝行はしたい。

「まぁでも、将来は安泰だと思うぞ」
「?」
「櫂ならいいとこ就職するだろうし、お前に苦労かけるような事もしねぇだろ」
「えっと⋯?」

 どうして俺の将来と櫂くんの就職が出てきたんだろう。
 分からなくて目を瞬いてたら、ウィルさんは眉を顰めながら教えてくれた。

「カナは櫂と結婚すんだろ?」
「⋯⋯え!?」
「あ? 違うのか? 櫂はする気満々みてぇだけど」
「そ、そんな話した事⋯⋯あ」

 突拍子もない言葉にぎょっとして首を振った俺だったけど、ある事を思い出して固まったらウィルさんが心底不思議そうな顔をして「んー?」っと首を傾げた。
 そういえば、いつだったか俺がお嫁さんになるのは決定してるって言ってたような⋯ウィルさんに話すくらい真剣に考えてくれてるって事?

「卒業までにはいろいろ話してくれるだろうけど、気になるなら聞いてみりゃいい」
「そう、ですね⋯」
「アイツ、かなりお前に惚れ込んでるからな」
「⋯⋯⋯」

 恋人のお父さんにそう言われるのは恥ずかしい。
 でも俺だって櫂くんの事大好きだし、ずっと一緒にいられたらいいなって思ってるから嬉しくて顔がニヤケそうだ。
 さすがに結婚は思い付きもなかったけど⋯そういえば、男同士ってどういう感じで証明されるんだろう。
 婚姻届って貰えたり受理されたりするのかな。


 夜になり、部屋の電気を消して櫂くんと映画鑑賞していた俺は日を跨ぐ前に睡魔に襲われウトウトし始めていた。
 和やかなシーンに流れる曲がゆったりとしているのもあって、より眠気を誘ってくる。
 ふっと意識がなくなり櫂くんの肩に寄り掛かったら、頬を撫でられて額に何かが触れた。

「もうちょい頑張れ。せめてあと五分」
「んー⋯」
「一番に祝わせてくれるんだろ?」
「ぅん⋯」

 そうは言っても眠い。
 別に前日に夜更かしをした訳じゃないけど、櫂くんといると普段よりも安心出来るから気が緩みまくるというか⋯とにかく落ち着くんだよね。
 閉じそうになる目蓋を瞬きで耐えてたら、映画の主人公が恋人へとプロポーズをする場面に変わった。
 そういえば、あの事聞きたかったんだ。

「⋯櫂くん」
「ん?」
「櫂くんは、俺と結婚したいって本当に思ってくれてるの?」
「え?」

 目を擦りながら寄り掛かっていた身体を起こし、櫂くんの顔を見ながら聞くと大きく目を見開いて固まった。
 何度か口をもごもごさせたあと長く息を吐く。

「⋯何でそんな事聞くんだ?」
「ウィルさんが⋯」
「あのクソ親父⋯黙ってろっつっただろ⋯」

 どうやら俺は聞かない方が良かった事だったらしい。
 でも口にした手前何でもないなんて言えなくて、どうしたらいいのかと視線を下げたら左手が握られた。

「バレたもんは仕方ねぇけど⋯まぁ、してぇよ。お前の事めちゃくちゃ好きだし、この先も隣にいて欲しい。それに俺はもう、お前がいねぇと生きていけねぇから」
「そ、そんな事⋯」
「ありまくりだから。もう手放せねぇんだよ」

 肩が抱き寄せられ声を上げる間もなく唇が塞がれる。
 優しく啄んでくる櫂くんの服を掴んで下手なりに応えてたら、下唇が軽く噛まれてビクリと肩が跳ねた。

「俺から離れんな」
「⋯うん⋯離れない。ずっと一緒にいる」
「ん。約束な」

 頷き、今度は櫂くんの首に腕を回して俺から口付けると両手でしっかりと抱き締められ深いキスをされる。
 櫂くんとのキスは頭がぼんやりするほど気持ち良くて、夢中になって舌を絡めてたらどこからかピピッて音が鳴って唇が離れた。
 なんの音?

「⋯奏斗、誕生日おめでとう」

 テーブルの上に置いていたスマホを操作した櫂くんがそう言ってくれて、さっきの音が零時を示すアラームだったんだって知って目を瞬いた。
 わざわざ設定してくれてたんだ。
 いつも俺を喜ばせてくれる櫂くんの優しさにじんわりと幸せを感じた俺は、はにかんで目の前の首筋へと頬を寄せた。

「ありがとう」

 来年もこうして、一番に櫂くんのおめでとうが聞けたらいいな。
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