モテモテ王子の秘密をうっかり知ったら溺愛されるようになりました

ミヅハ

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二人の証(櫂視点)

 今日は卒業式だ。
 クラスの違う奏斗とは終わるまでは会えないけど、最後だし友達とも挨拶したいだろうからって待ってた俺が馬鹿だった。

「天ヶ瀬先輩、好きです!」
「二番目でもいいので、彼女にして下さい!」
「先輩が卒業しちゃうなんて寂しい⋯っ」
「ぼ、僕も先輩が⋯好きです⋯」

 奏斗との事を根掘り葉掘り聞かれるのが煩わしくて昇降口でスマホを弄っていたら、一年と二年が数人連れ立って現れ口々にそう告げてきた。何人か男が混じってんのが驚きだけど⋯俺は別に同性愛者じゃねぇんだよな。
 頭を掻き、スマホをポケットにしまって息を吐く。

「たぶん知ってて告って来てんだと思うけど⋯俺には大事な恋人がいるし、そいつ以外と付き合うつもりはねぇ。っつか二番目でいいとか言うなよ」

 どんだけ付き合いたい相手でも、自分を格下げするような発言は自分の首を絞めるだけだ。都合のいいように扱われても仕方ない。
 そもそもの前提で、恋人がいる奴に告白ってのがおかしな話ではあるんだけどな。

「⋯⋯そう、ですよね⋯」
「分かってましたけど⋯最後に伝えておきたかったんです」
「ん、その気持ちは嬉しい。ありがとな」
「いえ。大学に行っても頑張って下さい」
「恋人さんとお幸せに!」
「ああ」

 あからさまに落ちる肩に苦笑し、とぼとぼと帰っていく背中を見送ってまたスマホを取り出した俺はさっきまで見ていた家具サイトを開く。
 店に行って時間かけるより、ある程度決めておいた方が奏斗も選びやすいだろうからっていろいろ見てんだけど⋯如何せん色も種類も多い。俺が不便なのはいいとして、なるべく奏斗が使いやすいようにしてやりてぇしちゃんと厳選しねぇとな。
 家の件に関しては、奏斗が博正さんと話して甘える事にしたらしい。つまり、卒業後すぐに引っ越しの準備を進められるという訳だ。
 一年ぐらい先になるんじゃないかって思ってたから、マジで博正さんには感謝してる。

「櫂くん」

 目に付いた家具をスクショ保存してたら背中に軽く衝撃が走る。呼ばれたし、振り向くまでもなく奏斗だってのは分かったけど、意地悪心が湧いて反応せずにいたら「あれ?」って言って前に回ってきた。
 俺を見上げて首を傾げるからふっと笑えば、目を瞬いて膨れっ面になる。

「無視するなんてひどい」
「ごめんごめん。もう話は済んだのか?」
「うん。写真もいっぱい撮ってきた」
「そんじゃ帰るか」
「帰ろー」

 いつも一人で本を読んでいた奏斗は、いつの間にか友達が増え明るくなった。まだ自分から声をかける事は苦手みたいだけど、たまに教室の前を通り掛かると楽しそうにしてたから良かったって思ってる。
 まぁ、あの笑顔を俺以外に向けるのはモヤッとするけど。
 にこにこと俺の手を握り歩き出した奏斗に引かれる形で足を出した俺は、周りがチラチラ見ている事に気付いて奏斗より少し前に行くと腰を屈めて小さな唇へと口付けた。
 ポカンとしたあと、周りがザワつくのと同時に真っ赤になった奏斗は顔を隠す為にか俺に抱き着いて⋯意味ねぇのに、こういうとこ本当に可愛い。


 卒業してすぐバイトを始め部屋の契約を済ませた俺と奏斗は入居までの一ヶ月で荷物を纏め、生活必需品を買い揃えつつちょくちょく新居に足を運んでものを増やして数週間、ようやく内装が整いいつでも住めるようになった。
 奏斗が選んだものは色合いもデザインも全部温かみのあるもので、俺にとっては一番安らげる場所になる事は間違いない。派手過ぎず地味過ぎず、奏斗の優しい雰囲気に似合ったいい部屋だ。
 もうすっかり人が住んでいそうな光景に何とも言えない感覚が湧き上がって黙り込んでたら手が握られ、見下ろした先に柔らかく微笑んだ奏斗がいて息を飲む。

「もう少しで、二人だけの生活が始まるね」

 改めてそう言われむず痒さを感じた俺は言葉もなく頷いた。
 まだ食器とかの細々したものは揃えきれてねぇけど、奏斗となら選ぶ時間さえ楽しいからあっという間だろうな。 

「あ、そうだ」
「ん?」
「あのね、せっかく一緒に住むんだし何か用意したいなって思って⋯これ」

 嬉しそうな奏斗の髪を撫でてたら不意に何かを思い出したのか、奏斗がそう言って自分のカバンを漁り始めた。
 何だと思って見てると布に包まれた何かを取り出し、そのまま俺へと渡してくる。
 受け取り布を捲った俺は、現れたそれに目を瞬いた。

「賃貸だから飾れないとは思うんだけど、どうしても櫂くんと一緒の家って証が欲しくて作って貰ったんだ。靴箱の上とかに飾るといいかなって」
「⋯⋯⋯」
「⋯⋯あんまり、だった?」

 奏斗が用意したものは、滑らかな手触りの白い石板に俺と奏斗の名前がそれぞれフルネームで掘られたいわゆる表札ではあるが、確かに賃貸では下げられない形状のものだった。
 でも、こういうのを作りたいと思うほど俺との暮らしを喜んでくれてんのはすげぇ嬉しい。しかもこれ、ほぼサプライズみてぇなもんだし。何でこんな可愛い事するかな。
 俺が黙り込んだからか、途端に眉尻を下げた奏斗に首を振り表札の表面を撫でる。

「んな事ねぇよ。すげぇ嬉しい。ありがとな、奏斗」
「ほ、ほんと? 良かった」
「一番目立つように置くか」
「うん」

 いつもこうやって俺に色んなもんをくれるんだよな。
 本人は気付いてねぇけど、そういう優しくて暖かい気持ちに俺がどれだけ救われてるか。奏斗には敵わねぇってずっと思ってる。
 ホッとしたようにはにかむ奏斗に表情を緩めた俺は、自分よりも華奢な肩を抱き寄せ額に口付けた。
 これからは奏斗を幸せにする為に、自分に出来る精一杯で頑張んねぇとな。
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