噂の不良は甘やかし上手なイケメンくんでした

ミヅハ

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合同誕生日会(周防視点)

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 湊のご両親とは湊の見舞いに来た時に一度会ってるし、夕飯まで共にしているとはいえやはり緊張はする。桜さんも文人ふみひとさんも良い人で、湊のおかげもあってか俺を見た目で判断はしなかった。
 本当は言いたい事もあったと思うけど、それをおくびにも出さず笑顔で歓迎してくれて、なんつーか、これが親の温もりなんだなって思った。

 実の親から愛情どころか関心さえ向けられなかった俺が、誰よりも大切な人とその家族に囲まれて誕生日を祝って貰えるって凄くないか?
 ばあちゃんに祝って貰えたのも有り難かったけど、何か家族の一員として受け入れられてるみたいですげぇ嬉しい。湊が優しくて温かいのって、桜さんと文人さんの育て方もあってこそなんだろうな。

 目の前にはテーブルいっぱいにご馳走が並んでいる。不揃いの野菜が入ったシチューと厚みがバラバラなバゲットは、湊が作って、切ってくれたものだろう。
 毎日の弁当もそうだけど、最初は指に傷を作りまくってたのに、今じゃ焦げる事も味の濃薄もなくなって綺麗に詰められるようにもなった。成長が著しいってこういう事を言うんだろうな。
 日に日に愛しさが増して、少しでも触れ合うともう離れたくなくなる。一生俺の腕の中に閉じ込めて守ってやりたいって思うくらい大切で仕方がなかった。

 俺の為にって作ってくれたシチューを見ていると部屋の明かりが消えて、湊の少し高めの声がバースデーソングを歌い始める。目を瞬いているとキッチンから出て来たんだけど、その手には火の点いたローソクが立てられたケーキがあって思わず立ち上がりそうになった。
 転ばないか、落とさないかってハラハラしたものの湊は無事に俺の前に置くと歌い終わって拍手をする。それに合わせるように桜さんと文人さん、薫までもが拍手で祝ってくれて言葉に詰まった。

「遅くなっちゃったけど、誕生日おめでとう、周防くん」
「おめでとー」
「おめでとう、神薙くん」
「おめでとう。お祝い出来て良かったわ」
「…………」

 那岐原家、あったかすぎだろ。
 ユラユラと揺れる淡い明かりの中で微笑む湊があまりにも綺麗で、堪らなくなった俺は立ち上がり小さな身体を抱き締めた。

「……ありがとう」
「来年はちゃんと、当日にお祝いしようね」
「ん…」

 湊は一人になるだろう俺の為にばあちゃんが引き合わせてくれた運命なんじゃないか。そう思えるくらい湊の存在はとてつもなく大きくて、絶対に何を犠牲にしてでも失いたくなかった。
 腕を離して湊の頭を撫でてから桜さんたちの方へ向き頭を下げる。

「ありがとうございます」
「神薙くんはもううちの子みたいなものだからな」
「湊を貰ってくれるんだものね」
「え! 何それ! そんなとこまで話進んでるの!?」
「話はしてないけど、もう決定でしょ?」
「大事にします」
「ちょっとちょっと! 気が早すぎる!」

 賑やかな笑い声がリビングに響く。桜さんが湊と薫のバースデーケーキを運んで来て真ん中に置いた。
 ハッとして自分の前にあるケーキを見ると、チョコプレートに〝ハッピーバースデー周防くん〟と書いてある。まさか別で用意してくれていたとは思わなかった。
 桜さんが記念写真を撮ったあと湊に袖を引かれる。

「周防くん、一緒に吹き消そう」
「ん」

 真ん中にケーキがある為主役の二人が立ち上がり、「せーの」の合図に合わせて三人でローソクに息を吹き掛ける。俺は一発で消せたけど、湊と薫は二人掛かりにも関わらず二回目で全部吹き消してた。

「おめでとう、湊、薫」
「おめでとう」
「おめでとう、二人とも」
「ありがとう!」
「ありがとう」

 毎年こうして二人の誕生日を家族で祝ってるんだろうなと思うと感慨深いものがある。
 桜さんが電気を点けて、リビングから何かを持って戻ってきた。

「はい、誕生日プレゼント。これが薫、こっちが湊。これは神薙くんね」
「え?」
「気に入って貰えるといいんだけど」

 俺にまであるのは完全に予想外だ。いやいや、どこまで優しいんだこの人たちは。
 呆然としながらも受け取り開けるよう促されてリボンを解いて、袋の口に手を入れて取り出すと手触りのいいダークグレーのマフラーが現れる。無地で色味も落ち着いてるし何にでも合いそうだ。

「ありがとうございます。大事に使わせて頂きますね」
「どういたしまして」

 もう一度袋の中にしまい、湊の方を見るとどうやらプレゼントは手袋らしく、俺が貰ったマフラーと同じ色をしていた。まさか、ちょっとしたお揃いにしてくれた…とか?
 何か、ここまで良くして貰うと半年も経たずして湊に手ぇ出した事に罪悪感を覚えるな。
 ちなみに薫のはコスメセットらしい。薫も何だかんだで女だな。

「湊、あとでメイクさせてー」
「やだよ。自分でやって」
「練習したいの」
「それこそ自分の顔じゃないと意味ないよ」

 メイクした湊、ちょっと見てみたいかも。薫の手腕にもよるだろうけど、絶対めちゃくちゃ可愛い。何なら、色付きのリップ塗るだけでも似合うだろうな。

「ほら、神薙くんも見たいって」
「え? み、見たいの?」
「ぶっちゃけ見たい」
「えー…」

 湊としては、男がメイクなんてって気持ちがあるんだろうな。
 でもさ、素でこんだけ可愛いんだから、メイクしたらどうなるのか気になるのは仕方なくね?
 いつもなら「周防くんがそう言うなら…」って了承してくれる湊だけど、メイクは嫌なのかしばらく悩んだあと仕方なさそうに頷いた。

「ウソウソ、本気で嫌ならいいって」
「でも、見たいんだよね?」
「そりゃまぁ……絶対可愛いだろうし」
「誕生日だから、特別」

 その理由だとむしろ湊が何かしらして貰うべきなんじゃ……あとで何して欲しいか聞いてみるか。
 俺の為にって気の進まない事でも受け入れてくれる湊の頭を撫で、俺は手を合わせて可愛い恋人が作ってくれた料理に口を付けた。



 野菜の大きさが不揃いとはいえ美味しかったシチューは二回ほどおかわりしてゆったりとした食事を終えたあと、湊を連れ去って行った薫に「後で呼ぶから」って言われてリビングで休憩してたら、三十分ほどして戻って来た薫に湊の部屋に行くよう言われた。
 途中何かドタバタしてたし、湊の「絶対やだ!」って声が聞こえてたけど…。

「まったく、湊の我儘には困ったものだわ。せっかく可愛くしてあげるって言ってるのにあれやだこれやだって」
「無理強いしたんじゃねぇだろうな」
「神薙くんの為よって言ったら大人しくなってたから、無理強いではないんじゃない?」

 それは脅しだし強要だ。
 どこまでも我が道を行く薫に溜め息を零しつつクマを抱えて部屋に向かった俺は、扉を開けるなり見えた光景に思わず固まる。
 中には見事なまでに完璧な女の子になった湊がいた。

「……周防くん…」
「……想像以上に可愛くて驚いてる。でもミニスカなのは想定外」
「ち、違うの…! 薫が無理やり…俺やだって言ったのに…」

 なるほど、さっきのドタバタと声はこれの事だったのか。
 だけど涙ぐむ湊に申し訳ないと思いつつも薫にグッジョブと言いたくなる。ミニスカを選んだのはわざとなんだろうけど、これが似合ってんのがまた。
 着飾る女の気持ちなんざ分かんねぇし何とも思わなかったけど、湊に対しては全然違う感情が湧いてくる。

「ここじゃ手ぇ出せないのに…触りたくなるくらい可愛い」
「…っ…」

 湊の素材を遺憾なく活かしたナチュラルメイクも、長めの髪がハーフアップなのも、オーバーニットのオフショルを着てるのも堪らなく可愛いんだけど、白くて細い足が膝上数センチから惜しげもなく晒されてるのは正直ヤバい。
 クマを置き、恥ずかしそうにスカートの裾を引っ張る湊の腰を抱き寄せ太腿を撫でると湊がビクッと首を竦めた。

「す、周防くん…」

 腰を曲げて剥き出しの肩に唇を押し当て吸い付いて痕を残す。いくつか付けて顔を上げると、肩周りに赤い鬱血痕が散って色っぽさが増し自分で自分の首を絞める状況になってしまった。
 湊の顔も赤くなって目が潤んでるし…こりゃ墓穴を掘ったか。
 横向きに抱き上げベッドに腰掛けて膝に座らせる。熱を持った頬を化粧を落とさないようにそっと撫でたら湊が頬擦りしてきた。

「キスしたらリップ落ちるよな」
「周防くんの口にもつくね」
「していい?」
「うん。して欲しい」
「可愛い」

 肩を抱きグロスでプルップルになってる唇に口付ける。親指で自分と湊の唇を拭い今度は噛み付くようにキスをすると湊の手が俺の服を掴んだ。
 舌を入れると我慢出来なそうだから唇を食むくらいで抑えてたのに、湊がおずおずと舌を出して来たからさすがに耐えられる訳もなく、絡め取って吸えば湊の声に甘さが増した。
 これは駄目だ、手を出すなって方が無理。

「ん、ふ…っ…」
「……湊…」
「…ぁ…だ、だめ…っ」
「触るだけ」
「んん…ッ」

 スカートの裾から手を差し込み指の背で反応しているところを撫でると湊が慌てて両手で口元を覆う。
 っつか、これ上も下も薫のだよな。汚したら殺されるかも。
 下着越しに刺激しながら湊をベッドに横たえ、声を抑える事に集中しているうちにスカートを捲って湊自身を出した俺は、先走りを零し始めたそれを躊躇いなく咥え込んだ。



 湊をイかせたあと一緒にベッドに転んでまったりしていた俺は、湊を撮っていたカメラで時間を確認しそろそろ帰るかと起き上がり身支度を始める。

「帰るの?」
「もうすぐ二十二時回るからな。さすがにもう帰んないと」
「待って、着替える」

 そうだな、そのままだと俺が付けた痕がガッツリ見えるからな。
 湊が着ていた服を恥ずかしげもなく脱ぎ始めたから背中を向け、スマホをポケットにしまい置いたままだったクマを抱き上げる。
 自分の匂いってあんま分かんねぇんだけど、ちゃんとついたんだろうか。
 俺はプレゼント袋の口を留めていたリボンを手に取り、クマの首元へと結んで頷く。なかなかいいじゃん。
 ベッドに座らせると同時に背中に湊が抱き着いて来て、クマを見て目を瞬いた。

「リボン着いてる」
「クマのぬいぐるみといえばリボンじゃないか?」
「そう、なのかな…でも可愛いからありだね」
「名前、付けたげてな」
「うん」

 湊の手を引いて部屋を出て一階に降りる。リビングに電気が点いてたから覗くと桜さんも文人さんもいて俺は軽く頭を下げた。
 薫にも一応帰る事は伝えようと思ったんだけど、どうやら友達と電話中らしく部屋から出て来なかったからもういいや。

「長い時間お邪魔してすみません。そろそろ帰りますね」
「あら、お泊まりじゃなかったの?」
「え? いえ、その予定はなかったです」
「そうだったの。なら今度は泊まりで来てね」
「あ、ありがとうございます」

 さっきまで湊にエロい事してたからまた罪悪感が。
 とりあえずお礼だけ言って玄関に向かい、靴を履いて振り向いたら桜さんから紙袋が渡された。

「ケーキと湊の作ったシチュー、持って帰って食べて」
「ありがとうございます」
「また遊びにおいで」
「はい。お邪魔しました、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
「おやすみ」

 思わぬお土産まで貰ってしまった。
 湊と一緒に玄関を出て門まで歩き公道に出てから振り向く。

「じゃあまた月曜日な」
「うん。気を付けて帰ってね」
「ん。着いたらメッセ送る」
「待ってる。おやすみなさい」
「おやすみ」

 髪を撫で触れるだけのキスをしたあと、湊が名残惜しそうにしながらも家に入ったのを見届けてから離れる。
 ホント、俺の恋人は可愛いな。
 貰ったマフラーを巻き直し、ポケットに手を入れた俺は一度だけ湊の部屋を見上げ帰路についた。
 写真立て買って飾ろうかな。
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