愛が重めの年下ワンコに懐かれました

ミヅハ

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告白※(微)

 少し前から薄々気付き始めていたけど、俺ってもしかしなくても男を見る目がないのかもしれない。

「あ、ぁん、そこ気持ちい⋯っ」
「あー⋯すげぇ絞まる⋯」

 恋人が風邪を引いたと聞けば、飲み物とか食べ物とか薬とかを持って見舞いに行くのって普通だよな? だから俺も大変だって買い物して家まで来て、何かあった時の為にって渡されてた合鍵で入ったんだけど⋯熱があるはずのソイツは見知らぬ男とベッドで睦み合ってた。
 両手に下げてた買い物袋が落ちて、気付いた恋人が俺がいる事を知って眉を顰める。

「⋯は? お前何でいんの?」
「な、何でって⋯風邪引いたって言うから⋯」

 だから今日のデートは中止になったし、発熱してるなら1人だと心細いだろうと思って来たのに、目の前の男は心底煩わしそうな顔をしていた。

「⋯あのさ、そういうの余計なお世話なんだわ。お前の自己満に俺を付き合わせるなよ」
「自己満じゃ⋯」
「ねぇ、誰?」
「あー⋯⋯ただのクラスメイト」
「!」

 告白してきたのはそっちで、たくさんキスもして、「お前だけだよ」なんて甘い言葉まで吐いて合鍵を持たせたくせに、〝ただのクラスメイト〟?
 そもそもお前は他校の生徒だろうが。

(何で俺、こんな奴が好きだったんだろう⋯)

 コイツになら初めてをあげてもいいかなって思ってたのに、さっきまでは確かにあった気持ちがスーッと引いていく。
 何なら浮気相手って言われた方がまだ良かったわ。
 再びイチャつき始める2人に悲しみよりも怒りが湧いた俺は、袋を掴むと思いっきり投げ付けた。

「うわっ」
「⋯っ、てめぇ、何しやがる!」
「それはこっちの台詞だ、バーカ! くたばれヤリチン!」
「はぁ!?」

 そう吐き捨てて踵を返し走り去る俺の背中に〝ただのクラスメイト〟の罵声が飛んでくるけど、そんなものは無視してひたすらに走って家へと帰った俺は、アイツとの思い出の品を片っ端からゴミ袋に突っ込み捨ててやった。
 当分恋人はいらないかもしれない。




「しんっじらんない!!」
「⋯⋯⋯」

 友人2人と良く立ち寄る放課後のファーストフード店。
 ライトブラウンのふわふわした髪の小さい方、黒峰 莉央くろみね りおが眉を吊り上げてテーブルに拳を叩きつけ、青混じりの黒髪をした背の高い方、白河 優里しらかわ ゆうりが憐れみの目で俺を見ている。
 いや、何か言えよ。
 2人は幼馴染みで、俺とは中学で知り合ってからずっと仲良くしてくれてる。
 物凄く見た目のいい奴らだから一緒にいると非常に目立つけど、大人しめの莉央も無口な優里も存外ノリが良く、気兼ねせずにいられるから相談とかにも良く乗ってもらってた。
 ちなみに2人は恋人同士で、付き合ってもう5年経つそうだ。
 そんな2人に今もつい最近あった腹の立つ出来事を話してたんだけど、どうやら莉央の琴線に触れてしまったらしい。

「何それ! 酷すぎる!」
「お前、モテるのに本当にロクな男に出会わねぇな」
「呪いでも掛かってんのかね」
「女難ならぬ男難の呪い?」
「そういう問題じゃないよ!」

 そう言われても仕方ないくらい男運がない。
 俺はいわゆるゲイで男しか好きになれないんだけど、付き合う人全員何かしらひどい部分を持ってる。
 初めて付き合った人は、見た目は爽やかな好青年なのに2股3股は当たり前。ヤらせてくれんなら誰でもいいっていう下半身野郎だった。デート2回目でホテルに誘われて、初体験もまだだからって断ったらすっごい顔して振られて⋯⋯そこまで本気になってはなかったとはいえ、最初でアレはキツすぎた。
 2人目は来る者拒まず去る者追わずな、浮気何それ美味しいの? な人。というかみんな本命な博愛主義者で、関係を持つ人全員が恋人みたいな状態だった。一応俺も本命ではあったけど俺にしてみればそんなのセフレと変わんないし、こないだみたいに他の人とヤってるところを見て別れたんだよ。マジで意味分からん。
 そんでもって3人目は何とびっくり既婚者だった。ナンパされて、優しいしカッコいいなって思って付き合い始めたんだけど、ある日街中で奥さんらしき人と一緒にいるのを見掛けて⋯しかも奥さん、妊婦さんだったんだよなぁ。その場でもう会わないって連絡して全部ブロックしてアドレス消してフェードアウト。
 で、最後がこないだの〝ただのクラスメイト〟って訳だ。

「何かもう疲れた⋯」
「そんな男捨てて正解! しばらくは僕たちと遊ぼ!」
「だな。気晴らしに次の休み買い物でも行くか」
「その日はデートの約束してんだろ? いいよ、俺は」
「そんなの気にしなくていいのに」

 友達のデートについて行くとかただの迷惑でしかない。
 頼んだポテトを食べる気にもならなくて優里に押し付けた時、ふっと影がかかってテーブル横に誰かが立った事に気付いた。

「⋯?」

 見ると背の高いイケメンが立ってて、どこか緊張した面持ちで俺を見下ろしてる。
 莉央も優里も黙ってソイツを見てたら、一つ深呼吸をしてから口を開いた。

宮脇 柚琉みやわき ゆずる先輩。好きです、俺と付き合って下さい」
「⋯⋯⋯は?」
「え、ここで告白?」
「⋯⋯⋯」

 もしかして煩くて注意されるのかと身構えたけど、ソイツは頬を染めながらまさかのセリフを発してきた。ポカンとする俺に更に「お願いします」って言ってきたけど、そもそも初めましてなんだけど。

「⋯いや、お前誰?」
「あ、俺、戸守 柊也ともり しゅうやって言います。先輩と同じ高校の二年です」
「思い出した。噂の転校生くんだ」
「噂?」
「すっごいイケメンが転校してきたって、2年の子が盛り上がってたよ」

 確かにこりゃ噂にもなるしモテるだろうな。
 そんなヤツが何で俺に?
 理由は分からないけど、今は恋人なんていいやって思ってる俺は戸守から顔を逸らすとストローに口を付けた。炭酸を一口飲んで、頬杖をつく。

「悪いけど、今は誰とも付き合う気ないから」
「え」
「柚琉、男運なさ過ぎてもう懲りてるんだよ」
「諦めた方がいいぞ」

 そうそう、俺はしばらくは独り身でいいし、コイツらと遊べる時に遊ぶんだ。
 それにコイツだって、こんな純朴そうな見た目してても中身はクソかもしれないしな。何せ俺には男難の相が出てんだから。
 もう顔も見ないで頷いてたら、しばらく黙ってた戸守はテーブルに両手をつくと真剣な顔で俺を覗き込んできた。

「俺、好きになって貰えるよう頑張りますから」

 そう言って立ち去った戸守は待ってくれてたらしい友達と店から出て行ったけど、俺が見てる事に気付くとガラス越しににこっと笑って手を振り消えてった。

「どうすんだ、アレ」
「どうするって言われても⋯」
「本気っぽいねー」
「えー⋯」

 そう言われてもマジで当分はいいって思ってんのに、頑張るってアイツ何すんの?
 せっかく一つ終わらせたのにまた新しい問題が勃発して頭が痛くなった俺は、優里に渡したポテトを取り上げると煽るように口に詰めた。
 これ以上、嫌な思いはしたくない。
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