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知るために
戸守に告白されてから早くも1ヶ月が経った。
学年が違うから校内でもそうそう会う事はないけど、移動教室や昼休みに廊下で俺を見付けると嬉しそうに駆け寄って来るもんだから、一部では俺の飼い犬だと思われてるらしい。
いや、言い出したの誰だよ。アイツにも俺にも失礼だろ。
「宮脇せんぱーい!」
「あ、柊くんだ」
「こんにちは、黒峰先輩、白河先輩」
「ん」
昼休み、自販機の前で莉央と優里と話してたら、いつものように戸守がどこからか走ってきた。相変わらず目敏いな。
この1ヶ月で2人と打ち解けて、名前で呼んで貰えるようになったのは素直に凄いと思うんだけど、当たり前のように受け入れられたら俺は何も言えなくて現状避ける事も出来ずアプローチを受けていた。
隣に立ち俺が持ってるペットボトルを指差す。
「先輩、何飲んでるんですか?」
「カフェオレ」
「じゃあ俺もそれにしよう」
俺が答えるだけで嬉しそうな顔をしていそいそと買いに行く姿につい絆されそうになる。俺をただの先輩だと思って慕って来てくれる分には全然可愛くはあるんだが、最初が告白だからどうしても引っ掛かるんだよな。
いや、戸守がいい奴だってのは周りを見れば分かるんだけど。
「そういえば、柊くん昨日告白されてたね。モテるねー」
「え、見てたんですか?」
「見てたっていうか、見えた?」
「うわー、恥ずかしい」
空になったペットボトルで遊んでた莉央が不意にそんな話を始める。
転校してきてからほぼ毎日のように告白されて困ってるとは言ってたけど、みんな順番でも決めて伝えてるのかってくらい被らないんだな。その告白ちょっと待ったー、みたいな。
言葉通り俺と同じ物を買い再び隣に来た戸守が照れ笑いを浮かべながら蓋を回す。
明るくて人懐っこい戸守は友達が多い。見かけるたびに人に囲まれてるし、笑い声がいつも上がってる感じ。イケメンで背も高いし、モテない訳がないんだよな。
今だって女の子たちがチラチラ見て声をかけたそうにしてる。
「ちゃんと断って偉い」
「好きな人いますから」
「その好きな人とやらは目も合わせようとしねぇけどな」
「⋯⋯⋯」
だから、コイツの顔は俺のタイプなんだって。
分かってて言ってくる優里をじろりと睨むと涼しい顔で肩を竦められる。
「いいんです。まだまだ俺の頑張りが足りないって事ですから」
「頑張りねぇ⋯」
「まぁまぁ、柚琉には柚琉の事情があるんだからいいじゃない」
基本的に莉央まっしぐらの優里は、例えそのテリトリーに入れてくれた俺であっても冷たい時は冷たい。
そもそも友達ですらなければ話さえもして貰えないけど、戸守の事は多少なりとも気に入っているのかどっちかと言えば戸守寄りになってる。
ホント、無条件で優しいのは莉央に対してだけだ。
「俺の味方は莉央だけか」
「あ、ごめん。どっちかと言えば柊くんの味方かも」
「裏切り者!」
四年もツルんできた俺よりも1ヶ月しか関わってないソイツを選ぶとか、なんて友達甲斐のない奴らなんだ。
悔しくて歯噛みする俺の隣に来た莉央が、苦笑しながら俺の耳へと口を寄せる。
「柊くん、悪い子じゃないよ。ちょっと天然なとこあるけど、今までの人とは違うんじゃないかな」
「⋯⋯そんなの、学校内でしか見てないんだから分かんないだろ」
「敢えて見ないようにしてる柚琉よりは分かるよ」
う、それを言われるとぐうの音も出ない。
ふわりと笑った莉央は俺の頭を撫でると「物は試し」と人差し指を立てた。
「まずは普通に先輩後輩として過ごしてみたら? 柊くんには申し訳ないけど、好意とか考えないようにして」
「⋯⋯うん」
「柊くんの味方って言ったけど、僕も優里も、柚琉が傷付く姿はもう見たくないから、結構厳しい目で見てはいるんだよ。だからこそ、今の段階ではヤバそうな感じはないかなって思ってる」
恋人が出来たってウキウキで報告したと思ったら、数週間後にはこんな事あって別れたーだもんな。2人の前で泣いた事はないけど、それなりに全部ショックではあったからその気持ちを汲んで貰えてるのは嬉しい。
だからこそ、いつまでもうじうじしないで済んでるんだし。
でも、考えでみれば確かに莉央の言う通りだ。自分が傷付きたくないからって戸守の気持ちを無視していい理由にはならないし、むしろそうする事で逆に俺が傷付けてるまであるんだよな。
息を吐き、小さく頷いて戸守の方を向くと気付いて微笑んでくれる。
この顔と向き合うのは中々にハードな気がしないでもないけど、ただの後輩だと思えばいけない事もない⋯はず。
「頑張ってみる」
「うん。まずは相手を知る事から、だね」
「そうだな。今までが知らなさ過ぎたんだよな」
今となっては遅いけど、浮かれてないでもう少しちゃんと知っていればまた違ったのかもしれない。俺も俺で反省すべきところか。
可愛らしい笑顔を向けてくれる莉央に笑い返すと、痺れを切らしたのか優里が後ろから抱き締め俺から少し離す。出たな、独占欲おばけ。
「話終わったか?」
「終わった終わった。ありがとー」
「あの、先輩」
「ん?」
これ以上はあっても話せないだろうしと両手を上げると、横から戸守が顔を覗き込んできた。スマホを見せて、にっこり笑う。
「良かったら連絡先、交換しませんか?」
「え、まだしてなかったの?」
「俺と莉央はとっくにしてんのにな」
「むしろ何でお前らがしてんのか不思議だわ」
どんだけ戸守の事気に入ってんだよ。
意外な2人の行動に驚きつつもスマホを出した俺は、SNSを起動しQRコードを表示させてから戸守に向ける。
パッと嬉しそうな顔をした戸守は操作して登録を済ませると、じっと画面を見つめて何かを打ち込み始めた。少ししてトーク画面に〝よろしくお願いします〟と片手を上げているヒヨコのスタンプが送られ目を瞬く。
ずいぶん可愛らしいスタンプだな。
「よろしくお願いしますね、先輩」
「おー⋯まぁよろしく」
明るい声と表情に嘘っぽさは感じなくて、小さく息を吐いて目を伏せた俺は少しだけ肩から力を抜いた。
ただやっぱり、コイツの顔は心臓に悪い。
学年が違うから校内でもそうそう会う事はないけど、移動教室や昼休みに廊下で俺を見付けると嬉しそうに駆け寄って来るもんだから、一部では俺の飼い犬だと思われてるらしい。
いや、言い出したの誰だよ。アイツにも俺にも失礼だろ。
「宮脇せんぱーい!」
「あ、柊くんだ」
「こんにちは、黒峰先輩、白河先輩」
「ん」
昼休み、自販機の前で莉央と優里と話してたら、いつものように戸守がどこからか走ってきた。相変わらず目敏いな。
この1ヶ月で2人と打ち解けて、名前で呼んで貰えるようになったのは素直に凄いと思うんだけど、当たり前のように受け入れられたら俺は何も言えなくて現状避ける事も出来ずアプローチを受けていた。
隣に立ち俺が持ってるペットボトルを指差す。
「先輩、何飲んでるんですか?」
「カフェオレ」
「じゃあ俺もそれにしよう」
俺が答えるだけで嬉しそうな顔をしていそいそと買いに行く姿につい絆されそうになる。俺をただの先輩だと思って慕って来てくれる分には全然可愛くはあるんだが、最初が告白だからどうしても引っ掛かるんだよな。
いや、戸守がいい奴だってのは周りを見れば分かるんだけど。
「そういえば、柊くん昨日告白されてたね。モテるねー」
「え、見てたんですか?」
「見てたっていうか、見えた?」
「うわー、恥ずかしい」
空になったペットボトルで遊んでた莉央が不意にそんな話を始める。
転校してきてからほぼ毎日のように告白されて困ってるとは言ってたけど、みんな順番でも決めて伝えてるのかってくらい被らないんだな。その告白ちょっと待ったー、みたいな。
言葉通り俺と同じ物を買い再び隣に来た戸守が照れ笑いを浮かべながら蓋を回す。
明るくて人懐っこい戸守は友達が多い。見かけるたびに人に囲まれてるし、笑い声がいつも上がってる感じ。イケメンで背も高いし、モテない訳がないんだよな。
今だって女の子たちがチラチラ見て声をかけたそうにしてる。
「ちゃんと断って偉い」
「好きな人いますから」
「その好きな人とやらは目も合わせようとしねぇけどな」
「⋯⋯⋯」
だから、コイツの顔は俺のタイプなんだって。
分かってて言ってくる優里をじろりと睨むと涼しい顔で肩を竦められる。
「いいんです。まだまだ俺の頑張りが足りないって事ですから」
「頑張りねぇ⋯」
「まぁまぁ、柚琉には柚琉の事情があるんだからいいじゃない」
基本的に莉央まっしぐらの優里は、例えそのテリトリーに入れてくれた俺であっても冷たい時は冷たい。
そもそも友達ですらなければ話さえもして貰えないけど、戸守の事は多少なりとも気に入っているのかどっちかと言えば戸守寄りになってる。
ホント、無条件で優しいのは莉央に対してだけだ。
「俺の味方は莉央だけか」
「あ、ごめん。どっちかと言えば柊くんの味方かも」
「裏切り者!」
四年もツルんできた俺よりも1ヶ月しか関わってないソイツを選ぶとか、なんて友達甲斐のない奴らなんだ。
悔しくて歯噛みする俺の隣に来た莉央が、苦笑しながら俺の耳へと口を寄せる。
「柊くん、悪い子じゃないよ。ちょっと天然なとこあるけど、今までの人とは違うんじゃないかな」
「⋯⋯そんなの、学校内でしか見てないんだから分かんないだろ」
「敢えて見ないようにしてる柚琉よりは分かるよ」
う、それを言われるとぐうの音も出ない。
ふわりと笑った莉央は俺の頭を撫でると「物は試し」と人差し指を立てた。
「まずは普通に先輩後輩として過ごしてみたら? 柊くんには申し訳ないけど、好意とか考えないようにして」
「⋯⋯うん」
「柊くんの味方って言ったけど、僕も優里も、柚琉が傷付く姿はもう見たくないから、結構厳しい目で見てはいるんだよ。だからこそ、今の段階ではヤバそうな感じはないかなって思ってる」
恋人が出来たってウキウキで報告したと思ったら、数週間後にはこんな事あって別れたーだもんな。2人の前で泣いた事はないけど、それなりに全部ショックではあったからその気持ちを汲んで貰えてるのは嬉しい。
だからこそ、いつまでもうじうじしないで済んでるんだし。
でも、考えでみれば確かに莉央の言う通りだ。自分が傷付きたくないからって戸守の気持ちを無視していい理由にはならないし、むしろそうする事で逆に俺が傷付けてるまであるんだよな。
息を吐き、小さく頷いて戸守の方を向くと気付いて微笑んでくれる。
この顔と向き合うのは中々にハードな気がしないでもないけど、ただの後輩だと思えばいけない事もない⋯はず。
「頑張ってみる」
「うん。まずは相手を知る事から、だね」
「そうだな。今までが知らなさ過ぎたんだよな」
今となっては遅いけど、浮かれてないでもう少しちゃんと知っていればまた違ったのかもしれない。俺も俺で反省すべきところか。
可愛らしい笑顔を向けてくれる莉央に笑い返すと、痺れを切らしたのか優里が後ろから抱き締め俺から少し離す。出たな、独占欲おばけ。
「話終わったか?」
「終わった終わった。ありがとー」
「あの、先輩」
「ん?」
これ以上はあっても話せないだろうしと両手を上げると、横から戸守が顔を覗き込んできた。スマホを見せて、にっこり笑う。
「良かったら連絡先、交換しませんか?」
「え、まだしてなかったの?」
「俺と莉央はとっくにしてんのにな」
「むしろ何でお前らがしてんのか不思議だわ」
どんだけ戸守の事気に入ってんだよ。
意外な2人の行動に驚きつつもスマホを出した俺は、SNSを起動しQRコードを表示させてから戸守に向ける。
パッと嬉しそうな顔をした戸守は操作して登録を済ませると、じっと画面を見つめて何かを打ち込み始めた。少ししてトーク画面に〝よろしくお願いします〟と片手を上げているヒヨコのスタンプが送られ目を瞬く。
ずいぶん可愛らしいスタンプだな。
「よろしくお願いしますね、先輩」
「おー⋯まぁよろしく」
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