愛が重めの年下ワンコに懐かれました

ミヅハ

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独占欲

「ねぇ、柚琉。それってわざと?」

 2時間目の休み時間、優里に会いに俺らの教室にきた莉央が不意に首を傾げてそう聞いてきた。何の事か分からなくて同じように傾げると、俺の首の1箇所を指差してにこっと笑う。

「それ?」
「首のとこ」
「首⋯⋯ああ。うん、わざと」

 指先が触れた場所と言外に含まれた意味を理解して軽く頷いたら、パッと顔を輝かせた莉央が抱き着いてきた。

「おめでとう!」
「いや、別に最後までした訳じゃないから」
「え? そうなの?」
「抜き合いしただけ」

 あのあとは性的な触れ合いはしなかったけど、俺が帰るまでに重ねるだけのキスは何度かしてた。舌入れると反応するから、ホント軽いのだけど。
 一応周りには聞こえないよう声を潜めてる俺に合わせるよう莉央も小声になり、顔を近付けてヒソヒソ話してくれる。

「でも、それだっておめでとうだよ」
「ありがと。まぁまだ本番が残ってんだけどな」
「案外すぐくるんじゃない?」
「かなぁ。⋯⋯なぁ、莉央」

 その時が来た時、俺は柊也なら怖くないんだろうなって思ってる。まぁするにしたって柊也のタイミングはあるし、準備だっていろいろ必要だからそれまでに覚悟を決めてしまえばいいだけだ。
 それより俺は気になってる事があって、優里と付き合ってる莉央にだからこそ聞ける質問をしてみた。

「何?」
「やっぱり初めてって痛かった?」

 5年も付き合ってるからってものあるけど、莉央と優里はとっくにお互いで初体験を済ませてる。
 俺の目の前でイチャつく事がほとんどない2人は、土日や祝日で思う存分2人の時間を過ごしてるらしく、莉央のうなじや首筋にキスマークがついてる事もしょっちゅうだ。
 お互い初めて同士だったからこそ手間取ったかもしれないし、上手く出来なかったとかもあるらしいからずっと聞いてみたかったんだよな。
 莉央はチラリと優里を見ると、気にしていない事を知った上で俺の耳に口を寄せてきた。

「違和感とかは凄かったけど、痛くはなかったよ」
「少しも?」
「あ、入ってくる時はちょっとピリッとしたかな。でも時間かけて拡げてくれたし、ローションもたっぷり使ってくれたから慣れたら大丈夫だった」
「⋯それ、人より大きくても時間かければいけると思う?」

 優里のサイズなんて知らないし知りたくもないけど、人より大きいらしい柊也のが痛みなく受け入れられるのか純粋に疑問でそう言えば、莉央はきょとんとしたあと優里と顔を見合せて苦笑した。

「それはちょっと分かんないかな」
「だよな」

 さすがにか。
 しょっぱな入らなくてもアイツなら許してくれるだろうし、無理に焦る必要はないよな。俺たちには俺たちのペースがあるんだし。
 昨日の柊也を思い出して口元を緩めた俺は、頬杖をついて冷たい風が吹く窓の外へと視線を向ける。それを優里と莉央が微笑んで見てたみたいだけど、俺は気付かなかった。


 3年の方が早く終わり、たまには俺から迎えに行こうと2年の教室がある廊下まで降りた俺は、見えた光景に思わず固まり慌てて角に隠れた。少しだけ顔を覗かせ様子を伺う。

「柊也ー、たまには遊びに行こうよー」
「カラオケ行こ、カラオケ」
「最近はあの先輩とばっかじゃん」
「そんなに楽しいの?」

 帰り支度を済ませた柊也が女の子たちに囲まれて身動きが取れなくなってる。しかも俺の話してるから出て行こうにも気まずくて⋯うーん、どうしたものか。

「私思ってたんだけど、あの先輩、柊也との距離近くない?」
「あ、私も思ってた。何か独り占めしてる感が強いよね」
「みんなの柊也なのにねー」
「ほんとそれ」

 1人の子が柊也の腕に抱き着き頬を膨らませる。周りの子も同意してるけど、確かに独り占めしてる気持ちはあるかも。
 でも恋人なんだし当たり前じゃないか?
 眉を顰めながら見てたら、今まで黙ってた柊也が女の子の腕を離しながら目を細めた。

「違うよ」
「え?」
「俺は先輩のだから。むしろ独り占めされたいし」
「しゅ、柊也?」
「あの人の事、悪く言わないでくれる?」

 微笑んでるのにどこか冷たく感じて女の子たちが黙り込んだけど、俺も背筋がヒヤッとして固まってたら不意にこっちを見た柊也と目が合う。
 途端に和らいだ表情に思わずドキッとしてしまった。

「柚琉先輩」

 呆然とする女の子たちの間を抜けて大股で俺のところにくるなり抱き締められる。視線は感じるけど、さっきの言葉のおかげで嫌な気持ちにはならなかった。
 でも、この匂いだけは頂けない。

「柊也」
「はい」
「あんま、他の人に匂いつけさせんな」

 友達なんだからって思いはあれど、俺は柊也の匂いが好きだからそれに違う匂いが混ざるのは我慢出来ない。
 俺のものなのにマーキングしてんなよって思う。

「言っとくけど、俺はめちゃくちゃ嫉妬深いからな」
「⋯⋯たぶん、俺の方がひどいと思いますよ」
「ひどい?」

 自分の心がこんなに狭いって初めて知った。我ながら呆れるけどは、元彼たちに感じた気持ちって本当に軽くて浅いものだったんだな。
 遅咲きの初恋みたいに新しい感情が湧いて、予防線を張るように言えばクスリと笑った柊也が俺の頬に触れてくる。

「先輩に独り占めされたいけど、俺も先輩を独り占めしたいんです。誰の目にも触れないよう閉じ込めて、俺だけを見て貰えるように。先輩には俺だけがいればいいって思ってるから」
「⋯⋯⋯」

 さすがに重過ぎる気もするけど、そうされても嫌じゃないって感じるほどには惚れ込んでるんだよなぁ。
 ここまで俺を好きにさせるなんて、大した奴だよ、ホント。
 俺は両手を上げて柊也の頬を挟むと、悪戯っぽく笑って顔を近付けた。

「だったらすればいい。お前になら、甘んじて独占されてやるよ」

 そう言って唇を重ねたら女の子たちの悲鳴が聞こえたけどどうでもいい。コイツは俺のもので、俺はコイツのもの。
 それだけ俺たちの中にあればいいんだ。
 どう頑張ったってあの子たちは柊也に振り向いて貰えないんだから、嫉妬するだけ意味ないのかもしれない。
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